吉本隆明のレビュー一覧

  • ひきこもれ~ひとりの時間をもつということ

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    引っ込み思案の気質を持て余すとき、病的なものと区別するためには
    「大勢の中の孤独」に安堵するといいと作者は言う。
     その例として、銭湯と神社のお祭りをあげる。
     これは、すごく面白いと思う。

     僕は、自分ならば、そこに秋葉原と映画館と場外馬券売り場を加えたい。大勢の中の孤独って心地いいと、改めて納得する。
     
     キャスターのように、オピニオンリーダーだったり、生き方そのものが「善」で成り立っていそうな人が志す仕事ってあるよなあ。
     反対に、ひねくれてたり、劣等感の塊だったり、不器用だったり、そのような気質は本人はどうすることも出来ず、育てられた環境で規定されると吉本さんはいうけど、実際のとこ

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    2012年03月25日
  • 15歳の寺子屋 ひとり

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    中学生向けです。中学生の問いに吉本さんが答えられています。
    ガラスの40代の(笑)おれにはとてもいい内容でした。
    才能じゃなく手をどれだけ動かしたかなんだとか、とても説得力のある内容でした。

    吉本さんの言葉は好きですが、本はおれには難しくなかなか読めませんでしたが、これはすらっと読めました。
    中学生向けとはいえ大人に話すのと同じスタンスと思います。分かりやすく話されているとは思いますが。
    参加している中学生達は皆すごくしっかりしている感じもあるので、普通の大人が読んでもしっくりと納得できる内容と思います。

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    2012年03月18日
  • ひきこもれ~ひとりの時間をもつということ

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    ひきこもりを善悪の軸で考えてはいけない。引っ込み思案は駄目で、とにかく社交的な方が良いという価値観が潜在的にあるから、ひきこもりは良くないとされているが、一人きりで、分断されないひとまとまりの時間を持つということは、価値のあることなのだ。

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    2012年03月18日
  • 15歳の寺子屋 ひとり

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    ネタバレ

    16日に亡くなられた吉本隆明さんの本です。
    児童(中、高校生)向けの哲学書です。
    この本の言葉は優しくて分かりやすく、そして子どもにも大人にも届く言葉で語りかけてくる。
    生き方、考え方、人生、恋愛。それらについて語っています。私は思いついた様に時折この本を読みます。
    目に見える事、瞬発力が重視されがちな昨今にこの本を読むと「そうでなくても良いのでは?」と思えたりします。
    "人は誰でも、誰にもいわない言葉を持ってる。
    沈黙も言葉なんです。
    沈黙に対する想像力が身についたら、本当の意味で立派な大人になるきっかけをちゃんと持ってるといっていい" ー本文よりー

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    2012年03月17日
  • 今に生きる親鸞

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    親鸞ってすごい。
    だけど、親鸞のいう他力本願って究極すぎて、自力本願の小乗仏教の修行よりもむずかしいのではないだろうか?

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    2012年03月11日
  • マチウ書試論 転向論

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     日本における戦後思想の巨人とも言われる吉本隆明(最近はむしろ娘さんの吉本ばななの方が有名だけど)。彼の立ち位置を簡単に言うとするなら、「お前ら、戦争体験というものをきちんと考えているのか」「知識人とかって観念的な事を適当に言ってるけど、本当に現実を見た上で言ってるのか」という感じか。とはいえ、詩的かつ難解な語彙を用いたその文章は読み解くだけで一苦労。『共同幻想論』とか本当に皆ちゃんと読んでいたのか?
     で、1958年に発表された転向論なのだけど、ここで主張されているのは、戦前におけるマルクス主義からの「転向」というものは権力からの弾圧・強制だけによるものではなく、むしろ彼らが日本の社会構造の

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    2011年12月17日
  • 定本 言語にとって美とはなにかII

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     1に続いて、前半は各論。詩や物語や劇などが(それこそ宗教の儀式の前の発生の所から)どういった構造で生まれて、発展してきたかを確実に説明してくれる。
     自分がこういう本を読まないせいもあるかも知れないけれど、言語や芸術についてここまでとてもとても考えられない、極みまで明らかにしてしまっているので全く鵜呑みにしそうで怖い。と言うかしている。
     共同幻想論でもそうだけれど、最初から最後まで、基本的には同じ事を言っている(ある一つの考えに達した人が書いているのだから当たり前だけれど)意味、価値、内容、形式、表現のあらゆる事は自己表出と指示表出、その構成や広がりである事を示してしまうと、ヘーゲルもサル

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    2011年11月15日
  • 定本 言語にとって美とはなにかI

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    一巻。まずは言語について、え そこからですか…?ってくらいのところ(それこそ原始人が叫んでいた頃から)から、本当に確かか丁寧に丁寧に固めながら、言葉の意味とは、価値とは、音韻とは、比喩とは、正に冒険と言う感じに根本から問い直して、答えを出してくれる。凄くエキサイティングだし説得力があった。
    後半は、イデオロギーや歴史に依らない、表出の変遷だけを追った表出史。主に文学体、話体(自己表出、指示表出)と言う切り口で、これもまた丁寧に言語表現の歴史を追っている。

    全篇通して異常な密度。

    二巻が楽しみ。

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    2011年11月09日
  • 15歳の寺子屋 ひとり

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    この本を購入した理由は2つ。

    ①糸井重里さんが吉本さんをリスペクトしているばっかりに、
    どんな考え方の人なんだろう?と興味をもった

    ②思春期真っ盛りの妹にプレゼントするのにステキな本を探していた

    こどもたちから相談された悩みに、
    吉本節でこたえていく問答集。



    ①の理由がわかり、
    そして②にも最適だということがわかりました。

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    2011年06月15日
  • 15歳の寺子屋 ひとり

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    2011年1発目。
    「15歳の寺小屋」シリーズのうちの1冊ということで、
    32歳の私が読むのはどうかとも思いましたが、
    いやはや深い話でした。

    才能なんて関係ない。
    「手」を動かせ。
    「手」を動かせばなりたいものになれる。
    「手」を動かさなきゃだめだ。

    まったくもってそのとおりだと思います。
    本気で何かになりたいと思ったら、
    眺めているだけじゃダメなんだ。

    「戦後思想界の巨人」と呼ばれている(らしい)
    隆明氏がまるで「おじいちゃん」のように思えました。

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    2011年01月03日
  • 定本 言語にとって美とはなにかI

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    作家や文学研究に携わる人でなくとも、読書好きな人なら「文学とはなんだろう」という疑問を抱くことがあるだろう。しかしその疑問も私たち一般読者は、作品を読み重ねていくうちに独自の文学観なるものが形成され漠然した答えが導き出されることで解消されてゆくように思う。それは大抵、自分の「好み」がはっきりすることと、名著と評価された作品(一般的な価値基準)を取り入れることである種の(独自の)価値観が形成されるからではないだろうか。
    この著書は、研究対象としての文学の捉え方といった堅苦ものではなく(この著書の学術的な価値を批判するわけではない)、文芸作品の読み方の一つの例として私たちに貢献してくれる本だと思う

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    2019年01月16日
  • カール・マルクス

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    彼は千年に一度の偉大な巨匠だが。現実の世界ではきわめてありふれた生活人である。そうそう。ではなんでそう思うかってこと。ボク等は生まれたときから何らかの条件つきで生涯それらがつきまとう。フムフム。なるほど。だから結果としてボク等が何々であったということは意味がない。意味があるのは何々であった何々になった。ということの根底に横たわっていた普遍性をどれだけ自覚的にとりだしたかである。って。はい。理解。水と空気はいくら使用しても拡大しても調査しても無料(タダ)である。自然で言えばそういうのがシゼンに横たわっている。ではボクが何ものであるかの普遍性を自覚的にどう取り出すかを試みようとしたり。して。春が近

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    2011年09月15日
  • 吉本隆明初期詩集

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    あまりに有名すぎる著者であるが、初期の詩作(思索?)に触れる人は、今や少ないかも知れない。若き孤独なる精神の、「世界」との葛藤を巡る、研ぎ澄まされた「言葉」は、ある種の精神を抱える現代の若者にも充分に訴えるものであろう。

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    2009年10月04日
  • 吉本隆明初期詩集

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    「ちいさな群への挨拶」を収めている詩集を探しましてこれを選びました。私が持っているのはこれではないけど。難解だけど若い頃読んでおいてよかったなと思うもの。わかんなくてもわかんないからこそ何度も何度も口に出してみる。詩はそうやって味わうのが好きです。是非!

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    2009年10月04日
  • 定本 言語にとって美とはなにかI

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    扱いに困る本です(褒めてない)。
    扱いに困るのは言語表現を「指示表出」「自己表出」の二軸により分析しようとする、この抽象化のモデルがあまりにも胡乱で無理があり、傾向としては漱石『文学論』やセジウィック『男同士の絆』、サイード『オリエンタリズム』みたいに、かなり無理のある見込みなさそうな抽象化にそれと整合的なパターンだけ、あるいはそれと整合的に恣意的に解釈して適当にパッチワークしてでっち上げた分析という印象が極めて強いです。
    ただ吉本さんは詩人として、趣味人としてはそれなりに見識と批評眼はある人で、本著も文章読本的なものとして眺める分には面白いです。

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    2025年02月17日
  • 改訂新版 共同幻想論

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     「共同幻想」とは、人間が個体としてではなく、なんらかの共同性としてこの世界と関係する観念のあり方を指す、と著者は定義する。それをふまえたうえで、国家とは何か、また自分と国家はどのような関係を持っているのかを考えていく。そこで出た答えとして、国家とはいわゆる共同の幻想で誕生したものだと結論づける。

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    2024年03月04日
  • ひきこもれ~ひとりの時間をもつということ

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    ひきこもれ、
    というと社会に出てる人らに対しても
    ひきこもりを推奨しているようだが、
    そうではなく、ひきこもってもいいんだよ
    的なニュアンスだと思った。

    病気に関してはプロに任せるべきといいながら、
    自論を述べるあたりは少し矛盾を感じたし、
    ひきこもりの話から
    いつのまにか、死や戦争、老いの話まで
    だいぶ離れていった。

    私は単純に吉本さんがどう考えているかを
    読みたかったのでそれでも満足できたが、
    ひきこもりを研究してる人には
    少し畑違いな気もした。

    吉本さんの時代のひきこもりと
    現代のひきこもりでは
    少し意味や、もちろん価値観も違うんだろうなと思いながら読みました。

    個人的なあまり納

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    2023年09月03日
  • 13歳は二度あるか~「現在を生きる自分」を考える

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    13歳は二度あるか 吉本隆明 大和書房

    タイトルに惹かれて手に取ってみた
    2005年小泉内閣直後に書かれた
    子ども向けの啓発本
    第一章新聞を読む時代をつかむ
    第二章社会と関わる自分を生きる
    第三章宗教とはなにか法律や国家は
    どう成立したのか
    第四章犯罪と死について考えてみる
    第五章戦争というもの自分との距離

    一章は良いとして
    二章では社会的な個人と個人としての個人にケジメをつけろと諭すが
    現状における社会優先の現実を甘く捉えていないかと危惧する
    三章の宗教と国家についても机上の話を
    教えて込もうとしている狭さを感じ
    この本を中学生に推薦したいとは思えない

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    2023年07月15日
  • 「すべてを引き受ける」という思想

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    言いたいことは分かるような、分からないような。
    茂木さんのあとがきの切り取り方が心に残った。感情は個人に収まりきれない宇宙を理解するために生まれたもの、と言う茂木さんに、分からなくもないが僕はその考え方は好きではない、とはっきり伝える吉本さん。それに胸を打たれる茂木さん。
    清々しいし、仰る内容にも納得しかない。うんうん。

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    2023年06月22日
  • 真贋

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    ネタバレ

    北海道文学館の展示鑑賞後、何か一冊と思い、書店で平積みされてたのを購入。
    文学であってもどんな職業であっても毒と利があり、どういう毒が自分に回っているか自覚的にならねばいけないということは職業人生の中盤にさしかかり始め、本を読むことを趣味とする私には深く刺さった。
    一方で人格形成を思春期までの母子関係に還元するなどやや??と思うこともある。
    内容丸のみの読み方よりも、自分の価値観や時代性を踏まえ考えながら読むことに適した一冊。

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    2022年10月31日