小川原正道のレビュー一覧
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福沢諭吉が、その生前から現代にいたるまで、どのように評価されてきたのかということをまとめている本です。
功利主義の立場に近しい福沢とその門下生たちに対して、同時代の人びとは「拝金宗」という批判を投げかけました。その後、帝国主義者となった徳富蘇峰などによって、福沢が国家をないがしろにしているという批判が強まり、小泉信三は福沢の愛国者としての側面を示して反論をおこなうなど、その評価をめぐって論戦がくりひろげられました。さらに、戦後の福沢研究をリードした丸山眞男は、福沢の思想のうちで個人主義と国家主義がせめぎあいつつも統合されていたことを明らかにしました。その一方で、服部之総や遠山茂樹などマルクス -
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「霊前にしばしの時をすわりおれば みみにうかびぬありし日の声」
その死に際して未亡人に贈られた今上天皇の弔歌である。
小泉信三。皇太子時代の今上天皇の東宮御教育常時参与であり、
慶応義塾長であり、マルクス主義批判者であり、経済学者である。
このうち、私が知っているのは東宮御教育常時参与であったこと
と、慶応義塾長だったことくらい。特に今上天皇に多大なる影響
を与えた人として興味を惹かれる人物である。
その小泉信三が、先の大戦中は戦意高揚に一役買い、塾生たちの
愛国心を煽っていたとは。平和を願ってやまない今上天皇の家庭
教師のような存在だったので、彼が戦中に展開した戦争 -
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ネタバレ幕末から日露戦争まで、仏教・神道・キリスト教の各派の戦争「適応」「従属」から何を学ぶか。
近代日本というドラマを創造するさい、宗教はどのような役割を果たしたのだろうか。戦争という切り口からその歩みを丹念にスケッチしたのが小川原正道『近代日本の戦争と宗教』(講談社選書メチエ、2010年)である。
著者は、『大教院の研究』(慶應義塾大学出版会、2004年)や『西南戦争』(中公新書、2007年)で知られる近代日本の研究者。本書は「新書」以上「専門書」未満といる「メチエ」の一冊だが、なかなか本格的な労作だ。
タイトルの『近代日本の戦争と宗教』の通り、近代日本の歩みとは戦争の歴史にほかならない。