吉本隆明のレビュー一覧
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吉本隆明 「カールマルクス」
解説 中沢新一
マルクス論〜著者は「資本論」でなく「経済学・哲学手稿」「ユダヤ人問題に寄せて」「ヘーゲル法哲学批判」から思想体系を作り直している感じ
マルクスの思想特性
*現実的な自然哲学
*幻想的な宗教、国家、法
*象徴的な市民社会の構造、経済カテゴリー
マルクス思想を ギリシア自然哲学の原子説からフォイエルバッハ「キリスト教の本質」に展開し、人間と自然の疎外関係という概念を用いて、ヘーゲル批判やユダヤ人問題と絡めて体系化しようとしているのだが
ヘーゲル批判やユダヤ人問題を絡めると テーマが広がりすぎて わかりにくい。「経済学・哲学手稿」だけに絞っ -
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本作品は、戦後の日本思想界の巨人といわれる吉本隆明(1924~2012年)が1968年に発表した代表作で、当時の教条主義化したマルクス・レーニン主義からの脱却を求めていた全共闘世代に熱狂して読まれたと言われる思想書である。
私はこれまで、吉本の著書は、『真贋』、『家族のゆくえ』、『読書の方法』、『悪人正機』(糸井重里との共著)などのソフトなものしか読んでこなかったのだが、本作品についてはいつか読まねばと思い、改訂新版出版のたびに買い替えて来たており、今般やっと、NHK番組「100分de名著」を参考にして一通り読むことができた。(といっても、重要部分の飛ばし読みであるが)
本作品は全11篇から成 -
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吉本隆明 「 西行 論 」
著者の西行像は、予想より辛辣な面もあるが、西行が生きていた時代の宗教観や政治背景に合わせた新しい西行像が見えてきた。
著者の西行像が 白洲正子氏や山折哲雄氏の西行像より 多くの示唆を与えてくれた理由
*西行の出家動機や何首かの和歌の集合からアプローチしている
*西行の歌の「心」と「世」の言葉の使い方に着目している
*平安末期から鎌倉初期の院政権争いや時代的思想としての出家など 歴史的背景を手がかりとしている
*世捨て人としての西行を讃美していない
歌人としての西行像
*宗教的な歌人→山折哲雄氏と近い
*自然に感応する自然歌人→白洲正子氏と近い
*歴史意識をも -
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この人の本は以前から読みたかったのだが本気の本は内容がまったく理解できそうになさそうで敬遠していたが、書店で見つけたこの本はとてもライトで書かれた時代も10年くらい前のものでしっかりと頭に入ってくるので購入。
著者の考え方がはっきりとしているのですべてに共感できることではないが
・あらゆるものに利と毒がある。
・いい作家とは俺にしか分からないだろうと多くの読者に思わせること。
・良好な人間関係とは言いにくいことをはっきりと言える関係。
・以前は作者の文学的成熟と社会的成熟の時間経過を世の中が待ってくれていたが現在はそれを持ってくれない。
だから大家が生まれにくくなる。
・戦時中など社会全体が悪 -
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梶原しげる『ひっかかる日本語』(新潮新書)を買うつもりで書店に行って、たまたま見つけた一冊。どっちにするか少し迷ってこちらを買った。
内容は、吉本隆明の芸術論・文学論をやさしく説いたもの。日本語の使い方云々という内容ではなかったので、そもそも『ひっかかる日本語』と比較する本ではなかった。
のっけから「源氏物語は退屈」と切って取ったかと思えば、漱石『三四郎』は「言語表現として優れている箇所がモチーフとずれている」と指摘したり、若手詩人をかなり否定的に論評したり。縦横無尽な展開は切れ味鋭い。神話と歌謡について語った後半は正直興味を持てなかったが、「日本人は代々曖昧な言葉を法律用語として使ってきた」 -
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ネタバレ「ならずもの国家」と、きつい物言いのタイトルだけど、返す刀で日本をも斬る。
アメリカの言いなりの日本。
国が決めたことには無条件で従う国民性。
根っこは同じだ。
”国家なんて自国の国益を優先的にかんがえるものです。したがってアメリカが自国の国益に反してまで日本を守るはずがない。”
同盟を結んでいるからと言って、全て言いなりになるのではなく、自国の意見をきちんと表明するべきと言う。
当然だよね。それが独立国家というものだ。
日本の景気対策に必要なのは、大企業優遇ではなく、日本の経済を下支えしている中小企業が生き残れるような政策を立てるべき。
中小企業に勤めている人の家族が、安心して消費にお金 -
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ひきこもるのは悪いことじゃない。人付き合いが苦手な人は、無理に他人に合わせて軽く生きていくよりも、引きこもって自分の時間をしっかりと持つべきと説く。無理にひきこもった人を社会に出そうとしたり、ひきこもった人たちだけを集めて社会を作ろうとするのは逆効果。引きこもって内面が醸成された人は、いつかそのうちその人なりの方法で社会と関われるようになる。
一人の時間を持つことの大切さを説く著者の意見には大いに共感します。その場限りの安心を得るために、無理な人付き合いで、貴重な自分の時間を埋めることはないと思いますし。会社勤めをしていると、なかなかそうはいかないのが難しいところではありますが、そういう気持 -
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吉本隆明氏(2012年逝去)の晩年にインタビューに基づいて書籍化され(2007年)、2011年に文庫化された。
私は全共闘に影響を与えた時代の吉本氏は知らないが、氏が晩年に記した著作やインタビューから、多くの示唆を与えてもらったように思う。
本書では、1.善悪二元論の限界、2.批評眼について、3.本物と偽物、4.生き方は顔に出る、5.才能とコンプレックス、6.今の見方、未来の見方、が取り上げられているが、特に印象に残ったセンテンスは以下である。
◆善悪二元論の限界~「明るいからよくて、暗いからだめだという善悪二元論で考えると、物事の本質を見誤る恐れがあります。無意識のうちに答が決まっている価値 -
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吉本隆明氏が15歳の男女を前に語った言葉の数々。
「行きがけの道」を歩きながら、道中見える景色や生まれる感情を噛みしめながら生きていくのが人生なんだろう。
正解なんて最後までわからないし、存在すらしないものだと思うと、諦めのような気持ちが生まれるけど、だからこそ人生には意味があるんだろうなというような救いのようなものを感じた。
沢山の気づきがあったので以下は備忘録として。
<話言葉>が相手に何かを伝えるための道具だとしたら、<書き言葉>は自分の心の中に降りていくための道具だと言っていい (P13)
人は誰でも、誰にもいわない言葉を持っている。
沈黙も、言葉なんです。
沈黙に対する想像力が -
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ネタバレマルクスの挫折と転回 -2008.08.06記
何と、何を?
われはあやまたずつきさす
血に染む剣を汝のたましひにつきさす、
神は芸術を知らず、神は芸術を尚ばず、
芸術は地獄の塵の中より頭に上り、
遂に頭脳は狂ひ、心は乱れる、
われはそれを悪魔より授けられた。
悪魔はわがために拍子をとり、譜をしるした、
われは物苦しく死の進行曲を奏でねばならぬ、
われは暗く、われは明るく奏でねばならぬ、
遂に心が糸と弓とをもて破るまで。
――マルクス初期詩篇「楽人」
じつは、2.3日前に吉本隆明の「カール.マルクス」光文社文庫-を読んでいたのだが、これまでついぞ知らなかったマルクス自身の私的な傷ましい事 -
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大学生の頃、めずらしく女の子に誘われて一緒にお茶を飲んだことがあった。浪人中に伸ばした髪が、何となく他の良家の子女たちとちがって見えたのか、同じゼミでもなければ、あまり話しかけられることはなかったのに、どうして俺が、と思いながら、学校の前にある喫茶店について行くと、突然「○○君は吉本についてどう思う?」と訊かれた。政治に関心のある学生なら誰でも吉本くらいは読んでいた時代だ。長髪が運動家に見えたのだろうか。
当時は吉本よりも、彼の論争相手である、埴谷雄高や花田清輝の観念やレトリックの世界の方に引かれていて、吉本のいい読者ではなかった気がする。今となっては、論争相手は鬼籍に入り、独り吉本だけが、