沼田まほかるのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
耽美系サイコホラーとかミステリーだと思っていましたが蓋を開けてみれば、どこまでも誰かを愛する気持ちだけで完結しているような作品でした。
グロ描写や罪のない子供が亡くなる描写、とにかく胸糞悪くなるシーンが多々があるのでそういうのが苦手な方はオススメしません。
ラストシーンも主人公の気持ちも考えるとどうしようもなくやるせのない気持ちになる最後でしたが、読後感は意外と悪くないです。
私的には爽やかなラストだと感じました。
人として欠落していたサイコパスが愛情に目覚め、それと同時に今まで感じたことなかった犯した罪への罪悪感や色んな感情に囚われていく様子も見てて苦しいほどにリアルでした。
ハッピーエンドなのかは分かりません。
メリーバッドエンドくらいなのではないでしょうか。
最終的に物語内で幸せになった人は少なそうですね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレユリゴコロってなんだろう。
話題になった「ユリゴコロ」は題名が意味不明なのがかえって面白そうに思った。
二ヶ月前に母が亡くなり、祖母はケアハウスに入っていて、父が世話に通っている。その父も膵臓がんなのだが、治療を拒んでいる。
亮介には弟の洋平がいる。
亮介は家を出て、ペット同伴の、シャギーヘッドと言う喫茶店を開いている。
たまたま実家に帰ると押入れが開いていて、雑に出して片付けたようなダンボールの箱が見つかった。父のものだったが、底の方に茶封筒に入った4冊のノートがあった。
日記と言うか手記というか、誰かが書いたらしい文字がびっしりと詰まっていた。最後に空白が残っているものもあった。父のものだと思うと気がとがめたが、読んでみた。
タイトルはユリゴコロと読めた。そしてひどく特異な出来事が記されていた。
私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通と違うのでしょうか。脳の中ではいろいろなホルモンが複雑に作用しあっていて、そのバランスがほんの少し変化するだけで、気分や性格がずいぶん変わるのだとか (略) 私の診察はすぐすみましたが、そのあとで母はいつも、家での私の様子を長々と医師に話しました。医師は毎回同じ、低い声で話す、眼鏡をかけた人でした。ときには涙も混じる母の話を、根気よく頷きながら聞いていましたが、必要になればぼそぼそと説明をさしはさみます。言い訳めいた口調でよく言っていたのは、この子には・・・のユリゴコロがないからしかたがない、というふうなことです。・・・の部分はときによってちがうので覚え切れませんでしたが、ともかく、いろいろな種類のユリゴコロがあって、そのどれもがわたしにはないらしいのです。
書き出しがこうだった。
怖くなってダンボールを押入れに戻して、そのうち忘れるだろうと思ったのだが、最後まで読まずにいられなかった。
父が出掛けたすきに押入れを開けて、誰が書いたのかわからないまま、ノートを読み進んでいく。
亮介は幼いとき肺炎で入院したことがある。母はベッドのそばで優しく看病をしてくれた。そんな事をおぼろげながら覚えている。退院してうちに帰ると住んでいた前橋から奈良の駒川市に引っ越していた。入院前と後ではなんとなく母の印象が違っていたように思ったが、子供心の思いなどは当てにならない。
そういえば母が亡くなる前、何かにおびえているように見えなかっただろうか。
それにしても、亮介にとっても内容が重たすぎる。弟に協力してもらって、気になるところから解決しようと思う。
父に直接は聞きづらいし、弟は軽い気持ちで聞き流しているようだ。
見つけた手記も気になるが、店のシャギーヘッドでは結婚の約束をしていた店員の千絵が出て行ってしまう。なにも言わないで消えてしまった。店員なので手を抜いて採用時の書類もない。亮介は気力がうせてしまう。
だが店で何かと気に掛けてくれる年配の店員の細谷さんが、一番の支えだった。
細谷さんは千絵のことを自分のことにように調べだす。
そして行方を突き止めてくれた。
もうたまらず手記を読み終え、勇気を出して父に聞いてみた。これは誰が書いたものですか。
父はもう先が永くは無いだろう、と話すことにした。
亮介は、全てについて知る。
手記と亮介の生活が交互に書かれている。不思議な出来事は緊張感があり、周りの思いやりが重く、ときには暖かく、最終章に向かっていく。
変わった設定、情景の描写が続くが読後感は悪くない。と言うより、珍しいケースをテーマにした面白い話だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ沼田さんは、猫がゴロゴロと喉を鳴らす音を「猫鳴り」と書いている。猫とともに知る生きることと死ぬこと。
迷い猫「モン」と暮らした日々を三部に分けている。
いつも胸の奥深くにある、確かに分身と思える自分の心、それを暗く厳しく、日常生活の中で見つめる作者の目はここでも健在だ。
その中に沈んでいる、生きていく日々の悲しみややるせなさ、孤独感が重くにじんでいる作品が、薄い本の中で充実している。
特に三部の「モン」との別れは、胸を締め付けられる。
沼田さんの作品を読むと、生きることにまっすぐに向かう強さと、書いているテーマの重さに読むのが苦しくなることがあるが、情に流されない乾いた筆致がこの作品では、時に揺れる。
「モン」に託した視線の暖かさや人の優しさに胸を打たれる。
長くなりそうな、「モン」の一生に付き合う話を、三部に分けた書き方も、語り巧者だと思う。
第一部
泥だらけで迷い込んできた手に中に納まるような小さな猫が、疎ましくて信枝は新聞紙にくるんで捨てた。だがなぜかよろよろと帰ってきた。今度は少しはなれた林に捨てた、だがまた帰ってきた。また捨てた、猫は林の中にずんずん入っていった。
信枝はやっと出来たわが子が流れて8ヶ月、何もいわないが夫の藤治も仔猫のことが心配げだった。
玄関を開けると女の子が立っていて猫を置いていったという、有山アヤメという子は猫を捨てたと知ると、林に向かって走っていった。藤治と信枝が追いかけていくが猫は見つかったが女の子は姿を消していた。
猫と藤治と信枝、猫の様子を見に来て居間に上がりこんで、肉じゃがを食べていくアヤメ、藤治の仕事仲間で将棋を指しにくる弟分の暮らしが始まった。「モン」は飼い易い猫だった
第二部
母子家庭で父親にも構われなく育ち、世間を憎み不登校になった中学生が、公園で幼児を刺そうとして偶然に未遂に終わる。
幼児の母親に通報され警察の呼び出された時、親心に触れ、初めて親しい感情を持つ。
アヤメと他を威圧するほどたくましく成長した「モン」との付き合い
第三部
信枝も亡くなり、アヤメも結婚して遠くに行った。老猫になった「モン」と暮らしている藤治。
「モン」は動きが少しずつ緩慢になり、食も細くなってきた。医者に見せると腎機能が病んでいると言う。手当ての方法が無く、食を補う注射をして、口に塗るペースト状の食材をくれる。「モン」は嫌がったが口に塗ると少し食べた。二階の信枝のベッドの下から出てこなくなり、名前を呼ぶと返事をして尻尾をパタパタと床に打ち付けた。
それも次第に弱しくなっていった。子供の頃から毛をすくと喜ぶので綺麗にすいてやり掃除機で吸い取るとそれも気持ちよさそうにしている。好きなところをなでてやるとゴロゴロと体全体が震えるほどの猫鳴りが聞こえる。
果物籠を見つけて入れてみると大きなからだが丁度収まった。ブランコのように揺すると嬉しそうな金色の目でジッと見つめてくる。だが籠がだんだん軽くなった。ベッドから出てくることも無くなって、綺麗好きの「モン」の毛が尿でぬれているようになった。からだをずらして拭いてやる。
美しい金色に輝いていた毛並みが汚れている、拭いてやると嬉しそうに顔を見た。だが何も食べなくなって皮膚が腹の下に滑り落ち、顔もとがってきた。
夜中の二時頃に、ベッドの下をのぞき込むと、奇妙な無表情さが猫の全身を覆っていた。呼吸もあやふやであるような気がした。
「モン」
名を呼んだ。
猫は半分はもうモノになりかけていた。それでも、尾がはっきりと応えた。床をうつてハタハタと優しい音を立てた。
もう一度呼び、もう一度応えた。
見事な別れを果たしきった猫を、やんやと褒めそやしてやりたい。その想いをありったけ指先に込めて、見開かれたままの琥珀色の眼も最後にそっと閉じてやった。 -
Posted by ブクログ
前に一度読もうと手に取ったが置いてあった、ユリゴコロの不思議な雰囲気に惹かれて読み直すことにした。
佐和子は離婚してから8年、一人息子と二人暮らしだった。夫からは時々気にかけているような電話が来る。失効していた運転免許を取り直すために教習所に行ったが、そこでであった教官は、夫が電話で話していた、娘の冬子が付き合っているという犀田だった。
そのうち彼とラブホテルに行く仲になる。
息子の文彦は高校三年生で、近所の同級生のナズナと親しくしていた。ナズナの家は父親だけで、喫茶店を開いていた。文彦と二人で時間があると手伝ったりしていた。
寒い夜、文彦がごみを捨てに行ったままふっといなくなった。寒い夜にサンダル履きのままいなくなってしまった。
不安が増して落ち着かない日々が過ぎていった。別れた夫にも電話で知らせるが何日経っても行方が知れなかった。
突然犀田がホームから落ちて轢死した。冬子と大声で言い争っていたが、誰かに押されたように落ちたという。
目撃者もはっきりしないので冬子が何度も呼び出されて事情を聴取されるが、事故として処理された。
夫は再婚していた、娘の冬子は下校時間に文彦の学校に来て、二人でしばしば逢っていたという。文彦は冬子が連れ子で血がつながっていないことを知っていたが、冬子は異父兄妹だと思っていたらしい。犀田に付きまわれた冬子を助けるために冬彦がやったのではないだろうか。
前夫・雄一郎は精神病院の院長だった、佐和子は勤めていて知り合い結婚したが、雄一郎は患者だった亜佐美と再婚した。亜佐美は少女の頃から何度もレイプされ精神が崩壊していた。
初めて患者で入院したとき佐和子もその場にいて、目を覆うような亜佐美の異様な姿を目撃していた。だが夫は優しく治療を続け、ついに亜佐美にとらわれたように結婚した。
連れ子の冬子もそうだったが、親子ともにオーラを纏ったような蠱惑的な美しさを備えていた。雄一郎もその美貌に惹かたのだろうか。
亜沙子は結婚後徐々に回復しているように見えた。妊娠もしたと言う。冬子の話で、雄一郎と亜佐美の異様な結婚生活の様子が暴かれる。どこか常に精神状態の危うい亜佐美と、雄一郎の生活は破綻して、亜佐美が兄の家に帰ることも多くなり、不在の日も長期化していたという。
文彦はどこにもいない、消えてしまった。亜佐美も兄のところに行ってしまった。
冬子が睡眠薬を飲んで危篤状態になった、雄一郎は自分の病院を避けて近くに入院させた。
佐和子は心労で衰弱してきた、ナズナの父が無神経に入り込んで世話を焼きだす。
読者はこんな中に放り込まれるが、読むうちにそれぞれの運命が次第に闇の暗さが増してくるような、そんな物語に引き込まれる。
暗い中で見ると人々は異形にも見えるくらい美しく恐ろしい。そして生きている。
結末は不幸のなかからも、薄い光が射すようだった。
震えるような、恐ろしさと暗さを読んでいると、不幸までも心ならずも共有させられる、謎が謎を積み重ねる文章を追いかけていく、沼田さんの力の入った作品だった。
やはりこれもミステリだとしたら飛びきりのイヤミス。
正しくはホラー・サスペンスというらしい。旬が過ぎて読んでも暗さが共有できる作品になっている。だから沼田さんのこういう作品を読んでも嫌いにはならない。これが3冊目だった、次は「彼女がその名を知らない鳥たち」かな。
ユリゴコロ
猫鳴り