横溝正史の作品一覧
「横溝正史」の「金田一耕助ファイル」「金田一耕助ファイル 全22冊合本版」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「横溝正史」の「金田一耕助ファイル」「金田一耕助ファイル 全22冊合本版」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
大阪薬学専門学校卒。1948年『本陣殺人事件』により第1回日本探偵作家クラブ賞(後の日本推理作家協会賞)長編賞を受賞。『八つ墓村』、『犬神家の一族』、『悪魔の手毬唄』、『病院坂の首縊りの家』など数えきれないほど多くの作品を手がける。『犬神家の一族』をはじめとする多くの作品が映画化され評判となった。
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Posted by ブクログ
映画「八つ墓村」が上映されると知り、本棚の横溝正史覧を確認し、本書を読み直した。消費税3%の時代に購入していた作品である。1977年に渥美清が金田一耕助に分した八墓村では、野村芳太郎監督や橋本忍の脚本で、濃茶の尼や村人が「八つ墓明神のたたり」として、オカルト映画的脚色で、世間を震撼させた。さて、原作はどうか?毛利に負われた尼子一族の言い伝えを縦軸に、実際に起きた岡山県津山の30人殺し(映画「丑三つ村」)をモチーフにした横軸で紡がれる連続殺人事件である。が、しかし、八つ墓村の地下を縦横に走る鍾乳洞や洞窟の探検と主人公を中心とした恋慕と家族愛が織りなす、夢のある冒険・恋愛活劇が私には強く印象に残っている。鬼首村(おにこべむら)で起きた「よる歩く」や「悪魔の手まり歌」の事件を解決して、保養のために寄った八つ墓村の西屋に滞在中の金田一耕助が、東屋を巡る連続殺人事件で、事件を解決へと導くが本書での出番は極めて少ない。村人に追われながらも、自然洞窟に眠る尼子一族の残した財宝を探検して発見する主人公辰也と典子の純愛。著者の横溝正史は、戦時中に岡山に疎開して、意にそぐわない作品を書かされることに嫌気がさし、戦後に疎開中に知った事件や怨恨をテーマに戦後の推理小説と金田一耕助を一躍有名にする。私見になるが、横溝正史の各作品に低通するのは、アジア・太平洋戦争に対する静かな怒りと内省、戦争による親族たちの血肉を争う憎悪と苛烈(かれつ)なトラウマと葛藤を現しているように思う。横溝作品を読み返したい意欲が増すが、一方で積読も増える葛藤に苛(さいな)まれる。
Posted by ブクログ
(表紙が違うんですが多分中身は同じなのでこれで登録)
市川崑監督をはじめとする映画はいくつか見ていて粗筋も犯人も知っているんだけど、金田一耕助(以下、耕ちゃん)ものは原作だとやっぱり良いので読んでいっている。
今回はなんと言っても『本陣殺人事件』で探偵デビューした耕ちゃんが、その後戦争の真っ只中で「人生でいちばん大事な時期を空白で過ごし」たあとというのがなんかぐっと来ました。25、6歳だった耕ちゃんは30半ばのくしゃくしゃの頭に和装にソフト帽子の中年に。物語中盤で『本陣殺人事件』で親しくなった岡山県警磯川警部と再会してお互い感じ入る場面があるんですがこのあたりはやっぱり戦争中は考えることもなかった相手が無事で相変わらず活躍しているって知ったときの感慨は私たちが想像するより深いんだろうなあ。
※放送禁止用語が使われていますが重要な鍵のためそのまま記載しています。
その金田一の耕ちゃんは瀬戸内海の小島「獄門島」に向かっている。表向きは戦友鬼頭千万太(以下チマタ)の戦死を伝えること。しかし彼には裏の目的があった。なんとしても生きて帰ることを望んでいたチマタが無念の病死に際しての遺言「俺が死んだら三人の妹たちが殺される…俺の代わりに獄門島に行ってくれ…おれの従兄弟が…」という願いを叶えるためだった。
金田一耕助物語では親族関係がとても複雑に絡み合うのでまとめておく。
まずは「網元」について。物語で網元の地元での強さ、漁師たちをまとめる力などは読んでいたんだけど、ここで説明されていたのを読んで納得でした。そりゃー強い。
漁師には3階級ある。一番下は船も網も持っていない。農家で言えば小作人。
次の階級は船も網も持っているけれども小規模なので、「自作農」みたいな感じ。
それらに君臨するのが、船も網も漁業権も持っている網元。「大地主」にあたるんだけどそれより権力がある。網元は漁穫の全てを総取りして、漁師たちに日当を渡すという関係。漁師は網元からそれぞれの網、鯛網、壺網、鰯網…などなどの網をその場その場で借りなければいけない。そして「板子一枚下は地獄」の世界に生きる漁師たちを束ねるだけの肝っ玉が必要となる。改めてナルホド。
●鬼頭家(島随一の網元の本家。「本鬼頭」と呼ばれる)
嘉右衛門(故人):「太閤」と呼ばれる程の権力を持っていた。死んだことにより獄門島の権力のバランスが崩れる。
与三松:嘉右衛門の長男で本鬼頭の当主のはずなんだけど、「気ちがいさん」で座敷牢に入れられている。
チマタ(故人):鬼頭家の跡取りだったが、戻れなかったことでどうなるか…。
月代、雪枝、花子:チマタの三人の異母妹。知的障害者だろう。派手な振り袖に帯に髪飾りでいつでもキャラキャラ大騒ぎで、異様な雰囲気を醸し出す「徒花」。
お小夜(故人):月・雪・花の母。女役者だったのが与三松の後妻になった。
一(以下ハジメ):嘉右衛門の次男(与三松の弟)の息子。
早苗:ハジメの妹。ふんわりカールの美女だがなかなか度胸があるらしい。
●分鬼頭(わけきとう。嘉右衛門の従兄弟?の家)
儀兵衛:当主の老人。本鬼頭から権力奪取を狙っている。
志保:儀兵衛の妻。あだっぽい中年女性。ものすごく権力奪取を狙っている。
鵜飼章三:分鬼頭夫妻が、本鬼頭から権力奪取のために住まわせている復員軍人。美少年。
●島人
了然(りょうねん)和尚:獄門島の千光寺住職。故嘉右衛門老人と親しく、島での権力者。
了沢(りょうたく):千光寺典座で、了然の跡継ぎ。
荒木真喜平:獄門島村長だが、故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
村瀬幸庵:獄門島の医者。故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
竹蔵:漁で潮つくりという大切な役目。
清公(せいこう):流れ者の床屋。俳諧もかじっていたので嘉右衛門のお太鼓持ちだった。耕ちゃんの重要な情報源。なお、よそ者耕ちゃんが島人から犯人じゃないかと疑われた時に「馬鹿言っちゃいけない、仮にも金田一の旦那は江戸っ子だ。本鬼頭を乗っ取る気なら回りくどいことしないでピストルパンパンぶっ放して解決すらあ。だいたい江戸っ子がこんな島の麦なんざ食ってられるか」とかばってくれた?ようで、耕ちゃんをなんか複雑な気持ちにさせるのです・笑
●警察関係
磯川常次郎:岡山県警察部の警部。耕ちゃんとは『本陣殺人事件』で知り合っている。戦争を経てお互い前の仕事を続けているとわかって感慨深くなっている。なお階級は当時と同じ警部。同僚では警視になった者もいるけれど、戦争のゴタゴタで昇格しそびれたけれど、そのために県警名物の古狸警部としてドドーンと一目置かれているらしい。
清水巡査:獄門島巡査。島では事件はそんなに起きないので(起きても島の人たちが島の掟で解決する?)、瀬戸内海の海賊対応の仕事なんかもやっているらしい。「向こうは7,8にんポンポンピストル売ってくるし、警察の船も弾丸打ち込むし、壇の浦以上の大合戦ですよ」ってのが警察のお仕事。なるほど。
●獄門島絶大な権力の鬼頭家の跡取り順番
チマタ→月→雪→花→ハジメ→早苗→儀兵衛。
儀兵衛と志保には子供がいないので、美少年鵜飼章三を雪月花の婿に入れて権力を取ろうとしている。
チマタの遺言のとおりに「俺が死んだら三人の妹が殺される」としたら、ハジメが跡取り。
そして現在では「私はハジメさんの戦友でした。ハジメさんは生きて、もうすぐで戻ってきますよ」という復員兵が獄門島を訪れた。
●帰ってきたもの、帰ってこなかったもの
死亡:チマタ
生きているという知らせがあった:ハジメ
戻る予定:戦争中に供出されていた千光寺の釣鐘が、戦争が終わったために鋳潰されずに返還されることになった。
ということで耕ちゃんは戦友の遺言で獄門島に渡ったのだ。
美しい早苗さんに驚かされる。徒花のような三姉妹に驚かされる。艶っぽいお志保さんに驚かされる。
そして獄門島の権力争いが蠢いていることを感じる。他所から来た巡査の清水さんは「この島の者はみんな気がくるってる」というくらいだ。
千光寺の釣鐘が戻って来た日に、チマタの葬儀が行われることになった。だがその夜から連続殺人が起きるのだった。
今回の連続殺人では、死体を俳句に見立てた装飾をされる。まだそれに気が付かない頃の耕ちゃんが「なんだ、有名な松尾芭蕉か!」などと食傷気味なんだけど、俳句を見てすぐに読人とか背景をかを思い浮かぶのが、戦争を挟んだとはいえこの時代の、耕ちゃんの教養だよなあ。(アメリカ放浪していたので、英語もペラペラのはず)
「無惨やな 冑の下のきりぎりす」(松尾芭蕉)
「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」(松尾芭蕉)
「鶯の 身を逆に初音かな」(宝井其角)
横溝正史物は死体が装飾されておどろおどろしいんだけど、それでも読めるのは「死」をだのエンターテイメントにしていないことだよなあと思います。P167に「死という事実は厳粛であるべき」って書いてあるのですが、これだけ死体を弄られていても読んでいて不愉快にならないのはちゃんと死を一人の人間の人生の終わりとして書いていることを感じるからじゃないかなあ。そして耕ちゃんも、死を前に不謹慎なことを口走る人には不快の目を向けるのであります。
そんなおどろおどろしい死を書きながらもちょっと笑ってしまう場面も。駐在の清水巡査が海賊対応する様子(の報告)だとか、岡山県警の磯貝警部と知り合いだって聞いて「あんたはいい人みたいだけど、磯貝警部に疑われるような悪党じゃないだろうね?」と勘違いされるところ、そしてその清水巡査に最初の殺人犯人と間違われて牢屋に入れられちゃったところで「バカ、バカ、清水さんのバカ!」と悔しがるところ。しかし結果的には耕ちゃんが牢屋に入ったお陰で第二の殺人が起きたので耕ちゃんの無実が証明されたのである、あんまり嬉しくないタイミングだけどね(^_^;)。
今回の殺人は、偶然と偶然が重なり、さらに合ってはならないタイミングでの「嘘」によって行われたことだった。まさに酷いことが重なっちゃったよなあ。
そして犯人には現実の罰よりも酷い「絶望」が与えられる。それでも後味が悪くないのは、残った人たちが戦後の新しい獄門島を立て直そうとする早苗さんの強い眼差し。また醜い権力争いしているかと思われた分鬼頭の儀兵衛老人がさすがは網元の大人物で、良くも悪くも封建社会の権化であった嘉右衛門老人のことを「とにかく稼いで使ってそのために島の人々の暮らしが豊かに明るくなったことは確かだ」とお互いを認め合っていたのも良かった。
そういえば横溝正史は「金田一耕助には、恋人も妻もいない」って書いていますが、全小説で耕ちゃんがほぼ唯一よろめいたのが、美しく案外肝が座った早苗さん。東京に出ませんか?って一応プロポーズ???耕ちゃんがんばったね。(振られたけど)
Posted by ブクログ
(表紙が違うんですが多分中身は同じなのでこれで登録)
市川崑監督をはじめとする映画はいくつか見ていて粗筋も犯人も知っているんだけど、金田一耕助(以下、耕ちゃん)ものは原作だとやっぱり良いので読んでいっている。
今回はなんと言っても『本陣殺人事件』で探偵デビューした耕ちゃんが、その後戦争の真っ只中で「人生でいちばん大事な時期を空白で過ごし」たあとというのがなんかぐっと来ました。25、6歳だった耕ちゃんは30半ばのくしゃくしゃの頭に和装にソフト帽子の中年に。物語中盤で『本陣殺人事件』で親しくなった岡山県警磯川警部と再会してお互い感じ入る場面があるんですがこのあたりはやっぱり戦争中は考えることもなかった相手が無事で相変わらず活躍しているって知ったときの感慨は私たちが想像するより深いんだろうなあ。
※放送禁止用語が使われていますが重要な鍵のためそのまま記載しています。
その金田一の耕ちゃんは瀬戸内海の小島「獄門島」に向かっている。表向きは戦友鬼頭千万太(以下チマタ)の戦死を伝えること。しかし彼には裏の目的があった。なんとしても生きて帰ることを望んでいたチマタが無念の病死に際しての遺言「俺が死んだら三人の妹たちが殺される…俺の代わりに獄門島に行ってくれ…おれの従兄弟が…」という願いを叶えるためだった。
金田一耕助物語では親族関係がとても複雑に絡み合うのでまとめておく。
まずは「網元」について。物語で網元の地元での強さ、漁師たちをまとめる力などは読んでいたんだけど、ここで説明されていたのを読んで納得でした。そりゃー強い。
漁師には3階級ある。一番下は船も網も持っていない。農家で言えば小作人。
次の階級は船も網も持っているけれども小規模なので、「自作農」みたいな感じ。
それらに君臨するのが、船も網も漁業権も持っている網元。「大地主」にあたるんだけどそれより権力がある。網元は漁穫の全てを総取りして、漁師たちに日当を渡すという関係。漁師は網元からそれぞれの網、鯛網、壺網、鰯網…などなどの網をその場その場で借りなければいけない。そして「板子一枚下は地獄」の世界に生きる漁師たちを束ねるだけの肝っ玉が必要となる。改めてナルホド。
●鬼頭家(島随一の網元の本家。「本鬼頭」と呼ばれる)
嘉右衛門(故人):「太閤」と呼ばれる程の権力を持っていた。死んだことにより獄門島の権力のバランスが崩れる。
与三松:嘉右衛門の長男で本鬼頭の当主のはずなんだけど、「気ちがいさん」で座敷牢に入れられている。
チマタ(故人):鬼頭家の跡取りだったが、戻れなかったことでどうなるか…。
月代、雪枝、花子:チマタの三人の異母妹。知的障害者だろう。派手な振り袖に帯に髪飾りでいつでもキャラキャラ大騒ぎで、異様な雰囲気を醸し出す「徒花」。
お小夜(故人):月・雪・花の母。女役者だったのが与三松の後妻になった。
一(以下ハジメ):嘉右衛門の次男(与三松の弟)の息子。
早苗:ハジメの妹。ふんわりカールの美女だがなかなか度胸があるらしい。
●分鬼頭(わけきとう。嘉右衛門の従兄弟?の家)
儀兵衛:当主の老人。本鬼頭から権力奪取を狙っている。
志保:儀兵衛の妻。あだっぽい中年女性。ものすごく権力奪取を狙っている。
鵜飼章三:分鬼頭夫妻が、本鬼頭から権力奪取のために住まわせている復員軍人。美少年。
●島人
了然(りょうねん)和尚:獄門島の千光寺住職。故嘉右衛門老人と親しく、島での権力者。
了沢(りょうたく):千光寺典座で、了然の跡継ぎ。
荒木真喜平:獄門島村長だが、故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
村瀬幸庵:獄門島の医者。故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
竹蔵:漁で潮つくりという大切な役目。
清公(せいこう):流れ者の床屋。俳諧もかじっていたので嘉右衛門のお太鼓持ちだった。耕ちゃんの重要な情報源。なお、よそ者耕ちゃんが島人から犯人じゃないかと疑われた時に「馬鹿言っちゃいけない、仮にも金田一の旦那は江戸っ子だ。本鬼頭を乗っ取る気なら回りくどいことしないでピストルパンパンぶっ放して解決すらあ。だいたい江戸っ子がこんな島の麦なんざ食ってられるか」とかばってくれた?ようで、耕ちゃんをなんか複雑な気持ちにさせるのです・笑
●警察関係
磯川常次郎:岡山県警察部の警部。耕ちゃんとは『本陣殺人事件』で知り合っている。戦争を経てお互い前の仕事を続けているとわかって感慨深くなっている。なお階級は当時と同じ警部。同僚では警視になった者もいるけれど、戦争のゴタゴタで昇格しそびれたけれど、そのために県警名物の古狸警部としてドドーンと一目置かれているらしい。
清水巡査:獄門島巡査。島では事件はそんなに起きないので(起きても島の人たちが島の掟で解決する?)、瀬戸内海の海賊対応の仕事なんかもやっているらしい。「向こうは7,8にんポンポンピストル売ってくるし、警察の船も弾丸打ち込むし、壇の浦以上の大合戦ですよ」ってのが警察のお仕事。なるほど。
●獄門島絶大な権力の鬼頭家の跡取り順番
チマタ→月→雪→花→ハジメ→早苗→儀兵衛。
儀兵衛と志保には子供がいないので、美少年鵜飼章三を雪月花の婿に入れて権力を取ろうとしている。
チマタの遺言のとおりに「俺が死んだら三人の妹が殺される」としたら、ハジメが跡取り。
そして現在では「私はハジメさんの戦友でした。ハジメさんは生きて、もうすぐで戻ってきますよ」という復員兵が獄門島を訪れた。
●帰ってきたもの、帰ってこなかったもの
死亡:チマタ
生きているという知らせがあった:ハジメ
戻る予定:戦争中に供出されていた千光寺の釣鐘が、戦争が終わったために鋳潰されずに返還されることになった。
ということで耕ちゃんは戦友の遺言で獄門島に渡ったのだ。
美しい早苗さんに驚かされる。徒花のような三姉妹に驚かされる。艶っぽいお志保さんに驚かされる。
そして獄門島の権力争いが蠢いていることを感じる。他所から来た巡査の清水さんは「この島の者はみんな気がくるってる」というくらいだ。
千光寺の釣鐘が戻って来た日に、チマタの葬儀が行われることになった。だがその夜から連続殺人が起きるのだった。
今回の連続殺人では、死体を俳句に見立てた装飾をされる。まだそれに気が付かない頃の耕ちゃんが「なんだ、有名な松尾芭蕉か!」などと食傷気味なんだけど、俳句を見てすぐに読人とか背景をかを思い浮かぶのが、戦争を挟んだとはいえこの時代の、耕ちゃんの教養だよなあ。(アメリカ放浪していたので、英語もペラペラのはず)
「無惨やな 冑の下のきりぎりす」(松尾芭蕉)
「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」(松尾芭蕉)
「鶯の 身を逆に初音かな」(宝井其角)
横溝正史物は死体が装飾されておどろおどろしいんだけど、それでも読めるのは「死」をだのエンターテイメントにしていないことだよなあと思います。P167に「死という事実は厳粛であるべき」って書いてあるのですが、これだけ死体を弄られていても読んでいて不愉快にならないのはちゃんと死を一人の人間の人生の終わりとして書いていることを感じるからじゃないかなあ。そして耕ちゃんも、死を前に不謹慎なことを口走る人には不快の目を向けるのであります。
そんなおどろおどろしい死を書きながらもちょっと笑ってしまう場面も。駐在の清水巡査が海賊対応する様子(の報告)だとか、岡山県警の磯貝警部と知り合いだって聞いて「あんたはいい人みたいだけど、磯貝警部に疑われるような悪党じゃないだろうね?」と勘違いされるところ、そしてその清水巡査に最初の殺人犯人と間違われて牢屋に入れられちゃったところで「バカ、バカ、清水さんのバカ!」と悔しがるところ。しかし結果的には耕ちゃんが牢屋に入ったお陰で第二の殺人が起きたので耕ちゃんの無実が証明されたのである、あんまり嬉しくないタイミングだけどね(^_^;)。
今回の殺人は、偶然と偶然が重なり、さらに合ってはならないタイミングでの「嘘」によって行われたことだった。まさに酷いことが重なっちゃったよなあ。
そして犯人には現実の罰よりも酷い「絶望」が与えられる。それでも後味が悪くないのは、残った人たちが戦後の新しい獄門島を立て直そうとする早苗さんの強い眼差し。また醜い権力争いしているかと思われた分鬼頭の儀兵衛老人がさすがは網元の大人物で、良くも悪くも封建社会の権化であった嘉右衛門老人のことを「とにかく稼いで使ってそのために島の人々の暮らしが豊かに明るくなったことは確かだ」とお互いを認め合っていたのも良かった。
そういえば横溝正史は「金田一耕助には、恋人も妻もいない」って書いていますが、全小説で耕ちゃんがほぼ唯一よろめいたのが、美しく案外肝が座った早苗さん。東京に出ませんか?って一応プロポーズ???耕ちゃんがんばったね。(振られたけど)
Posted by ブクログ
横溝正史の長篇ミステリ作品『夜歩く 金田一耕助ファイル 7』を読みました。
『悪魔が来りて笛を吹く 金田一耕助ファイル 4』に続き、横溝正史の作品です。
-----story-------------
「我、近く汝のもとに赴きて結婚せん」という奇妙な手紙と佝僂の写真が、古神家の令嬢八千代のもとにまいこんだ。
三日後に起きた、キャバレー『花』での佝僂画家狙撃事件。
それが首なし連続殺人の発端だった……。
因縁の呪いか? 憎悪、貪欲、不倫、迷信、嫉妬と、どす黒い要素が執念深くからみあって、古神家にまつわる、世にも凄惨な殺人事件の幕が切って落とされた!!
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1948年(昭和23年)から1949年(昭和24年)に中央文芸社から出版されていた大衆文芸・小説雑誌『男女』(後の『大衆小説界』)に連載され、1950年(昭和25年)に刊行された作品……金田一耕助シリーズの第3作です。
古神家の令嬢八千代に舞い込んだ「我、近く汝のもとに赴きて結婚せん」という奇妙な手紙と佝僂の写真は陰惨な殺人事件の発端であった……卓抜なトリックで推理小説の限界に挑んだ力作。
佝僂の画家や夢遊病、旧家の因縁、嫉妬などのモチーフをこれでもかと詰め込んだ、怪奇色の濃い本格長篇ミステリ……「汝夜歩くなかれ」という不気味な警告を発端に、狙撃事件、首なし死体、血塗られた村正、佝僂の人物の入れ替わりなど、複数の謎が互いに絡み合いながら進行します、、、
古神家と仙石家の複雑な関係、夢遊病の八千代の存在が、誰もが秘密を抱えているような不穏な空気を生み、読者を物語の奥へと引きずり込みます……物語は途中から岡山県の鬼首村へ舞台を移し、閉ざされた山村の陰鬱な雰囲気がさらに怪奇性を強めます。
村に伝わる因習や土地の空気が、古神家の謎と結びつき、物語のスケールが一段と広がるのも魅力です……そして本作最大の特徴は、金田一シリーズでは異例の叙述トリック、、、
語り手の一人称が読者の認識を巧みに誘導し、終盤でその「語りの罠」が明かされることで、真相の意外性が鮮烈に立ち上がります。
怪奇味と本格性、そして叙述の妙が見事に融合した、読み応えたっぷりの一作でした……面白かったです。