ゲーテの作品一覧
「ゲーテ」の「まんがで読破」「ウィルヘルム・マイスターの修業時代」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
場面は海底から天界まで、更には時代も超越して世界の限界を越えて描きながらも、徹底して人間臭く生きることを語っている。そのスケールの大きさと懐の深さがとても魅力的だった。
悪魔の力を借りながら、戦争にまで手を貸すファウスト。古典に馴染みがない自分にとっては何でも有りな展開に面食らってしまうところもあったが、哲学も政治も幻想も入り混じった詩劇の何たるかを思い知らされた。書きたいことを全部書くのだと、全霊をかけた気概が読んでいて心地よい。
ここまで自由奔放に描けるのは、詩や芸術だけでなく、歴史や科学まで網羅した圧倒的な知識の量があるからだろう。全ての章にインスピレーションがあったのではないか。手塚治虫の『火の鳥』のように人生かけて書いてる物語なので密度が凄い。
注釈もあるが、それでも分からないところは沢山あって、こればっかりはとAIに解説をしてもらって随分と助かった。ギリシア神話などの知識が無いと中々厳しい。知ってると知らないとでは面白さが全然違う。
とはいえ、当時の世界観や神話などは西洋の文化圏なら常識の範囲なので、ほとんど難しい話はしていないというのも凄いところ。
笑いどころはたくさんあるし、なんと言ってもメフィストフェレスが素晴らしいキャラクターなのだ。皮肉が知識人の息抜きになっていることがよく分かるし、世の欺瞞を鮮やかに切っていく悪魔は、正しいことを為す主人公以上に、真実を伝える上で重要な役回りなのだと感心する。
すでに多くの作品に影響を与えているので実証されていることだが、エンターテイメントしたファンタジー作品としても十分楽しめる。
哲学を説教的に語るのではなく、目まぐるしい壮大な世界に翻弄される登場人物の言動にゲーテの思想が垣間見えて、作品をより魅力的にしている。ちいかわの深さに大人がハマるみたいなことか(違うか)。
ゲーテについても調べてたら面白い話が山のように出てくる。ゲーテとフンボルトに親交があったことを知って興奮した。松岡正剛と荒俣宏みたいなものか。天才は惹かれ合うのだなぁ。
注釈にファウストの息子がバイロン卿とあってびっくりした。調べてみるとモデルということらしいが、バイロン卿が若くして亡くなって、その功績を讃える意味もあるらしい。ゲーテと『フランケンシュタイン』のメアリ・シェリーが同時代の人なのだと不思議な感覚になった。因みにナポレオンも同時代。フンボルトもいて、若きダーウィンもいる。どんな時代だ。とても好きな時代。
まだ一回通して読んだだけなので、何度も読んで更なる魅力を発見していきたい。漫画の『風の谷のナウシカ』も読むたびに発見があるのだが、宮崎駿もゲーテが好きらしいので、近しいものがあるように思う。ゲーテの他の作品も読まねば。
Posted by ブクログ
ゲーテの代表作『ファウスト』
一部と二部とありまた分厚いので興味はありながらも読めずにいたが、読んでみると戯曲ということもあってかなり読みやすかった。手塚富雄の訳はヘルダーリンやニーチェなどで読んだことがあったのもあり、岩波でなく中公文庫を選んでみたが、これで正解だったと思う。訳も平易でありながらリズム、格調があってとても良かった。
ファウストは映画も見たことがあったが、やはり内容がかなり違く、またこうした古典は原典を読むのが一番良いと思う。ウェルテルはゲーテ自身の体験や取材によるところが大きいらしく、ノンフィクション的な面白さもあったが、ファウストは極端・突飛な設定など含めて、これぞ物語という感じがする。その観点で見れば、両極端に位置するウェルテルとファウストの両方に触れてみると、ゲーテの言い尽くせぬ才能が感じられる。
中でも、全体としてキリスト教を基調とした作品の雰囲気は、味わい深いと同時に、それが作品全体を彩っているという魅力を感じる。
とくにヒロインのマルガレーテの結末はファウストと対照的である。この少女はファウストの行路における犠牲者で、自分自身嬰児殺しや母殺しという許されぬ罪を犯してしまうが、最後は他人の力によってでなく、自らの信仰心によって救われたのだ。途中まではファウストしか見えていない若い少女という感じだったのが、最後の場面ではファウストも認識しない、一つの独立した精神になっている。「救われたのだ!」という天の声も含めて、この場面は舞台で見たら一番映えそうだった。この少女の存在が二部のファウストでも鍵を握ってくるらしいので、その後のファウストにも注目したい。
また、手塚氏の解説の中で、ゲーテはファウストの中で本筋からずれて遊んでいるところがあるが、それは天才のみに許された所業なのだ、的なことが書いてあった。確かに、ファウストとメフィストの二人以外の場面では、そのように思われるところが多かったが、読んでいるときには気にしないくらいで、その場面その場面に面白さがある。ゲーテの思想的な面白さも詩の中に詰め込まれていて、手塚氏のいうように、それらのうちから箴言として心に残るものも見つけられるだろう。
「ワルプルギスの夜」という題の章もあって、まどマギやんと思いながら楽しんでよめた。だいたい、魔女がどんちゃんお祭り騒ぎできる特別な夜、ぐらいの意味らしいが初めて知った。
二部も大学生が終わるまでに読もうと思う。
Posted by ブクログ
ウェルテルの何が面白かったのか。
ウェルテルは基本太宰のような人間で、非常に弱く、躁鬱である。
しかし単純に日本文学的にはこの小説は捉えられず、日本には見出し難い、ある独特な、ドイツの古典主義的雰囲気とでもいうべきものを感じる。また同年齢の若い女性をある聖母として、ある神聖化されたものとして見出すのもそうした雰囲気に与しているのだろう。(これはどの国でも青春小説の中では普遍的かもしれない。)
日本文学の話をなぜか出してしまったので、逆に共通するところを考えてみると、男女の三角関係というテーマはやはり普遍的なもののように思われる。漱石の『こころ』を代表として、他にも僕の好きな作品では実篤の『友情』など、「三角関係」というのは数百年経っても色褪せないテーマであると思われる。ウェルテルやK、また野島のように、そうした三角関係に入り込んだ者たちは確実に一人消え去るしかないのである。
ウェルテルはその三角関係の中で、去らなければならない者として、彼が(この世から!)去るまでが描かれる。結末に向かうまでの心理描写は書簡形式で、ある友人に宛てられたもので、ウェルテルの手紙の中だけにぶちまけられる赤裸々の心情が人々の心を打つのだろう。(ウェルテルは不安定な人物なので、結末に向かうにつれて、手紙以外でもかなり露出していくのだが。そういうところもなかなか巧みで面白くはある。)ゲーテの実体験である部分も多いらしく、ゲーテ自身、『ウェルテル』は何度も読み返すには耐えられない作品であったらしい。個人的趣味としては、人間の弱々しさばかり出される作品は好きではない。穴にはまり込んでしまった人間がもがき、決して抜け出せないままの話は、そうした作品だけに現れるある種の感動があるのは認めるが、どうももどかしくなる。
だが、結末の方での、ウェルテルに鬼気迫ってくる焦燥感は惹きつけられる。読んでいる時、それはほどんど彼の発狂の兆しに感じ、完全に『ウェルテル』の世界に入っていた。こうした人間の限界状況を描く悲劇はドイツの、ゲーテの古典主義をも思わせる。それは現代にも同じく色褪せない普遍的な「悲劇」であると感じた。