あらすじ
【電子書籍限定! 特別あとがきに加え、海堂ワールド作品相関図他、豪華9本立て巻末付録を収録!】「チーム・バチスタ」「ブラックペアン」の著者が挑む新境地! 幕末、東西に私塾を創った二人の蘭方医が天然痘撲滅に挑む、著者渾身の歴史医療小説。〈STORY〉江戸時代後期、医者に憧れを抱くひとりの青年が、大坂なにわ橋の上で佇んでいた。青年の名は田上惟章――のちに「緒方洪庵」と名乗る人物である。貧乏藩士の三男坊だった彼は、大坂で師・中天游と出会い、蘭学にのめり込んでいく。同じ頃、江戸で祝言を挙げるひとりの青年が、医者の道へ歩み出そうとしていた。彼の名は田辺昇太郎――のちの「佐藤泰然」である。知り合いの商人から異国の話を聞いた昇太郎は、蘭学がこの先の世に役立つと考え……。真面目な洪庵と、破天荒な泰然。長崎で同じ時期に蘭学を学んだ二人は、互いをライバル視しつつも、その歩みは蘭学を大きく発展させ、それぞれ立ち上げた私塾は「西の適塾、東の順天堂」として、若者にとっての憧れの学び舎となっていく。そして二人は、世間を脅かす「天然痘」の撲滅に挑むのだった――。
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Posted by ブクログ
登場人物多すぎて、辟易したが、いつのまにか引き込まれた。幕末を医師、緒方洪庵の目を通して観ると、また違った一面が。しかも、知らなかった洪庵の別の功績も垣間見れた。敗戦以上の価値観の転換。今のアメリカの混乱、珍しくもないか…泰然さん、いい。彼のこともっと知りたくなった。「踵にこびりついた飯粒がやっと取れた心地」なるほど、こんな表現もあるんだ。
Posted by ブクログ
幕末に緒方洪庵と佐藤泰然が天然痘撲滅に挑む話とあるが、この二人を視点にして幕末の動きを描いた話。この時代の話は何度も見たり、読んだりしているが、新しい視点で描かれるとなかなか面白い。しかし、今野敏さんも最近同じような時代の話を書いており、ブーム?
Posted by ブクログ
幕末の医療事情を緒方洪庵と佐藤泰然を通して描く歴史小説。
著者らしく対比させ方がうまいです。
西の洪庵、東の泰然とはうまく言ったものです。
それぞれの子供親族だけでなく門下生たちも綺羅星のごとく素晴らしい。
どうしても大村益次郎や福沢諭吉を輩出した適塾に目が行きがちですが、泰然の方も子供が松本良順(順)や林董と優れています。
ラストの洪庵の死の真相をミステリー的にしたのが著者らしいといえますが、松本良順に対してはひどいかなと思いました。
Posted by ブクログ
江戸時代後期から幕末にかけ、蘭医学の発展を目指して活躍した緒方洪庵と佐藤泰然に焦点を当てた歴史医療小説。
二人は「西の適塾、東の順天堂」と呼ばれる名門塾の創始者。後生に名を残す多くの人材をそれぞれ育成しながら、当時の人々にとって脅威だった「天然痘」の撲滅に心血を注ぐ。
二人が生きた幕末は、異国船打払令、シーボルト事件、モリソン号事件、蛮社の獄、安政の大獄、桜田門外の変など、動乱の時代。
外国に対する攘夷論が渦巻く中、各地の蘭方医たちが協力して、外国発祥の牛痘法普及に奔走する。
洪庵は非常に律儀で生真面目、対する泰然は豪放磊落、対照的な二人だが彼らの人生は不思議に同期し、お互いに理解しあう。
どちらかというと、洪庵の適塾にウエイトを置いて構成されており、その門下生の顔ぶれにすごみを感じる。村田蔵六(後の大村益次郎)、橋本佐内、福沢諭吉が適塾出身だとは知らず、勉強不足を痛感した。
しかし、登場人物の多さにはまいる。著者の医学の歴史に関する造詣の深さには感服するが、それぞれの人物像にこだわるとページがなかなかめくれない。再々名前が出てくる人物がどんな人だったのか、ページを戻ろうとすると、大変な時間を要するため、理解を無視して読み流す箇所が多かった。
学究肌で秩序を重んじるが、融通が利かず、臨床より学問にこだわる洪庵、蘭書より実際の外科手法に重きを置き、経済や政局についても目を向け、先を読む能力に優れた泰然。この二人が異なるアプローチで蘭医学の発展に寄与していく、一言でいうと、これがポイントだが、この本には、医学を中心に歴史史実がこれでもかというほど詰まっている。
NHKの大河ドラマとして採用されても違和感はない、そう感じさせる力作である。