森嶋マリのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
タイトルの「NATURE FIX」を訳すと、「自然が回復させる」「自然が治す」となります。
本書は、人が自然に触れたり自然を体験することによって、日々のストレスから回復することがどうやらできるようだ、ということを解説しています。そればかりか、アメリカ、日本、韓国、イギリス、フィンランド、スウェーデン、シンガポールなどの自然と人間の研究やそれらを踏まえた実践的取り組みを取材した著者の経験をまじえながら、おおよそがドキュメンタリータッチで、認知力や創造性などの向上にまで自然の効果が認められることを教えてくれるのです。
近年、都市部に人口が集中し、2008年には世界人口の半分が都市生活者となりました。自然と疎遠になった都市生活は、人が本来発揮できるはずの認知力や創造性を押しとどめてしまっているのかもしれません。そう考えると、認知力や想像力が自然の力によって「向上する」のではなく、もともと備わっている力を「回復する」手助けになっていると考えることだってできます。
この観点からみてみれば、都市生活というものは、人のポテンシャルを伸ばさず、そればかりか悪影響を与える度合いの高いものと思えてしまいます。異常に混雑した環境の中に猫たちを閉じ込めるとみんな横暴になりいじめが発生し、それがラットたちだと巣作りを忘れて自分の体を食べ始め、霊長類だとホルモンバランスが崩れて生殖能力が落ちたのだそうです。これらは極端に密度の高い環境での実験例なのでしょうが、人口密度の高い場所に暮らす人間たちはどうなのかを考えてみれば、あまり良い影響は受けていないのかなあという気持ちに、容易になるのではないでしょうか。
しかしながら、各国でなされている「自然が人間に与える好影響の研究」の成果が行政の分野で取り上げられてもいます。植樹や公園の整備など都市部の緑地化に生かされ始めているのは、人の精神面への働きかけでもあるのでした。また、日本がパイオニアとなっている森林浴の分野に代表されるように、森などの深い自然で1日でも1週間でも過ごすことによって、血圧の正常化やストレスホルモンであるコルチゾールの低下などが認められるようです。
また、女性の退役軍人たち、それもPTSDを負った女性たちが急流下りのプログラムを通じて活力を取り戻していくのですが、その取り組みについて著者自らが体験取材の模様で伝えてくれたり、ADHDの子供たちが自然で過ごすプログラムを多く取り入れた学校で過ごしながら、症状が緩和していく様子をその傍らから伝えてくれたりなどもしています。自然からの効果はまだまだ未知の部分が多いですが、それでもこれだけの強い力を深く秘めていることが示唆されるのでした。
これら広範な内容のなかでも、自然による嗅覚での影響、聴覚での影響、視覚での影響について割かれている部分が、僕にはもっとも興味深かったです。嗅覚ではフィトンチッドと呼ばれる森の匂いの成分に効果があるという研究があり、聴覚では、鳥の鳴き声や川の流れる音による癒しの研究があり、視覚では、自然の中にみられるフラクタル(全体の形とそれを構成する部分の形が相似形であること)による癒しの研究があるというのがそれでした。これらすべてをいっしょに体験できるのが、やっぱり森林浴になるのです。
以前、僕は4シーズンほど自然がいっぱいの観光地で働いていました。四季の移ろいがほんとうに身近に感じられるといいますか、自然と一体となって過ごしていた感があります。ウグイスが鳴き、エゾシカが草を食みにあらわれ、桜が咲き、ルピナスなどの野の花が季節ごとに咲き誇り、晴天や雷雨、暑さや寒さを、扉が開け放たれた小さな一軒家型の受付兼カフェで体験しながら働いていました。接客商売のストレスだってあるのですが、それでもやっぱり、基本的に気持ちの良い仕事でした。脳にも身体にも好かったんだと思います。比較的楽観的にモノを考えることができ、そして感情の抑制も周囲の人たちと比べてできるほうなのは、こういった影響も大きかったのかもしれないです。
最近は屋内にいることがとても多いです。本書の内容を踏まえると、またどこか自然に溶け込めるような場所で過ごしたくなりました。車で15分くらいのところに自然公園があるので、そこに行ってみようかなという気持ちになってきます。一月に5時間、自然のなかで過ごすと効果が出るようです。みなさんもいかがですか。 -
Posted by ブクログ
メルケルのコロナ対応に際して国民に呼び掛けた演説に感動して、どんな人物か少しでも知りたいと思い、読み始めました。
東日本大震災の惨事から原発政策からの完全撤退の決断、ロシアの天然ガスパイプラインへの投資の決断、中国への経済的傾斜への舵取り、ユーロ危機に際してEU支援に背を向けるも、コロナ禍で財政疲弊したEU加盟の国への支援にフランスと共に財政負担を決断等、その時々のドイツやEU、民主主義陣営を守るべく行動の数々がまさにメルケルなのだと思います。
首相の仕事を「私の呪わしい努め」と表現する人物、「努力の人だったと歴史書に書かれたい」と語る人物、本書が言うには「名誉や功績より、結果を求める人物」、国内政治への権限が制約されている連立政権の首相でありながら、世界のリーダーとしての活躍に驚くばかりです。
メルケルの再登場を求める様なロシアのウクライナ侵攻を目にして、この事態を今解決に導いてくれる政治家が居るのだろうかと思いました。
-
Posted by ブクログ
メルケルの人生と政治家としてのスタンス、実績、他国との付き合い方が分かる本。
日本にいると、欧州のトップ同士の付き合いとか分かりにくいけど、よくそれが理解できる。
メルケルとプーチンは元警察国家出身だから、お互い理解(ただし共感では決してない)できるし、対ロシアとの交渉は、欧州、時にはアメリカも含めメルケルが対応することが多かったよう。
また、アメリカ大統領で1番信頼していたのがブッシュだったらしい。
同じ女性として、ここまで頭が切れて人生を切り拓き、だけど権力に溺れず、家庭を大事にする人は素直に尊敬できる。
勿論かなり良い方に描かれてはいるだろうけど、メルケルと統治下のドイツ政治を知る最適な入門書だと思う。
ドイツは首相の権限がかなり狭く、しかも連立政権なので、実は内政で出来ることはあまり無く外交に力を注いでいた、最後の一年は与党党首を辞めて外交強化のつもりがコロナ対策に追われたなど、よく知らないドイツの政治もなんとなく全体像が見えてくる。 -
Posted by ブクログ
著者をあまり意識せずに読み始めたので、誰目線?って感じが強かった。
今でも存命の方の、伝記的要素の強い本なので、どうしてもフラットな書き方はできないのは分かりつつも、賞賛する方の書いた本と言う雰囲気がダダ漏れだったのはちょっと残念。
ただ、日本人が、日本語で、遠いヨーロッパの首相を務めた女性のあゆみを知ることに於いては、決して内容的に劣るものでは無い事も確かです。
この本を日本に出版し、彼女について私たちが知る事はとても有意義な事でしょう。
彼女が引退し、ウクライナとの戦争が始まったのは偶然では無いと思います。彼女の力で今までくすぶりつつも戦争にまで発展しなかったんだと、この本を読み、強く思いました。 -
Posted by ブクログ
私達はメルケルの多くを知りません。
確かに、ドイツという欧州で重要な国の一つである以上、日本にいてもメディアを通じて触れる機会は多いです。
しかしそれはあくまで一政治家としてのメルケルです。ドイツ関連の本でメルケルに触れる記述をみても、その人物像に触れる記載はほとんどありません。メルケルは多くの自己顕示欲の強い、派手な各国のトップと異なり、プライベートを徹底して明かさない人でした。
そのためメルケルについて多くを知る、ということは困難なことなのでした。
本書はそんなメルケルについて多くを知ることができます。
牧師の娘として生まれ、冷戦下の東ドイツで育ったメルケル
抑圧された生活の中で自分を巧みに守りながら勉学に励む。名門ライプツィヒ大学(カール•マルクス 大学)へ入学。物理学を選んだ理由の一つが「東ドイツでも基礎的な算術と自然の法則を止めることはできなかったから」。
23歳で結婚し現在まで名乗ることになるメルケルとなるも3年で離婚。ちなみに直後しばらくは荒廃地域のアパートの空き部屋に無断で住んでいたとのこと。
ベルリンの壁が崩壊。
眩い輝く未来が広がっていることを感じ、刺激を求め、また新たな国をつくることにも魅力を感じ、政治家へ転向。
以後現在に至る。
多様性と自由を尊重する、寛容である、感情的にならずに冷静に理性的に人と接し物事を取り組む、物事をじっくり考え慎重に行動を起こす、そのようなメルケルの姿勢がその生い立ちを背景にして染み入る様に理解できます。
著者のカティ•マートンは旧東欧のハンガリーで生まれ育ち、ユダヤ人の祖父母をアウシュビッツでなくした背景をもつ女性の元記者とのこと。
ドイツ、欧州、米国のかつての政権周辺の重要人物にも多く取材をしており、メルケルが関わった年代のドイツ国内、国際政治の裏側の一部を垣間見ることができるのも、本書の面白いところです。
尋常ではない体力で、国内、欧州、世界と大小の差はあれそれぞれの深刻さを抱えた問題に、焦らず、感情的にならず対処していく様は、ドラマチックと言う類のものではないにしても驚きを持って受け止めるべきものです。
2014年のロシアによるウクライナ侵攻以降のプーチンとの闘いについて。このあたりの話題は現在のウクライナ戦争にもつながるものであり、情報としても重要かつ価値があるものでしょう。
自由と民主主義の世界代表として話し合いで解決を目指すメルケルと、権威独裁主義で嘘を交え(真実を交え、の方が適当か?)争いで抑えつけようとするプーチンの闘い。政治的な描写だけでなく人間的な側面も交えて生々しく描かれています。
とはいえメルケルは、プーチンに対しても極めて冷静に(心の中ではともかく)、事実やデータを踏まえて、粘り強く対応していきます。十数時間のぶっ続けの会議の末に結ばれたミンスク合意も(内容とその後の現実はともかく)、それまでのメルケルの粉骨砕身の努力によるところが大きいのだということがよくわかります。
スキャンダルとは無縁で、自由、民主主義、人権の尊重などの確固たる信条を持ちながらも、様々な利害関係の中で多くの妥協をしてきたメルケル。こんなすごい人でも完璧にこなすことはできないんだ、と社会と世界が安定して存在することの絶望的な難しさをつくづく感じます。
と同時に多様な人々の間で一致点を探ろうとして、それが一時的にでも生まれた瞬間の輝きに触れると、人を信じて対話をしていくことを諦めてはいけないという思いにもさせてくれます。
首相時代からずっと賃貸マンションに夫と住んでおり、自分でスーパーへ買い物に行って料理を作る(洗濯は夫)メルケル。
現欧州委員会委員長かつメルケル政権元国防相であるウルズラ•フォン•デア•ライエンに手を添えられながら彼女を見つめるメルケルは、とても慈愛に満ちたチャーミングな表情をしています。 -
Posted by ブクログ
書きたいことを書くとネタバレになってしまうので、あまり書けないが、とくに将来におけるAIと人間との関係について、巷で言われていることの裏付けがされていて、とても納得できた。
終章だけ読んでも納得できないが、全体を読んできて終章を読むと納得できる。
Excelなどで組んだ自動計算やその他のツールを盲目的に信じて疑わず、対象者に多大な被害が出ても信じ続ける例が紹介されている。外を与える側に対して非常に腹が立ったと同時に、他者への無関心・共感性の無さという恐ろしさを感じた。
一方で、人間には多種多様で多大なバイアスがあるし、人により時間により判断の振れ幅も大きい。こちらも判断を信頼できない場面が多く、そして判断される対象者の利害の振れ幅に影響するところに存在する。こちらも大いに改善されるべきであり、自分が対象者になったときの怖さをあらためて感じた。
自分が被害を与える側にならないように気をつけなければいけないし、被害を受ける側になったときに少しでも和らげるように対処を考えたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読書の動機→自然が心身に良い影響を及ぼすのではないかという仮説を持ち、その検証のために読んだ。
人類が誕生してきてから自然に囲まれ、守られ、自然と共生してきたのにも関わらず、現代は自然との繋がりが希薄になっているのは奇妙ではないか?
この疑問から始まる本書は、自然が心身に良い影響を与えることを証明する(証明しようとしている)研究を紹介する。
驚いたこと
・森林浴は日本発祥
・都心部を歩いている時と比べて森林を歩いている時では、ストレスホルモンと呼ばれているコルチゾールの値が下がる
・森林で過ごすことでNK細胞が増大し、それは持続する
・樹木が発するフィトンチッドがNK細胞に影響を与える
・実行、空間知覚、デフォルトネットワーク
・血圧が正常値に近ずく
・自然界にある幾何学的パターンのフラクタルは、視覚野にも見られる
・フィンランド国土の74%が森、人口500万人でコテージは200万個
・畏敬の念を覚えるには、「はてしない広がり」が必須、簡単には分類理解ができず、好奇心がかきたてられる、恐怖と謎と美が一体になった時に、記憶に焼きつく
・シンガポールの取り組みーバイオフィリックシティ、国土の緑地は年々増えている(2007年で47%)
その他
・研究の信頼性や妥当性を保つのが難しそう -
Posted by ブクログ
自然は人間をリラックスさせる。自然を欲する本能を満たすからこそ、行動を起こす意欲が湧き上がってくるのが脳のシステム
マルチタスク以外の脳の部位がはたらくin自然
マルチタスクを続けているとエネルギーが使い果たされてしまう。
注意回復理論(しせん
極めてシンプルな結論→できるだけ外に出ること。時には雄大な自然が広がる場所に出かけて畏怖の念を感じること。深々と自然の空気を吸うこと
嗅覚→自然の匂い(アロマも効果あり)
視覚→フラクタルが知覚に優しい
聴覚→小鳥のさえずり。なるべく人工の音がない場所が良い
気持ち→畏怖の念、リラックス効果。
1ヶ月に5時間自然の中にいるだけです認知能力が改善する。この際、携帯電話は必ずオフで
人生でやるべき自然に触れるリスト(ネイチャーピラミッド)は以下
毎年:大自然に畏敬の念を抱く
毎月:ハイキングや森林浴に出かける
毎週:緑豊かな大きな公園、川辺でリラックス
毎日:庭、観葉植物、街中の公園で一息つく
今は都市に人口が大量流入する時代。よって、都市に緑を取り戻す仕組み作らなければならないだろう -
Posted by ブクログ
ハウスワイフ2.0に対する著者の態度があまり 一貫しておらず、何が言いたいのか分かりづらい感じがした。でも全体的には面白かった。私はフリーランスで家で働いているけど、やっぱり専業主婦は旦那の稼ぎがいいから専業主婦でいられるんだと言うひがみはあります。この本では、ハウスワイフ2.0に、そういう経済的に恵まれた立場にあることを忘れないようにと述べているところに共感できた。それからなんでも家で手作りするのはいいけど、旦那の稼ぎに頼っている以上、離婚や旦那の健康の問題などで収入がなくなったときにリスクがあることを忘れないようにと言う警告もとても真当だと思います。
-
Posted by ブクログ
アメリカで高学歴の若い女性の主婦回帰現象が起きている示唆をした本。ただ、その実、本当に主婦回帰しているのは富裕層ではなく中流階級以下だった、ということが最後に述べられている。(前段が長い…)
原因としては、食の安全問題と不景気による仕事の無さや閉塞感が大きく、逃げ場として昔ながらの全て手作りするホームメイカーが実は女性の一番素敵な生き方だ、と自らを肯定している感じ。ただし、インターネットの普及により、主婦も昔に比べて人とのつながりが感じられるようになっているため、それでも生きやすくなっている。
いわゆる高学歴層の主婦や一部のカリスマ主婦は、ブログを通して自分を売り込み、サイドビジネスで成功している。しかし、それを見てフォローしている主婦の多くは中流階級以下であり、そもそも仕事につけないという根本問題も抱えていたりする。
日本でも同じ事が起きるのかを考えたが、近い流れはあるとは思う。高学歴層の主婦志望は若者の中でも高いし、食の安全問題はアメリカ程ではないが関心事である。ただし、日本はやや好景気なので、仕事につけないとという所はそこまで強い課題ではない。むしろアメリカよりも女性の社会進出に対して制度も含めて理解が得られていない状況が前提だ。
ただ、労働人口は減り主婦活用はせざるを得なくなる。ただし既存のスキルがない主婦ができる仕事は限られるし、より自動化も進む。接客のような一部のコミュニケーションが必要な仕事だけが残り、そこに主婦活用が進む。
また仕事の形は多様化しつつあるので、在宅などでのマイクロジョブへの希望が高まり、専業主婦で小さく家で稼ぐといったモデルがより生まれていく。そしてC to Cでの仕事も生まれる気がする。
こうやって考えると、アメリカに比べて日本はまだ女性の社会進出が進んでいない分、主婦回帰の現象は緩やかになる気がする。
ただし、根底にある価値観の変化は起こるのではないかと感じる。