磯田道史のレビュー一覧
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ネタバレ新書であまり5は付けないんですが、いやー
これは良かった。日本人ならぜひ一読すべき。
長崎にいたオランダ商館長が、毎年将軍への謁見として江戸参府を義務付けられていて、
その過程の中で火災や地震に巻き込まれており、その詳細を商館長それぞれの個性で日記に描いている、という新しい視点で
日本の江戸災害史をまとめた1冊。
明暦の大火を生き抜いた冷静なワーヘナール、
神経質で元禄地震に敏感なタント、
地震が怖すぎて描写が全て悲劇的なハルヒト、
京都大火に偶然にも遭遇したファンレーデ、
全て個性が違ってて非常に面白い。またわかりやすい文体で読みやすい。
随所に入る磯田さんの解説もいい。
面白いなと思うのが、昔から日本人は地震や災害に慣れすぎてて、地震が起きても
悲しむ間もなく、すぐに復興活動を始める。
その姿がオランダ人からすると「????」となってるのがすごく面白い。
なんだこいつらと思ってたんだろうな、文化や考え方の違いが現れてて非常に面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表題通り歴史を心から愉しむ本です。
この本を読むと磯田さんが心から歴史が好きで、いくつになっても好奇心の塊なのがひしひしと伝わります…
ほんとに好きで好きで仕方ないことを見つけてそれを仕事にするのは幸せなことだと思わざるを得ない!
印象的なのは歴史学者になる前の、子どもの頃のエピソード。
出雲大社を自分で設計して作ってしまったり、それが台風でこわれたら、「歴史と一緒だ…!」と身震いしたり。
古文書を読みたくて、勉強を一時辞めて(!)解読に全振りしたり。
そんな磯田少年の好きなものを否定せずに付き合ってあげていた親御さんも素敵。
最後の関ヶ原に思いを馳せる新幹線の乗り方は(良い意味で)オタク過ぎて、新幹線に乗るだけでこんなに楽しみを見つけられるなんて、学びは人生を豊かにするなぁと思います。
ただただ新幹線に乗ってお酒飲んで寝ているだけの2時間半と、窓の外に目を向けてたくさんの発見をする2時間半は大違いですね。
気になることがあると古文書を読み漁って糸口を見つける過程を読むにつけ、検索で情報にすぐ見つかることが全てではないと心から感じます。
試行錯誤しながら情報が乗る古文書を探す推察力、書かれていることから事実を予測する読解力や想像力。
そもそもすぐに情報に辿り着かないことにまず価値があるのでしょうね。
磯田さんのワクワクが伝わる良本でした!!
震災後に書かれたこともあり、歴史上の地震や津波からわかることなどを研究するために使命感を持って転職するなど、自分が社会のためにできることを探求し続ける姿も素敵です。
好奇心こそ学問の母。
まさに!
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Posted by ブクログ
「賢者は歴史に学ぶ」
まさにそれを地でいくのが今回のコロナ禍では
ないでしょうか。
スペイン風邪をはじめとして、人類の歴史は感
染症との戦いなのです。
過去の文献を紐解くと、現在のコロナ禍と同じ
状況がいくらでも出て来ます。
特に今回スウェーデンが実施しようとした「集
団免疫」を行うべき、と言う議論は過去にも同
様にあったようです。
しかし「免疫」にはまだまだ謎が多く、集団免
疫は必ずしも効果があると判断できない経緯が
あったようです。これは現代でも同様です。
さらに昔の日本人の生活習慣にも目を引くもの
があります。
昔の高級布団には片側の隅に「フサ」が付いて
いました。これは頭の方の印だそうです。日本
人は昔から「ゾーニング」の観点で清潔を心が
けていたことが分かります。
まさに「答えは歴史にの中にある」と納得させ
られる一冊です。 -
Posted by ブクログ
はしがきから引き込まれました。その筆致も見事なのですが、積み上げられた膨大なナレッジから飛躍のない考察を展開する点はいかにも歴史学者らしく、それらのバランスが本書を良書たらしめています。
明治維新は家の由緒で禄を食んでいた旧弊な士族を没落させた一方で、実務の才覚を頼りに細々とやりくりしていた士族にスポットライトを当てました。磯田先生も折に触れて述べられているように、維新後の士族についての一面的な理解を改める必要があります。
目を見張るべきは、猪山家が現代の平均的な家庭より遥かに高い金融リテラシーを有していた点です。
・自力で債務整理。債権者を相手に有利に交渉し残額を無利子に
・家禄奉還を申請。制度廃止のリスクと現在価値計算上の優位性を踏まえ一括支給を選択
・支給された家禄は運用。期待リターンを比較し許容可能なリスクを考慮した上で、地価の下げ止まり・要用会社の信用リスク低下を待って投資
理財の才に長けていたとはいえ、動乱期に安直に貯金に走らず、熟慮を重ねて私財を運用しようとした合理的で冷静な判断力は推して知るべしです。 -
Posted by ブクログ
無私の日本人として、穀田屋十三郎、中根桃李、大田垣蓮月の三人が紹介されている。
前書の「武士の家計簿」が歴史として面白く、一個人の成功譚だったのに対して、本書は、現代・未来への問題提起がある。
現代は競争経済で、経済成長しているのに、昔ほど皆の生活は良くなっておらず(生きるには十分ですが)、数%の高所得者に資産が集まっている。そしてお金持ちさえも、お金だけでは、満たされない何かにぶつかっている。日本もGDPが他国に追い抜かれそう。そういった状況に対する日本人が幸せに生きるヒントがあるように思った。
サピエンス全史にもある、人間が想像して作り出したやっかいなもの、神、国、貨幣は、無いと困るけど、争いごとのタネになる。
無私の日本人の3人は、これに囚われず、大きな視点で人生を歩み、葛藤し、そして喜びを得ている。
①穀田屋十三郎
仙台藩からの重い負担(伝馬役)に苦しむ宿場を、私財を投げ打って助ける。
重い負担は、戦国時代から平安の世になって、余っている武士を食わすために、ひとつの仕事を二重三重、更には細かすぎる分業にする仕組みが、逆に平安の世をねじ曲げて、お百姓を苦しめている。
では、どう宿場を救うかだが、もうひとり重要人物として、菅原屋という人が登場する。この人物は、知恵ものとして、皆から一目置かれている。菅原屋は、金利を取られる方から、取る方への転換を提案する。お殿様にお金を貸して、利子を取って、永続的に宿場を潤そうという、お百姓から投資家への発想の転換。
衝撃的!
何を解決すべきかの課題の設定が、素晴らしい。
お百姓でも、学が備わっている。
そして幾多の苦難の末、村民9人で1000両、今にして、1億3000万円を用意する。お百姓って、サラリーマンより金持ってない?と動揺する。
ただ、これだけだと話がドライすぎて、お上の気持ちを揺さぶることが出来ず、ろくに検討もされず、却下される。(お上の足元を見るとは如何なる所存か!)
しかし、却下されても諦めない。
江戸時代は、家意識、家の存続、子々孫々の繁栄こそ最高の価値、先祖を尊ぶ意識が強く、物語の端々にそういった文化が見られる。
この意識に、浅野屋甚平が先祖代々、十三郎と同じ思想で、コツコツと先代から人知れず、お金を蓄え、家全体で慎ましい暮らしを、自らに課して生活しているということが判明する。(この浅野屋と十三郎の関係性が泣けるが、それは本書をお読み下さい)
この先祖代々、そして子々孫々までの繁栄、そして個人への見返りを求めないストーリーが合わさり、とうとうお上の心を動かし、宿場を救う。
穀田屋十三郎、菅原屋、浅野屋甚平は、宿場を救っただけでない。自分達が救ったことは、秘密にし、そして集まりでも下座に座ることを、決める。子孫にも同じことを引き継いでいく。要するに、名誉さえ手放してしまう。
無私の日本人、すごい。
②中根桃李
儒者。詩文の天才。
荻生徂徠に弟子入りし、中国語を操り、師に認められ、名声を得る。しかし、文名が上がるにつれ、彼の心は何故か虚しく落ちていく。
その彼を救ったのが、「孟子」の浩然の気。
物事にとらわれない、おおらかな心持ち。
そして一時の徂徠の虚名に頼り、文明をあげようとした自分を恥じて、作りためられた名文をすべて燃やしてしまう。
その後も幾多の書物をカラクリ人形のごとく読み続けるも、せっかく得た学問では、禄をもらうわけにはいかないと、ろくに士官もしない。
しかし、自分の使命は、人々に説き、自ら行うこととして、「天地万物一体の理」を説く。
天地万物は一物、我でないものはない。
自分にこだわらない。
自分を無にすれば、みんな同じ。
人を育て、戦いをやめる、乱暴しない、いじめをしない、これはちっとも他人事ではなく、自分の病を治しているようなもの。
学問は道に近づくためのもので、四書五経は案内書。ほんとうの価値はその外にあると説く。
この時代の誰もが疑わない真実(四書五行)をひっくり返して、更に広い視点で世界を捉えている。
③大田垣蓮月
尼僧、歌人、陶芸家。
美しさ、強さ、好奇心から幾多の才能を輝かすが、家族とは辛い別れを繰り返し、尼になるが、美しさゆえに苦しむ。(中盤まで結構長く、ツライ気持ちになる)
しかし、苦しみの果てに、自他平等の修業に辿り着く。心に自分と他人の差別をなくする修業。そして、物にこだわらない。
そして、その悟りを得てから、蓮と和歌の陶器を手ぐすねで作りだす。
のちの文人画家の富岡鉄斎との出会い。
そして少年時代の彼との会話、注ぐ愛情には、心揺さぶられる。
自分に必要なものを、必要な分だけ、時代の大きなうねりにも動じず、徹底して自他平等を貫く。
ただ、辞世の歌で「願わくは のちの蓮の花の上に 曇らぬ月をみるよしもがな」と書き残されている。
清らかな生をまっとうしたように見えても、来世は曇らぬ心の月をもちたいと願っていた。
ずっと心の内では、己と戦っていたということ。
もう言葉にならない。
余談ですが、筆者の磯田さんは、古文書ハンターと呼ばれ、小さい頃に古文書に引き込まれ、学校の勉強をほったらかして、古文書を読む為の勉強に邁進される。歴史のことを本当に楽しそうに興奮気味に話されると、こちらまで引き込まれる。とても魅力的な人です。