中川恵一のレビュー一覧
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原発事故による放射性物質の拡散で健康被害が心配なのは当然であるが、ではどのくらい恐れるべきなのかについては大から小まで極論がマスコミに喧伝されていることから、一向にコンセンサスが得られる方向性が見られない。
著者は広島・長崎、そしてチェルノブイリのデータ分析を通じて勤めて冷静に対応するように訴えている。基本的には国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に従って、年間100ミリシーベルトの被曝で発癌率が0.5%の上昇が認められるが、それ以下の被曝での疫学的影響は見られないという立場を貫いている。其れ以下の放射線量についてはどこかに閾値があるとは想像するがデータが得られないし、政府が定めた年間20ミリシーベルトで有ればデータ的には「影響無し」と結論できるというものだ。また主として今般の福島原発で飛来した放射性物質がセシウム(チェルノブイリでの幼児の発癌は主としてヨウ素による甲状腺癌)であるとの前提では体内に取り込まれたとしても排出されるので内部被曝と外部被曝はその影響度において本質的に何も変わりはないという説明をしている。ここの部分は特に目新しい話題はない。
放射線被害は当然出来得る限り回避するのは当然としても、より注目したいのは本書が指摘するロシア政府が2011年に出した報告書の中で述べている平均寿命の著しい低下問題だ。1986年の事故当時のロシア・ベラルーシでの平均寿命は65歳だったのが、1994年には58歳と7年も下がっているという。直接的な死者やその影響とみられる発癌による死者を考慮しても理解できないような変化で、これについてロシア政府は「原発事故が及ぼした社会的、経済的、精神的な影響を何倍も大きくしてしまったのは、”汚染区域”を必要以上に厳格に規定して法律によるところが大きい」と述べている。つまり避難に伴う「精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限という事故に伴う副次的な影響のほうが、放射線被曝よりも遥かに大きな損害をもたらしたことが明らか」と言うのだ。
何とも皮肉な話ではないか。福島の現状を見ても避難した人達、そして避難が出来ない人たちも含めてこうした生活の不自由さに伴うストレスは決して見過ごすことができないし、軽視してはならないという事だ。一刻も早く、新しい生活が始められるように改めて十分な支援が必要ということだろう。また、その関係で言うと、徒に極端な「白か、黒か」議論を展開し、放射性物質は1ベクレルたりとも許容しない、というような生き方も相当ストレスを溜め、ひいては寿命を縮めることになるだろう。 -
Posted by ブクログ
ある方面からは多大な批判を受けている東大教授が満を持して(!?)自説を世に問う著作。この先生のグループはTwitterも利用して、情報を発信している。
まず、帯から挑発的。「フクシマではがんは増えない」(本文でも太字になっていた)。出版社が意図したものかもしれないが、その意味では、意見が真逆の中部大学の武田教授と手法は一緒である。
著者に「科学的に確認されていません」と言われても、それは現時点では・・・という注釈が付くものではないだろうか?そもそも科学的とはどういうことかという命題から説明しないと素人にはわからないと思う。
話をすり替えていると感じる部分もあり、そのまま咀嚼嚥下できない。チェルノブイリ事故後の膀胱がんに関する記載は、同じ東大教授の児玉龍彦先生とは真逆で、読む人の判断、取捨を要する。あなたはどちらを信じるか? -
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超カンタンな本。園長先生にもぜひ読んでもらいたいくらい。ミリとマイクロの違いとか,単位の話からやさしく丁寧に。放射線医としての経験上,長期間かけて低線量率被曝を受けても,体の修復機能が勝るという意見。
結論としては,「多くの専門家が100ミリシーベルト以下であれば、発がんリスクは上がらないのではないかと考えています。」p.100 かな。前提知識のない人にも,わかりやすく,この結論に至る過程がたどれるように記述してあると感じた。
ただ,ところどころ,妙な記述も散見。例えば,放射線防護を花粉症対策のアナロジーで説明するp.70「マスクをし、窓を閉め、エアコンを止める(戸外との空気の流れを減らす)ことには、ある程度効果があるでしょう。」
広島・長崎の被爆者データの説明で,「長崎では爆心地から100メートル地点での初期放射線量は約300グレイでしたが、原爆投下24時間後には0.01グレイまで減少したとされています。」p.96 って,初期放射線量はともかく,「0.01グレイ」って単位がおかしいよな…。
p.125には「放射線の人体への影響を考える場合、すでにお話ししたように、積算値で年間100ミリシーベルトを基準にします。」ってあるけど,「積算値で年間100ミリシーベルト」ってどういうことだ??
まあ細かいことはともかく,なかなかよくできた本でした。 -
Posted by ブクログ
東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一さんの本。放射線についてわかりやすく説明するということを第一目的に書かれた本。たしかにかりやすいです。ネットなどで結構調べていたので知ってた情報も多かったのですが復習にもなりました。
中川さんの主張はあまりこわがりすぎないという方向性のようで、それが100mmSV以下でのがん発症率の説明やタバコや野菜嫌いな人との比較に現れていると思います。あまり不安になりたくない人には受け入れたい情報かもしれませんが、リスクをとにかく減らしたいという人にとっては受け入れがたい説明でしょう。
ネットで中川さんの評判を見ていると、案の定、御用学者のレッテルが貼られていました。この本は5月頃に刊行されたもので、原発事故は現在進行形でその後の情報もブログでフォローしていくと書かれていたのですが、7月以後更新が止まっています。ネット上での批判が原因かどうかはわかりませんが。東大病院放射線治療チームは震災初期に冷静に有効な情報を発信していたと思われるだけに残念です。
私は震災以前、原発に対して特に意識していなかったので(反省しています)まずはいろいろな立場の人の意見を聞きたいので、自由な意見交換ができなくなるような空気にはなって欲しくないなと思います。 -
Posted by ブクログ
・「放射能、放射性物質、放射線の違い」、「シーベルトとベクレルの違い」など、基本的な疑問を平易に解説。
・放射線の影響は花粉をイメージすると分かり易い。
・年間積算量が100ミリシーベルト以下ならまず問題ないらしい。ただし、前提条件が色々あって、それぞれ結論が微妙に異なるし、結論をはっきり断言する事を避ける部分も多いので、余計に混乱する気もする。科学って面倒くさい。
・100ミリシーベルト以下なら絶対安全とは断言しない
・100ミリシーベルトが何年もずっと続くのはダメ。
・平常時の基準、1ミリシーベルトが望ましい。あくまで、原発事故などの緊急時(=短期間)には、100ミリまでOKという話。
・全身被ばくと局所被ばくは、ヤバさが異なる。
・確定的影響…250ミリシーベルトを超える放射線を「一度に浴びる」と白血球の減少など人体に影響が出る。
・確率的影響…「発がん」の可能性。100ミリシーベルトを超えると増す。ただし、100ミリ以下なら、確率がゼロになる訳ではない。