熊野純彦のレビュー一覧

  • 極限の思想 ニーチェ 道徳批判の哲学

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    ニーチェの『道徳の系譜』を読み解く上で非常に参考になった。『道徳の系譜』初読の時点では全く見えなかった景色が、この本を足がかりに見えた。ニーチェ初心者は、できれば『道徳の系譜』とこの本を交互に理解しながら読み進めるのがいいのではないと思う。

    しかしこの本で解説される部分は、『道徳の系譜』の特に大事なところ、要点に絞られるので、ところどころは自分自身で、あるいは他の解説書を参考にして読まなければいけないところもある。
    また、『道徳の系譜』では触れられていないニーチェの思想も四章で触れられるが、『道徳の系譜』のみの解説で良い人には二章と三章で十分だろう。

    それと、著者はニーチェが専門ではなく、

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    2025年09月04日
  • 近代哲学の名著 デカルトからマルクスまでの24冊

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    本著は、倫理学者であり哲学者の熊野純彦氏が編者となり、近代西洋哲学の主要著書について、日本の若手研究者の論文を集めたものである。

    作品は、計25冊。
    著者、計19名 (カントは4回、デカルト2回、ヘーゲル2回、ライプニッツ2回)。
    論文執筆者。計22名。
    これらが5つのテーマに沿って編集され、各論文は10ページ前後の読み切りというスタイルだ。

    恐らくすべてが、一般向けというよりは学術的な目的で書かれた論文と思われ、一つ一つが難しい。
    大変読みごたえがあり、哲学の入門書では物足りないという人には大いに楽しめる内容であると思う。
    自分はとてもそんなレベルではないが、やわらかいものばかり食べてい

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    2025年05月20日
  • 精神現象学 上

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    最初ちょっと何言ってるかわからないって感じだったけどヘーゲルの文体が体に馴染んでくる。
    人が意識を通じ、外界という否定性を内に引き入れるように肥大していく精神の永遠の旅。
    ロマン主義の土壌があるドイツならではのビルディングロマンスとしての物語としても読める。
    何度も何度も読み直すことが大事。

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    2025年04月15日
  • 極限の思想 サルトル 全世界を獲得するために

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    『存在と無』を読んだあとに読んだ。当時はあれを小説を読むような態度でたのしんで、それになにしろ一年かけて読んだものだから、要約みたいなものを示すなどということはぼくには到底できなくて、それをこんなにも手際よく、コンパクトにまとめられるだなんて、まったくとんでもないことだと思った。

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    2024年07月29日
  • 極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる

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    最上級に噛み砕いて、これほどわかりやすく『存在と時間』を解説してくれた本はない。

    自分の生を日常性から一歩深い視点で見つめることができる。

    初めて解説本を読んで、『存在と時間』そのものに挑んでみようと思えた。

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    2023年10月19日
  • 極限の思想 ドゥルーズ 内在性の形而上学

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    「学」「二項性」の暴力性に抗うドゥルーズというイメージを持った。
    これはかけがえのない収穫だ。

    存在一義性、内在性は難しかった。
    第四章の狂気、第五章の表面、第七章の無人島(なかでも他者論)はかなり引き込まれた。

    著者の誠意を感じた。

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    2023年10月17日
  • 極限の思想 ニーチェ 道徳批判の哲学

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    カント研究者の視点が随所に光る。
    キーワードは超越論的。
    ニーチェの道徳批判を『道徳の系譜』に基づいて丁寧に読みほどいている。
    ニーチェの問題意識がよく分かる。
    最後に著者が読み解いた、個人としてだけではなく、人類としても、歴史としても、道徳を解体していく「永遠回帰」の思想は魅力的だ。

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    2023年07月18日
  • 極限の思想 バタイユ エコノミーと贈与

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    端的に言うと、聖と俗の二元論の浅はかさを撃ち、思索のうちに沈静するのでなく、この世の在り方、認識の仕方を根本的に超えていこうとするバタイユ論。

    アイテムとしては、経済、死、戦争、エロティシズム、宗教を新たな文脈の元で捉え直している。

    ハイデガー、サルトル、カイヨワ、レヴィナス、モース、レヴィ=ストロースの論と対比させながら、バタイユの独自性を明らかにする。

    繰り返しがくどくなく、深みを増す言及の仕方で、人間の根源に迫った好著である。

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    2023年04月25日
  • 極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる

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    自分がいまだに通読したことのない『存在と時間』についての読みをこの一冊で包括的に提供してくれた、(単行本ではあるが)新書的アプローチの本。注釈を中心に国内外の最新のハイデガー研究の成果が書かれており、読者としては信用がおける。

    要約の仕方については論争的な部分もあることも含めて著者自身が丁寧に紹介しているが、素人目にはあまりその点はわからない。とはいえ木田元の「未完問題」アプローチがあることは知っており、それゆえ「未完のものをどう論ずるのか」という先入見が自分にも多少残存していたので、その懸念をかなり早い段階で棄却してくれた点は読み進める上でありがたかった。

    ハイデガー哲学に必ずしも「(健

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    2023年02月10日
  • 精神現象学 下

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    面白かったですね。
    (数年前に一度読んでいて、今、再読中)

    もちろん哲学書の御多分に洩れず難解なのだけれど、この難しさの質は「何とかなりそうな」難しさです。私たちにも馴染みのある合理や理性の射程範囲にあるような。まあそれでも私のような凡人には難解極まりないのですが。

    私個人としては哲学のテクストに文学性や矛盾性のようなものを求めているふしがあります。ヘーゲルのこれはまさにその宝庫で楽しく味わえます。

    本書の面白さの一つは、困難や苦難を肯定し、受容するきっかけを与えてくれる(かもしれない)こと。
    荘子の「楽しむところは窮痛にあらざるなり」を思い出します。
    対立や衝突というものをどのように見

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    2022年08月05日
  • 日本哲学小史 近代100年の20篇

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    前半は西田幾多郎に始まる日本哲学の系譜をまとめたもので,軽く確認するには良い。

    後半は代表的な著書の紹介で,各テーマからピックアップしている。

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    2022年07月13日
  • 極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる

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    本書は「私たちがそれぞれ『私』の生を生きているとはどのようなことか』という問題に対する取り組みとして『存在と時間』を解釈する。
    実存主義にも存在論にも還元できない、そうした『存在と時間』に固有とも言える哲学的洞察を評価する試みであることを個々に明記しておく。

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    2022年04月11日
  • レヴィナス入門

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    第1回目 2022.3.27
    とても丁寧で親切な解釈が提示されている。入門と呼ぶに相応しい。倫理を究極の形で探究したレヴィナスの鼓動を感じた。

    第2回目 2025.8.23?

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    2022年03月28日
  • 精神現象学 下

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    P154 381
    「反抗する自己意識である場合にのみ、自己はみずから自身が引き裂かれ、分裂していることを知っている。そしてそのように分裂しているのを知ることで、自己はただちに分裂を超えて高められているのである。」「肯定の対象となるのは、ひとり純粋な〈私〉そのものだけである」
    この辺りとか、本当にナショナルアイデンティティとかに悩んだりしていた私には刺さる表現だった。ヘーゲルは国家を枠組みとしてみているけど、同時に国家の限界も思考しているという印象。

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    2021年09月16日
  • 物質と記憶

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    ネタバレ

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    対象群は,自分の身体の有する力が増減するのに従ひて秩序着けられる.私の身体を取り巻く対象群は,其れ等の対象に対する私の身体の可能な行動を反射するのである.

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    第一の仮説では,精神も亦物質と等しく認識不能な物となる.精神は定義し難い能力に帰されており,其の能力が感覚を何処からともなく呼び起こし,何故だかは解らぬが其れ等の感覚を空間中に投射して,かくて空間の中で諸感覚が物体を形成するに至る,とされるからである.
    第二の仮説に於いて,意識の役割は明確に定義される.つまり,意識は可能な行動を意味してゐるのである.其れ故,精神が獲得した様様な形式,意識の本質を我我に対して覆ひ隠す形式は,この

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    2021年08月03日
  • 精神現象学 下

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    1年ぶりに読み返したけど面白かった!
    良心が赦しによって相互承認に至る過程は特に面白い。しかし、現代に引き付けて考えてみると、ヘーゲルの言うような「赦し」による和解が難しくなっているように感じる。むしろ、道徳の段階のような、自己の正しさに固執する契機の方が目につくのではないだろうか。自己の知の有限性を自覚する良心だからこそ、和解が可能なのか。そうなると、情報が溢れる現代社会において、良心の段階に達することこそが難しいのかもしれない。

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    2021年07月29日
  • 西洋哲学史 古代から中世へ

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     デカルトまでのギリシャ・ローマ世界における思想について、通史的にざっと知識を整理しようと購入したが、そのような実用的な用いられ方を拒むような著者の文体にあえなく返り討ちにあい、結局2度3度と読み返すことに。「世界と、世界をめぐる経験のすべてがそこに結晶しているような一語を語りだすためには、幾重にも錯綜したことばのすじみちを辿りなおさねばならない。そのとき哲学的思考が抱え込む困惑は、日常の風景を反転させ、世界の相貌を一変させる一行を探りあぐねる詩人の困惑と、全く同質のものであるはずである(p.30)」。本書で哲学者の思索をなぞる著者のことば自体もまさにこのような詩的な響きを帯びており、どの文章

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    2021年04月18日
  • 西洋哲学史 近代から現代へ

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    それぞれの時代の哲学者のそれぞれの思想を紹介するのではなく、ある事柄に関して、それぞれの時代の哲学者は、どのように考えたかを軸に紹介している。
    従って、それぞれの哲学者の違いは理解できるにしても、各哲学者の思想を知れる訳ではない。
    また、代表的な著作が紹介されている訳でもない。

    読み進めるのには、結構、難解である。

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    2021年01月10日
  • マルクス 資本論の哲学

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    ネタバレ

    哲学者熊野純彦さんによる資本論入門。本書の趣旨はご本人が終章で述べているように、「価値形態論を形而上学批判として読みなおすところからはじめて、資本の運動を時間と空間の再編過程ととらえるこころみを経て、科学批判としての資本論体系をきわだたせながら、利子生み資本と信用制度のうちに時間のフェティシズムを見さだめる」ことです。本論についてコメントするには自分は力不足ですので、興味深かったことを二点挙げたいと思います。
    一つ目は、マルクスと環境問題についてです。熊野さんは、「資本制と自然とのあいだに、マルクスは最終的には両立不可能性を見てとっていた可能性」があると述べ、特に「自然そのものの内部に自然的に

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    2019年12月31日
  • 近代哲学の名著 デカルトからマルクスまでの24冊

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    ネタバレ

    各書を紹介している執筆者は、それぞれ異なる。
    が、本書を通して読むと、近代哲学が、一貫して何をテーマにし、何を問題にしてきたが、わかるようになっている。
    これは、編者の熊野純彦による力が大きいと考えられる。
    どの名著を読もうかと考えている読者にも、近代哲学のテーマを知ろうと考えている読者にも、近代哲学史を紐解く場合と違った面白さを発見するであろう。

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    2019年04月05日