ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり

ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり

ビジネス・実用
2,200円 (税込)

11pt

ファシズム全体主義はなぜ生まれたか。経済のために生き、経済のために死ぬという経済至上主義からの脱却を説く本書は、時の大英帝国宰相ウィンストン・チャーチルの激賞を得た。本書で浮き彫りにした社会問題の多くは、世紀をまたいで今なお、未解決のままである。ドラッカー29歳のときの処女作であり、偉大なる思想の原点となった歴史的名著。

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ドラッカー名著集 の一覧

1~15巻配信中 1巻へ 最新刊へ
1~15件目 / 15件
  • ドラッカー名著集1 経営者の条件
    1,980円 (税込)
    経営者に絶大な人気を誇る不朽の名著。成果をあげるためにいかなる行動をとるべきか。すべての知識労働者に必須の書。
  • ドラッカー名著集2 現代の経営[上]
    2,420円 (税込)
    組織に働く者の使命と役割、その実際的な仕事の方法を具体的に著し、ドラッカーがマネジメントの父と仰がれることになった現代マネジメントの金字塔。
  • ドラッカー名著集3 現代の経営[下]
    2,420円 (税込)
    経営における不変の真理を鋭く指摘し、読む者に行動を促す永遠のロングセラー。企業の社会的責任を半世紀前に論じた経営の基本書でもある。
  • ドラッカー名著集4 非営利組織の経営
    2,420円 (税込)
    病院、学校、公益法人などの非営利組織をどうマネジメントするか。ミッションとリーダーシップ、マーケティング、イノベーション、資金源開拓、非営利組織の成果、ボランティアと理事会、自己開発。非営利組織にこそマネジメントの本質があり、すべての組織に示唆を与える一冊。
  • ドラッカー名著集5 イノベーションと企業家精神
    2,640円 (税込)
    イノベーションと企業家精神を生み出すための原理と方法論を具体的に解説。組織に働く人たちが、イノベーションを実践するための、方針と意思決定、機会とリスク、組織と戦略、人の配置と報酬に関して、社会と企業の歴史的考察に基づいて体系化した、ドラッカーの代表作。
  • ドラッカー名著集6 創造する経営者
    2,420円 (税込)
    事業戦略が「発明」された歴史的著作。「今日の事業の成果」「潜在的な機会の発見」「明日のための新たな事業の開拓」を解く。さらには、「社会的存在としての企業とは何か」「プロフィットは外にある」等、経営の本質を説き、『経営者の条件』と並び、経営実践の書として経営者に長らく支持されてきたバイブル。ドラッカー名著集第6弾。
  • ドラッカー名著集7 断絶の時代
    3,080円 (税込)
    継続の時代の終焉――20世紀半ば、社会と文明における根源的な変化が起こりつつあった。情報化の進展、グローバル経済の出現、知識社会の到来、多元化、そして政府の無力化。本書で予期された変化は、確かに訪れた。そして今なお、余震は続いている。変化の本質を知らなければ、未来を見誤ってしまうだろう。
  • ドラッカー名著集8 ポスト資本主義社会
    2,200円 (税込)
    知識社会への転換期にある社会・政治・経済の変化の様相とその意味を明らかにする。1993年初版刊行でありながら、ドラッカーが本書で指摘したことは、まさに今この日本で起きていることにほかならない。今日を見るためだけでなく明日を見るための必読の書、明日のために今日何をすべきかを知るためにも必読の書である。
  • ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり
    2,200円 (税込)
    ファシズム全体主義はなぜ生まれたか。経済のために生き、経済のために死ぬという経済至上主義からの脱却を説く本書は、時の大英帝国宰相ウィンストン・チャーチルの激賞を得た。本書で浮き彫りにした社会問題の多くは、世紀をまたいで今なお、未解決のままである。ドラッカー29歳のときの処女作であり、偉大なる思想の原点となった歴史的名著。
  • ドラッカー名著集10 産業人の未来
    2,640円 (税込)
    前著作『「経済人」の終わり』のあとを受け、ファシズム敗退後の戦後平和経済の建設のあり方を明らかにしたドラッカー2作目の野心作。来るべき産業社会が、19世紀や20世紀初頭の社会とはその構造、課題、価値観、機会において異なることを予見した。そして、その産業社会が戦後世界において経済発展と社会的偉業の数々をもたらすであろうことを見通した。

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ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    ドラッカー名著集 9
    「経済人」の終わり
    著:ピーター・F・ドラッカー
    訳:上田 惇生
    出版社:ダイヤモンド社

    本書はドラッカーの処女作である

    まえがきに、1939年01月 ニューヨークのブロンクスで執筆とある
    1939年09月、ナチスドイツは、ポーランドに電撃侵攻し、大戦がはじまる
    まさに、第二次世界大戦の直前に書かれた問題作である

    「政治の書」である

    プロジョア資本主義も、マルクス社会主義も、もはや、理想の政治形態ではなく、大衆は絶望していた
    そこに、矛盾にみちた、ファシズム全体主義が、ドイツと、イタリアにあらわれたとき、もはや、民主主義も、キリスト教もが、それを阻止しえなかった

    ドイツ、イタリアの人々は、今日を食うために、人々は、矛盾と知りつつ、ファシズム全体主義を選んだ

    「経済人」とは何か、19世紀から続く、ブルジョア資本主義を具現化したものと理解しました
    「経済人」は、ファシズム全体主義を止めるべき力はなく、あたらしい、政治形態を待つ、望むというのが本書の流れである

    仕事を奪われ、故郷を追われた、ドラッカーは、その原因たるナチスドイツのファシズム全体主義を欺瞞のあばき、対抗すべく著わしたものが本書だと考えました。

    気になったのは、以下です

    ・ファシズム全体主義の症状は3つ
     ①積極的な信条をもたず、他の信条を攻撃し、排斥し、否定する
     ②政治と社会の基盤としての権力を否定する
     ③積極的な信条にかわるものとして、ファシズムの約束を信じるためではなく、まさにそれを信じないがゆえに行われる

    ・ファシズム全体主義は、権力は自らを正当化する

    ・ファシズム全体主義の症状として、さらに重要な意味を持つものが、大衆心理への訴求である

    ・大衆は、ヒットラーの公約の1つひとつがいかに矛盾することを知っていた

    ・大衆の絶望こそが鍵である。絶望した大衆は不可能を可能とする魔術師にすがる

    ・1929年の大恐慌によるアメリカの崩壊は、ブルジョア資本主義を信頼するヨーロッパ人にとってはアメリカ人以上に大きな衝撃だった

    ・キリスト教とともに、自由と平等はヨーロッパの2つの基本概念である

    ・「経済人」に代わるべきものとして、人間についての新しい概念が何一つ用意されていないことが現代の特徴である

    ・最も重要な事実は、キリスト教が行った政治、社会活動のほとんどが、大衆にとって単なる反動あるいは意味のない喪にしか見えなかったことだ

    ・大衆のものとして根付いていなかった民主主義の実体が崩壊した
     実体が崩壊した以上、民主主義の信条、象徴、制度もまた、大衆の側からのいかなる精神的、心理的抵抗も受けることなく、またたく間に崩壊した

    ・ファシスト市民軍、突撃隊、親衛隊、ヒットラー青年団、各種婦人団体などの準軍事組織もまた、すべて非経済的目的のためのものである

    ・ファシズム全体主義国における軍備拡張はいかなる経済価値も生むはずもない
     軍拡は経済的には消費にすぎない

    ・西欧の民主主義諸国は、ブルジョア資本主義、マルクス社会主義、あるいは両者の折衷によっては、ファシズム全体主義を打ち破ることはできないことを認識すべきである
     それを打ち破るのは、自由と平等の社会についての非経済的な新しい概念の確立しかない

    目次

    まえがき

    第1章 反ファシズム陣営の幻想
    第2章 大衆の絶望
    第3章 魔物たちの再来
    第4章 キリスト教の失敗
    第5章 ファシズム全体主義の奇跡│ドイツとイタリア
    第6章 ファシズム全体主義の脱経済社会
    第7章 奇跡か蜃気楼か
    第8章 未来

    付録
     付録1◆一九三九年初版へのチャーチルによる書評
     付録2◆一九三九年初版への序文
     付録3◆一九六九年版へのまえがき
     付録4◆一九九五年版へのまえがき
     付録5◆年表─あの頃の歴史(第一次世界大戦から第二次世界大戦へ)

    訳者あとがき
    訳注
    人名索引

    ISBN:9784478001202
    判型:4-6
    ページ数:324ページ
    定価:2000円(本体)
    2007年11月15日第1刷発行

    0
    2025年12月24日

    Posted by ブクログ

    "ドラッカーの処女作。

    経営の話しでなくて、全体主義が、社会的、経済的、政治的になぜ出てきたかという話しと、今後の見通しとして、ナチスはソ連と手を結ぶだろうと、だれもが電撃的な不可侵条約に驚く前に、それがほとんど必然であることの予言。

    1939年、ドラッカー29才のときの作品ということだが、この分析の重厚さ、鋭さ、先を見通す力はとんでもないものがある。それだけでも驚きなのだが、これは1933年、ナチスが政権をとったとき、つまり23才から書き始められたということ。

    ドラッカーって、そこまで好きではないので、こういう戦前の作品は、マニアが読むものだと思っていた。ところが、これはドラッカーが書いたということを外して、全体主義の分析として古典のレベルとなっている。

    ドラッカーのスタートがここにあるのかと思うと、ちょっとドラッカーの読み方が変るかもですね。

    ほんとすごいよ。

    0
    2017年04月30日

    Posted by ブクログ

    邦題、『「経済人」の終わり』は、原題 ”The End of Economic Man” の直訳。
    「経済人」とは、人間を「自らの経済的利益に従って行動するもの」とする、アダム・スミスに由来する規定。
    資本主義も社会主義も、人間の本性をそのように捉えた上に成り立っており、ここでいう「経済人」の終わりとは、資本主義及び社会主義の破綻を意味している。
    本書が世に出たのは1939年4月。ドラッカー29歳の処女作で、ドイツのポーランド侵攻(同年9月)の直前、まさに第二次大戦前夜に出版された。
    この時代、急速に勢力を伸ばしてきたファシズムを分析し、いち早く自由主義の立場から反論を投げかけている。

    なぜ大衆がファシズムを受け入れたのかという社会背景を探っていく中で、まず資本主義とそれを克服すべく現れた社会主義が、立ち行かなくなった理由を分析する。
    「ブルジョア資本主義とマルクス社会主義の信条と秩序は、いずれも個人による経済的自由を実現すれば自由と平等が自動的にもたらされるという目論みが誤っていたために失敗した。(P.43)」
    資本主義は1929年の大恐慌もあり、失業などの深刻な問題を解決できずにいた。またマルクス主義も階級のない社会を実現できず、理論的にも破綻していた。

    そんな閉塞した状況のなか、ファシズム全体主義はそれらに替わるものとして登場した。
    経済政策の上では、脱経済至上主義社会。まがいなりにも完全雇用を目指し、軍国主義のための軍事的自足を図る。そのめたに軍拡を続け、それゆえ次々と敵を作り上げた。
    また、社会政策では、組織を自己目的化することによって、社会の維持を図ろうとした。こちらも、ブルジョア資本主義と自由主義という敵を設定し、その象徴としてユダヤ人を迫害した。

    今から考えると、大衆はなぜこのようなファシズムを選択したのか理解に苦しむが、それほど経済的、社会的な困窮が激しく、先の見えない状況に陥っていた。
    結果的には、ファシズム全体主義側の敗北で終わったが、「経済人」に替わる人間観、価値観はいまだないままで、ファシズムに突き進んだ根本原因は未解決のままである。

    「経済人」の社会が崩壊したあとに現れる新しい社会の条件は、経済的な平等が実現され、社会の中心には別の価値観が据えられなければならない。
    本書が出版されてから70年余り、まだまだ「経済人」が中心の社会から変わっていないことを実感する。

    0
    2012年01月02日

    Posted by ブクログ

    読書の目的
    ①ドラッカー思想の原点を知る。
    ②この著書で行った未来予測(「ナチスはユダヤ人を迫害する」、「ヒトラーはスターリンと条約を結ぶ」)の手法を学ぶ。

    言わずと知れたドラッカーの処女作。
    ドラッカーは、序文の中で本作を「20世紀前半における最大の社会現象としての全体主義の興隆を理解するための最初の試み」としています。

    ・「経済人」とは何か。
    自らの経済的動機(経済的地位、報酬、権利)に従って行動し、そのための方法を知っているという概念上の人間。自由な経済活動をあらゆる目的の手段として見るブルジョア資本主義社会とマルクス社会主義社会の基盤となるもの。

    ・何故、全体主義は発生したか。
    ヨーロッパの基本的価値観は、正統な権力の下で人間を自由と平等の存在と見ることだった。

    18世紀後半の産業革命以降、ブルジョア資本主義は経済発展をもたらしたが、格差と疎外を生んだ。
    これに対する秩序として期待されたマルクス社会主義も、特権階級による大衆支配を生んだ。ブルジョア資本主義とマルクス社会主義は激しく争いながらも、その本質は「経済人」の概念を基礎とする「経済至上主義」であり、ヨーロッパの価値観である自由と平等をもたらさなかった。そして「経済至上主義」に代わる秩序が現れない中、第一次世界大戦による破壊と大恐慌による大量失業が発生し、旧秩序は完全に崩れ去った。

    国家社会主義という名の全体主義は、このような状況下で発生した。その本質は「経済至上主義」を否定した「脱」経済至上主義である。当時、経済至上主義に代わる概念は、この国家社会主義という名の全体主義だけであった。イギリスやフランス等、歴史的に国民が自らの手で民主主義を勝ち取った国々は、全体主義に進むことを踏み止まった。しかし、民主主義を国家統一の手段としていた国、つまりドイツとイタリアが耐え切れずに全体主義に走った。日本も同様であった。

    ・新たな社会秩序の出現
     国家社会主義という名の全体主義は、あくまで「脱」経済至上主義である。これは“「経済至上主義」ではない”と言っているに過ぎない。ヨーロッパ伝統である自由と平等を基礎とした新しい秩序を一切提示はしていない。したがって、旧い秩序に代わる新しい秩序を作ることが出来れば、全体主義を克服することができるとドラッカーは本作を締め括っている。

    【感想】
    正直な感想は、「疲れた」です。内容は非常に難解。理解できるまで何度も読み直しが必要でした。
    上記で掲げた目的意識がなければ、途中で挫折したでしょう。
    ドラッカーは冒頭で、本書を「政治の書」としています。私は、政治書であると共に、歴史書、思想書、哲学書でもあると感じました。

    一方で、本作を読み進めるうち、ドラッカーの問題意識が「正統な社会の下で人間は位置付けと役割を必要としている」という点を理解することが出来ました。この考えがドラッカーの思想の原点と言えるのではないかと考えます。

    この「経済人の終わり」では、旧秩序に代わる新たな秩序の提起には至っておらず、その具体的な提起は、次回作の「産業人の未来」で改めて行われるようです。

    【参考文献】ドラッカー入門(上田惇生著 ダイヤモンド社)

    0
    2010年10月05日

    Posted by ブクログ

    [ 内容 ]


    [ 目次 ]
    第1章 反ファシズム陣営の幻想
    第2章 大衆の絶望
    第3章 魔物たちの再来
    第4章 キリスト教の失敗
    第5章 ファシズム全体主義の奇跡|ドイツとイタリア
    第6章 ファシズム全体主義の脱経済社会
    第7章 奇跡か蜃気楼か
    第8章 未来

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

    0
    2010年06月26日

    Posted by ブクログ

    ドラッカーの処女作。「経済人」とは経済至上主義のこと。ファシズム全体主義の台頭は、ともに経済至上主義であったブルジョワ資本主義とマルクス社会主義が破綻して(=経済人の終わり)、何も希望を見出せない絶望と混沌のなかにあった第1次大戦後のヨーロッパでこそ可能だったのだとし、ドイツの国民性とか、資本主義の最後のあがきといった一般的な分析を真っ向から否定している。

    議論は簡潔明快で、読んでいて小気味よい。チャーチルも信じなかった独ソの連携や、ユダヤ人問題の「最終解決」は究極のところまでいくとの大胆な予見が正解だったことは、歴史が示すとおりだ。

    経済至上主義の終わりだから、ファシズム全体主義が目指すのは脱経済社会(第6章)となるのであり、しかしそこでは何も前向きなものを示せないし、社会の要素は相互に矛盾しているため、独裁者を神のように頼り、あり得ない奇跡を信じるしかない社会となる(第7章)。ただ、大衆は他に代替手段がないから、ファシズムにのめり込んでいくしかないだけであり、脱経済社会における何らかの前向きな価値を示すことができたならば、一気にファシズム全体主義は蜃気楼と化して消滅するだろうと分析している。

    29歳にして、当時のヨーロッパ社会の病の本質を鋭く見抜くことができ、しかもそれを世界に向けて訴えるだけの知力と筆力があったことに驚きを禁じ得ない。

    0
    2010年05月23日

    Posted by ブクログ

    1939年において全体主義を論じたドラッカーの処女作。当時のコンテキストに関して正確な知識がないのが残念なのですが、それでもある種の説得力に満ち溢れています。

    第二次世界大戦本格化直前における過去と未来の分析を、ヒトラーやスターリンなどの個人の資質に依存せず、政治システム/経済システムから欧州情勢を分析しているところが、この本の特性なのでしょう。

    本書刊行直後に現実となった、独ソの接近(不可侵条約締結等)を予測したことで有名です。
    「あらゆる観点から、独ソ同盟はほとんど不可避のことに思われる。...この同盟は必ず結ばれる。おそらく来年、1940年には結ばれる。...両国が急速に接近していくことは間違いない。」
    後に首相となる前のチャーチルでさえ、書評で激賞しながらも、独ソ関係の部分には「若干自らの論理にとらわれている」部分だと指摘するほど可能性の低いシナリオであったということからみても、突出した分析力の証に思えます。

    他にも、今となれば当然のようにも思われますが、マルクス主義社会への容赦ない否定も特筆されるべきです。
    またナチズムにおけるユダヤ人の「最終解決」に限界がないことも正しく指摘されています。

    面白いか面白くないかは、この時代の欧州に対する興味の有無によるかと思いますが、少なくとも当時29歳にしてすごいな、ということは感じ取れるはずです。

    0
    2009年12月26日

    Posted by ブクログ

     この本は、マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカーの処女作である。経営の本で知られている一方で、この本は執筆当時のドイツ・イタリアにおけるファシズムの考察を記したものである。

     論旨を述べると、ファシズム全体主義はブルジョア資本主義、マルクス全体主義の主張が正しくないと大衆が感じて絶望し、他に信じるものがなくなったために崇拝している。ただ、主な信条として何か新しい道を示しているわけではなく、ただの否定である。キリスト教会もその代役を務めることができない。だから、他に信じられるような信条が現れればファシズムを倒すことができる。
     ファシズムが行っている政策は、政治的・社会的な平等を作るために行動しており、一番の被害者となるのは企業家層である。また、ファシズムの経済政策は行き詰まりを見せており、危険は非常に高い。
     さらに、ファシズムがユダヤ人を迫害するのは、ユダヤ人がけがらわしいとかそういった理由ではなく、ユダヤ人がブルジョアの体現だからである。したがって、このままいけばユダヤ人の排除(=虐殺か)に至るであろう。

    といったところか。

     当時のドイツに住んでいた一現地人としての視点から、ファシズムの本質を書いた名作である。2009年の今で、このような無秩序状態は起こらないだろうが(なぜなら、民主主義も資本主義も根本的な崩壊には至っていないから)、このまま人々の不信が高まっていけば、このようなことが起こるのだろうか?

    0
    2009年12月03日

    Posted by ブクログ

     経営学の父とかマネジメントの創始者とか言われてるけど、この本の内容はファシズム全体主義とブルジョア資本主義とマルクス共産主義に関して。面白いほどにマネジメントとかの話は出てこない。ドラッカーが1939年に書いた論文で、その頃はまだ大量生産の時代だったから知識労働とかの話は出てこないけど、エッセンスを集めました的ビジネス本なんかより、非常に勉強になる。

     どんな社会背景からファシズムが芽生え、なぜイタリアやドイツで国民の支持を集め広まったのか。そのあたりのことが熱を込めて書かれている。ちなみにこれを書いたのはドラッカーが27歳の時、マジかよ

    0
    2012年08月05日

    Posted by ブクログ

    あまりにも有名な本著は、ドラッカー29歳の時の処女作として、そして1933年という宥和政策の時代にファシズム全体主義を喝破した本として知られています。

    その若さで既にして膨大な著作を読み、混沌とした時代に先を見据えたことは驚愕に値します。

    本著を読み終えたウィンストン・チャーチルは真っ先に書評を書き激賞しました。そしてその後首相になったとき真っ先に取り組んだ仕事は、士官学校の卒業生への支給品に本著を入れたことでした。前線に立つ指揮官へ、ファシズム、レイシズム、全体主義が許されざるものだという理論的支柱にしたのです。

    宥和政策の時代、ナチズムはドイツ人の国民性に起因する特殊要因とする説と、マルクス主義者にとっては資本主義最後のあがきとする説の二つが有力でした。

    これに対しドラッカーは、マルクス社会主義が失敗したからこそヨーロッパの大衆を絶望的な熱狂に駆り立てた要因とします。そして背景に「恐慌と戦争という二つの魔物たち」に襲われたことがナチズム隆盛の要因としています。

    さらにファシズムとは、あらゆる主義や権力を否定するだけであるとし、前向きな信条はないとします。大衆が熱狂的に全体主義を支持したのは新規な信仰箇条の性せいはなく、否定そのものであったとします。ファシズム全体主義は否定がその綱領であると。

    一番印象に残ったのは、「大衆の絶望こそが鍵である」という一説です。大衆の絶望こそファシズム全体主義を理解する上での鍵で、旧秩序の崩壊と新秩序の欠落による「純なる絶望」によってファシズムが隆盛したのだとドラッカーは言います。

    今のわが国を覆うのは閉塞感といいますが、言葉を変えれば「絶望」であるといえます。そして新秩序の欠落というのも当てはまります。

    そんな時、「否定」が大衆の熱狂を呼び、そして進む道は何かということをドラッカーは明示しています。

    あまり書くと政治的になるのでここまでとしておき、本著は社会と大衆は何かという視点で読み進めると大変参考になります。

    本著のタイトルは「経済人の終わり」で経済論を内容とするように思えますが、内容は社会学です。蛇足までに。

    以下印象に残った文章。

    ・「国民性とは歴史を説明できない歴史家の言い訳」との箴言。

    ・ヒトラーを支持したものは、下層中流階級、肉体労働者、農民など、当事の社会の不合理性と悪魔性に苦しめられていた層だった。ナチスの資金の四分の三は、一九三〇年以降でさえ農民や失業者が毎週払う党費や、大衆集会への参加費によってまかなわれていた。

    ・ドイツとイタリアという二つのファシズム全体主義国において、その主たる目標としての完全雇用は実現された。かつての失業者のかなりの部分が、経済活動ではなく軍や党で働いているにすぎないとの指摘は、完全雇用政策の成功をいささかも傷つけない。(中略)そのような経済が永続しうるものか破局にいたらざるをえないものかを検討する前に、ファシズム全体主義経済それ自体はインフレ制作ではないことを理解しておく必要がある。諸費を抑えあらゆる種類の内部留保を動員する制作はデフレ政策である。

    ・ナチズムは悪魔の化身、第三帝国によって和解しえない敵としてのユダヤ人抜きには自らを正当化できない。自らを正当化することが必要かつ重要になればなるほど、ファシズム全体主義は新しい悪魔を見つけなければならない。

    0
    2012年06月24日

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