海堂尊の作品一覧
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
ものすごい大作を読み終わった感じがした。
歴史ものはとにかく登場人物が多くて、名前を覚えるのが大変で、洪庵と泰然の主人公だけでも、出世するたび名前が変わるので、とにかく大変だった。
でも、ストーリーに引き込まれて、歴史大河ドラマを見た後のような満足感だった。
洪庵の死んだ後の良順と泰然の会話が何ともミステリーっぽくてよかった。
たくさんの歴史上の有名人が出てきて、とても勉強になった。
白鳥啓介に似た名前が出てきたけど、ここからとった?
福沢諭吉の玄孫は今では「VIVANT」の監督。
好きな坂本龍馬はでてこなかったけど、
きっと、こう言うだろう。
「医療の夜明けぞ!」
Posted by ブクログ
一時期、海堂尊の本は面白くなくなってきたので、しばらく遠ざかっていたのですが、本書を原作とした映画が公開されたということで、久しぶりに海堂尊の本を読んでみました。
この本は、かなり面白かったです。
おそらく、海堂尊は、「行政と医療現場の対立」そして「それによって生じる一般市民への悪影響」を、より多くの人に知ってもらいたいがために、様々な医療問題を扱った小説を書いているのだと思いますが、今回は、不妊治療や産婦人科医を題材に、大学病院での医療の在り方や、厚労省などの姿勢について、海堂尊らしく、鋭く描き出しています。
現在、妊娠中の方やそのパートナーには、読むことをおすすめします。
また、医療のあるべき形を考える上で、参考になる本です。
個人的には、厚労省や警察庁の方の感想を聞いてみたいですね。
Posted by ブクログ
418P
「「悲しむべき事に日本には静脈バイパス術以外の術式を実施できる施設がない。日本トップクラスの帝華大も維新大も、静脈置換バイパス術しかできない。だが諸君が医師になる頃には桜宮は心臓外科手術では世界最先端の地域になっているだろう。バイパス手術の完成形、ダイレクト・アナストモーシス(直接吻合術)という術式を実施できる施設、スリジエ・ハートセンターが創設されるからだ。ではここで、世界でも、ここ桜宮でしか実施されないこの術式について講義しよう」」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「悲しむべき事に日本には静脈バイパス術以外の術式を実施できる施設がない。日本トップクラスの帝華大も維新大も、静脈置換バイパス術しかできない。だが諸君が医師になる頃には桜宮は心臓外科手術では世界最先端の地域になっているだろう。バイパス手術の完成形、ダイレクト・アナストモーシス(直接吻合術)という術式を実施できる施設、スリジエ・ハートセンターが創設されるからだ。ではここで、世界でも、ここ桜宮でしか実施されないこの術式について講義しよう」」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「世の中は、思うようにいかないものだな。技術が優れる者には忠義のこころなく、忠誠心の塊のような男の手には技術の神は宿らないのだから」」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「不確定な世の中を渡っていくために大切な能力は三つある。誰よりも遠くを見通せる目、微かな危険も嗅ぎ当てる鋭い嗅覚。そして三番目はツキだ。だがその三つよりもはるかに大切なこと、それがカネを持っている、ということだ」」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「このコメント、食堂の職員に伝えてや。ええか、塩は勇気や。ぎりぎり攻め込んで初めて桃源郷が見えてくるものなのや。それはつまり薄味好きの関西人は臆病者ちうことやがな。それにしても、中途半端に味がいいというのは致命的やな」「自分の出身地をけなしたら、ろくな死に方をしないぞ」」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「改めて写真を見ると、天城は日本人離れした華があるとつくづく思う。だがそんなことより世良は、自分が留守番役になったことに小さな引っ掛かりを感じていた。 天城の手術に何が何でも参加したいと熱望していたわけでもないのに、いざメンバーから外されると、急に自分が不必要な人間に思え、意気消沈してしまった。 世良は机の上のチェスの盤面を眺める。 今回の公開手術には他に不安要素があった。手術を成功させたメンバーががらりと入れ替えられたのだ。器械出しの看護婦、猫田と花房も参加しない。八月に佐伯外科が救急部を創設した余波で、手術室の看護婦と総合外科病棟の看護婦が人事交流を余儀なくされたところに頭の固い手術室の福井婦長の意向が重なり、猫田・花房のゴールデンコンビが外されてしまったのだ。麻酔医も代わった。公開手術が名声になると知った先輩麻酔医が、実力ナンバーワンの田中助手を押しのけ参加してきたのだ。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「絶対君主の寵愛なんて風向きと同じ。今日、西を向いているからといって、明日も同じだとは限りません。そもそも佐伯教授は、この六年で多くの専門科の独立を許してきましたから」と高階講師は苦笑する。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「そこまで口にして天城は絶句する。心臓外科医にとって、腹部とは別世界の異国だ。 高階講師が言う。「米国でバイパス術と胃癌切除術を同時にやった時に思いついたんです。当時のボスに言ったら、一笑に付されましたが。でも今、他に手はありません」 高階講師の声が響く。その後しばらく、沈黙が術野を支配した。 やがて患者の枕元から声がした。「オイラも賛成だ。徳永さんが生き延びるにはそれしかない」 天城は「しかし……」と言ったまま、呆然と鏡部長を凝視する。 観客席がざわめき始めた。鑑識眼を持ち合わせない観客も、術中に突然術野を拡大するという行為を見て、アクシデントが起こっているらしいと理解しつつあった。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「天城の技術は天与のものだが、そうした光景を心臓外科医が共有できたのは、日本の心臓外科界の最大の幸運だった、という心臓外科医は、後に新世紀を迎えた今でも、未だに大勢いる。 天城は一度はこなごなに砕かれた気力を振り絞り、指先に意識と気力を集中させ、一針一針、丁寧に確実に、そして素早く縫合を進めた。 会場の観客たちは呼吸も忘れ、その手技に見とれた。 やがて天城の指先が、すべてのエネルギーを使い切ったかのように止まると、金属のトレーにペアンがからんと滑り落ちた。 「〈オペラシオン・エ・フィニ〉(手術終了)」」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「何を言ってるんですか?」 天城は世良を見つめた。そして笑う。「言っただろ、ジュノ。私の夢は桜宮にさくら並木を植えることだった。だからこうして、ここに植えに来たのさ」「そのさくらの木というのは、スリジエセンターのことでしょう?」「ああ、そうだ。だがそれがダメになってしまったから、せめてさくらの苗木くらい植えて、日本を去ろうと思ってね」 天城が日本を去る? 突然の通告に世良は足下が崩れ落ちるような感覚に囚われた。 さくらの苗木を植え終わった天城と世良は、岬の突端に立ち、大海原を眺めている。 世良が言う。「突然そんなこと言われても困ります。スリジエセンターの創設を待ち望んでいる人は大勢いるんですから」「そんな変わり者が本当にいるなら、ここに連れてきて会わせてくれ」 佐伯教授の名を挙げようとして世良は思いとどまる。天城が聞きたいのは、そんな名前でないことは明らかだ。そう言われてしまえば具体的な名前は誰一人浮かんでこない。手術を実施した梶谷さんと上杉会長のふたりは自分が治った今、センターができようができまいがどうでもいいと思っているに違いない。あるいは市民病院の鏡部長なら、ひょっとしたら賛同してくれるかもしれない。しかし具体的にはそれくらいしか思い浮かばない。 世良は黙り込む。天城のスリジエセンター創設を待ち望む人は、この世界のどこかにいる。それは間違いない。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「私は日本では愛されなかった。ささいなことに反発され、刃を向けられ、足を引っ張られる。患者を治すために、力を発揮できる環境を整えようとしただけなのに関係ない連中が罵り、謗り、私を引きずり下ろそうとする。私はそんな母国に愛想が尽きてしまったんだ」 世良は唇を嚙む。 天城は愛されていない。それは本当だった。 でも、どうしてなのか。 周りのみんなと違うから、だからか。 だが天城が提供しようとしたのは、善意の塊のような手術術式だけだ。 それなのにどうしてこんなことになってしまったのだろう。 次の瞬間、世良の口から出たのは、自分でも思ってもいなかった言葉だった。「逃げるんですか、天城先生」 その言葉を聞いて、天城の顔色が変わる。それは世良の命がけの挑発だった。 だが、天城は世良の真意を見抜いたように笑顔で応じる。「私は、へこたれて帰国を決めたわけではない。二回の手術の失敗は天の啓示なんだ」 世良は息を吞む。そして言い返す。「天城先生は失敗なんかしていません。日本に来て天城先生の患者は誰も亡くなっていない。病気の患者を手術し、元気にして家に帰してあげる。これは手術の成功と呼ぶんです」 世良の懸命な言葉は、しかし、天城のこころにはもはや届かなかった。 別離の時が、刻一刻と近づいてきている。 そのことを、世良は痛いほど感じていた。 そんな時、言葉には何の力もなく、また、何の意味もなかった。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「スリジエ・ハートセンター。〈スリジエ〉とはフランス語で〝さくら〟を意味する。 刻印された言葉がひかりの中で甦る。その響きは新鮮だ。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「おやおや本日のジュノはご機嫌斜めか」 天城の人なつっこい笑顔を苛立たしげに見遣る。天才は無邪気だ。人の気持ちを逆撫でし、うんざりさせる裏側で、いきなり懐に飛び込んできて凡人を虜にしてしまう。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「おやおや本日のジュノはご機嫌斜めか」 天城の人なつっこい笑顔を苛立たしげに見遣る。天才は無邪気だ。人の気持ちを逆撫でし、うんざりさせる裏側で、いきなり懐に飛び込んできて凡人を虜にしてしまう。 彫りの深い貴族のような顔立ちを見つめ、世良は首を振る。「気分はいつもと同じで、変わりません」「エクセロン」と天城がフランス語で答える。そんなキザなセリフが似合う。 ここに来る以前、天城はモンテカルロ・ハートセンターの上席部長の職にあった。手術の腕は神懸かり的で、モナコの王族から勲章と共にモンテカルロのエトワール(星)という称号を贈られている。ブレザー型の白衣の胸には銀の糸でエトワールのエンブレムが刺繡されている。 現在はスリジエ・ハートセンターの総帥だ。ただしまだ施設はオープンしていない。」
—『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
Posted by ブクログ
358P
ブレイズメス1990はより多く手術代を支払ってくれる患者の命を優先するか否かみたいな医療制度そのものの矛盾とか医療は公共財かビジネスかとか医療倫理がメインテーマだった。
「耳慣れないアクセントの言葉が流れる。エールフランスなので機内放送はフランス語が優先、次が英語だ。その英語もフランス訛りのせいか、ふだん耳にするのとかけ離れている。気圧の変化のせいか、耳が痛い。機体が乱気流でがたがたと揺れる。「おい、シートベルトをつけろ、とさ」 隣の垣谷講師に言われ、世良はリクライニングシートを定位置に戻すと、ベルトを掛けた。 東城大学医学部総合外科学教室、通称佐伯外科の垣谷講師と世良雅志の小旅行は終わりを告げようとしている。十五時間以上かけてたどりついたパリ・シャルル・ド・ゴール国際空港から乗り継いでニースまで二時間弱のフライト。移動だけでほぼ丸一日費やしたことになる。 窓の外を見ると、眼下には雪を冠した山脈が連なっている。遠く銀色に光る夕暮れの海原が見え、マッチ箱のような家並みが海岸線にへばりついている。」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「それがどうした? だいたいモナコ硬貨って何だ? オモチャの貨幣か?」 駒井は首を振って、言う。「モナコ公国は皇居の二倍程度の面積しかなか、世界で二番目に小さい独立国ですばい。財源は観光、特にカジノが主ですと。国防や一次、二次産業はフランスにおんぶにだっこ。だからモナコは、フランスの顔色を窺いながら生きてきたとです。でも独立国家なので独自の通貨を発行ばしとります。フランスでも使えますばってん、希少価値があってみんなしまいこんでしまうとで、ほとんど流通してないとです」」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「モナコ公国は南仏の海岸線、風光明媚なコート・ダジュールのイタリア寄りに位置する立憲君主制の独立国家だ。独立国家といっても総面積は約二平方キロメートル、人口約三万人と、日本でいえば地方の小都市レベル以下、世界で二番目に小さい国家である。ちなみに一番小さな国家はローマにあるバチカン市国だ。 三十分もあれば国境線の端から端まで歩けてしまう。フランスとの国境には大きな岩が置かれ、モナコ公国の文字とふたりの修道僧が寄り添う姿が描かれているが、そこに必ず国境警備兵が配備されているわけでもない。だから気がつかないうちに国境を越えていた、などということは日常茶飯事だ。」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「モナコには直接税がなかです。だから大金持ちがモナコの居住者になりたがるとです」 駒井は、とあるホテルの前で立ち止まる。「ここがオテル・エルミタージュですと。内部に『冬の庭』というアトリウムがあるとです。設計者は有名なエッフェル、あのエッフェル塔の設計者ですばい」」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「真面目ですねえ。あんな学芸会で踊ることが、何の役に立つんですか?」 敬意を足蹴にされ、垣谷はむっとする。天城は手を打って笑う。「そうやって挨拶をエスプリで返されるとすぐ膨れっ面になるのが、日本人のいけないところです。それではフランス人に相手にされません。彼らは鼻持ちならない連中ですが、ひとつだけ尊敬すべき点があります。それは権威は笑い飛ばすくらいがちょうどいい、と考えている点です。そこは日本人とは正反対ですね」」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「サッカーのことはよく知らないが、現実的なスポーツなんだな。スポーツはたいていスポーツマンシップとかのきれいごとを並べたがるものなんだが」「そうです。サッカーには建前がないんです」「なのにジュノが妙にきれいごとばかり言うのは、いいサッカー選手じゃなかったということか?」 世良はむっとして答える。「サッカーは俺の学生時代のすべてです。大会ではそれなりの成績を残しましたし」「それなら医学生のサッカー界がぬるいのかな」 世良は天城に言い返すのを諦めた。サッカーを知らない上司にバカにされても痛くも痒くもない。世良は横道に逸れた話を戻す。「俺のサッカー選手としての評価なんてどうでもいいです。それより隣の方の名前のことです。悪意なんていうネガティヴな名前は珍しいでしょう?」」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「思うがままの病院を作りたい、という希望を持つ医師は大勢いる。だが、建築家を海外から呼び寄せる、という発想を持つ医師がどれほどいるだろうか。しかも建築の意味を祈りという高みに昇華し、その意思を達成しようと考える医師など皆無だ。 世良は大学病院の先輩医師の顔を思い出す。そんな選択をする医師の顔は浮かばない。敬愛する高階講師ですら、そんな発想は持ち合わせてはいないだろう。高階講師は薄暗い大学病院という塔の中を駆けめぐり、こぼれ落ちそうになる命をすくい上げることにしか興味がない。そして今の東城大学医学部付属病院は、そういう人種で占められている。」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「やだわ、世良先生。私、黄金だらけの地球儀なんて下品なものより、ゴッホのひまわりの方がずっと好きです」「じゃあ桜宮水族館の深海館にリクエストして、ゴッホのひまわりを買ってもらおうか」 花房は首を振る。「要りません。ボンクラボヤが可愛かったから、あそこはあのままでいいんです」「あんなへんてこな生き物が好みなんだ。ぽかんと口を開けているだけなのに」「ずっと眺めていると、なんだか癒されちゃって」「そう言えばこの間、ウチの大学の海洋研究所の所長が、最近、ボンクラボヤに続いて、ウスボンヤリボヤとかいう新種を見つけたらしいよ」「桜宮湾って新種の宝庫なのかしら」 ふたりの会話が途切れた。花房は周囲を見回し、ため息をつく。「みなさん、きれいですね。日本がお金持ちになったのは本当なのかも。でも私なんてお洋服もみすぼらしいし……」」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「「人によってさまざまなものをカネよりも大切だと思うだろうが、上杉会長のように功を成した人物にとって、金銭はもはや欲望の対象ではない。彼のような成功者が最後に欲しがるものは何だ?」 世良はじっと考えこむ。やがて力なく首を振る。天城はひと言で答える。「それは、名誉だ」 天城は続ける。「名誉とは、他人が誉め称えてくれて初めて成立する。手術が成功すれば、上杉会長は財産の半分を寄付し、スリジエ・ハートセンター創設基金を作る約束をした。それは地域の一大医療センターとなり、上杉会長とその分身、ウエスギ・モーターズは公共福祉に貢献するという名誉を手にする。桜宮市から大小さまざまな特典のキックバックを受けるという実利もある。その寄付という形をとるメリットを最大限に享受できるようにするために、わざわざ桜宮市の釜田市長の懐刀、村雨秘書にまでお越しいただいたわけだ」」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「本読みとしての幸せとは一体何だろうと考えたとき、それはもちろん面白い一冊の本を読むこと、それまで知らなかった本の魅力を発見すること、その読後感をたっぷりと味わうことであるというのは当然過ぎて論を俟たないところですが、それに次ぐ幸せは何かと言えば、これはまったく個人的な見解ではありますけれど、その『面白い一冊の本』を著した作者の本がたくさん書店に並んでいるのを見ることであると、僕は考えています。」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「基本的に僕は、読み終わった本の感想を、人と語り合うみたいなことはあまりしないのですが、海堂小説をどういう順番で読み、そしてどんな感想を持ったかという話を誰かとしたら、それがかなり白熱する議論になるだろうことは想像に難くありません。 もちろん、あるシリーズでは脇役だったキャラクターが、別のシリーズでは主役級の活躍を見せるといった展開にも胸が躍ります。本書『ブレイズメス 1990』、それに本書の前作となる『ブラックペアン 1988』にもそのような仕掛けがあり、それに気付いたときの「ああ!」という感覚は、是非味わっていただきたい絶品です。ここで詳しく、あの本に出てくるあの人物がこの本に、とか、このキャラクターはのちにあの本に出てきちゃうんだよと、逐一説明したいのは山々なのですが、それは野暮も極まりないことなので、当然ながらしません。私的に人物相関図と年表を描いて楽しむというのは、やや本読みの幸福からは逸脱してしまっている気もしますけれど、そんなことさえしたくなるほどに、そして実際にやってしまうほどに、海堂ワールドの人間関係、因果関係はエキサイティングなのです。」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著
「2018年春、「ブラックペアン」がドラマ化され、新たな読者を獲得しました。でもネットでは、私の既刊が書店にないという声が多数ありました。一日二百点以上の新刊が刊行される現状では過去の作品が全て書店に並ぶことはありえず、やむをえないことですが、だからといって商業流通の問題で、私の物語に興味を持ってくれた読者をむざむざ逃してしまったのはなんとも無念。というわけで過去の作品を読者に届けたくて、電子書籍刊行に踏み切ることにしたのです。あとがきの最後に「桜宮サーガ」の作品群の年表と作品相関図を付けるのも、興味を持ったら全作品読破してくださいね、という作者の隠された意図の発露です(隠してない)。人間のコンプリート欲を刺激する隠れ戦略(全然隠してない)に乗ってもらえれば、より深く作品世界を楽しんでいただけることでしょう。」
—『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著