小川原正道のレビュー一覧
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色々考えたのだけど、西南戦争は実質的に薩摩出身者の内部分裂が原因だったように思う。本書によれば、鹿児島は知事以下独立の気風が強く、中央の権限が及びにくいエリアとなっていたそうだ。自前で広く軍事教練なども行っていたという。自らの血で作り上げた新政府は自分たちを受け入れなかった。そして、幕府時代の地方分権的な薩摩のかたちを発展していった先に、いよいよ衝突が待っていたという感じに思う。そのような土台の上にあくまで明治六年政変が乗っかっただけという印象。そして暗殺組が真実かどうかは分からないが、他にも政府はちょっかいを出していたことだろう。もしそうだとすれば、やっぱり西郷は意思に反して暴発に巻き込まれ
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とてもフェアーである。
何がといえば、この著者のものの見方、書き方がである。立場の異なる極めて広範囲の参考資料を、公平に読み込んでいる。そして、根拠を曖昧にせずにはっきり示しながら丁寧に書いている。著者の立場を防御するためや、研究不足を隠蔽するために根拠を曖昧にしたり明らかにしないところが一切ない。
試しに巻末に紹介されている参考文献の数を数えてみた。ざっと400冊あった。尋常な数ではない。この1点のみをもってしても評価に値する。
このテーマにおける現在時点での最高峰と断言していいと思う。西郷隆盛と西南戦争について、肯定的な立場をとるか否定的な立場をとるかに関わらず、興味を持 -
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適当に取った本ではあるが、読みやすく宗教に関する法律の歴史を概観できる良書であった。
当時、神社は宗教とは考えないで法律を作成、通そうとした為宗教界から大きく反対された。
太平洋戦争後は、かつての神社非宗教論によって国民を戦いへ扇動しているとの見方により、神社も宗教とし、また完全なる信教の自由が確立された。
行政に依存しても行けないし、屈しても行けない。
民間の組織を宗教連盟で立ち上げるべきであると筆者は考える。
当時、貴族院で否決されてなかったら当時の仏教はかなり取り締まりを受けていただろうなと思った。
後、否決されても内容を変え、何度も法案を提出されるところに、宗教の力が国によっ -
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率直に言うと、『慶應義塾すげー』です。志の強さが芯に入ってる演説集。難しい言葉も若干入ってますが、章末に編者による要約が入っていて読み解けるようになってます。日本語なのに英語を紐解いてるかんじ。
ほぼ三田演説館(当時使われてた慶應の三田にある施設で、今は原則中に入れません)で話された内容が入ってます。私が慶應の通信に通ってた時、たまたま授業で三田演説館の中を見る機会がありました。演者と聴講席が近くステンドグラスを通って入ってくる光が美しい場所。この演説集に載っているような熱意あるスピーチが行われた場面を想像できたのがうれしかったです。
章のはじめは明治時代の初期で、歴史上じゃないリアルな江戸の -
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この本を読んでいる間、文科省が旧統一教会に過料を科す、というニュースが流れていました。その後、教会は裁判で徹底的に争うと記者会見していましたが、いよいよ解散請求も視野に入ってきたようです。非常にタイムリーな読書になりました。っていうか本書が2022年7月8日の安倍晋三元首相暗殺事件とそこから顕在化された政治と統一教会の関係をきっかけにまとめられたものです。また8月の太平洋戦争関係のテレビ番組では靖国神社の存在がクローズアップされたりりして,そういう意味でも考えさせられる本でした。明治以降の日本の政治と宗教の関係はタペストリーになっていること、その一本一本の糸はどうして生まれたのか、知らないこと
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昨年の大河ドラマ「西郷どん」を見て、読んでみることにしました。
本書は、西郷隆盛が政府の職を辞し、鹿児島に帰還したあたりから始まります。西郷下野、私学校の創設、士族たちの不満、蹶起、熊本城籠城、田原坂の戦い、転戦、そして終戦、その後の流れや後世の人に与えた影響などが書かれています。
特に戦の流れについてはかなり細かく書かれており、基礎知識がほとんど無い私には少々難しく感じましたが、「西郷どん」で覚えた人名が出て来るので、その辺はドラマのお陰でカバーされました。
幕末の基礎知識はあるけれど、西南戦争についてもっと知りたい方や、幕末から明治あたりの事を勉強している学生さんに良い一冊だと思います -
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ネタバレ[ 内容 ]
明治維新後、佐賀の乱、神風連の乱、萩の乱などに続く、不平士族による最後の反乱となった西南戦争。
九州全土で八ヵ月間にわたり行われた近代日本最大の内戦である。
それはまた誕生してまもない「日本軍」が経験した最初の本格的戦争でもあった。
本書では、反乱軍の盟主である西郷隆盛の動向を柱に、熊本城篭城戦、田原坂の戦いをはじめ、九州各地での戦闘を丹念に追い、日本最後の内戦の実態と背景を明らかにする。
[ 目次 ]
第1章 反乱への序曲―西郷隆盛の下野
第2章 蹶起
第3章 熊本城篭城戦
第4章 田原坂の戦い
第5章 九州各地での転戦、そして終戦
第6章 西南戦争下の次なる抵抗
終章 西郷 -
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明治時代以前の日本では、領土的野心や権力維持の観点から、国家が思想や信仰を強く統制していた。信教の自由は基本的に認められておらず、特に幕末期にはキリスト教徒への弾圧が顕著であった。そして、明治時代に入り、憲法上は信教の自由が謳われるようになったものの、実際には天皇を神格化する国家神道が事実上の「国教」として機能し、他の信仰や思想を抑圧する傾向が強まっていった。つまり、形式的な信教の自由と、実質的な思想の強制とが共存する矛盾した体制が構築され、天皇主義は国家の統合装置としてますます加速していったのである。
他方で、明治期には、西洋文明の急速な発展の根幹にはキリスト教的価値観や宗教観があるのでは -
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明治維新開国後、海外と対等に付き合うため、「信教の自由」を憲法に取り入れることは必須であった。
国が定める「信教の自由」は「政教分離」とも密接に関わる。
なぜなら。
「宗教」が排他的だから。
と見た。
ぶっちゃけて、既得権とか勢力拡大という利権をどう確保するかに汲汲としてた界隈の様子が透ける。
国家を現実的、科学的、実証的、現代的に運営しようとすれば、それは、宗教とは相容れない。
自らの真理と正義を最優先にする、特に一神教は、国家とギシギシせずにはいられない。過去、仏教は上手く国家とやってたし、そもそも日本国は天皇陛下が最強の祭司なのであって。
社会の論理とは違う、自治と権利を認めろよ