柴田哲孝の作品一覧
「柴田哲孝」の「下山事件 真相解明」「ジミー・ハワードのジッポー」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
黒い小さな仔馬が、ただひたむきに走ることでG1馬へと成長していく姿に深い感動を覚えた。ミホノブルボンやメジロマックイーンという名馬を破るまでの軌跡は、決して華やかではなく、地味で真面目で、ただ努力と人との絆だけで積み重ねられたものだった。実力で勝ったにもかかわらず、マスコミや世間から“ヒール扱い”された現実には強い憤りを感じた。
アイドルを倒した黒い馬──そんな色や物語の都合で、勝利が正当に評価されない世界の理不尽さ。競馬の華やかさの裏側にある、人間の勝手な期待やエゴが、ライスシャワーの努力を曇らせてしまったことが胸に刺さった。それでも、的場騎手、川島厩務員、生産牧場の人たちが、誰よりもライスシャワーを信じ、愛し、支え続けたことで、彼は本当の主役へと登り詰めていく。
黒い刺客と言われた馬が、人と馬の絆によって輝いていく姿は、競馬の美しさそのものだった。
一方で、競馬の裏側には廃馬や安楽死という現実がある。経済価値で命が決まる世界で、馬たちは懸命に走り続ける。ライスシャワーもまた、その世界の中で最後まで全力で走り続けた。物語の最後に触れたとき、ふと考えてしまった。“ライスシャワーは幸せだったのだろうか” と。幸せの象徴である名前を背負い、期待と重圧の中で走り続けた彼の最期を思うと、その問いが胸に残り続ける。この本は、競馬の華やかさだけではなく、命の重さ、人間のエゴ、そして馬と人の絆の強さを描いた深い作品だった。
ライスシャワーの軌跡は、ただの名馬の記録ではなく、命を懸命に生きた一頭の馬の物語として心に刻まれた。これからも毎回のレースで、走る馬や騎手たちが人馬ともに無事に帰ってきてくれることを願い続けたい。
Posted by ブクログ
【あの日、奈良の空の下で何が起きたのか。フィクションの仮面を剥ぎ取り、国家のタブーに切り込む衝撃作。】
2022年7月8日。日本中を震撼させた元首相暗殺事件をモチーフに描かれた本作。作中の人物名こそ変えられていますが、地名や海外の政治家などは実名で登場するため、まるで「ノンフィクションのようなフィクション」を読んでいるかのような、生々しい錯覚に陥ります。
物語の視点は加害者側に置かれ、標的をいかにして暗殺するかという過程が、冷徹なまでに訥々と語られていきます。連日の報道で耳にした様々な説や動機が、パズルのピースが埋まるように物語へ組み込まれていく様は圧巻。読み進めるほどに「本当にこれがあらすじだったのではないか」と、現実と虚構の境界線が曖昧になっていく恐怖を覚えました。
当然、現実の事件の真相が今なお深い闇の中にあるように、本作もすべてが白日のもとに晒されて終わるわけではありません。しかし、最後に残される「もしかしたら……」という予感は、私たちの社会が抱える歪みを静かに、けれど力強く告発しているようです。
今この時代に生きる私たちにとって、決して他人事では済ませられない。読後もなお、思考を止めさせてはくれない一冊でした。
Posted by ブクログ
いま、『下山事件 真相解明』という本を読み終わったところだ。これを書いた著者は下山事件の犯人(複数犯)と関わりのある人物の孫にあたる。あの、戦中戦後の複雑な、魑魅魍魎な人間関係を、分かりやすくカメラ越しに覗くように書いている。文章の行間に意味が一杯詰まっていて、いちいち納得させられる。著者自身も、血を引いた祖父が事件と関わっていたとあれば、作家という職業上、真実を追求したくなったに違いないのである。他人が書くより自分のイシューとして真実を明らかにせねばならないと考えたと思う。この事件については、多くの一流の著名人が書いている中で、祖父がどこまで事件に関わったのかを基軸として、闇の世界をほつれた糸を紐解くように明快に描写しているのだ。独創力に富んでいながら客観的なのである。
犯人は一体誰なのか。なぜ、下山定則は殺されなければならなかったのか。そのふたつ疑問に、この本は最終章のさいごに限りなく真実に近い形で迫っている。いや、名前も動機もズバリ書いているのだ。しかし、それは著者の推測の域を出ていない故、断定は出来ない。是非、多くの人に一読していただきと思う。