吉本隆明のレビュー一覧

  • 真贋

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    円熟した語りの中に、内省に内省を重ね、磨きに磨かれた思想が織り込まれているのが分かりました。

    こういう境地、憧れます。

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    2013年01月21日
  • 真贋

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    全ページおもしろい!
    読みやすく作者の実感に満ちている。
    自分の頭と足で考えようと思える全うな一冊だと感じた。

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    2013年01月12日
  • 定本 言語にとって美とはなにかI

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    「文学の作品や、そのほかの言葉で表現された文章や音声による語りは、一口にいえば指示表出と自己表出で織り出された織物だと言っていい」。

    『言語にとって美とはなにか』という命題は、
    長年、詩や文学に対峙してきた吉本が、
    これらを原理として上昇させようとした意気込みとある種の確信を表している。

    彼は、差異性をことさら強調するのではなく、
    共通性にこそ着目する。
    それは信じて疑わない。

    この態度は、しばしば断定的に現われるため、
    違和感を感じるかもしれないが、配慮してもなお余りある成果が在る。

    この理論に対する正当な批判は存在するのか?

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    2012年09月14日
  • 15歳の寺子屋 ひとり

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    ふわふわと考えていたいろいろに、言葉というかたちでヒントや答えを落としてくれた、宝物みたいな本だった。

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    2012年08月15日
  • マチウ書試論 転向論

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    今年3月にお亡くなりになられた「戦後思想界の巨人」吉本隆明の初期の文芸評論と詩を所収。
    あまり詩を読まない自分にとって冒頭の詩からがつーんときた。特に「エリアンの手記と詩」は失恋の痛手からの逃避と再生の物語で、詩からほとばしる熱い情念に当てられました。ラストはミリカの視点で熱い想いを柔らかく包み込むような終焉。
    「マチウ書試論」は吉本初期の代表作とのこと。新約聖書のマタイ伝(マチウ書)がその比較分析からユダヤ教教義の稚拙な剽窃とした上で、弾圧され続けた原始キリスト教がユダヤ教への憎悪のパトスと反逆の倫理で対峙しなければならなかった「関係の絶対性」論理を導き出している。その鋭く容赦のない切り口と

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    2012年05月21日
  • 15歳の寺子屋 ひとり

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    同年代の子とあの吉本隆明が語りあったんだよ。おもしろいに決まってる。『蜜柑』『春と修羅』『三四郎』『それから』に興味をもつ。恋愛について大人と話すなんてすごい経験をしたもんだ。同年代でも、みんな考えていて悩んでいて、ひとりひとりすごいところがあって変なところもある。〈一般的な質問に対して、とても特殊な返答〉と村松くんは書くがそのとおり。吉本さんは自分で考えてこられたことしか言わないだろう。〈「経験」の濃度がちがう〉これは伊藤くん。何よりも大切なのは、経験したらこっそり考えること。吉本さんはそれをしてきた。

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    2011年10月24日
  • マチウ書試論 転向論

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    この本の内容を理解したとは言えませんが、間違いなく私に大きな影響を与えた本でしたので、登録しました。『マチウ書試論』。原始キリスト教とユダヤ教という二つの異なる宗教は、共に聖書を原典として出発した宗教です。しかし、この二つの宗教は激しく対立していました。何故出発点が同じ宗教なのに対立が起きてしまうのか。吉本さんは「関係の絶対性」というモチーフをもとに「試論」を展開していきます。思想や人間関係がもつ党派性について考えを深めることができた一冊。

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    2010年09月19日
  • マチウ書試論 転向論

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    吉本隆明は1924年11月25日生まれですから、今年85歳になる、マルクスからCMまでその意味を解き明かす、知の巨人、と形容されることが多い詩人・文芸評論家・思想家。

    彼が他を寄せつけないずば抜けた特異性とは、ひとつは大学教授などの務めに就かず常に在野にあって何事にも束縛されない位置にあること、ふたつ目は構造主義だの現象学などという世界中の主義主張に呪縛されないで、まったく独自の自前の思想を構築しようという意欲に燃えていること、みっつ目は、昨年話題になったCD・DVDで存分に聞けますが、難解な晦渋に満ちた自らの思想を、孤高然とするのではなく常に私たちに向けて平易に語りかける努力を惜しまないこ

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    2011年09月15日
  • マチウ書試論 転向論

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    現代思想2008年8月増刊号は『総特集・吉本隆明 肯定の思想』です。現代思想を買ったからには、ちゃんと吉本を読まんば!と思って買いました。1200円と文庫の割には高価ですが、これはおすすめできます!「マチウ書試論」、「鮎川信夫論」、「戦後詩人論」、「芥川竜之介の死」、「芸術的抵抗と挫折」、「転向論」などなど、たっぷり吉本隆明を味わえます。

    「人間は、狡猾に秩序をぬってあるきながら、革命思想を信ずることもできるし、貧困と不合理な立法をまもることを強いられながら、革命思想を嫌悪することも出来る。自由な意志は選択するからだ。しかし、人間の情況を決定するのは関係の絶対性だけである。ぼくたちは、この矛

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    2009年10月07日
  • 悲劇の解読

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    これはすごい面白いですね。作品が何を言おうとしているかから作者の考えを取りだそうとするのではなくて、作品から作者が意識しないでいる肉づきの考えを取り出そうとしている作家論かなと思います。もともと作家論というのはそういうものなんでしょうか。

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    2009年10月04日
  • 柳田国男論・丸山真男論

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    吉本隆明は柳田國男論も丸山真男論も冒頭に「序論」を書き、そこで両者への「おおまか」な彼の印象と彼理解を彼独特の表現を駆使して開示する。

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    2025年01月23日
  • 高村光太郎

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    軽い気持ちで読み出した。
    いろいろな読書を経て、今の脳みそならどのくらいわかるようになったか測るつもりであった。
    快適に読めた、鮮やかな表現に心がおどった。
    しかし、感想を纏めようとして何度かなぞるうちに吉本の高村光太郎に立ち向かう迫力と文章の意味の深さに改めて愕然とする。字面を追うだけでは感受できない詩人吉本隆明の存在をかけた真剣な論考であった。自分の受け止めきれない能力と精神の弱さを暴かれた。

    十代で文学や詩に目覚めた吉本は工業高校時代に今氏塾で高村光太郎の詩を教えられ強く共感し、以来戦争を挟んで四十代までの、光太郎の詩や手紙・文書を渉猟し考えたことをまとめたものである。詩人吉本隆明にと

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    2024年06月02日
  • ひきこもれ~ひとりの時間をもつということ

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    20年以上前にこういうことを言ってくれる人がいたのかと驚いた。
    ひきこもりや不登校、社会に馴染めない人など読んだら楽になる本。

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    2024年05月04日
  • 開店休業

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    ハルノさんの容赦ない、そして愛に満ちた文章が胸を打つ。平松洋子さんの解説もいつにもましてキレッキレ。隆明さんの文章は、病気と老いを抱えている時期とあって、少し息切れしている感じだった(それもまたファンにとっては新たな一面という意味でたまらないのでは)。

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    2024年02月13日
  • 真贋

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    共同幻想論などとは異なり読みやすいが、さらりと書いた文章でも意味を理解するには、かなりの筋肉(読書量)が必要かと思う。3割くらい解釈できたかなぁ。

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    2023年03月11日
  • 改訂新版 共同幻想論

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     難しいようで難しくない、不思議な本だった。というのも、吉本がここで書いていることは、たいていみんながどこかしらで体感していることであるからだ。だから文章が難しくても、ノリでなんとなく理解できてしまう。
     吉本は幻想を「自己幻想」「対幻想」「共同幻想論」の3つに分けて考えるが、議論の出発点は「対幻想」だ。対幻想とは異性同士の一対一の関係から生まれる幻想であり、つまり「恋愛」や「家族」のことを指す。なお、ここでは自然的な性関係を意味しておらず、この幻想は親子や兄妹関係においても成立する。
     この「対幻想」がのちに国家を生み出す「共同幻想」へと転化してしまう。それは国家のみならず、宗教的儀式や法律

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    2022年09月29日
  • ひきこもれ~ひとりの時間をもつということ

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     いい話だな、と思った。
     20年前に出された本で、おそらく今よりも「ひきこもり」に対する風当たりは強かったはず。そんな中であえてひきこもりを擁護する吉本はまさに逆張りと言えるのだけれど、その逆張りも時間が経って、自然と頷きながら読めるようになっていた。
     コミュニケーション能力や社会性だけが絶対ではない。自分自身の価値を生むには、また自分だけの言葉を作るには、必ず一人でいる時間が必要。考えてみれば、当たり前の話だ。そして、今の若者たちはなんとなくそれを理解しているように思えるし、実際実践していると思う。
     ただ同時に、この本が出されてから20年経ち、社会に良い変化しかなかった、というわけでは

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    2022年09月26日
  • 真贋

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    著者は自分の言いたいことをこの本で言い切ったのだろうか。そんなことはないだろうなと思った。
    平易な文体だし、語りかけるような口調で終始話が進むから読みやすいのは読みやすい。そして、人間の性格形成は、幼少期までの母親もしくはその代わりとなるような人との関わり方に決定されるという考え方が、もうこれでもかと何回も出てくる。翻って見て自身は良い育ち方ができたのかどうかは恐らく死ぬまでわからないのだけれど、この本で言うような物事は、そして人物は、善と悪だけに限らないし、ある面で善くともある面で毒がまわってるという考え方を、できる限りしていきたいし、最後の最後までとことん追い込むみたいな真似はしないでいら

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    2022年08月29日
  • 定本 言語にとって美とはなにかI

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    ー 原始人がはじめて現実の対象を有節音声としてえらびとったとき、発したその音声は意識に反作用をおよぼした。それは一連の意識の波紋をえがいたにちがいない。こういった一連の意識の波紋は、また一連の音声波紋として表出せられたかもしれない。これを、不完全な言語の段階での文だとかんがえれば、わたしたちは、カッシラアにならって、言語の世界でいちばん簡単なのは、常識的にかんがえるような単語ではなく、むしろ文だとおもわれる。

    しかし、こういう仮定にそれほど固執するわけではない。原始人たちは、海を眼のまえにはじめてみて〈海(う)〉といっただけかもしれたない。ただこう仮定したのは、一連の音声波一紋の表出が完結す

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    2022年03月19日
  • 15歳の寺子屋 ひとり

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    糸井さんとの共著である「悪人正機」と重複する内容もありますが、その中でも『才能』に関する吉本さんのお話は、やはり特に心に残りました。

    例として挙がった、若い頃から才気溢れていた芥川龍之介と、若い頃は鈍いヤツと言われていた田山花袋が、晩年の作品で比べればどっちも同じようにいいようになってきた、という話には「続けること」の本当の意味を教えられた気がします。

    「やってるうちに自分の姿が自分なりに見えてきて、鋭いのは鋭いなりに、鈍いのは鈍いなりに、なんともいえないその人だけの値打ちが出てくるものなんです。それこそがその人の〈才能〉であり、その人の〈宿命〉と呼べるものなんですよ。」

    まだ何者でもな

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    2022年01月09日