あらすじ
江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた……。アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場作品となる表題作ほか、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の二編を収録。
カバーイラスト/杉本一文
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Posted by ブクログ
□初見時の感想(2024年6月)
読書を始めたばかりの頃に読み、「読みづらい」「人が多すぎて覚えられない」「私、ってお前誰だよ」「機械トリックかよ」「著者が挑戦的でなんかムカつく笑」ということで、全然面白いと思えず、読むのが辛いと思ってしまった作品。
□再読時の感想(2026年6月)
超傑作。
この間海外小説を250冊ほど読みまくっていたこともあり、読みづらさは全く感じなくなっており、人物やその関係もスッと頭に入る。何より、機械トリックがどうとかそういうレベルの作品じゃないことに気づけた。
ただ、読書初心者がいきなり読む作品ではないなwとも思った。
■『本陣殺人事件』 ★★★★★
超傑作。
機械トリックは要素の1つにすぎないが、密室の破り方としても「綺麗」と感じる。
・殺して自殺したが、他殺に見せたかった
・密室になってしまった密室殺人
・三本指の男の使い方
・三郎の参戦とその根拠(生命保険の伏線)
・ディクスン・カーやアガサ・クリスティ、ホームズなどへの言及
・全編通して無駄のない描写
等々、どこをとっても美しく、完璧と思える作品だった。
強いて言えば、動機が現代になじまない、というところがあるが、そこは「まあ当時なら家柄を重視したとか醜聞を恐れたとかいう在り方が現在よりも強かったのだろうし、潔癖症だったという性格的掘り下げがプラスされてるから納得できるかな」と感じた。
■『車井戸はなぜ軋る』 ★★★★☆
「そういえば車井戸が軋んだ音がしました」が解決編で提示されるのがアレだが、それは些細なことで、単純にクソ面白かった。
「あ~これ伍一が大助に成りすましてるのか」と誰もが思うが、メタ読み(途中でまさにそのことに鶴代が言及すること)から「あれ?違うか」となるが、やはり頭には残り、「違ったとして、じゃあ真相は?」となるという、最後まで考える楽しみがあるストーリー。
状況がシンプルで、文章も綺麗なところがお気に入り。
■『黒猫亭事件』 ★★★☆☆
収録された3作品の中では一番「う~ん」と思った作品。というのも、「さすがにそれは現実の動き的に込み入りすぎというか無理があるのではw」と思ってしまったため。
特にごっこ遊びのくだりや日兆君の心理と行動に無理があるのでは、と感じてしまった。
「顔のない死体」+「一人二役」で、自分で提示したお馴染みパターンを破壊するという新たな挑戦そのものは素晴らしいと思った。
Posted by ブクログ
金田一耕助シリーズ初読み。
名探偵ものの王道推理小説という感じで懐かしさも感じる。
戦後すぐに発売のため、読みやすさを心配していたが、杞憂だった。とても読みやすい。
ただ、現代ではあまり使われない言葉はあり、その点だけ時間がかかった(調べる時間)。
もっとも、読み飛ばしても大して影響はないのかもしれない。
表紙の絵は電子書籍版の方が昭和っぽく好み。
以下、犯人やトリックを簡単に以下に書きます。
ネタバレですので、ご注意ください。
それにしても、三作ともトリックにまんまと騙されました。面白い。
・本陣殺人寺事件
まさか妻を殺してから自殺とは驚き。
そして、弟は共犯とは。
犯人の性格が見抜くポイントだったか。
・車井戸はなぜ軋る
嫉妬心を利用して復讐を図るのが恐ろしい。
母違いの兄弟は入れ替わっているのかと思わせて、入れ替わっていない。
金田一耕助は最後に少ししか出てこない。探偵役は妹。
・黒猫亭事件
「顔のない屍体」のトリックかと思いきや、まさかの「一人二役」がトリック。
Posted by ブクログ
金田一耕助デビュー作
時代/舞台がザ・昭和で単語や文化を咀嚼するのが中々難しい...。
内容についてもこれまた時代か凄くドロドロしてます。
ノンフィクションっぽい書き方は凄く新鮮で面白く、他のミステリーを引用して
読者に挑戦する姿勢を感じる。しっかり短編含めて騙されましたけど...。
密室・日記調・顔のない屍体と様々なテーマが使用されており、型にはめない工夫を感じてこれも読者への挑戦を感じて読みごたえがある。
最後に、今は新装されたみたいだけれど、杉本一文の表紙が素晴らしい。
作品の雰囲気をしっかり表現している。
Posted by ブクログ
テレビ放送があれば必ずと言っていいほどみているけれど、文章で読むのは初めて。書かれた時代に比して、読みやすさに驚いた。小学校の頃ハマった江戸川乱歩・少年探偵シリーズなどは、もっと読みにくい印象だったけれど…。某私立大学を中退後、渡米。麻薬中毒になりかけたものの、ある事件を解決し、そこで得たパトロンの出資で大学を卒業、帰国後、更にしれっとパトロンに全額出資させ、探偵事務所開設…という金田一耕助の経歴も初めて知る。
収録の『本陣殺人事件』『車井戸はなぜ軋る』『黒猫亭事件』には、いずれにも、恥、体面、自尊心、名誉、長男の面目、末弟の鬱屈、劣等感など、昭和初期に特に色濃かった価値観が強く事件に影を落とす。
猜疑心のスパイラルが生む悲劇を描く『車井戸はなぜ軋る』は、金田一耕助の活躍はほとんどないものの、私の中では(テレビで見ている限り)殺人事件をゲームのように楽しむ言動が不謹慎な印象の金田一耕助の、意外にも、思いやり深さを感じられる作品。
Posted by ブクログ
『獄門島』から金田一耕助のデビュー作へ。
本陣殺人事件、車井戸はなぜ軋る、黒猫亭殺人事件の三作が収録されており、特に前二作にはかなりの衝撃を受けました。
ちなみに『獄門島』を読んでいる時から、地の文の”私”は誰なのだろうと確証が得られなかったのですが、「黒猫亭殺人事件」を読んで納得。作家であるYこと横溝先生が、知り合いの金田一から伝え聞いた話……という体裁を取っているのですね。
「本陣殺人事件」は、前々からあらゆるミステリーランキングで目にしていた作品。
横溝先生は人物を魅力的に書き上げるのがうまく、賢蔵と克子の婚礼の儀を読みながら、このまま誰も殺されることなく、普通の小説として読んでみたいなぁなんてことも思い浮かびました。
なので、金田一によってあれが他殺ではなく自殺だったと明らかになった瞬間は、まるで世界がひっくり返ったかのようでした。
そして動機についても、あぁそれなら仕方ないか……と納得。もちろん今の時代に照らし合わせると理解はできないのですが、そこに至るまでの数十ページの描写で、すとんと腑に落ちるほどの人物の作り込みがされていましたから。
私はミステリーをエンタメとして楽しんでいるので、事件が起きることも、集まってくる証言や証拠も、謎解きもすべてパズルのピースがはまっていく感覚で読み進めています。
だからつい忘れがちなのですが、人が他人の命を奪うのにはそれだけの理由があるのです。それを、横溝作品を読んでいるとまざまざと思い知らされる気がします。
ところで、『アクロイド殺し』をはじめ、海外の有名ミステリーへの言及があったのにはヒヤヒヤしました。
ネタバレは踏まなかったものの、こういうことがあると、内外問わず有名な作品にはできるだけ触れておかないとと思いますね。笑
次の「車井戸はなぜ軋る」はかなりずどんと来た作品。なかなか感想を言葉にするのが難しい……。
あえて表現すると、もし私が物書きを志す人間だったら、この世にこんな作品があることを知ったら自分の才能なんてと投げ出していたと思うんですね。
それくらい、疑心暗鬼に陥っていく本位田家の荒んでいく様や、それを書簡に綴る妹の健気さ、そして真相のやるせなさには、強く打ちのめされてしまいました。横溝先生は女言葉で書くのもうまいんだなぁ。
最後の「黒猫亭殺人事件」は人の入れ替わりがちょっと複雑。誰が誰だ?と混乱したまま読み進めました^^;
ただ、パトロンの銀造さんもそうでしたが、金田一さんが意外と知り合いが多くてどこの現場でも溶け込めてしまうのがなんだか微笑ましかったですね。風間さんにはぜひ再登場してほしい。
ということでだいぶ長くなってしまいましたが、『本陣殺人事件』にも唸らされっぱなしでした。
もうすでに胸がヒリヒリする読書体験なのですが、横溝先生の激重作品はまだまだこんなものじゃないとのこと。びびりながらも、次の作品へと手が伸びつつある私なのでした〜。
Posted by ブクログ
本陣殺人事件
密室の謎が犯人や動機にも繋がっていくのが面白かった
岡山行って聖地巡礼もしたので思い出に残った
車井戸はなぜ軋る
人物が入れ替わっているのかいないのかの謎を引っ張って最後に意外な犯人が待ってるのが良い
黒猫亭事件
顔のない死体と一人二役を組み合わせてのトリックが面白い
時代を感じる舞台も好き
「本陣殺人事件」は金田一のデビュー作。
表題作に関しては正直、文章だけだと全然想像がつかなくて頭が???になってしまった。あと動機に関しても説得力がいまいちなんじゃないかなと思ってしまう。ただこの後の金田一シリーズも結構狂気的な犯行が多いので、デビュー作からだんだん洗練されていったのかなと面白い。
同時収録の「車井戸はなぜ軋る」がどうなるのかハラハラしながら読めて一番面白かった。最後が何とも言えず後味が悪いと言うか哀しい。顔のよく似た親戚、指紋比べなど「犬神家の一族」に共通する要素もありこれが原型になったのかなと思った。