海堂尊のレビュー一覧

  • アルゴリズムの査証【電子特典付き】

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    もはやジャンルを超越したシリーズとなりましたね。いろいろけりがつく一冊でしょうか? 今後の展開も期待したいです。

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    2026年10月11日
  • 蘭医繚乱 洪庵と泰然

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    ものすごい大作を読み終わった感じがした。

    歴史ものはとにかく登場人物が多くて、名前を覚えるのが大変で、洪庵と泰然の主人公だけでも、出世するたび名前が変わるので、とにかく大変だった。

    でも、ストーリーに引き込まれて、歴史大河ドラマを見た後のような満足感だった。

    洪庵の死んだ後の良順と泰然の会話が何ともミステリーっぽくてよかった。

    たくさんの歴史上の有名人が出てきて、とても勉強になった。
    白鳥啓介に似た名前が出てきたけど、ここからとった?

    福沢諭吉の玄孫は今では「VIVANT」の監督。

    好きな坂本龍馬はでてこなかったけど、
    きっと、こう言うだろう。
    「医療の夜明けぞ!」

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    2026年09月03日
  • ジーン・ワルツ(新潮文庫)【電子特典付き】

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    一時期、海堂尊の本は面白くなくなってきたので、しばらく遠ざかっていたのですが、本書を原作とした映画が公開されたということで、久しぶりに海堂尊の本を読んでみました。
    この本は、かなり面白かったです。

    おそらく、海堂尊は、「行政と医療現場の対立」そして「それによって生じる一般市民への悪影響」を、より多くの人に知ってもらいたいがために、様々な医療問題を扱った小説を書いているのだと思いますが、今回は、不妊治療や産婦人科医を題材に、大学病院での医療の在り方や、厚労省などの姿勢について、海堂尊らしく、鋭く描き出しています。

    現在、妊娠中の方やそのパートナーには、読むことをおすすめします。
    また、医療のあるべき形を考える上で、参考になる本です。

    個人的には、厚労省や警察庁の方の感想を聞いてみたいですね。

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    2026年06月01日
  • スリジエセンター1991【電子特典付き】

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    418P

    「「悲しむべき事に日本には静脈バイパス術以外の術式を実施できる施設がない。日本トップクラスの帝華大も維新大も、静脈置換バイパス術しかできない。だが諸君が医師になる頃には桜宮は心臓外科手術では世界最先端の地域になっているだろう。バイパス手術の完成形、ダイレクト・アナストモーシス(直接吻合術)という術式を実施できる施設、スリジエ・ハートセンターが創設されるからだ。ではここで、世界でも、ここ桜宮でしか実施されないこの術式について講義しよう」」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「悲しむべき事に日本には静脈バイパス術以外の術式を実施できる施設がない。日本トップクラスの帝華大も維新大も、静脈置換バイパス術しかできない。だが諸君が医師になる頃には桜宮は心臓外科手術では世界最先端の地域になっているだろう。バイパス手術の完成形、ダイレクト・アナストモーシス(直接吻合術)という術式を実施できる施設、スリジエ・ハートセンターが創設されるからだ。ではここで、世界でも、ここ桜宮でしか実施されないこの術式について講義しよう」」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「世の中は、思うようにいかないものだな。技術が優れる者には忠義のこころなく、忠誠心の塊のような男の手には技術の神は宿らないのだから」」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「不確定な世の中を渡っていくために大切な能力は三つある。誰よりも遠くを見通せる目、微かな危険も嗅ぎ当てる鋭い嗅覚。そして三番目はツキだ。だがその三つよりもはるかに大切なこと、それがカネを持っている、ということだ」」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「このコメント、食堂の職員に伝えてや。ええか、塩は勇気や。ぎりぎり攻め込んで初めて桃源郷が見えてくるものなのや。それはつまり薄味好きの関西人は臆病者ちうことやがな。それにしても、中途半端に味がいいというのは致命的やな」「自分の出身地をけなしたら、ろくな死に方をしないぞ」」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「改めて写真を見ると、天城は日本人離れした華があるとつくづく思う。だがそんなことより世良は、自分が留守番役になったことに小さな引っ掛かりを感じていた。  天城の手術に何が何でも参加したいと熱望していたわけでもないのに、いざメンバーから外されると、急に自分が不必要な人間に思え、意気消沈してしまった。  世良は机の上のチェスの盤面を眺める。  今回の公開手術には他に不安要素があった。手術を成功させたメンバーががらりと入れ替えられたのだ。器械出しの看護婦、猫田と花房も参加しない。八月に佐伯外科が救急部を創設した余波で、手術室の看護婦と総合外科病棟の看護婦が人事交流を余儀なくされたところに頭の固い手術室の福井婦長の意向が重なり、猫田・花房のゴールデンコンビが外されてしまったのだ。麻酔医も代わった。公開手術が名声になると知った先輩麻酔医が、実力ナンバーワンの田中助手を押しのけ参加してきたのだ。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「絶対君主の寵愛なんて風向きと同じ。今日、西を向いているからといって、明日も同じだとは限りません。そもそも佐伯教授は、この六年で多くの専門科の独立を許してきましたから」と高階講師は苦笑する。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「そこまで口にして天城は絶句する。心臓外科医にとって、腹部とは別世界の異国だ。  高階講師が言う。「米国でバイパス術と胃癌切除術を同時にやった時に思いついたんです。当時のボスに言ったら、一笑に付されましたが。でも今、他に手はありません」  高階講師の声が響く。その後しばらく、沈黙が術野を支配した。  やがて患者の枕元から声がした。「オイラも賛成だ。徳永さんが生き延びるにはそれしかない」  天城は「しかし……」と言ったまま、呆然と鏡部長を凝視する。  観客席がざわめき始めた。鑑識眼を持ち合わせない観客も、術中に突然術野を拡大するという行為を見て、アクシデントが起こっているらしいと理解しつつあった。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「天城の技術は天与のものだが、そうした光景を心臓外科医が共有できたのは、日本の心臓外科界の最大の幸運だった、という心臓外科医は、後に新世紀を迎えた今でも、未だに大勢いる。  天城は一度はこなごなに砕かれた気力を振り絞り、指先に意識と気力を集中させ、一針一針、丁寧に確実に、そして素早く縫合を進めた。  会場の観客たちは呼吸も忘れ、その手技に見とれた。  やがて天城の指先が、すべてのエネルギーを使い切ったかのように止まると、金属のトレーにペアンがからんと滑り落ちた。 「〈オペラシオン・エ・フィニ〉(手術終了)」」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「何を言ってるんですか?」  天城は世良を見つめた。そして笑う。「言っただろ、ジュノ。私の夢は桜宮にさくら並木を植えることだった。だからこうして、ここに植えに来たのさ」「そのさくらの木というのは、スリジエセンターのことでしょう?」「ああ、そうだ。だがそれがダメになってしまったから、せめてさくらの苗木くらい植えて、日本を去ろうと思ってね」  天城が日本を去る?  突然の通告に世良は足下が崩れ落ちるような感覚に囚われた。  さくらの苗木を植え終わった天城と世良は、岬の突端に立ち、大海原を眺めている。  世良が言う。「突然そんなこと言われても困ります。スリジエセンターの創設を待ち望んでいる人は大勢いるんですから」「そんな変わり者が本当にいるなら、ここに連れてきて会わせてくれ」  佐伯教授の名を挙げようとして世良は思いとどまる。天城が聞きたいのは、そんな名前でないことは明らかだ。そう言われてしまえば具体的な名前は誰一人浮かんでこない。手術を実施した梶谷さんと上杉会長のふたりは自分が治った今、センターができようができまいがどうでもいいと思っているに違いない。あるいは市民病院の鏡部長なら、ひょっとしたら賛同してくれるかもしれない。しかし具体的にはそれくらいしか思い浮かばない。  世良は黙り込む。天城のスリジエセンター創設を待ち望む人は、この世界のどこかにいる。それは間違いない。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「私は日本では愛されなかった。ささいなことに反発され、刃を向けられ、足を引っ張られる。患者を治すために、力を発揮できる環境を整えようとしただけなのに関係ない連中が罵り、謗り、私を引きずり下ろそうとする。私はそんな母国に愛想が尽きてしまったんだ」  世良は唇を嚙む。  天城は愛されていない。それは本当だった。  でも、どうしてなのか。  周りのみんなと違うから、だからか。  だが天城が提供しようとしたのは、善意の塊のような手術術式だけだ。  それなのにどうしてこんなことになってしまったのだろう。  次の瞬間、世良の口から出たのは、自分でも思ってもいなかった言葉だった。「逃げるんですか、天城先生」  その言葉を聞いて、天城の顔色が変わる。それは世良の命がけの挑発だった。  だが、天城は世良の真意を見抜いたように笑顔で応じる。「私は、へこたれて帰国を決めたわけではない。二回の手術の失敗は天の啓示なんだ」  世良は息を吞む。そして言い返す。「天城先生は失敗なんかしていません。日本に来て天城先生の患者は誰も亡くなっていない。病気の患者を手術し、元気にして家に帰してあげる。これは手術の成功と呼ぶんです」  世良の懸命な言葉は、しかし、天城のこころにはもはや届かなかった。  別離の時が、刻一刻と近づいてきている。  そのことを、世良は痛いほど感じていた。  そんな時、言葉には何の力もなく、また、何の意味もなかった。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著


    「スリジエ・ハートセンター。〈スリジエ〉とはフランス語で〝さくら〟を意味する。  刻印された言葉がひかりの中で甦る。その響きは新鮮だ。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「おやおや本日のジュノはご機嫌斜めか」  天城の人なつっこい笑顔を苛立たしげに見遣る。天才は無邪気だ。人の気持ちを逆撫でし、うんざりさせる裏側で、いきなり懐に飛び込んできて凡人を虜にしてしまう。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「おやおや本日のジュノはご機嫌斜めか」  天城の人なつっこい笑顔を苛立たしげに見遣る。天才は無邪気だ。人の気持ちを逆撫でし、うんざりさせる裏側で、いきなり懐に飛び込んできて凡人を虜にしてしまう。  彫りの深い貴族のような顔立ちを見つめ、世良は首を振る。「気分はいつもと同じで、変わりません」「エクセロン」と天城がフランス語で答える。そんなキザなセリフが似合う。  ここに来る以前、天城はモンテカルロ・ハートセンターの上席部長の職にあった。手術の腕は神懸かり的で、モナコの王族から勲章と共にモンテカルロのエトワール(星)という称号を贈られている。ブレザー型の白衣の胸には銀の糸でエトワールのエンブレムが刺繡されている。  現在はスリジエ・ハートセンターの総帥だ。ただしまだ施設はオープンしていない。」

    —『スリジエセンター1991【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

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    2026年03月10日
  • ブレイズメス1990【電子特典付き】

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    358P

    ブレイズメス1990はより多く手術代を支払ってくれる患者の命を優先するか否かみたいな医療制度そのものの矛盾とか医療は公共財かビジネスかとか医療倫理がメインテーマだった。

    「耳慣れないアクセントの言葉が流れる。エールフランスなので機内放送はフランス語が優先、次が英語だ。その英語もフランス訛りのせいか、ふだん耳にするのとかけ離れている。気圧の変化のせいか、耳が痛い。機体が乱気流でがたがたと揺れる。「おい、シートベルトをつけろ、とさ」  隣の垣谷講師に言われ、世良はリクライニングシートを定位置に戻すと、ベルトを掛けた。  東城大学医学部総合外科学教室、通称佐伯外科の垣谷講師と世良雅志の小旅行は終わりを告げようとしている。十五時間以上かけてたどりついたパリ・シャルル・ド・ゴール国際空港から乗り継いでニースまで二時間弱のフライト。移動だけでほぼ丸一日費やしたことになる。  窓の外を見ると、眼下には雪を冠した山脈が連なっている。遠く銀色に光る夕暮れの海原が見え、マッチ箱のような家並みが海岸線にへばりついている。」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著


    「「それがどうした?  だいたいモナコ硬貨って何だ?  オモチャの貨幣か?」  駒井は首を振って、言う。「モナコ公国は皇居の二倍程度の面積しかなか、世界で二番目に小さい独立国ですばい。財源は観光、特にカジノが主ですと。国防や一次、二次産業はフランスにおんぶにだっこ。だからモナコは、フランスの顔色を窺いながら生きてきたとです。でも独立国家なので独自の通貨を発行ばしとります。フランスでも使えますばってん、希少価値があってみんなしまいこんでしまうとで、ほとんど流通してないとです」」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著


    「モナコ公国は南仏の海岸線、風光明媚なコート・ダジュールのイタリア寄りに位置する立憲君主制の独立国家だ。独立国家といっても総面積は約二平方キロメートル、人口約三万人と、日本でいえば地方の小都市レベル以下、世界で二番目に小さい国家である。ちなみに一番小さな国家はローマにあるバチカン市国だ。  三十分もあれば国境線の端から端まで歩けてしまう。フランスとの国境には大きな岩が置かれ、モナコ公国の文字とふたりの修道僧が寄り添う姿が描かれているが、そこに必ず国境警備兵が配備されているわけでもない。だから気がつかないうちに国境を越えていた、などということは日常茶飯事だ。」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「モナコには直接税がなかです。だから大金持ちがモナコの居住者になりたがるとです」  駒井は、とあるホテルの前で立ち止まる。「ここがオテル・エルミタージュですと。内部に『冬の庭』というアトリウムがあるとです。設計者は有名なエッフェル、あのエッフェル塔の設計者ですばい」」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「真面目ですねえ。あんな学芸会で踊ることが、何の役に立つんですか?」  敬意を足蹴にされ、垣谷はむっとする。天城は手を打って笑う。「そうやって挨拶をエスプリで返されるとすぐ膨れっ面になるのが、日本人のいけないところです。それではフランス人に相手にされません。彼らは鼻持ちならない連中ですが、ひとつだけ尊敬すべき点があります。それは権威は笑い飛ばすくらいがちょうどいい、と考えている点です。そこは日本人とは正反対ですね」」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「サッカーのことはよく知らないが、現実的なスポーツなんだな。スポーツはたいていスポーツマンシップとかのきれいごとを並べたがるものなんだが」「そうです。サッカーには建前がないんです」「なのにジュノが妙にきれいごとばかり言うのは、いいサッカー選手じゃなかったということか?」  世良はむっとして答える。「サッカーは俺の学生時代のすべてです。大会ではそれなりの成績を残しましたし」「それなら医学生のサッカー界がぬるいのかな」  世良は天城に言い返すのを諦めた。サッカーを知らない上司にバカにされても痛くも痒くもない。世良は横道に逸れた話を戻す。「俺のサッカー選手としての評価なんてどうでもいいです。それより隣の方の名前のことです。悪意なんていうネガティヴな名前は珍しいでしょう?」」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「思うがままの病院を作りたい、という希望を持つ医師は大勢いる。だが、建築家を海外から呼び寄せる、という発想を持つ医師がどれほどいるだろうか。しかも建築の意味を祈りという高みに昇華し、その意思を達成しようと考える医師など皆無だ。  世良は大学病院の先輩医師の顔を思い出す。そんな選択をする医師の顔は浮かばない。敬愛する高階講師ですら、そんな発想は持ち合わせてはいないだろう。高階講師は薄暗い大学病院という塔の中を駆けめぐり、こぼれ落ちそうになる命をすくい上げることにしか興味がない。そして今の東城大学医学部付属病院は、そういう人種で占められている。」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「やだわ、世良先生。私、黄金だらけの地球儀なんて下品なものより、ゴッホのひまわりの方がずっと好きです」「じゃあ桜宮水族館の深海館にリクエストして、ゴッホのひまわりを買ってもらおうか」  花房は首を振る。「要りません。ボンクラボヤが可愛かったから、あそこはあのままでいいんです」「あんなへんてこな生き物が好みなんだ。ぽかんと口を開けているだけなのに」「ずっと眺めていると、なんだか癒されちゃって」「そう言えばこの間、ウチの大学の海洋研究所の所長が、最近、ボンクラボヤに続いて、ウスボンヤリボヤとかいう新種を見つけたらしいよ」「桜宮湾って新種の宝庫なのかしら」  ふたりの会話が途切れた。花房は周囲を見回し、ため息をつく。「みなさん、きれいですね。日本がお金持ちになったのは本当なのかも。でも私なんてお洋服もみすぼらしいし……」」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「人によってさまざまなものをカネよりも大切だと思うだろうが、上杉会長のように功を成した人物にとって、金銭はもはや欲望の対象ではない。彼のような成功者が最後に欲しがるものは何だ?」  世良はじっと考えこむ。やがて力なく首を振る。天城はひと言で答える。「それは、名誉だ」  天城は続ける。「名誉とは、他人が誉め称えてくれて初めて成立する。手術が成功すれば、上杉会長は財産の半分を寄付し、スリジエ・ハートセンター創設基金を作る約束をした。それは地域の一大医療センターとなり、上杉会長とその分身、ウエスギ・モーターズは公共福祉に貢献するという名誉を手にする。桜宮市から大小さまざまな特典のキックバックを受けるという実利もある。その寄付という形をとるメリットを最大限に享受できるようにするために、わざわざ桜宮市の釜田市長の懐刀、村雨秘書にまでお越しいただいたわけだ」」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「本読みとしての幸せとは一体何だろうと考えたとき、それはもちろん面白い一冊の本を読むこと、それまで知らなかった本の魅力を発見すること、その読後感をたっぷりと味わうことであるというのは当然過ぎて論を俟たないところですが、それに次ぐ幸せは何かと言えば、これはまったく個人的な見解ではありますけれど、その『面白い一冊の本』を著した作者の本がたくさん書店に並んでいるのを見ることであると、僕は考えています。」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「基本的に僕は、読み終わった本の感想を、人と語り合うみたいなことはあまりしないのですが、海堂小説をどういう順番で読み、そしてどんな感想を持ったかという話を誰かとしたら、それがかなり白熱する議論になるだろうことは想像に難くありません。  もちろん、あるシリーズでは脇役だったキャラクターが、別のシリーズでは主役級の活躍を見せるといった展開にも胸が躍ります。本書『ブレイズメス 1990』、それに本書の前作となる『ブラックペアン 1988』にもそのような仕掛けがあり、それに気付いたときの「ああ!」という感覚は、是非味わっていただきたい絶品です。ここで詳しく、あの本に出てくるあの人物がこの本に、とか、このキャラクターはのちにあの本に出てきちゃうんだよと、逐一説明したいのは山々なのですが、それは野暮も極まりないことなので、当然ながらしません。私的に人物相関図と年表を描いて楽しむというのは、やや本読みの幸福からは逸脱してしまっている気もしますけれど、そんなことさえしたくなるほどに、そして実際にやってしまうほどに、海堂ワールドの人間関係、因果関係はエキサイティングなのです。」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「2018年春、「ブラックペアン」がドラマ化され、新たな読者を獲得しました。でもネットでは、私の既刊が書店にないという声が多数ありました。一日二百点以上の新刊が刊行される現状では過去の作品が全て書店に並ぶことはありえず、やむをえないことですが、だからといって商業流通の問題で、私の物語に興味を持ってくれた読者をむざむざ逃してしまったのはなんとも無念。というわけで過去の作品を読者に届けたくて、電子書籍刊行に踏み切ることにしたのです。あとがきの最後に「桜宮サーガ」の作品群の年表と作品相関図を付けるのも、興味を持ったら全作品読破してくださいね、という作者の隠された意図の発露です(隠してない)。人間のコンプリート欲を刺激する隠れ戦略(全然隠してない)に乗ってもらえれば、より深く作品世界を楽しんでいただけることでしょう。」

    —『ブレイズメス1990【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

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    2026年03月09日
  • 新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】

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    322P

    「時代は平成に移り二十年。振り返ってみると、その間に社会は驚くほど変貌した。そして医学界もまた激変の波にのまれる。  一九八八年当時を今振り返ると、そこには現在の医療問題の総ての萌芽が見られる。近年、医療制度の崩壊が指摘されているが、そうしたことはある日突然生じたわけではない。緩やかに、だが着実に崩壊へと向かっていったのだ。」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「無慈悲な大学病院も、たまには粋なはからいをする。新人勤務開始は黄金連休明けに設定されているのだ。国家試験から連休までの一ヵ月間は、外科医にとって最長の、そして最後の長期休暇だ。せいぜい目一杯楽しめ、という親心にも思える。医学部卒業生はたいてい海外へ卒業旅行に出かける。世良もヨーロッパを二週間ほど気儘に旅していた。だが、バカンスは終わり、長く憂鬱な季節が始まる。」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「布が被されると唐突に、術野という新しい世界が出現する。それは人間を肉の塊に変えるための儀式だ。  単なる物体と化した肉塊を前に、全身を青い服に包んだ二人の男が佇む。ゴム製の手袋で覆われた両手を胸で組み合わせ、敬虔な祈りを捧げるようにうつむく。  彼らは手術室に神が降臨するのを待っていた。  扉が開いた。佐伯教授は大股で、一気に玉座に着いた。一同、礼をする。「メス」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「他人の腹の中を覗いている間は、地獄の縁の散歩中だ。グズは針山に叩き落とすからな」  世良は、佐伯教授の怒声に震え上がり身を硬くした。  人間という生物は、じっとしていられるようには出来ていない、ということを世良は実感させられていた。動いている方がラクで自然だ。動かないという仕様にはなっていない身体を固定するには、相当のエネルギーを必要とした。  腕が震える。その震えは鉤の先端に伝わる。その度に佐伯教授の怒声が飛び、怒声の三回に一回の割合で、サンダルが世良の脚を直撃する。」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「どうやら西崎君の教育は、あまり芳しくなさそうだな」  高階講師は佐伯教授を見返す。「西崎教授は、手術手技はともかく後進指導に関しては悪くないと思います。問題は佐伯外科の現状ですよ。医育機関としての大学病院という側面から見れば由々しき事態です。これでは佐伯外科は人材を育てるのが下手だ、と言われかねません」「高階、言葉が過ぎるぞ」  黒崎助教授が声を荒らげた。場に居合わせた人々は、息を吞んで成り行きを見守る。その時、笑い声がけたたましく部屋中に響いた。」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「理由は簡単さ。本人が昇進を断り続けているからだ」  世良は驚いた。昇進を断る外科医がいるなんて信じられない。「何で、昇進を断るんですか?」「そんなつまらないことの理由を知りたいのか?」  突然の背後からの問いかけに、振り返る。そこにはぼさぼさの髪を揺らした渡海が佇んでいた。渡海は笑う。「垣谷、相変わらずどうでもいいことばかりぺらぺら喋るヤツだな。そんなんじゃ、助教授程度にしかなれないぞ」「そんなこと、渡海先生には言われたくないです。糸結びの練習をバカにする外科医なんて、私は認めません」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「手術は必ず成功させます、だなんて外科医には禁句だろ。そんなことあり得ないんだから。告知では、きちんと失敗の可能性を伝えることが大切だ」「渡海先生は、ご自分のキャリアが大切なんですか?」  高階講師はあっけらかんと尋ねた。渡海の眼が暗く光る。「キャリア?  そんなもん、俺が後生大事に抱え込んでいるように見えるか?」「そうは思えなかったので、お尋ねしたんですが」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「聞き方を変えよう。手術が上手なら、患者を助けられると思っているかい?」「渡海先生が考えているみたいに、ですか?」  世良は反射的に問い返す。高階講師はうなずく。「そうだ」  世良は少し考えて、答える。「わかりません」  高階講師は世良を見て、笑顔になる。「良い答えだ。媚びもせず、かといって卑屈でもない」  高階講師は世良に言う。「あわてて答えを出す必要はない。ゆっくり考えればいい。だがこれだけは言える。手術手技が優れていても、それだけではダメだ。患者を治すのは医師の技術ではない。患者自身が自分の身体を治していくんだ。医者はそのお手伝いをするだけ。そのことは決して忘れてはならない」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「世良、ずいぶん糸結びがうまくなったな」  世良の眼が笑う。垣谷が続ける。「一年生の中では、一番糸結びの練習をしているもんな。継続は力なり、だ」  最近では、先走りの北島はサボりがちで、今や世良は、一番練習熱心な一年生だという評価が定着していた。  糸結びの練習は世良に合っていた。ひとつ結ぶたびに、自分の外科医としての技量が向上していくような感じがして、楽しかった。それはちょうど、サッカー部でリフティングの練習に凝った頃の感覚と似たところがあった。単調なくり返しがほとんど無意識レベルになったある日、試合の局面で滑らかに相手を抜き去る瞬間が訪れる。たぶん手術でも同じような時がくるはずだと、世良は信じていた。そしてあの頃、気がつくとリフティングをやっていたように、指先がいつの間にかボタンにかけた糸をつまんでいる。世良の白衣のボタンには、よじれた糸の花が咲き乱れていた。病棟看護婦たちは、誤って落とした絹糸の束を、優先的に世良にプレゼントするようになっていた。」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「渡海の技術には外科医を惹きつけてやまない、妖しい魅力がある。だが果たして、今の世良の実力で先ほど渡海が垣間見せた煌めきを追いかけることができるだろうか。自問すれば、答えは当然ノーだ。  渡海は、世良の肩をばんばんと叩く。「迷うな、少年。佐伯外科の秘蔵ッ子、この渡海センセが直接一年坊の指導に入るなんて数年ぶりの快挙だぞ。にっこり笑って、がっつり受けろ」  渡海は垣谷に向かって言う。「さっきの止血の件は、垣谷に貸しだな。早速チャラにさせてもらうか。明後日の胃亜全摘術の術者を俺に譲れ」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「高階は片手の指をいっぱいに開き、世良の目の前に突き出した。「何ですか?」「私がこれまでに、手術で殺めた人の数だ」  高階の答えに、世良は絶句した。高階は世良を見つめ、言葉を続ける。「私は手術で五人、患者さんを殺めている。今でもひとりひとりの顔を時々思い出してしまう。そんなことをしても、私のメスが患者さんを殺めたという事実は変わらない。それなのにどうして意味のないことを考え続けているのか。そしてどうして、五人も殺めた私は外科医であり続け、一人も殺していない世良君は外科医を辞めようとしているのか」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「世良先生は本はあまり読まないんですか?」「そうでもないけど、去年は受験生だったし、今年は今年で、下っ端の外科医だから、最近は本なんて読む暇がないなあ。考えてみたら映画だって二年ぶり、かな」  世良は思い出す。最後に見たのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という SF映画で、その時隣に座っていたのは、すっかり疎遠になった恋人、祐子だった。  世良は、駅ビルの向かいにある映画館を見上げて言う。」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「花房さんって、映画が好きなんだ」  花房は、世良を見た。それからうつむく。「そんなに見ているわけじゃないんです。友だちと休みが合わないから、ひとりで映画を見ることが多くて」  花房は手術室ただ一人の一年生看護婦だ。病棟と手術室は勤務形態が全然違う。病棟は勤務時間が不規則だが、手術室は規則正しいから、同期とはなかなか予定が合わないのだろう。世良は意地悪く、花房に尋ねる。「恋人と行けばいいじゃない」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「藤原婦長はいつも言っています。あれでウデが良くなかったら、今すぐ八つ裂きにしてやるのに、って」  オレンジジュースのストローを指でつつきながら、花房は続ける。「手術開始時間は守らないわ、手術が終わるとさっさといなくなるわ。せめてその後、病棟で仕事をしているフリでもしてくれればまだ何とか我慢できるのに、外科控え室に引きこもって、がんがんロックをかけまくっている。あれで評判がいいわけないです」「そうだろうね。最低という評価は当然だよ。でも、それなら最高って何?」「手術手技です。早くて正確。それだけではなくて、渡海先生の手術を見ていると、バックにロック音楽が聞こえてくるような気がするんです」「そんなこと、手技の素晴らしさとは全然関係ないだろ」  花房は首をひねりながら、考え込む。それからぽつりと言う。「でも、見ている人間に音楽を感じさせるということは、手技の完成度が高い、ということではないのかしら」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「 高階講師は肩をすくめる。「佐伯教授の参謀になれ、と仰しゃるんですね。こういう役は渡海先生の方が適任かと思いますが」  佐伯教授はたなびく紫煙に眼を遣りながら、呟く。「あれは信用できん。いつ、私の寝首を搔くか、わかったものではないのでな」「なぜ渡海先生が、教授の寝首を搔くんですか?」  高階講師の問いかけに、佐伯教授は眼を細める。「この古い教室には、小僧ッ子にはわからない因縁が転がっているんだ」  高階講師は煙草の火を、砕けた硝子の灰皿の破片に押しつけて消す。「で、やるのか、やらんのか」  高階講師はため息をつく。「仕方ない。やりますよ。あまり好きなタイプの仕事ではないんですがね」「相変わらず、口の減らないヤツだ」  佐伯教授は白眉を上げて、うっすらと笑った。」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

    「「お前だけには、本音を伝えておこう。私が病院長を目指す理由はもうひとつある。てっぺんに近づけば近づくほど自由度が上がるからだ。自由度が上がれば、自分より能力が低い連中にとやかく指図されなくなる。偉くなればその分、自分よりバカな人間が上にいる確率が低くなる。そのためだけに私は病院長になるのさ」」

    —『新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】 ブラックペアンシリーズ (講談社文庫)』海堂尊著

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    2026年03月07日
  • ブレイズメス1990【電子特典付き】

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    天城の飄々としつつも心の中では患者のことを誰よりも考えている姿が好き。
    終わらせ方はちょっと無理やりな気もするけど、そこも天才っぽさを感じる。
    四面楚歌だらけで戦った天城、かっこいい。

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    2026年03月02日
  • 新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】

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    ネタバレ

    天才外科医が使う新兵器「スナイプAZ1988」が登場。ライバル同士に散る火花、バックボーンにある医師の使命感など盛り込まれ、シリーズに親しんできた故の親密感が戻ってきて、楽しみながら読んだ。
    東城大学総合外科教室は今回も大荒れです。

    成長した医師たちの活躍は、もう田口・白鳥のシリーズで読んでいるが、今回は田口さんもまだ学部の二年生、同期の速水、島津とともに研修に来る。おお速水さん田口さんは同期だったの、と改めてびっくり。

    教育指導に指名された世良は、国家試験前で結果待ち。
    看護師の藤原婦長も若い、空き場所を探して昼寝をする変わらない猫田、初々しい新人の花房もいる。
    新人の三名はまず手洗いから、食道癌の見学で血管から噴出した血を見て田口が失神する。これで彼の将来が決まった。糸結びをみて速水は将来優秀な外科医になると世良は判断する。

    佐伯教授の外科教室に帝華大から高階講師が来る、彼は食堂癌の吻合部分に使う「スナイプ」という新兵器を持ってきた。ハーバードに二年間研修にも行った俊英で、手術の腕には定評があった。見事なメス捌きで短時間に手術を終え、「スナイプ」の威力を見せ付ける。

    彼は世良の指導医になり、時には助手に指名して新米の世良を驚かせる。しかしそれを快く思わない渡海がいた。
    渡海は過去に佐伯教授と何か因縁があるらしい。昇進を頑固に断り、手術室の隅の部屋に住み着いている。腕は優秀で、高階講師の留守の時、世良たちの前で困難な患者を助けて見せる。

    佐伯教授が学長に立候補し当選確実だと思われた日、札幌の大きな学会で講演することになっていた、そのとき教授の執刀した過去の手術の真実が明るみに出る。
    教授はどうするのか、医師の良心が問われる場面で、問題のブラックペアンが登場する。
    そのとき高階は、世良は、そして渡海は。
    三人の心に奥深くに、その日の出来事が刻まれる。


    親しみがあったからか、ページ数も少なく早く読みきってしまった。新米医師の世良はその後どうなったのだろう。「チームバチスタ」に名前が無い。
    探してみると、世良医師が出る二つの続編が出ていた。
    「チームバチスタ」シリーズもみんな読んだつもりだったが、二冊も読み残しがあった。

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    2026年02月15日
  • スリジエセンター1991【電子特典付き】

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    ネタバレ

    スリジエセンター構想、天城の思い届かずが悔しい。荒波しかなかったが、患者のために尽くす天城はカッコよかった。ドラマとは違い弱さを見せる天城に惹かれた。本当にジュノと共にあり続けてほしかったと心から思う。

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    2026年01月21日
  • スリジエセンター1991【電子特典付き】

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    海堂尊の作品は、どんなにゆっくり読もうと思っても、登場人物たちの論理の言い合いに読むテンポを奪われて、どんどん早く読み進めさせられてしまう。
    きっと頭の良い人は、間を置かず瞬時に言葉を発するのだろうと、自分で勝手に思い込んでいるせいかもしれない。
    そして、登場する人物たちは、まさに頭が切れるロジカルモンスターばかりだから、余計に読むスピードが速くなってしまう。
    会話や物語りの流れもそうだけど、独特の言い回しや言葉のチョイス、文字の力がとても強いのだと思う。
    でも、それは決して不快ではなく、ただただ、もっとゆっくりその作品に浸っていたいのにと惜しんでしまうだけ。
    読む勢いに任せてシリーズの一気読みをすると、意外と気持ちいいかもしれない。

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    2025年09月26日
  • スリジエセンター1991【電子特典付き】

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    何故………天城先生………何故………

    「ブラックペアン」シリーズ3作目、完結編。
    2作目に引き続き、今回のメインキャラクターは主人公の世良、天城、高階、佐伯、それに加えて佐伯外科の腹心にして助教授の黒崎。
    今回は東城大付属病院内部の権力争いがメイン。
    天才的な天城に魅せられながらも直属の上司である高階との板挟みに苦悩する世良に導かれながら、私達もその苦悩を体現しているような息苦しさが続く。
    物語の終わりも青天の霹靂で、苦悩から開放されたスッキリ感はありながらも、切なさが余韻として残る。

    「ブラックペアン」「ブレイズメス」「スリジエハートセンター」とボリューム感はあるが、是非一気読みしてもらいたい作品。

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    2025年08月05日
  • ひかりの剣1988【電子特典付き】

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     「チーム・バチスタの栄光」でお馴染み、桜宮サーガの原点とも言える作品『光の剣1988』。桜宮サーガに登場する切れ者・速水晃一の若き日の姿が、剣道部の熱い青春とともに描かれます。東城大学の「猛虎」と称された彼の前に現れたのは、宿命のライバル、帝華大学の「伏龍」こと清川吾郎。
     剣に懸ける2人の青春に胸が熱くなります。そして白熱する試合の描写は迫力があり手に汗握ります。最後まで一気読み間違いなしです。

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    2025年05月17日
  • 救命―東日本大震災、医師たちの奮闘―(新潮文庫)

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    地震と津波が全てを奪い去った東北の各地で、懸命の医療活動を行った9名の医師たちの貴重な証言を記録したものです。どの医師の語った経験も壮絶そのもので、彼らが人間と医師の尊厳を失わなかった姿に打たれます。




    この本は甚大な被害を及ぼした『3・11』の東日本大震災の時に、津波が全てものを押し流したあとの現場で医療活動に当たった9人の医師の証言を基にしたものです。

    どの医師も壮絶な『命の修羅場』を語っており、感動よりもむしろ、こうまですさまじい意状況に身を置きながら、医師として、人間としての尊厳を失わずに粛々と自分のなすべきことをしていた、ということが書かれており、そこにはただただ頭の下がる思いでありました。

    その中の一人は自分の中に
    『お前は医者じゃないのか!?』
    という声が聞こえ、自身の仕事に一区切りをし、東北大学で研究をしようという直前に遭った震災直後の現場で医療活動を行っていた、という話はとても自分の印象に残っています。

    次に、震災で心の傷を負ってしまった方に寄り添うような治療をしていた精神科医も最初は「ハイ」になって、しゃにむに医療活動をしていたそうですが、後にゆり戻しが来て何度も何度も喪失の悲しみで声のかれるまでおお泣きした、というエピソードも強く僕の心に残っております。

    阪神・淡路大震災で学んだことのひとつとしてご年輩の方が震災で孤立したときに精神的な我慢の限界になって自ら命を絶ってしまったことや、孤立死をしてしまい、いかに東日本大震災のあとに孤独死や自殺を食い止めることが大きな課題であり、阪神・淡路大震災の教訓がいい意味で生かされたのだな、ということを感じました。

    まだまだ復旧のめどはたちませんが、ここに書かれているお話はなんともすばらしいものがありますので、ぜひとも風化してほしくはないと思っております。

    ※追記
    本書は2014年2月28日、新潮社よりその後の取材を追加した上で『救命: 東日本大震災、医師たちの奮闘 (新潮文庫)』として文庫化されました。

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    2025年04月07日
  • 新装版 螺鈿迷宮【電子特典付き】

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    「『螺鈿迷宮』―医療ミステリの新たな境地

    医療ミステリの巨星、海堂尊が描く作品は、常に私たち読者に新たな視点と深い洞察を与え、物語の世界へと引き込みます。『螺鈿迷宮』もまた、その例外ではありません。特に本作は、従来の田口白鳥シリーズとは一線を画し、医療現場の奥深くに潜む闇や、現代社会が抱える複雑な問題を、より鋭く、そして深く描き出しています。

    登場人物たちの葛藤と、緻密に織りなされる物語

    本作の最大の魅力は、単なる事件の解決に留まらず、医療業界が抱える多岐にわたる課題や、時に残酷なまでに冷徹な現実を、容赦なく読者の目に突きつける点にあります。医療従事者が日常的に直面する倫理的なジレンマ、そして病院経営の裏側で繰り広げられる人間模様が、緻密な筆致で描かれており、読者は単なるエンターテインメントとしてだけでなく、現代医療の問題点について深く考えさせられるでしょう。

    また、海堂尊作品ならではの、魅力的な登場人物たちも、本作の大きな魅力の一つです。主人公である医学生は、冷静かつ論理的な思考を持ちながらも、人間らしい弱さを抱えており、読者は彼に深い共感を覚えるはずです。登場人物たちの間で交わされる会話、そして彼らの行動の裏に隠された動機が、物語が進むにつれて徐々に明らかになっていく構成は、読者を飽きさせません。

    医療業界の闇、そして現代社会への痛烈な批判

    『螺鈿迷宮』は、単なるミステリ作品としてだけでなく、現代社会が抱える問題にも鋭く切り込んでいます。特に、医療現場で頻繁に発生する「利害関係」と「倫理」の衝突を主要なテーマとしており、現代の医療行政に対する痛烈な批判が込められています。人命を預かる神聖な場所である医療現場も、利益、制度、政治といった複雑な要素が絡み合い、多くの矛盾を抱えています。海堂尊は、登場人物たちの行動や選択を通して、その複雑な現実を鮮やかに描き出しています。

    田口白鳥シリーズとの比較:進化し続ける海堂尊の作風

    『螺鈿迷宮』は、海堂尊の代表作である「田口白鳥シリーズ」と多くの共通点を持ちながらも、そのアプローチには明確な違いが見られます。田口白鳥シリーズでは、医療ミステリというジャンルの中で、様々な倫理的問題を扱いながらも、シリアスなテーマの中に軽妙なユーモアを織り交ぜている点が特徴です。一方、『螺鈿迷宮』では、より深刻な問題に焦点を当て、医療業界の矛盾や現代社会に対する深い考察を、より色濃く打ち出しています。

    本作は、現代の医療問題や社会問題をより深く掘り下げており、医療に関する専門知識がない読者でも十分に楽しめる内容でありながら、同時に多くの示唆に富んでいます。田口白鳥シリーズが「軽さ」や「ユーモア」を大切にしているのに対し、『螺鈿迷宮』は「重さ」や「深さ」に重点を置いていると感じました。

    『螺鈿迷宮』は、医療ミステリの新たな境地を切り開いた作品として、多くの読者に推薦できる傑作です。」

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    2025年03月22日
  • 新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】

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    この本いいですよ!と紹介されて購入。
    ドラマは見ていなかったので、初めてのブラックペアンでした。

    最初は、全くペアンが何かわからなかった私でしたが、読み進めるうちにただの医療器具ではなくていろんな人の想いや辛さ、苦しさが詰まったものなんだと痛感しました。

    自分も外科手術を受けたことがありますが、手術される側にとっては一瞬でも、手術されている側にとっては日々闘いだし、その背景にも見えないやり取りが繰り返されていることもあるのかと思うと、どきどきしました。

    これを経て、ドラマも見てみたいと感じました。

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    2025年03月07日
  • 救命―東日本大震災、医師たちの奮闘―(新潮文庫)

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    (2021時点での感想です)
    今年は、2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災から10年目。 それと関係なく、いつ買ったかも忘れたくらい前に買った本でしたが、今年に入って読みました。
    震災時に尽力した医師たちのインタビュー集とでも言ったもの。2014年発行。海堂尊監修。

    尾身茂さん登場
    本書で最初に登場するのは、南三陸志津川病院で働いていた医師。親戚のおばさんも通っていた病院ですから、いきなり引き込まれました。その他の医師たちも個性派揃いで、面白いです。 その最初の医師の言葉の中で、唐突に尾身茂医師の名前が登場します。なんの注釈なしで出しても不自然じゃないというくらい、名の知られた、優秀な医師だったんだなと思いました。
    「だった」、二通りの解釈ができる言葉ですね。 過去は優秀だったけど、今はそうでない。 優秀ということを、自分は知らなかったけど今知った。 どちらかは敢えて書きません。

    オートプシー・イメージング(Autopsy imaging、Ai)
    海堂さんの本ですから、いつ出てくるのかと思っていたら、後書きで出てきました。
    「チーム・バチスタの栄光」が2006年。震災のあった2011年、それこそ、多数の死者の情報を調べるためには大きな武器となって良ささそうに感じますが、活用されなかった。本書の文庫版が出た2014年でも、海堂さんは怒りをぶちまけている。 正直、なぜこれが広まらないかが、部外者から見ると全くわからないです。 後書きで示唆されているのは、警察組織のプライド? 必要な死後解剖はできる、やっている、ということでしょうか。 分からなくもないですけど、他にやることいっぱいあるでしょう、という感想です。

    赤十字社への寄付の活用
    さらに重たい話が出てきました。 素人でも想像できるように、市民の善意は日本赤十字社に寄付として託されることが多いと思うのですが、多額の寄付を集めながらそれが活用されずに留保されているという話。
    2021年のコロナ禍対策として確保されている予備費が執行されずにいるという件とも繋がるような…

    復興予算の流用
    もっと重たい話。復興予算という名目に反して、結局直接的な目的とは異なる分野に流用されたという話。
    使えるものは使おう、と考えるのはある意味自然な話。けど、それをコントロールするのが政治の仕事。そもそも、復興という状態が曖昧なのはおくとしても、現時点で復興完了と考えるかの認識は問われる。
    2021年4月時点で、郡山市の仮設住宅はまだ3戸残っている。
    2月時点で、宮城県の復旧・復興事業369箇所のうち、完成は259箇所。
    ・・・ 後書きの中で、ええじゃないか、という言葉も使われていましたが、これからオリンピックというお祭りの中で、まさに狂乱の世界に入っていくのか・・・

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    2025年02月16日
  • 医学のたまご【電子特典付き・角川文庫版】

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    主人公は『ジーン・ワルツ』や『マドンナ・ヴェルデ』(共に新潮文庫)で生まれた双子の内の曾根崎伸一郎の息子として育てられた薫君です。僕にとっては親戚の子供が成長した姿を見たような気がして嬉しかったです。




    この本の主人公は『ジーン・ワルツ』や『マドンナ・ヴェルデ』(共に新潮文庫)の中で生まれた双子のうちの曽根崎伸一郎の息子として育てられた曾根崎薫君の物語です。

    この本を読みながら、僕は親戚の息子さんが中学生になったときのような気持ちで彼に寄り添うことができました。

    僕は平素、あまりミステリーは読まないのですが、この本は面白く読むことができました。

    物語は主人公の中学生、曾根崎薫君がゲーム理論の権威である父親の曾根崎伸一郎が作った潜在能力テストで当然ながらといえば当然の結果ですが全国で1位になってしまったことから物語が始まります。

    その結果に目をつけた東城大学の医学部で研究をする。そこでの話がメインになります。そこで薫君は先輩である高校生の佐々木君や研究生活を送る桃倉さんと一緒にある医療の研究をすることになります。

    彼らは『画期的な』結果を示すのですが、指導教官の藤田教授の姦計にはまって薫君は自分の名誉を失う危機にさらされます。

    そんな息子の危機に父親である曽根崎伸一郎氏が寄り添う姿は、たとえ日本とボストンのマサチューセッツと距離は隔ててあっても、『ジーン・ワルツ』や『マドンナ・ヴェルデ』では描かれていなかった少し変わっていながらも愛情あふれる姿に感銘を受けました。

    ハイライトは論文のミスを謝罪する記者会見での怒涛の展開と藤田教授と曽根崎伸一郎が薫君を挟んで間接的にせよ対峙する姿に、手に汗握るものを感じました。

    しかし、薫君は自分の名誉を守った代わりに…。結末はどうか本書で確認をしていただきたいのですが、やはり、『声を上げる』ということと、自分の勇気に従うことが大事だということと、科学のすばらしさと大人も子供もないという世界の恐ろしさ。

    そして、薫君の活躍ぶりを今後も期待するとともに曽根崎理恵に引き取られた双子の片割れである忍の物語も出来れば読んでみたいなと思いました。

    ※追記
    本書は2020年4月24日、KADOKAWAより一般文庫版『医学のたまご (角川文庫)』として文庫化されました。

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    2024年12月28日
  • 新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】

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    TVドラマでブラックペアン2が放映されたので1の原作を読んでみた❗️

    物語途中でバチスタシリーズの主要登場人物である、速水、島津、
    田口公平が学生、花房美和もまだ新人ナースとして登場して花を添えている

    最後にブラックペアンの意外な秘密が明らかに✌️

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    2024年12月15日
  • スリジエセンター1991【電子特典付き】

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    ネタバレ

    原作はドラマとは全く異なります。
    ブレイズメス〜スリジエセンターは敗者の物語です。
    モナコと日本の違い、大学病院の出世争い、医療のための戦い。
    天城雪彦はジュノを支えに懸命に戦いましたが、勝てませんでした。
    悲しい結末を迎えてしまいますが、天城が咲かせた桜と、彼が灯した小さな火は、未来に紡がれていきます。何度読み返しても、好きな作品です。
    海堂作品の一番はバブル3部作だと思ってます?

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    2024年10月20日
  • 新装版 ブラックペアン1988【電子特典付き】

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    ネタバレ

    私はこの本をドラマブラックペアンで知りました
    この本とドラマの内容とは違い担当分野がドラマは心臓本は胃だったのでどちらも観る価値があります

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    2024年09月22日