海堂尊のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前作「ブレイズメス1990」がスリジエハートセンター開設に決着をつけず、ある意味中途半端に終わったため引き続き本作を読むことにした。
いわゆる「バブル三部作」の最後の作品になる訳だが、各種エピソードの謎解きというか経緯が描かれているのはとても面白い。例えばジェネラル・ルージュ速水の医局入りから伝説となっている大事故対応の話。高階と藤原看護師長がタッグを組むことになった経緯と「ゴンちゃん」と呼べることになる話。後に看護師長となる花房の若く可憐な姿と淡いロマンスの話。最上階のVIP室「ドア・トゥ・ヘブン」が出来た経緯などなど。
また本作はあたかも名作「白い巨塔」のような大学病院の院内政治のために跳梁跋扈する各人の姿が描かれている。特に高階は本作では完全にヒール(悪役)の位置付けだ。三部作最初の「ブラックペアン」では真摯に医療に取り組む姿勢が多かったが、その後第2作、第3作となるに連れ権謀術数を駆使するの政治家としての面がどんどん増大し、とうとう本作では佐伯教授を裏切り、将来の病院長への布石を打つ。
そういう見方では政治色のない純粋な医者であろうとしている登場人物は3名しかいない。天城と世良、そして市民病院の鏡部長だ。とは言え、自分が患者になったら誰に診てもらいたいかと考えると、政治家だろうと職人だろうとウデの良い医者に診てもらいたい。 -
Posted by ブクログ
海堂尊「桜宮サーガ」の「バブル三部作」もしくは「ブラックペアンシリーズ」と呼ばれるシリーズの第2作目。天才外科医・天城雪彦を震源とした、現代医療現場の課題を浮き彫りにし医療倫理を問いかけた佳作。
そのそも天城にはモデルとなる人物がいる。世界で初めて胃大網動脈グラフトを使用した冠動脈バイパスを開発し、日本で初めて拡張型心筋症に対する左室形成術の一術式であるバチスタ手術を行った須磨久善氏だ。須磨氏はNHKの「プロジェクトX」など各メディアにも登場したスーパードクターで、バチスタ手術後も色々な手術器具の開発や術式の改良を行っている。そういう意味では須磨氏は「ブラックペアン1988」で「スナイプAZ1988」を駆使する高階権太のモデルでもあり、チーム・バチスタを率いる桐生恭一のモデルとも言え、作者が如何に須磨氏を尊敬しているかが伺える。
本作では「公開手術はサーカスだ」「医は仁術」といった日本古来の医療倫理にも問いかけている。もちろん命に貴賤はない。しかし医療事業も経済原理の中で動いている以上、カネとは無縁ではいられない。カネのことは誰か偉い人が考えて現場はひたすら医療行為に専念すればいいという考えはブラックであり、またファンタジックだ。質の高い医療レベルを維持しようとすればカネなしでは無理だという現実から目を背けてはいけない。
ところで、本作の天城や「ドクターX」の大門未知子など天才的な手技を持つスーパードクターがエキセントリックな人物に描かれがちなのは何故だろう? -
Posted by ブクログ
桜宮サーガ、炎上。海堂尊著『輝天炎上』が描く医療ミステリーの到達点
本作は、桜宮病院炎上事件から1年後を舞台に、新たな陰謀と謎が渦巻く医療ミステリーです。
物語は、東城大学医学部の学生、天馬大吉が「日本の死因究明制度」を調査することから始まります。調査を進めるうちに、天馬は制度の矛盾に気づき始め、同時に桜宮一族の生き残りが動き出していることを知ります。前作『螺鈿迷宮』で張り巡らされた伏線が、本作でついに回収され、予想を遥かに超える展開に息を呑みました。
複雑に絡み合う人間関係と緻密な舞台設定
本作の魅力は、複雑に絡み合う人間関係と緻密な舞台設定です。桜宮一族、東城大学、そしてAiセンター。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、物語は予想外の方向へと進んでいきます。
特に、Aiセンターの描写は圧巻です。最先端の医療技術が集結した場所でありながら、同時に人間の欲望と陰謀が渦巻く場所でもあるAiセンター。その対比が、物語に深みを与えています。
医療ミステリーと社会派ドラマの融合
本作は、単なる医療ミステリーではありません。日本の医療制度の問題点、そして人間の欲望と倫理観の葛藤を鋭く描いた社会派ドラマでもあります。
特に、終末期医療の問題は、現代社会において避けて通れないテーマです。海堂さんは、このテーマを深く掘り下げ、読者に問いかけます。
『螺鈿迷宮』との繋がり
本作を読む上で欠かせないのが、前作『螺鈿迷宮』です。『螺鈿迷宮』で提示された謎が、本作で解き明かされます。しかし、それは同時に新たな謎の始まりでもあります。桜宮サーガは、まだまだ終わらない。そう確信させてくれる作品です。
最後に
『輝天炎上』は、医療ミステリー、社会派ドラマ、そして人間ドラマの要素が融合した、まさに海堂尊さんの集大成とも言える作品です。桜宮サーガファンはもちろん、医療ミステリー好き、そして社会派ドラマ好きにもおすすめします。
ぜひ、本作を手に取り、桜宮サーガの壮大な物語を体験してください。 -
Posted by ブクログ
読書備忘録894号。
★★★★。
海堂さんの桜宮サーガは全作読破していると思っていましたが、ぽてんヒット食らっていました。短編集です。
基本、白鳥・田口コンビのシリーズですが、今回は加納・玉村コンビが主役。
警察庁のデジタル・ハウンドドッグこと加納警視正と桜宮市警玉村警部補のお遍路道中記。
タマちゃんはリフレッシュ休暇でお遍路旅。桜宮市警なので四国への越境捜査はない。
加納さんはなんやかんや理由をつけた出張名目でタマちゃんに付きまとう。
そして四国は阿波県、土佐県、伊予県、讃岐県で、それぞれローカル事件に巻き込まれ見事解決して回る!という水戸黄門のようなお話。
短編を通した広域捜査として、全国指名手配犯が相次いで四国で入水自殺しているという事件を追う。
自殺後かなりの時間が経っており、死体は腐敗が進んでいる。
よって歯形による個人特定がなされており、歯形を偽装した人生ロンダリングシステム(広域指名手配犯が死んだことで人生を真っ白リスタートできるシステム)が動いていると見た訳です!
桜宮市の指定暴力団竜宮組とネクロ・デンティストが暗躍していると!
各県で起きるローカル事件もクスッと面白いですが、この人生ロンダリング犯罪も面白い!
そして作品に色を添えているのが、お遍路道中宿泊先の秘湯。
加賀さんとタマちゃんは秘湯ミシュラン「秘湯会」の評価委員という肩書があり、秘湯を評価する様子が犯罪評価の大局にあり面白い。
ここでもコードネーム(二つ名)を持つ!
加納さんはスパ・ドッグ(温泉犬)。
タマちゃんはストレイ・シープ(迷える子羊)。
あと、忘れてならないのが中山七里さんの珠玉解説が★5つ!
海堂さんと同い年だって! -
Posted by ブクログ
ブレイズメス1990
海堂 尊 (著)
### あらすじ
カネの亡者!? の天才外科医、現る。
この世でただ一人しかできない心臓手術のために、モナコには世界中から患者が集ってくる。天才外科医の名前は天城雪彦(あまぎ ゆきひこ)。カジノの賭け金を治療費として取り立てる放埒な天城を日本に連れ帰るよう、佐伯教授は世良に極秘のミッションを言い渡す。『ブラックペアン1988』の興奮とスケールを凌ぐ超大作、文庫化。
### 感想
『ブラックペアン1988』に続くシリーズ第2弾。本作では、渡海が去った後、新病院ができた東城大学が舞台となります。医療小説や警察小説は、専門的な世界を垣間見ることができるのが魅力で、独特なヒエラルキーが物語のスパイスになっています。医療や警察の世界がドラマや小説になりやすいのも納得です。
今回の作品では、天才外科医・天城雪彦の登場により物語が大きく動きます。主人公・世良の視点で進む物語は、読者を天城の型破りな生き様へと引き込んでいきます。専門的な内容も多く、フィクションとノンフィクションの境界が曖昧に感じられるほどのリアリティがあり、これは著者・海堂尊さんが元外科医であることが大きく影響しているのでしょう。そのリアルさこそが、この作品の魅力の一つだと感じました。
物語の終盤は続編を期待せずにはいられない展開で、次作が気になって仕方ありません。早く続きが読みたいです! -
Posted by ブクログ
地方の産婦人科医療を取り巻く問題や、昨今の不妊治療を巡る賛否などを織り込んで、ミステリー仕立てに仕上げていてさすが。
導入部はあまり入り込めなかったが、読み進めていくうちに導入で読んだ内容が効いてきて、人物造形にも入り込めて、面白く読めるようになった。特に後半はさながらドラマを観ているかのようでリアリティがあった。
出産や妊娠との向き合い方も、妊婦そして子の父となる男性それぞれだなぁ...という当たり前のこともまた感じた。
解説に書かれていた『マドンナ・ヴェルデ』も読みたい!海堂作品は、作品同士で設定や登場人物の関連性が感じられるのも好きなところ。 -
Posted by ブクログ
新装版 ブラックペアン1988
海堂 尊 (著)
---
### **あらすじ**
1988年、世はバブル景気の絶頂期。「神の手」を持つ佐伯教授が君臨する東城大学医学部附属病院に、帝華大学から「ビッグマウス」高階講師が乗り込んできた。彼が持ち込んだのは、手術の新兵器「スナイプ」。しかし、その導入を巡って「オペ室の悪魔」渡海と真っ向から対立する。そんな中、研修医の世良は大学病院の権力争いに巻き込まれていく——。『チーム・バチスタの栄光』へとつながる、海堂尊ミステリーの原点。
---
### **感想**
以前ドラマを見ていた作品の原作を後から読むという順番になりましたが、やはり映像化作品を先に観ると俳優陣の印象が強く残るものですね。改めて原作を読んでみると、キャスティングの絶妙さを再確認できました。物語の細かい部分はだいぶ忘れていたので、新鮮な気持ちで楽しむことができました。
原作は医療ドラマとしての緊張感や駆け引きが存分に描かれており、医療界の権力構造や人間関係の複雑さがリアルに伝わってきます。特に渡海の冷徹ながらも圧倒的な実力を持つキャラクターは印象的で、物語全体に緊張感をもたらしていました。ドラマでは描ききれなかった部分を補完できるのも、原作を読む醍醐味ですね。
シーズン2の映像化もされたようですが、まだ視聴していないので、まずは原作をじっくり味わいたいと思います。 -
Posted by ブクログ
桜宮サーガ、四編からなる短編集。
シリーズの時系列を振り返りながら読んだ。
────────────
双生(1994年 春)
『螺鈿迷宮』より10年以上前の話。
桜宮小百合とすみれがぐっちーのところに半年間の研修にくる。
星宿(2007年 冬
『ナイチンゲールの沈黙』の一年後。
便利屋城崎の無料お試しサービス券が大いに使われる。
白鳥も登場。
黎明(2012年 春
モルフェウスの領域の少し前。
焼けた碧翠院跡地には、Aiセンターが建つやいなや爆発で崩壊、今は未来医学探究センターが建っている。
不定愁訴外来責任者のぐっちーがホスピス業務について三ヶ月。
氷獄(2019年 春
弁護士日高正義の初仕事は2008年、2年前に起きたバチスタ事件の被疑者氷室貢一郎の弁護だった。
────────────
「黎明」は続きがありそうな終わり方だった。
(まだ書かれていない話?読めてないだけかも。)
なんといっても「氷獄」。
収録された4編で一番長く、文庫本のほぼ半分を使っている。
バチスタ事件の後日譚だが、終わりがのみ込めない。
「氷獄」の後が知りたい、読みたい。書いて欲しい。
芋煮事件は、カレー事件を彷彿させた。
やっぱり、桜宮サーガと呼ばれるこのシリーズの中でも田口・白鳥シリーズが好きだな。
ぐっちーが登場して嬉しくなった。
白鳥の登場さえも喜んでしまった。
現実では、白鳥には絶対に絶対に近寄りたくないけれど、物語をどんどん展開してくれるので読んでてワクワクしてくる。