望月哲男のレビュー一覧
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最近ポストモダン文学にハマってる。この作品はその系統だと思う。前衛的というか実験的というか、兎にも角にもはちゃめちゃって感じ。ストーリーの筋自体は複雑ではないと思うが、書き方が複雑かつ、独特の文体でついていくのが困難。もうその文体や造語自体を楽しむしかないって作品。
小説を書くことで青い脂(青脂=せいし=精子)という奇抜なアイディアも斬新でよき。そういう小説内小説の入れ子構造も楽しい。ロシアの文豪が次々と出てき、各作家の文体に合わせて小説も書かれていた。ナボコフが一番好き。比喩表現が面白いから。
それぞれの作家を読んでいて、ある程度理解があればもっと楽しめたと思う。
怒りから子どもが生まれてくる映画、クローネンバーグの「ブルード」を思い起こした。
こういう小説は、真に面白い!って感じることは少ないけど、存在自体に感謝ってな感じで個人的には好み。 -
Posted by ブクログ
昨年夏にみた映画「生きる」カズオ・イシグロ版がとても良くて気に入る→お正月にそのオリジナルである、黒澤明の「生きる」を見る。なんかすごい話だな、志村喬の目の演技すごいな…。これの元になった小説があるんだ、しかもトルストイなのか→この本に辿り着く。
こんな流れで読み始めた。
トルストイは実ははじめて読んだ。
戦争と平和、アンナ・カレーニナ。
ドストエフスキーと並ぶ長大重厚露文作家である。
私は長大も重厚も得意ではなく、読めた露文は、ツルゲーネフ(でももう忘れた)、チェーホフ(同じく)、プーシキン(面白かった)くらい。
本書はトルストイの後期の中編が二本という構成。
◯イワン・イリイチの死
倒叙スタイル。ひどい葬式だなと思うも、イワンの人生パートに入ると面白くて目が離せなくなる。
結婚って、妻に子供が生まれることって、男にはこんなふうに見えるのか、さすがに今どきこんな考えの人はいないだろうけど身勝手150%でいろいろ不快。
でも、死というものを描くもろもろがとても手が込んでいて、面白かった。
死を前にした世界には、有無を言わせぬ迫力がある。
というか、映画と全然違うのね?!
公園もブランコも出てこないぞ。
◯クロイツェル・ソナタ
これも倒叙。列車という舞台装置が楽しい。
男女のもつれ、恋愛、結婚とは。謎のじいさんの告白。
みんなをドン引きさせたその発言の真意は。
というところから始まる、やはり現代とは倫理観の違いすぎる結婚すれからし物語。
幼稚で身勝手な男の論理にムカムカと腹が立つし、情けなくてなんだか泣けてくる。
でもやはり話はすごく上手い。こまかなボタンの掛け違い、ちょっとした関係改善と、またケンカ。
あー、あるある、と読者を納得させる力がある。
印象的だったのは、
p294
《妻ですか?そう、妻はいったい何者だったのでしょう?彼女は神秘です。昔も今もね。私には彼女が分かりません。私が知っているのは、動物としての彼女だけです。でも動物を押さえつけるなんてことはどうしたって不可能だし、またそれで当たり前なのですから。》
女をこんなに他者だと思ってるんだな。
その感覚が怖すぎる。
クロイツェル・ソナタはタイトルのとおり、音楽とその作用が物語のキイ。
いったいどんな曲だろうと思っていると、この本を読み終えた翌朝、ラジオ音楽の泉でベートーヴェンのクロイツェル・ソナタが掛かってびっくり。
こんな曲かあ、たしかに狂おしい。
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とうとうヴロンスキーとの関係をカレーニンに打ち明けたアンナ。第2巻は離婚をめぐる双方の心の葛藤がえげつないほど緻密に描写されている。
カレーニンがアンナを許せないという気持ち、いや許せないどころか不幸にさせたい、不幸のどん底に落としてやりたいと憎悪するのは当然の感情だよね。離婚してあげたら彼女はヴロンスキーとくっつく。だったら絶対に離婚しない。歪な夫婦関係だけど、いやそれはもう夫婦と呼べる関係ではないね。
アンナもアンナで、カレーニンとは元々利害関係のみで結婚したようなものだったのを、ヴロンスキーと出会って愛してしまって一緒になりたい、でも息子のセリョージャは手放したくない。自分がどうしたいのか分からない、何も分からない、と身体ごと真っ二つに分裂してしまいそうな苦しみの渦中にいる。愛している、愛していない、そのことだけは明確であるはずなのに、それでも分からなくなってしまうんだ。不倫して間男の子を孕んだアンナは断じて被害者ではないけれど、「分からない」という言葉は紛れもなく悲鳴だった。
そして生死をさまよう難産、からのカレーニンの赦し、それを知ったヴロンスキーの絶望&別れ。しかし復縁そして出奔。いやとんでもないよこの人たち……。アンナにとっての幸せってなんなんだろう。
怒涛の展開を見せるアンナたちに比べて、リョーヴィンとキティのなんと可愛らしいことだろう。一度はリョーヴィンからの告白をすげなく断ったキティだったけれど、ドイツでの療養を経て彼のもつ魅力に気づくことができた。「ぼくには、何ひとつ、忘れることも、許すことも、ありません。ぼくは、ずっと、あなたが、好きでした」!!照れまくる二人にもうこっちがきゅんきゅんしちゃって赤面ものだよ。あーーリョーヴィンが喜んでて笑顔でいて幸せを手にしてくれたことがシンプルに嬉しい。 -
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第2巻のレビューすらまだ書いてないのに読み終わってしまった。
共に難産と自殺未遂から復活したアンナ&ヴロンスキーのカップルがイタリアへ不倫旅行し芸術を楽しむシーンから始まっている。いや振り幅すごすぎるって。
その点リョーヴィンとキティの夫婦はほんとうに穏やかで明るい愛情を着々と育んでて好感が持てる。キノコ狩りだとか猟銃だとかでえんえんと続く農村での田舎暮らしエピソードは平凡であり退屈なのだけれども、アンナたちの章の後ではそれがホッとする。読んでて面白いのはもちろんアンナたちなんだけど、まぁその高低差の楽しみを最初から最後までずっと味わえる巻だった。
出奔により社交界からも追放されたアンナは次第にメンヘラのようにヴロンスキーに依存するようになり、そこまではそんなアンナを可愛らしく思ってたヴロンスキーがいよいよ束縛の煩わしさを如実に感じ始めたところで終わっている(あれっ、これどっかで見たことあるやつだ……)。
自分たちだけはいかに特別な関係だと想い合ってようが、不倫って結局どこのどの時代でも同じようにありきたりで、だれのどの顛末も同じようにありきたりなんだろうか。アンナの相談に乗るシーンでは、夫の浮気に何度も苦しみ不平不満を垂れながらも3人の子供たちを育てるドリーの母性が切り取られたようにぽつんと宙に浮いていた。
サレ夫かつ最もリアリストなカレーニンが少ししか出てこなかったのが寂しい。 -
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1999年に出版された
ロシアの作家ウラジーミル・ソローキンの長編SF小説。
2068年、酷寒の地に建つ遺伝子研(GENLABI)18に、
七人の文学者のクローン体が運び込まれた。
クローンたちは新作を書き上げると
焼け焦げて仮死状態に陥り、
超絶縁体の《青脂》――青い脂――を体内に蓄積させる。
研究所員の一人、
言語促進学者ボリス・グローゲル曰く、
防衛省が月面にピラミッド型をした不変エネルギーの
反応器を造っており、
その原料になるのが第五世代の超伝導体と《青脂》で、
それは軍事用ではなく、毒性もなく、
分解可能だが燃えることもない――。
物語の鍵を握る謎の物体が
次から次へと人の手に渡っていく様は
さながら河竹黙阿弥『三人吉三廓初買』のようだと
思いつつ、ニヤニヤしながら読み進めたが、
次第にボルヘスの名言が頭を擡げ出した。
> 長大な作品を物するのは、
> 数分間で語りつくせる着想を
> 五百ページにわたって展開するのは、
> 労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である。
※『八岐の園』~「プロローグ」
(岩波文庫『伝奇集』p.12)
様々なテクストを織り込んで諷刺を利かせているのは
理解できたが、
後半のエログロ描写ですっかりお腹いっぱいに(笑)。
ただ、《青脂》が製造される2068年のロシアに
中国語・中国文化が浸透しているらしい叙述について、
解説(p.604)には、
> すでに疲弊した西洋に代わって中国が勢力を増し、
> やがてその文化が
> ロシア文化を侵食するだろうという
> ソローキン独自の未来予測
とあり、中国のパワーが増大して、
ロシアに限らず世界中を席巻している現状を鑑みるに、
前世紀末時点での作者の予見は
的中していたと言えるのでは……と、
その点には深く頷かされた。 -
Posted by ブクログ
初トルストイ。
アンナの不倫シーンは昼ドラのようで、ついつい読んでしまう。体裁を気にするばかりで自分のことを見てくれない夫と、若々しい愛情を素直にぶつけてくる青年。この青年は思わせイケメンなのでつまり女の敵。夫もまぁまぁなクズなので、アンナかわいそう。
「小説」として読もうとするとリョーヴィンの田舎シーンは死ぬほどつまらないが、舞台が近代化の機運高まるアレクサンドル2世代(農奴解放etc.)であることを考えると、「歴史書」をも包含したものとしてスラスラ面白く読める。
巻末に当時の結婚観などが読書ガイドとして付されているのが嬉しい一冊。
個人的な推しは、どこか影のある優しい女性ワーレニカ。 -
Posted by ブクログ
ドストエフスキーの代表作の一つだけど、悪霊や罪と罰のような暗さの方が好きだわ。
どれも自分で破滅しようとする登場人物がよく出てくるけど、白痴は、それがひどい感じがする。
素直になれば幸せになれるのになぁ。残念だなぁという気持ちになる。
不幸な私、僕が好き!その方が落ち着くの!みたいな自虐が多い。
ナスターシャは現代ならカウンセリングを受けるべき。
自分だけ不幸でおさまればいいものの、周囲は振り回されてるし災難だ。
ムィシキンみたいなタイプの人は、巻き込まれやすい。
どうしようもない。それでも、最後まで読んじゃうのはなんなのか。
面白い話じゃないんだけど…