あらすじ
明治初年にフィロソフィーという考え方が移入されて以降、日本哲学にはいくつものドラマが生まれた。例えば漱石や鴎外のように、文学と混淆していた黎明期、西田幾多郎が『善の研究』で日本中の青年を魅了し、田邊元や和辻哲郎が西洋の哲学者と切り結びつつ独自に思想を花ひらかせた頃、西田とはまったく異なる文体で大森荘蔵や廣松渉が哲学を語り始めた戦後…。本書によってはじめて、近代日本哲学の沃野が一望される。
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Posted by ブクログ
前半は西田幾多郎に始まる日本哲学の系譜をまとめたもので,軽く確認するには良い。
後半は代表的な著書の紹介で,各テーマからピックアップしている。
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twitterのまとめですいません。
明治以降、フィロソフィーという考え方が移入されて以降の日本人による「哲学する」ことの営みを一望する、コンパクトながら本格的な一冊。副題「近代100年の20篇」とある通り、明治から昭和までの20編の論文をたよりに思索を概観した好著。
第一部は、「近代日本哲学の展望」として、移入の経緯から咀嚼への過程を概観、第二部は、「ことばへの視線」、「身体性と共同性」、「具体性への思考へ」、「社会性の構造へ」、「哲学史への視点」という5つの問題群で20の詳論を人に即して紹介しています。
興味深いのはその冒頭。フィロソフィーが日本に紹介されるのは明治期。前史以前として「キリシタン時代」の「西洋」受容が紹介されています(江戸期は思想であって哲学ではないの割愛、幕末の胎動、則ち、国定学問としての儒学への挑戦は言及あります)。
「この国の十六世紀に、すでにひとつの出会いがあった。キリスト教かを介して持ちこまれた西洋哲学との接触」(9頁)。宗教受容のなかで、いわゆる(西洋)哲学の受容もあったという指摘です。→神崎繁「魂(アニマ)への態度』岩波書店、2008年が言及。
天草でラテン語から翻訳された『講義要綱』には、アリストテレスの『デ・マニア』におけるそこら哲学者の解釈が紹介され、概念の音写はポルトガル語経由だが「精緻をきわめた哲学的思考の一切片がふれられている」ことは間違いない。
思えば、キリシタン研究は明治期のキリスト教再渡来後、考古学的文物の保存を含む歴史学的考究からはじまった。90年代以降、キリスト教の文脈をとっぱらい、「キリシタン」という一つの宗教という広い枠組みで捉え直そうというアプローチの始まった。しかし宗教の受容とはトータルな文化の受容。
本論からずれますが、五百年近く前のキリスト教受容を、宗教の受容としてみるだけでなく、考え方を日本人がどう受けとめてきたのか、キリシタンの歴史をはばひろく、そして重箱の底をつつくようにみてもいいのではないか。そんなヒントをもらった気がします。
先行研究はあるのでしょうが明代末の中国におけるキリスト教、西洋文化の受容は、日本と比べると量的に桁違い。この辺りも宗教受容だけでなく、「概念」受容を追跡すると面白いかも。返す刀を振れば、西洋啓蒙思想への中国思想の影響も豊かになるのかな、などと。私は中国語だめなのでアレですが(涙
因みに廣松渉「人間存在の共同性の存在構造」は、お弟子さんになる熊野先生の筆。廣松氏はマルクス界隈で名高いですが、僕の中では『「近代の超克」論』 (講談社学術文庫)の廣松さん! 第一部の副題は「京都学派を中心にして」だから大きな宿題だ
Posted by ブクログ
日本の哲学者のカタログ本て以外と少ないと思う。先の大戦前後に活躍していて、公職追放・獄死・転向とそれぞれの生き様をたどってみた。原発国難における現代知識人の役割をトレースする上でも参考になる
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
明治初年にフィロソフィーという考え方が移入されて以降、日本哲学にはいくつものドラマが生まれた。
例えば漱石や鴎外のように、文学と混淆していた黎明期、西田幾多郎が『善の研究』で日本中の青年を魅了し、田邊元や和辻哲郎が西洋の哲学者と切り結びつつ独自に思想を花ひらかせた頃、西田とはまったく異なる文体で大森荘蔵や廣松渉が哲学を語り始めた戦後…。
本書によってはじめて、近代日本哲学の沃野が一望される。
[ 目次 ]
第1部 近代日本哲学の展望―「京都学派」を中心にして(前史―西田幾多郎まで;学派―下村寅太郎まで;転回―マルクスの衝撃;終焉―田中美知太郎へ)
第2部 近代日本哲学の名著―五つの問題群を中心にして(ことばへの視線;身体性と共同性;具体性の思考へ;社会性の構造へ;哲学史への視点)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
西田幾多郎や和辻哲郎、大森荘蔵や廣松渉といった、近現代における日本の代表的な哲学者20人をとりあげ、彼らの思想についてコンパクトに解説している本です。
第1部は熊野純彦の「近代日本哲学の展望」という、近現代の日本哲学の通史的な解説が置かれています。第2部は、それぞれの哲学者たちの果たした仕事の意義を端的に示す論文一編を選び出し、それについての解説がなされています。
京都学派の哲学だけでなく、大森荘蔵や廣松渉、市川浩や坂部恵といった戦後に活躍した哲学者たちもとりあげ、日本の哲学の大きな流れを描き出しているところが本書の特徴といえるように思います。