【感想・ネタバレ】福沢諭吉 変貌する肖像 ――文明の先導者から文化人の象徴へのレビュー

あらすじ

福沢の思想は毀誉褒貶にさらされてきた。それは福沢の議論の変化というよりも、福沢をとりまく世論の側の変化によるものといえる。福沢を評価した徳富蘇峰は、晩年には福沢が日本の伝統的な良風美俗を破壊したと罵倒。戦後は丸山眞男から原則ある実学思想家として賞賛されるも、朝鮮蔑視の脱亜論者として批判もされ、他方で1980年代半ば以降は1万円札の肖像となり、文化人の象徴となった。福沢評価の変遷をたどり、その過程を詳細に考察。福沢の実像を浮かび上がらせる。

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Posted by ブクログ

福沢諭吉の思想については時代の変遷とともに右翼、左翼両方からの批判を浴びており、その思想の変遷と批判の背景についてよくまとめられている。
福沢諭吉の独立自尊の精神を護りつつ、弱者への配慮し、過度に国家主義にならず、平和を護っていきたい。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

福沢諭吉が、その生前から現代にいたるまで、どのように評価されてきたのかということをまとめている本です。

功利主義の立場に近しい福沢とその門下生たちに対して、同時代の人びとは「拝金宗」という批判を投げかけました。その後、帝国主義者となった徳富蘇峰などによって、福沢が国家をないがしろにしているという批判が強まり、小泉信三は福沢の愛国者としての側面を示して反論をおこなうなど、その評価をめぐって論戦がくりひろげられました。さらに、戦後の福沢研究をリードした丸山眞男は、福沢の思想のうちで個人主義と国家主義がせめぎあいつつも統合されていたことを明らかにしました。その一方で、服部之総や遠山茂樹などマルクス主義史学の立場から、福沢の限界を指摘する議論が一定の影響力をもつようになり、とりわけその「脱亜論」に対する厳しい批判がおこなわれてきました。

本書ではとりあげられていませんが、現代におけるマルクス主義の退潮にともなって、西部邁や坂本多加雄など右派の論客による福沢論も登場しており、福沢の思想の評価はいまもなお係争中といえるでしょう。

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2024年06月12日

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