あらすじ
生成AIが爆発的な進化を遂げるなか、人間の存在意義や学問・教育の意味が問われつつある。長年大学教育の現場に携わり続けている社会学者・吉見俊哉は、自らの著作・論文をすべてAIに学習させ、「AI吉見くん」を制作。人工知能の「もうひとりの自分」と、「社会学」「大学」「日本の都市」「世界情勢」をめぐる対話を敢行し、現代社会の構造的な課題を考察する。そこから見えてきた、人間にしかできないこととは何か? 前代未聞の試みを通して、AI時代に人間が身に着けるべき知性を明らかにする。
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Posted by ブクログ
社会学者が自分の論文などをすべて読み込んだ“自分の”AIと対話を進めながら、大学の定義や今後、東京一極集中などについて議論、AIの限界を同時に探る試み。AIに案外間違いが多いこと、間違いを指摘すると素直に認めて節操がないと言いたくなるほど簡単に修正すること、時には回答に固執して反論を試みることなど、議論の中身そのものより議論の仕方を楽しめる。AIだから感情的になることはもちろんなく、ひたすら丁寧に論筋を修正していく。本筋とはずれる感想だが、「確かに」「おっしゃる通り」など、相手の言葉にいったん同意しつつ異なる主張をするディベートは、人間同士の議論にも応用できると同時に、あまりに丁寧に同意と修正を繰り返すと、相手をイライラさせるというのがよく分かるのも面白い。
議論の中身は、例えば日本の大学と西欧のuniversityの根本的な違い、現代の大学に必須の多様性を真っ向から否定するトランプの批判、トランプが言う「偉大なアメリカ」の背景、東京一極集中についての歴史的考察など、AIの間違いを著者が一つ一つ指摘し、なぜ間違ったのか問い詰めつつ話が進行する。
これだけ曖昧な“知識”を振り回すAIをたたき台に、AIの間違いを指摘できるような知性を磨くならAIをアカデミックな世界で一つのツールとして活用する意味があるという視点は面白い。空間的に自らを位置付ける物理的な体を持たず、時間的に限定づける誕生と死も経験しない、データは読んで処理できるけれど、「読書」はできないAI。著者の指摘で、この根本的な違いがAIが回答を間違う要因にもなっていることが少しずつ理解できた。