熊野純彦のレビュー一覧
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ニーチェの『道徳の系譜』を読み解く上で非常に参考になった。『道徳の系譜』初読の時点では全く見えなかった景色が、この本を足がかりに見えた。ニーチェ初心者は、できれば『道徳の系譜』とこの本を交互に理解しながら読み進めるのがいいのではないと思う。
しかしこの本で解説される部分は、『道徳の系譜』の特に大事なところ、要点に絞られるので、ところどころは自分自身で、あるいは他の解説書を参考にして読まなければいけないところもある。
また、『道徳の系譜』では触れられていないニーチェの思想も四章で触れられるが、『道徳の系譜』のみの解説で良い人には二章と三章で十分だろう。
それと、著者はニーチェが専門ではなく、 -
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本著は、倫理学者であり哲学者の熊野純彦氏が編者となり、近代西洋哲学の主要著書について、日本の若手研究者の論文を集めたものである。
作品は、計25冊。
著者、計19名 (カントは4回、デカルト2回、ヘーゲル2回、ライプニッツ2回)。
論文執筆者。計22名。
これらが5つのテーマに沿って編集され、各論文は10ページ前後の読み切りというスタイルだ。
恐らくすべてが、一般向けというよりは学術的な目的で書かれた論文と思われ、一つ一つが難しい。
大変読みごたえがあり、哲学の入門書では物足りないという人には大いに楽しめる内容であると思う。
自分はとてもそんなレベルではないが、やわらかいものばかり食べてい -
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自分がいまだに通読したことのない『存在と時間』についての読みをこの一冊で包括的に提供してくれた、(単行本ではあるが)新書的アプローチの本。注釈を中心に国内外の最新のハイデガー研究の成果が書かれており、読者としては信用がおける。
要約の仕方については論争的な部分もあることも含めて著者自身が丁寧に紹介しているが、素人目にはあまりその点はわからない。とはいえ木田元の「未完問題」アプローチがあることは知っており、それゆえ「未完のものをどう論ずるのか」という先入見が自分にも多少残存していたので、その懸念をかなり早い段階で棄却してくれた点は読み進める上でありがたかった。
ハイデガー哲学に必ずしも「(健 -
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面白かったですね。
(数年前に一度読んでいて、今、再読中)
もちろん哲学書の御多分に洩れず難解なのだけれど、この難しさの質は「何とかなりそうな」難しさです。私たちにも馴染みのある合理や理性の射程範囲にあるような。まあそれでも私のような凡人には難解極まりないのですが。
私個人としては哲学のテクストに文学性や矛盾性のようなものを求めているふしがあります。ヘーゲルのこれはまさにその宝庫で楽しく味わえます。
本書の面白さの一つは、困難や苦難を肯定し、受容するきっかけを与えてくれる(かもしれない)こと。
荘子の「楽しむところは窮痛にあらざるなり」を思い出します。
対立や衝突というものをどのように見 -
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ネタバレ41
対象群は,自分の身体の有する力が増減するのに従ひて秩序着けられる.私の身体を取り巻く対象群は,其れ等の対象に対する私の身体の可能な行動を反射するのである.
99
第一の仮説では,精神も亦物質と等しく認識不能な物となる.精神は定義し難い能力に帰されており,其の能力が感覚を何処からともなく呼び起こし,何故だかは解らぬが其れ等の感覚を空間中に投射して,かくて空間の中で諸感覚が物体を形成するに至る,とされるからである.
第二の仮説に於いて,意識の役割は明確に定義される.つまり,意識は可能な行動を意味してゐるのである.其れ故,精神が獲得した様様な形式,意識の本質を我我に対して覆ひ隠す形式は,この -
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デカルトまでのギリシャ・ローマ世界における思想について、通史的にざっと知識を整理しようと購入したが、そのような実用的な用いられ方を拒むような著者の文体にあえなく返り討ちにあい、結局2度3度と読み返すことに。「世界と、世界をめぐる経験のすべてがそこに結晶しているような一語を語りだすためには、幾重にも錯綜したことばのすじみちを辿りなおさねばならない。そのとき哲学的思考が抱え込む困惑は、日常の風景を反転させ、世界の相貌を一変させる一行を探りあぐねる詩人の困惑と、全く同質のものであるはずである(p.30)」。本書で哲学者の思索をなぞる著者のことば自体もまさにこのような詩的な響きを帯びており、どの文章
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ネタバレ哲学者熊野純彦さんによる資本論入門。本書の趣旨はご本人が終章で述べているように、「価値形態論を形而上学批判として読みなおすところからはじめて、資本の運動を時間と空間の再編過程ととらえるこころみを経て、科学批判としての資本論体系をきわだたせながら、利子生み資本と信用制度のうちに時間のフェティシズムを見さだめる」ことです。本論についてコメントするには自分は力不足ですので、興味深かったことを二点挙げたいと思います。
一つ目は、マルクスと環境問題についてです。熊野さんは、「資本制と自然とのあいだに、マルクスは最終的には両立不可能性を見てとっていた可能性」があると述べ、特に「自然そのものの内部に自然的に