吉見俊哉の作品一覧
「吉見俊哉」の「シリーズ日本近現代史」「アメリカ・イン・ジャパン ハーバード講義録」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
専門とする社会学や都市学の各論点は、もともと筆者の書籍にそれほど触れていない身からするとあくまで議論の土台として受け入れる程度だった。
「AIハラスメント」とでも呼べそうな筆者自身(の著作)を学習したAIへの執拗な批判的対話はあまり心情的に気持ち良いものでないが(確かに専門的な議論においてAIの振る舞いも安易な鸚鵡返しや一貫性の欠如などツッコミどころは多い)、それがそもそもの筆者の講義スタイルに基づくものであり、知的サンドバッグという関係性を首肯しようとするにあたって説得力があるようにも思える。
一転して、終章での「AIとは何か」という主張を掲げるにあたって、それまでの紆余曲折に満ちた自己対話が(読み進めるうちにAIの回答はある程度読み飛ばしてもいいと理解するにせよ)最終的な考察のために、構成上機能していることは面白い。
日進月歩のAI技術は執筆当時に比べまた一段と進歩しているに違いないが、それでも知性というものを信奉する人の批判的言説はある種のロマンチシズムがあって絶えることがないことを望む。
Posted by ブクログ
本書は都市社会学者である吉見俊哉先生が、自らの著作を学習させたAI吉見と対話をするというめちゃくちゃ面白い実験的な本である。
バカとハサミと同様にAIも使いようだなというのが読後の率直な感想だ。吉見先生はAIとの対話を通じて、その特徴に平気で嘘をつくこと、対話相手に阿ること、主張に一貫性がないことなどを挙げる。
実際に対話録を読むと、AI吉見は確かに尤もらしいことを述べているが、その主張は薄っぺらい印象で議論が成り立たない。そして、言い訳が多く知ったかぶりをしている人との対話を読んでいる気がして、内容が全く入ってこない。統計的に確率の高い単語を紐付けているので、それとなく正しそうな文章になるが、考えてはいないのだろう。
たぶんAIは議論の相手ではない。思考を深めるためのツールではなく、そのための材料をそろえる助手的なツールなのだろう。そして、AIを使いこなすにはきちんとした知識体系と仮説や疑問を考えられる思考の態度が求められるように思う。
ただこれはなかなか難しい。AIを使いこなしているつもりで思考を放棄している人が周りに何人も思い浮かんでしまう。AIによって行きつ戻りつの試行錯誤を忘れてしまった社会は果たしてどうなるのだろうか。ちょっと空恐ろしい。AIとどう対峙し思考力を守るのかちゃんと考えたい。
Posted by ブクログ
トランプ大統領の再選、現在の世界情勢を鑑み、一期目のトランプ政権および当選を可能にした米国社会の理解に立ち返るため手に取った。ハーバード大で教鞭をとるため米国に渡った筆者の視点から見た「トランプのアメリカ」が書かれている。制度設計の違いによって生まれる日米の大学授業の質の差など、大学教育にも触れながら、ミートゥー運動や銃乱射問題、ラストベルトの労働者たち、フェイクニュースなど、当時の米国社会の問題、翻っては今も続く問題について鋭い分析がなされている。また、筆者が住むことになっていた元駐日大使ライシャワー氏についても触れられており、同氏が日本との対話路線を築き、蜜月関係が形づくられていったことが示されている。
た。
Posted by ブクログ
未来に向けて発展する都市、東京。勝者としての東京のイメージ。しかし、東京は過去、3度征服された過去を持つ町である。徳川家康に象徴される西の勢力に征服された縄文時代以来の人々に大陸からの渡来系民族が混じり合って形成されたクレオール的文化(土着系秩父平氏)。薩長に征服された徳川家康により開発された江戸文化。アメリカに占領された明治・大正・戦前昭和のモダニズム東京。それら敗者であることがかえって豊かさを持つ過去が層を成して痕跡を残す敗者としての都市東京。そして、その敗者の声は敗者自らでしか語り得ず、その敗者により刻み残された声に耳を傾け、東京を見つめ直す。勝者により一元的な価値観ではなく、そこに敗者の声、経験、価値観が混ざり合う事で真の豊かさを感じることが出来るようになるのではないか。
豊かな未来のみを信じる事が出来なくなったポストモダンの時代における豊かさとは何かを問う著書である。
また、戦後の日本人にとっては、太平洋戦争の敗者としての自覚を持てぬ日本人の敗者としての価値再構築を求める。
Posted by ブクログ
著者によれば町歩きの基本は広い道より狭い道、真っ直ぐな道より曲がりくねった道、平坦な道より坂道の三条件にしたがって歩く事。そこは川が形成した谷であり、その川に流れ込む支流であり、すでに川がなくなっていても暗渠になった上が道として残っている。その条件に従って町を歩けば開発によって改変される以前の町の面影に出会う事が出来るという。前著では東京の東北部を歩いた著者が今回は南部を歩くが、そこは江戸時代は大名や旗本の屋敷地であり、維新後は軍の演習地などを中心に陸軍の施設となり、戦後はその施設がアメリカ軍施設と姿を変えた。大きな変遷を得る南部は北部よりも大きく姿を変え、近年は大資本のもと高層建築による開発により無惨にかつての姿が葬り去られてしまっているらしい。しかし、そのような東京南部の地域も、町歩きの三条件に沿って歩けば至る所に歴史の痕跡を見つける事が出来るという。谷や川筋は平坦で広い台地上の土地と違い、大規模な開発が行いにくいのだ。その台地上の高台にそびえる開発された高層建造物を谷のそこから見上げる事で、我々の知らない違った東京の魅力を見つけることが出来るというのだ。