磯田道史のレビュー一覧
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歴史関係の本は偉人を描いていることがほとんどだと思ってた。が、今回は違った。
この本では偉人としての認知度は低いものの、自らの地位や財産を投げ打って、世のため人のために全てを捧げた3人の生涯が綴られている。教科書に出てくる偉人と何ら引けを取らない。心が洗われるし、自分には何ができるかを考えずにはいられなくなるような刺激的な本だった。
どの話も素敵だったが、中でも大田垣蓮月の話が一番心揺さぶられた感じがする。どんな卑しい者にも分け隔てなく、持っているものを分け与える。うまくいかない時も、周りに責任を求めるのではなく、自分自身が未だ何かに執着しているからだと悟る。絶対に並大抵の精神力じゃこれだけ無私になることなんてできないと思う。江戸無血開城も、蓮月の説得が関係しているのが事実なのだろうか。事実なら、凄すぎないですか、蓮月さん。。。 -
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各テーマ短くまとめられているため、1つ1つをそこまで深掘りされているわけではないが、論旨や引用事例が明快でわかりやすい。
徳川政権の成立と存続のカラクリ、天皇家の生殖管理とか東照宮によるじわじわ神格化とか、えげつない。
狸とか言われるのは司馬遼太郎作品から植え付けられたイメージもあるとは思うが、こういう仕掛けの細やかさ、周到さに関しては本当に性悪だと思う。
崩壊の序章(?)の1つとして触れられていたが、阿部正弘の開明的な施策は、転じて徳川幕府の崩壊の一押しと裏表だと。優れた人材登用や教育への注力も、日本全体のためには良いことであったはずであり、従来の門閥主義ではなく能力主義で人を活かすと聞けば大変聞こえがいい。
それが徳川幕府の世襲制の悪習を断ち切った良い側面もあるが、新政権ひいては戦中内閣にまで連綿と繋がっていき、官僚主義的”利口”な処世術に長けた組織が出来上がってしまうリスクの1要素だというのもわかる。
新政権の大久保利通評価、難しくてよくわからなくなってきた。別の本では、ある意味政治的な天才的手腕ともされているし、思想によって評価分かれそう。
個人的には嫌い寄り。
どれだけ人から奪ったかではなくどれだけ人に与えられたか、めちゃくちゃ重要視点。自分が思っている資本主義へのもやもやも包含してくれた。
自身の著作に限らず様々な出典を明記してくれていたので気になるテーマはそちらをあたってみようと思う。 -
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毎年、大河ドラマの予習として関連書籍を一冊は通読しているが、今回は磯田道史の著書を参考にした。
豊臣秀長に関する書簡はほとんど残っていない。そのため、現存する書簡の概要と事実、そこから読み取れる内容を簡潔かつ分かりやすく知りたいと考えたのが選書の理由である。少ないページ数ながらも、ある程度網羅的に描かれているのではないかと期待していたが、その意図は十分に達成されていた。
一次史料が少ないということは、必然的に秀吉との対比によって秀長の人物像を浮かび上がらせることになる。これが大河ドラマでどのように描かれるのか、今から楽しみでならない。
そもそも大河ドラマとは、司馬遼太郎の作品と同様、単なる事実の羅列ではない。講談などの材料を元にいかに事実らしく、説得力のあるストーリーを作り上げるかを楽しむものだ。本作も、今のところ「真実のような説得力ある嘘」で構成されている。視聴者の想像を超える「そうきたか!」という展開が多いことを切に願う。 -
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ネタバレ徳川家康は幼少期から織田家や今川家に人質に出されるという環境の中から、弱者の視点で自分や自分の環境を冷静に分析し江戸時代の徳川治世を作り出した。その中でも印象に残ったのは大きく2つ。1つ目は武田などの強豪との戦いの中で敗戦にも全滅せず生き残り徐々に戦い方を見つけて力をつけていったこと。負けを認め改善する姿勢。2つ目は信長や秀吉の成功や失敗の中から中から、「権威での支配」と「力での支配」について学び常に実践していた事。自身の権威や徳を高める(そう見せる)ため自身のふるまいや言動を演じていた事や力を見せるため難しい戦いも逃げない姿勢を見せ続けるなど内外に統治者として徳川を刷り込み続けていた。弱者だからこそ細部にわたり油断なく作り上げたのだと感じた。自身の役割を果たすためには、失敗を受け入れ改善すること、細部にわたり理想を演じつづける力をつける事(演じ続ける意思を持続することかもしれない)の必要性を学べた本でした。
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オーディブルの日本史の著書を片端から読んでいますが、これはとてもいい著作でした。天才信長は、実力本位で普通なら登用しない人材を中心人物まで引き上げるほどの器量を持っていたにも関わらず、その中心人物に裏切られて天下統一を目の前にして暗殺されてしまう。そして豊臣秀吉は、信長の遺産を絶妙に引き継いで短期間で天下統一を果たすのだからこれも天才である。それに対して徳川家康は、幼年時には今川義元に育てられ、織田信長と敵対する陣営にいたにも関わらず、信長の忠実なパートナーとして様々なパワハラに耐えながらも秀吉に伍する実力を身につけていく。その二人の天才の成果を全て引き継ぎ、しかも徳川の世を260年も継続させる家康は、すごいのだけれど、天才ではないからこそ、じっくりと準備したのだ。そして部下に安心感を与えたからこそ大きな謀反も起こらなかったのだ。ちょうど最近読んだ「日本史のなかの兄弟たち」と複層的な著作だったのでとても勉強になりました。