熊野純彦のレビュー一覧

  • 精神現象学 上

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     古典哲学を解説本でなく直接原訳を読もうと思い立ち、デカルト、カントの次に選んだのがこのヘーゲル。カントの認識論を読んで大陸合理論に興味を持ったのが理由の一つだが、調べてみるとどうやらヘーゲルは哲学研究者の間では素人が迂闊に手を出してはなら哲学者の最たるものとされているらしい。普通はもっと他の哲学者に親しんでから手を出すべきもののようだが、しかしそんな遠回りをしていては僕のような門外漢の遅読者はいつまで経ってもヘーゲルに辿り着かずじまいだろう。だから、順序なんか関係ない、理解できなければそれまで、という軽い気持ちで読み始めた。僕は学徒ではないのだし。もちろん徒手空拳で挑む愚を避けるべく、事前に

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    2022年01月03日
  • 西洋哲学史 近代から現代へ

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    上巻に続きテクスト自体は難解だったが,各哲学者の思想については噛み砕いて説明してあると思う。

    特に後半について,例えばウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」にほとんど触れていないなど,哲学者の思想の展開よりは存在論など特定のテーマからの記述が目立つ。しかし,哲学それ自体の流れや,各哲学者のスタンスなどは読み取ることができ,網羅的な理解と読者(自分自身)の関心の特定に優れた一冊だと思う。

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    2021年11月03日
  • 西洋哲学史 古代から中世へ

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    初学者向けにしては難解なテクスト。同時に重厚さも備わっている。

    アリストテレス以降は非常に読みやすく感じたが,アリストテレスの提示した論理学的知見が現代に浸透していること,また近代哲学が極めてアリストテレスの影響を濃く受けていることが理由かもしれない。
    トマスの解説部などは,原文を読まないと理解が追いつかないような側面もある。

    とは言え,原典のテクストにも当たりながら,西洋哲学の軌跡が端的にまとめられており,なるほど名著と言えるだろう。

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    2021年10月11日
  • 西洋哲学史 古代から中世へ

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    うむ、入門書にしては難しい!笑

    ただ根気強く読んでいくと輪郭くらいは見えてくる。「ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ」という言葉の意味もよく分かる。プラトンだけではなく、アリストテレスも全編にわたって顔を出してくる。

    個人的な本書の立ち位置としては哲学史の輪郭を把握して個々の哲学者にアプローチしようと思う。その後はまた本書に帰るかも知れない。
    哲学はマクロ→ミクロ→マクロの勉強でいこうかな。

    余談だが、アウグスティヌスの『告白』は高校生の頃から存在は知っているが初めて読もうと思わせてくれた。

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    2020年08月07日
  • 西洋哲学史 古代から中世へ

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    大学で哲学かじったつもりだったけど近代以降が中心だったから、ここに出てくるなんちゃらティウスみたいなひとたちがことごとく初耳だった。

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    2020年03月22日
  • 西洋哲学史 近代から現代へ

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    上下巻を合わせて久しぶりに体系だった哲学史を読んだ。ただし著者も書いているとおり、限りある紙数から著者の重要だと思われるポイントだけに絞って書いているので、全哲学的思想を網羅しているわけではなく、一部分の切り出しなので完全な理解は到底無理。また、哲学者同志の人間関係に関する記述が頻出したり、後世哲学者による評価が出てきたりと、重要なのかどうかわからないようなトリビア的な記述が出てきて少々無駄なような気がする。ただし、なんとなく古代からの哲学の流れを知るためには良い本だと思う。ヘーゲルが何を言っているのかがは全くわからないということがよく分かっただけでも収穫。著者の「ヘーゲルはおそらく間違ってい

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    2018年05月26日
  • 西洋哲学史 古代から中世へ

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    院試の対策をするにあたって、全体の流れをつかむのに使用した。専門書というわけでもないので、哲学史をおおまかに知りたいという人にとっては十分だろうと思う。詳しめに知りたいという人にとってはさすがに足りない。哲学者ごとの専門書か、古代なら古代、中世なら中世で詳しく論じられているものを読むべきだろう。内容は薄いわりに非常によくまとまっているのだが、レトリックに酔った部分が散見されるのでマイナス1点。

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    2017年02月01日
  • 廣松渉哲学論集

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     廣松渉は大森荘蔵と並んで戦後日本の二大哲学者。
     本書は廣松哲学の入門用として熊野純彦が編んだ。廣松の主要論文が6篇載っている。彼はマルクス主義者だったが、これらが書かれた頃になると廣松哲学と呼べるほどの独自の哲学を論じている。量子力学や相対性理論もその哲学に取り入れている。だが、数式は少ない。それでも物理の素養もあることをうかがわせる。ちなみに、彼の文体は難しい漢字の訓読みが結構出てくる。これで読み手に負荷をかける。それ以上に内容が抽象化されている。一読しただけでは理解できない。もちろん、理解できる部分はある。だが、その論文全体の真意を理解するには並大抵のことではない。ただ、本書を読んでい

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    2016年11月18日
  • 西洋哲学史 近代から現代へ

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    本書は西洋哲学史を体系的に説明するものではなく、西洋哲学史の基本的な知識を持つ人を対象にしてより一歩踏み込んだところについて書いたものである。そういう意味では、少しわかりづらい面は正直あるが、より一歩踏み込んだ考察は、それはそれで勉強になるし面白いので、読んで損はないと思う。
    本書と前編を通じで、物事を哲学的に考えるということと、哲学的に考えることの重要性が何となくではあるか多少は理解できたつもりである。社会変容の多い現代社会においては、一つ一つの物事を多角的に捉え評価することは重要であると思うので、このような哲学的思考はより意味を為してくると思う。

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    2016年09月29日
  • レヴィナス入門

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    「存在」「主体」「身体」「糧」「世界」「他者」「女性」等々のキーワードを、レヴィナスの思想の展開をたどりながら、説明していく。彼の思想を捉えるための手がかりが得られるように思うが、一読しただけでは、それもなかなか難しい、というのが正直なところ。

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    2015年08月12日
  • レヴィナス入門

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    レヴィナスの思想について、判りやすくゆっくりと解説した入門書。
    中身はしっかり詰まっているので新書だからといっても読むのに時間はかかるが、先に読んだ物よりも判りやすい印象を受けた。先に読んだせいかもしれないが、年譜と思想を交互に読んでいくせいか。

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    2013年04月24日
  • 現代哲学の名著 20世紀の20冊

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    『近代哲学の名著』、『日本哲学小史』で3部作をなす1冊で、5つのテーマに分け、現代思想の読むべき名著のブックガイドという同じ構成。「哲学的なテクストを読むこと自体が、ひとつの哲学的ないとなみである」。初学者にお勧め。

    熊野先生の通史は、岩波新書の『西洋哲学史--古代から中世へ』、『西洋哲学史--近代から現代へ』2冊を、中公3部作とあわせるといいと思います。しかし、この10年ぐらいで、レヴィナスとカントの訳業、和辻哲郎をはじめ日本哲学の再検討といい、その多芸・多彩な仕事ぶりに驚きです。

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    2012年05月31日
  • 日本哲学小史 近代100年の20篇

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    twitterのまとめですいません。

    明治以降、フィロソフィーという考え方が移入されて以降の日本人による「哲学する」ことの営みを一望する、コンパクトながら本格的な一冊。副題「近代100年の20篇」とある通り、明治から昭和までの20編の論文をたよりに思索を概観した好著。

    第一部は、「近代日本哲学の展望」として、移入の経緯から咀嚼への過程を概観、第二部は、「ことばへの視線」、「身体性と共同性」、「具体性への思考へ」、「社会性の構造へ」、「哲学史への視点」という5つの問題群で20の詳論を人に即して紹介しています。
    興味深いのはその冒頭。フィロソフィーが日本に紹介されるのは明治期。前史以前として「

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    2012年05月24日
  • 西洋哲学史 古代から中世へ

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    哲学の黎明たるミレトス学派から、後期スコラ哲学に至るまでの思考の歴史をまとめた哲学史。「哲学とは哲学史であるとはいえないかもしれませんけれども、哲学史は確実に哲学そのものです」という著者の言葉が実感できる簡潔にして重厚な内容。

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    2011年12月18日
  • 西洋哲学史 近代から現代へ

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    デカルトに始まる近現代西洋哲学を一書にまとめた高水準の哲学史の著作。デカルト、カント、ヘーゲルといった哲学の大御所を取り上げるのはもちろんだが、ヘルダーや新カント学派など高校の倫理などではさほど取り上げられない哲学者・思想家も取り上げられており、実に読み応えのある通史本に仕上がっている。

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    2011年12月17日
  • 日本哲学小史 近代100年の20篇

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    日本の哲学者のカタログ本て以外と少ないと思う。先の大戦前後に活躍していて、公職追放・獄死・転向とそれぞれの生き様をたどってみた。原発国難における現代知識人の役割をトレースする上でも参考になる

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    2011年06月12日
  • 西洋哲学史 近代から現代へ

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    [ 内容 ]
    はたして「神は死んだ」のか。
    言葉はどこまで「経験」を語りうるか―デカルト以降の西洋哲学は、思考の可能性と限界とをみつめながら、自然科学の発展や世界史的状況と交錯しつつ展開してゆく。
    前著『西洋哲学史古代から中世へ』につづき、哲学者が残した原テクストから思考の流れをときほぐしてゆく、新鮮な哲学史入門。

    [ 目次 ]
    自己の根底へ―無限な神の観念は、有限な「私」を超えている デカルト
    近代形而上学―存在するすべてのものは、神のうちに存在する スアレス、マールブランシュ、スピノザ
    経験論の形成―経験にこそ、いっさいの知の基礎がある ロック
    モナド論の夢―すべての述語は、主語のうちに

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    2011年04月24日
  • 日本哲学小史 近代100年の20篇

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    [ 内容 ]
    明治初年にフィロソフィーという考え方が移入されて以降、日本哲学にはいくつものドラマが生まれた。
    例えば漱石や鴎外のように、文学と混淆していた黎明期、西田幾多郎が『善の研究』で日本中の青年を魅了し、田邊元や和辻哲郎が西洋の哲学者と切り結びつつ独自に思想を花ひらかせた頃、西田とはまったく異なる文体で大森荘蔵や廣松渉が哲学を語り始めた戦後…。
    本書によってはじめて、近代日本哲学の沃野が一望される。

    [ 目次 ]
    第1部 近代日本哲学の展望―「京都学派」を中心にして(前史―西田幾多郎まで;学派―下村寅太郎まで;転回―マルクスの衝撃;終焉―田中美知太郎へ)
    第2部 近代日本哲学の名著―五

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    2011年04月05日
  • レヴィナス入門

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    [ 内容 ]
    フッサールとハイデガーに学びながらも、ユダヤの伝統を継承し、独特な他者論を展開した哲学者エマニュエル・レヴィナス。
    自己の収容所体験を通して、ハイデガーのいう「寛大で措しみない存在」などは、こうしたおそるべき現実の前では無化されてしまう、と批判した。
    人間は本当はどれだけわずかなものによって生きていけるのか、死や苦しみにまつわる切なさ、やりきれなさへの感受性が、じつは世界と生を結びつけているのではないか、といった現代における精神的課題を、レヴィナスに寄り添いながら考えていく、初の入門書。

    [ 目次 ]
    個人的な経験から―ばくぜんと感じた悲しみ
    第1部 原型じぶん自身を振りほどく

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    2014年10月30日
  • 西洋哲学史 古代から中世へ

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    『西洋哲学史』(熊野純彦、2006年、岩波新書)

    本書は、自然哲学の祖とされるタレスの時代の哲学者から、トマス・アクィナスからデカルトの時代の神学論争までをその範囲とし、15章にわたり各章20ページ弱でそれぞれ解説している。

    古代から中世までとは言え、新書ですべての範囲を理解できるかといわれたら、それは難解なのではないか。まして、たとえばソクラテスの思想を本書一冊でカバーできるはずがない。

    しかし、本書は西洋哲学の歴史を辿ることが目的。古代の哲学者がどのように人生、真理、世界、神について考え、発展させてきたのかという思想の流れを追うには良書と言えるのではないか。

    (2010年5月22日

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    2011年04月18日