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Posted by ブクログ
この人の「共同幻想論」は昔読んだ。「言語にとって美とはなにか」というこの本もたぶんタイトルは何度も見たことがあるはずだ。しかし、今まで買ってもいなかったのは、この人の本の難しさを知っていたからだろう。今回これを読むことになったのは、古本屋に何か読む本を買おうとして入り、絶対何かは買って帰ると思って本を探したが、結局この本しか買う気にならなかったという事情による。しかも、この本は「Ⅰ」と「Ⅱ」に分かれており、その古本屋は揃いでしか売らないような値付けがされてあったので、「Ⅰ」「Ⅱ」とも買うことになった。
やはり難しい。何を言っているのかわからないのだ。すべてがわからないというのでもないのだが、かなりの部分がわからない。それでも読み進めていると、微かに仄白くわかったような感じになることもある。何しろ、言語とは何かという言語学の問いとも言えるところから始まる。わかりにくい言葉も山のように出てくる。「表出」という言葉が全体のキーワードであることは何となくわかってくる。今、「文庫版まえがき」を読み返すと、「表現された言葉は指示表出と自己表出の織物だ」と書いてある。「Ⅰ」を通読し終えた今、ようやくその言葉が少し意味があるように思えてくる。
引用は膨大だ。日本の近代以降の小説だけでなく、万葉集の歌なども多くまな板の上にのせられている。マルクス、フロイトなども登場する。「登場する」と書いたのは、それらの人の名前が登場する文脈を正確に理解できていないからだ。何度も読み返したり、引用されている小説を読んだりするのも面白いだろうなと思いつつ、人生にそんな暇があるだろうかとも一瞬思ってしまう。
Posted by ブクログ
ー 原始人がはじめて現実の対象を有節音声としてえらびとったとき、発したその音声は意識に反作用をおよぼした。それは一連の意識の波紋をえがいたにちがいない。こういった一連の意識の波紋は、また一連の音声波紋として表出せられたかもしれない。これを、不完全な言語の段階での文だとかんがえれば、わたしたちは、カッシラアにならって、言語の世界でいちばん簡単なのは、常識的にかんがえるような単語ではなく、むしろ文だとおもわれる。
しかし、こういう仮定にそれほど固執するわけではない。原始人たちは、海を眼のまえにはじめてみて〈海(う)〉といっただけかもしれたない。ただこう仮定したのは、一連の音声波一紋の表出が完結するためには、有節音声は、よりおおく意識の自己表出としてのアクセントで発せられるものと、指示表出として発せられるもののどちらかに傾かざるをえないことをいいたかったからだ。もちろん、言語の本質はこのふたつの面をもっているから、いずれのばあいも他を含んであらわれるといえる。 ー
想像していたより分かりやすくて面白い。
最近、ビジネス書とか地政学とかが多かったので、違うジャンルを読みたく、かなり遠めのジャンルに行きました。
とは言え、佐藤優繋がりで、マルクス主義文学論とかも出てくるので無縁ではない。
言語にとって美とはなにかを問うことは、言語と行動の問題、言語が人々に与える感情の問題、言語と戦争の問題、言語と世界内存在の問題を問うことに繋がってくる。
Posted by ブクログ
作家や文学研究に携わる人でなくとも、読書好きな人なら「文学とはなんだろう」という疑問を抱くことがあるだろう。しかしその疑問も私たち一般読者は、作品を読み重ねていくうちに独自の文学観なるものが形成され漠然した答えが導き出されることで解消されてゆくように思う。それは大抵、自分の「好み」がはっきりすることと、名著と評価された作品(一般的な価値基準)を取り入れることである種の(独自の)価値観が形成されるからではないだろうか。
この著書は、研究対象としての文学の捉え方といった堅苦ものではなく(この著書の学術的な価値を批判するわけではない)、文芸作品の読み方の一つの例として私たちに貢献してくれる本だと思う。詩人であり、批評家である吉本隆明の文学観を順をおって知ることは、前述した私達が作り上げてきた価値観を明確なものとする手助けになるだろうと思う。
Posted by ブクログ
扱いに困る本です(褒めてない)。
扱いに困るのは言語表現を「指示表出」「自己表出」の二軸により分析しようとする、この抽象化のモデルがあまりにも胡乱で無理があり、傾向としては漱石『文学論』やセジウィック『男同士の絆』、サイード『オリエンタリズム』みたいに、かなり無理のある見込みなさそうな抽象化にそれと整合的なパターンだけ、あるいはそれと整合的に恣意的に解釈して適当にパッチワークしてでっち上げた分析という印象が極めて強いです。
ただ吉本さんは詩人として、趣味人としてはそれなりに見識と批評眼はある人で、本著も文章読本的なものとして眺める分には面白いです。
Posted by ブクログ
画期的な言語論。
言語をウィットゲンシュタインのように本質的な起源から構想したというよりは言語を意味論的なものとし、表現形式としての単語を解体し、それを文法表現から自己表出(最も自己表出性を帯びたのは感嘆詞)と指示表出(前略 名詞)に分けている。また、彼の美意識によって日本文学から引用しながら作られた表出史なるものは文語体と話体で区別し、前者を自己表出性のある文学と区分し、それぞれ表出史に出てくる文学を解説する試みであるが、これはスゴい。しかし、一読しただけなので、私はまだ、半分も理解できてないだろう。
これは素晴らしい言語論だ。
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