海堂尊のレビュー一覧
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海堂尊の作品は、どんなにゆっくり読もうと思っても、登場人物たちの論理の言い合いに読むテンポを奪われて、どんどん早く読み進めさせられてしまう。
きっと頭の良い人は、間を置かず瞬時に言葉を発するのだろうと、自分で勝手に思い込んでいるせいかもしれない。
そして、登場する人物たちは、まさに頭が切れるロジカルモンスターばかりだから、余計に読むスピードが速くなってしまう。
会話や物語りの流れもそうだけど、独特の言い回しや言葉のチョイス、文字の力がとても強いのだと思う。
でも、それは決して不快ではなく、ただただ、もっとゆっくりその作品に浸っていたいのにと惜しんでしまうだけ。
読む勢いに任せてシリーズの一気読 -
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何故………天城先生………何故………
「ブラックペアン」シリーズ3作目、完結編。
2作目に引き続き、今回のメインキャラクターは主人公の世良、天城、高階、佐伯、それに加えて佐伯外科の腹心にして助教授の黒崎。
今回は東城大付属病院内部の権力争いがメイン。
天才的な天城に魅せられながらも直属の上司である高階との板挟みに苦悩する世良に導かれながら、私達もその苦悩を体現しているような息苦しさが続く。
物語の終わりも青天の霹靂で、苦悩から開放されたスッキリ感はありながらも、切なさが余韻として残る。
「ブラックペアン」「ブレイズメス」「スリジエハートセンター」とボリューム感はあるが、是非一気読みしてもらい -
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地震と津波が全てを奪い去った東北の各地で、懸命の医療活動を行った9名の医師たちの貴重な証言を記録したものです。どの医師の語った経験も壮絶そのもので、彼らが人間と医師の尊厳を失わなかった姿に打たれます。
この本は甚大な被害を及ぼした『3・11』の東日本大震災の時に、津波が全てものを押し流したあとの現場で医療活動に当たった9人の医師の証言を基にしたものです。
どの医師も壮絶な『命の修羅場』を語っており、感動よりもむしろ、こうまですさまじい意状況に身を置きながら、医師として、人間としての尊厳を失わずに粛々と自分のなすべきことをしていた、ということが書かれており、そこにはただただ頭の下がる思 -
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「『螺鈿迷宮』―医療ミステリの新たな境地
医療ミステリの巨星、海堂尊が描く作品は、常に私たち読者に新たな視点と深い洞察を与え、物語の世界へと引き込みます。『螺鈿迷宮』もまた、その例外ではありません。特に本作は、従来の田口白鳥シリーズとは一線を画し、医療現場の奥深くに潜む闇や、現代社会が抱える複雑な問題を、より鋭く、そして深く描き出しています。
登場人物たちの葛藤と、緻密に織りなされる物語
本作の最大の魅力は、単なる事件の解決に留まらず、医療業界が抱える多岐にわたる課題や、時に残酷なまでに冷徹な現実を、容赦なく読者の目に突きつける点にあります。医療従事者が日常的に直面する倫理的なジレンマ、 -
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(2021時点での感想です)
今年は、2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災から10年目。 それと関係なく、いつ買ったかも忘れたくらい前に買った本でしたが、今年に入って読みました。
震災時に尽力した医師たちのインタビュー集とでも言ったもの。2014年発行。海堂尊監修。
尾身茂さん登場
本書で最初に登場するのは、南三陸志津川病院で働いていた医師。親戚のおばさんも通っていた病院ですから、いきなり引き込まれました。その他の医師たちも個性派揃いで、面白いです。 その最初の医師の言葉の中で、唐突に尾身茂医師の名前が登場します。なんの注釈なしで出しても不自然じゃないというくらい、名の知られた -
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主人公は『ジーン・ワルツ』や『マドンナ・ヴェルデ』(共に新潮文庫)で生まれた双子の内の曾根崎伸一郎の息子として育てられた薫君です。僕にとっては親戚の子供が成長した姿を見たような気がして嬉しかったです。
この本の主人公は『ジーン・ワルツ』や『マドンナ・ヴェルデ』(共に新潮文庫)の中で生まれた双子のうちの曽根崎伸一郎の息子として育てられた曾根崎薫君の物語です。
この本を読みながら、僕は親戚の息子さんが中学生になったときのような気持ちで彼に寄り添うことができました。
僕は平素、あまりミステリーは読まないのですが、この本は面白く読むことができました。
物語は主人公の中学生、曾根崎薫君がゲ -
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気に入っているシリーズである「桜宮サーガ」の最近の作品ということになる。
題名に「1980」と在って「1980年の或る日」というような様子から物語が起るが、作中で5年程度の時日が経ち、最終盤の方では「1985年の或る日」という様子になっている物語だ。
所謂「桜宮サーガ」のシリーズというのは、東海地方の架空の街、東城大学と大学病院の在る桜宮市で展開するシリーズの作品である。ドンドン拡がる世界が描かれた様々な作品を「桜宮サーガ」というように呼ぶ場合が在るようだ。
「バチスタ」ということで、東城大学病院を舞台にした物語が登場して、以降の展開が在る。作品が登場した2000年代の物語が主な作品なのだが、 -
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ネタバレ12年ぶりの黒本シリーズ新作っ…!!!
渡海先生の新人時代を知れる日が来るとは………
後にオペ室の悪魔と呼ばれる天才外科医が佐伯教授に忠誠を誓い「手術場という戦場を、自由自在に駆け巡る騎士みたいな医者になりたい」と語っていた頃の話。
渡海先生は手術室のあの部屋に勝手に住み着いた訳じゃなかったんだ…とか、初めての国際学会で緊張する初々しさがあったんだ〜とか、天城先生との邂逅とか、垣谷先生が世良ちゃんの医局長大抜擢の時優しかった理由とか、知りたかったことがたくさん知れてほっこり。
そして、バタフライ・シャドウの城崎さんがこんなところで絡んでくるなんてほんまにえぐい。
垣谷先生のことを「凡 -
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ネタバレシーズン1のドラマ化された時に買って読んだ懐かしき1冊!
今回ドラマがシーズン2の放送がされたことでもう1度読み返してみた( ✌︎'ω')✌︎
医者じゃないから専門用語はむずかちぃね\(//∇//)\
ところどころつまづきながら読んでしまうから1冊読むのに時間かかっちゃった(゚∀゚)
ドラマと少し違うところがあるけどニノが演じてだからかな?
オペ室の悪魔は個人的に好きだな・:*+.\(( °ω° ))/.:+
医者目線からしたら許せない存在なのかもしれないけど、患者からしたら凄腕の術者は安心するよね( ゚д゚)
必ず助けてもらえるって思って頼っちゃうかもΣ(' -
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『極北クレイマー』の続篇という感じである。が、所謂「桜宮サーガ」の様々な人物が登場する群像劇風な雰囲気も色濃いと思う。作中人物達は「色々と在った来し方」を半ば振り返りながら、新たに踏み出して行こうとするような様相を見せる。そんな様が北海道の架空の街を舞台に展開している。
極北市は終に財政破綻に至ってしまい、閉鎖已む無しとされた市民病院が存続というようなことになった中、世良医師が新任の院長として登場していた。世良院長の下、極北市民病院は極々限られたスタッフで新たな体制を築いて活動に勤しんでいた。今中は極北市民病院での仕事を続けている。医師は世良院長の他は今中だけで、今中は副院長兼外科部長というこ -
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題名に在る「極北」は、作中の北海道に在る架空の都市の名である。色々と「暗示的?」な内容が込められた、興味深い小説であると思った。本作も所謂「桜宮サーガ」の範囲ではある。少し知られた“関係者”が現れる、または存在が示唆されるという描写は在るが、寧ろ本作なりの作中人物達の物語に纏まっている感である。
本作は、極北市民病院にやって来た医師の今中が主要視点人物となっている。今中が不在な部分では視点人物が適宜切り替わる。実在した事件を参照にしたような出来事、実際の出来事を参照に少し戯画的に描写される様子等が折り重ねられて行くのだが、状況の中に身を投じた今中が少し踏み出そうとするような物語でもあるかもしれ