中川恵一のレビュー一覧
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医療との距離の取り方について、改めて考えさせられた。医療は標準化されており、誰が診ても同じ治療が行われる一方で、人には価値観や相性がある。だからこそ、医者の言うことをそのまま受け入れるのではなく、自分の体や生き方と照らし合わせて判断することが大切だと感じた。
養老先生は、治療を一律に受け入れるのではなく、自分なりに選び取っている。その姿勢からは、医療を否定するのではなく、「使い方」を考えるという視点を学んだ。
また、猫の話にあったように、役に立つかどうかだけで物事を測るのではなく、不完全さや無駄を受け入れることも、人間らしさの一部なのだと思う。
医療は正しさを示してくれるが、人生は納得でしか引き受けられない。医療に従うか拒むかではなく、自分の考えを持ちながら、上手に付き合っていく。その中ぶらりんな姿勢こそが、必要なのだと感じた。
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健康診断はとりあえず受けておくと長生きできる。現代医療は数値化された物しか見ていないから患者の個性や痛みに鈍感である。病院では不調があればどんどん医者に訴えるべし。ガンは抗がん剤治療や延命治療なとぜず緩和ケアだけならピンピンコロリとも言える。歯ブラシだけでなくフロスが大事。世界中で虫が9〜8割減った。大脳の発達により人間だけが死を怖がるようになった、などなど、養老先生と中川先生による病気と病院にまつわるお話。
いつも変わらぬ安定の養老節だった。自分の病気すらネタにして鬼のように本を出しまくる養老先生も面白いし、本を出されたらやっぱり読んでしまう読者も面白い。理屈じゃない引力でもって読んでしまう。このままお元気に長生きしていただきたい。応援の意味も込めて星5点。 -
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これを読んだのは、だいぶ若いときだった。だから、がんについてあまり考えたことがなかったし、非常につらい病気だと思っていた。でも、本書を読んで、考え方が変わった。
まず、日本にはモルヒネに対する強い偏見がある。モルヒネは血液中に入ると危険だが、口から飲む分には安全である。これでがんの苦しみのほとんどは軽減されるという。
また、がんは死ぬまでに時間がかかる病気である。だから、人生の整理ができる。がんで亡くなった樹木希林さんもこう語っている。
「ガンになって死ぬのが一番幸せだと思います。畳の上で死ねるし、用意ができます。片付けしてその準備ができるのは最高だと思っています。」
つまり、これからの課題は、がんをどうやって治すかではなく、がんをどう生きるかという終末医療にかかっている。そういう発想を得られたことは、大きかった。 -
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東京大学医学部の放射線医である中川恵一氏が、福島第一原発からの放射線被曝の影響についてまとめたもの。
放射線の話になるとエキセントリックな反応を示す人が増えるが、以下のいくつかの点を忘れてはいけないと思う。
1.原発からある程度(避難を考えなくていい程度)離れたところに住む人間にとっては、放射線はなければないほどいいものであること(したがって、判断も1次元的になりがちである)
2.原発の近くに住む人間にとっては、避難をすることによるリスクの増大や、経済的なことなどを含む生活すべてへの影響との勘案が必要であること
この前提に立った上で本書を読むと、筆者が医者としてガンになるリスク全体を考えていることがよく分かる。議論の争点になりがちな100ミリシーベルト以下の被曝による影響が、「100ミリシーベルトでがん死亡率が0.5%増加」という影響と線形な関係にあるかどうかという問題であるが、科学的に見れば、影響はない、あるいは影響は検出不可能と考えられる。
このときに「放射線防護のポリシー」として100ミリシーベルト以下でも避難すべきとするのは、上記で言うと1の考え方に近いと思う。一方、本書の筆者の考え方は2の基準に立っている。避難による生活ストレスの方が放射線の影響よりも大きい可能性が高く、実際チェルノブイリの報告書でもそのように記されているという。
発がん性を高めるものとしては例えばアルコールもその一つである。1日日本酒2合以上3合以下飲む人の場合、ガンにかかる確率が1.4倍になるという。かなりの増加である。だからといって、飲酒はすべてやめるべきと考える人は少ないだろう。飲酒には娯楽的な側面もあるわけであり、それをすべてなくしてしまうデメリットと、アルコールによるガン増加のデメリットを勘案すれば、少量なら飲んでもいいと思う人の方が多いのではないだろうか(そもそもアルコールの場合も直線的なデータになるという証拠はないのではあるが)。
放射線だ、ということでエキセントリックにならずに考えれば、何が福島の人たちにとってベストなのか、また新たな見方ができてくるのではないかと思った。まずは本書を読んで、きちんと科学的な知識を持つべきだろう。 -
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「チーム中川」の中川先生の本。これは読むべし。
長生きのおかげで,いまや日本人の2人に1人が癌になり,3人に1人が癌で死ぬ。しかるに核家族化と稀薄な信仰心のため,日本人は自分や家族の死について考えることを避ける傾向にある。そして日本は癌検診が普及していない。心の準備不足のところに突然癌の診断が下ったら…。それを避けるために,いくつかの想定事例をもとに,癌についてよく知っておきたい。そんな本。ちなみに昔と違って,今はしっかり告知がなされる。標準治療が確立して,癌が治る病気になったから。
癌についてはいろいろ俗説があるが,それをまずバッサリ。癌は家系よりも生活習慣の影響が大きい,焦げを食べてもそんなに心配ない,タバコと酒の組合せは最悪。生活習慣を心がけ,癌検診を受けていれば,早期発見で治癒に至るケースが多い。
ただ,やはり発見が遅れたり,進行の速い癌で,全身に転移してしまうと完治は不可能になる。余命何年,何ヶ月とかいうことになってしまう。その場合は化学療法しかなく,抗癌剤を変えていってどれも効かなくなるともうお手上げ。万策尽きると緩和ケアということになるが,日本はこれも遅れてて,麻薬は怖いとか,痛みは我慢すべしとかいう観念があるために,痛みに苦しみながら弱っていく患者が多い。末期癌の痛みには意味はない。できるだけ苦痛を取り除いて,穏やかな死を迎える方がよい。
肺癌,乳癌,前立腺癌,直腸癌等の事例をもとに,「練習」が進んでいくが,これがかなり衝撃的。もちろん複数の実例をブレンドした仮想の事例だが,とてもリアリティがある。37歳で乳癌と診断されたキャリアウーマン。ホルモン治療による性欲減退で理解があると思われた恋人とも微妙に…とか。
あと,65歳の前立腺癌患者の例では,男性機能の喪失を恐れ,何とか温存する治療法を模索する…とか。なんだか涙ぐましい。テレビのドキュメンタリなんかでは,温存って乳癌のについてしかやらなそう。でも現実はこうだし,本人にとってはやっぱり切実なんだろうなとか。
日本人の癌死で昔もっとも多かったのが,胃癌。そういえば,クイズ番組でよく見てた逸見政孝さん,胃癌だったかな。でも今は前立腺癌,乳癌が多い。感染型の胃癌や子宮頸癌が減っているのは,冷蔵庫や風呂の普及によるところが大きいらしい。日本の癌も感染型から肉食型に欧米化してる。
実は「癌家系」意識のある日本では,死因を癌でなく「多臓器不全」にしちゃうとかで,癌に関するデータがしっかり取れてない。日本以外では,癌登録が普及してるのに。診断,治療,結果の情報を,患者ごとに個人情報を保護しながら登録,分析するのが癌登録で,将来の治療に役立つ。
最後の事例は,老夫婦。妻が末期癌,夫が認知症というケースで,妻が自分の死後の夫を案じていろいろ考えるのがせつない。年をとると,死の受容が容易になってくるとはいえ,つらいだろうなぁ。
死生観を磨く,じゃないけど死について考えるって有意義かもしんない。子供小さいと考えたくないとかいうのはあるんだけど。
自分が小学生くらいのころ,人って死んじゃうというのが分かって,絶望的に悲しくなっていろいろ考えてしまったことがある。そのとき自分なりに出した答えは,「死んだら生まれる前と同じになるんだ」ってこと。そのころは高々15年前くらいにはこの世にいなかったわけで,なんだかわからないけどそう考えたら不安も和らいだ。15年前には世界はあって,自分はなかった。そういう時が確かにあった。
今はもうちょっと変わった。自分って別にたいして一貫していない。今の自分は今だけ。十年前の自分,十年後の自分は,今の自分と同じでなくて,時の流れに沿ってつながってはいるけど,違っている。そうすると,どの瞬間をとっても自分って死んでるみたいなものかもなぁなんて思う。
要するに今を存分に生きるのがいいってことかな。うーん,ちゃんとできてるとは言い難いかも。まあ「自分」とは壮大なフィクションだという話もあるし,気楽に考えてもよさそう。…とか言いつつ,実際に何か起こったら,やっぱり取り乱してしまうのかも知れないが。 -
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がんについての必要なことをまとめた、小冊子的な本。
著者は東大病院放射線科准教授。
ガンがDNAのコピーとして発生する仕組みと自己からできたので、免疫機構がそれを発見できないこと、生活習慣などで改善できることを述べている。
治療には、全体に行う化学療法と、部分の手術や放射線治療があることを述べいている。
がんの検査も、「腫瘍マーカー」、「画像診断」(X線、CT,MRI)、PET(陽電子放射断層撮影)などもある)「病理検査」がある。
癌治療の「根治」(完治)、「延命」、「症状緩和」を目的として3種類を混ぜた「集学的治療」もある。
がん全体のことを知るには良書である。小さいが話は詰まっている。