沼田まほかるのレビュー一覧
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8年前に別れた黒崎を忘れられない33歳の十和子は、寂しさから15歳年上のダメ男・陣冶(じんじ)と同棲している。
この陣冶の下品で貧相な様子の描写は容赦がありません。
決して心地よい文章ではありませんが、文章の奥底に人間の悲しみや切なさ、温かさが感じられ段々心地良くなって来てあんなに嫌な男だっ...続きを読むPosted by ブクログ -
誰が殺したかは割と示唆されている為、予想通りの結末になったと言えるが、そこまでの登場人物の好感度の調整が本当に上手い!!
終盤になるまで結構生々しい描写があり、読む上での不快感は沢山積まれていくが、それが最後ひっくり返る、読後感のいい小説だった。
十和子の中で、自分を今の境遇から救ってくれると思っ...続きを読むPosted by ブクログ -
どの人にも共感できないし何なら全員が欲望に忠実で憎たらしいくらいなのに、とり憑かれたように文字をたどってしまう。
いつの間にやら人の振り見て恍惚に浸っている自分に気づき、卑しさに目眩がしそうになった。
終わりは呆気なくてそれなのにいつまでも尾を引いて心に留まり続けている。
恋し、愛す。
その本当の意...続きを読むPosted by ブクログ -
これまで読んだ沼田まほかる作品の中でも群を抜いて良かった。何でこんなに、生理的な嫌悪感を催させる表現がうまいんだろう。
思考はもちろん、内臓まであのアパートの部屋に持って行かれるような気がした。
陣治に対する気持ちが完全に主人公とシンクロしてしまう。辛い。クセになる辛さで一気に読んでしまった。Posted by ブクログ -
圧倒的な嫌悪感、汚らしさ、狂った世界の先にある
さらに圧倒的で絶望的な愛。
どんどん引き込まれる文体と
何とも言えない陰鬱さと迫り来る狂気に
ただただ飲み込まれる感覚。
ミステリーとかではない、強烈な愛の物語。
何もかも不可解で共感ゼロなのに
鮮烈に訴えかけてきて目が離せない。
映画めっちゃ観...続きを読むPosted by ブクログ -
とてもとても深いです。
猫と暮らしてる人、暮らしてた人、暮らす予定の人、読んで損は絶対に無いと思います。
私はまだ猫を見送った事が無いので、見送る生々しい描写のこの本が読めて本当に良かったです。
猫との時間を大切にします。yomuko -
読み終わった後に人に紹介しようとしたら、こみ上げてくるものがあって言葉が続かなかった。
最後10ページから凄い。
どんでん返しとしても、秘密を含めた物語の筋としても、例えば衝撃的だとか新奇だとかいうことはない。が、そこまでのエピソードの積み重ねがオチの説得力を、というか真実味を、半端なく高めている。...続きを読むPosted by ブクログ -
*八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。...続きを読むPosted by ブクログ