茂木誠のレビュー一覧
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「右から歴史を科学的に俯瞰する」
茂木先生の著作を読んだのは2つ目だが、帯にある通り「仕事でマストな教養」として大人向けに書かれていた印象を受けた。
どんなに優れた人間も認識のバイアスから逃れることはできない。
今回は先生の思想が割とよく出ていた気がする。そのことに自覚的でないと物を考えない保守が結構な勢いで生まれてしまう気がする。
中東のついて語られた章では、「価値のグローバリズム」という観点から現在の混乱を分析する。そしてあらゆる革命軍はエネルギーを持て余し暴走する宿命があるという命題を、演繹的にソ連やイスラム世界に当てはめ説明していた。
対象を破綻なく説明できている間は暫定的に正しいと仮定するという科学的な態度であると思った。
歴史を鑑みれば、「自由↔平等」という「経済的な座標」と「ナショナリズム(国家)↔グローバリズム(個人)」という「政治的な座標」でマトリクス図をつくるのにも合理的な根拠があるのだろう。日本も含めた世界の有名政治家や組織が思想的にどこに位置してどう対立し運動していくかには説得力があった。
ただ多様性が増すだろう今後は、もっと座標軸が増えて3次元的な表現が必要になってくるのかも知れない。そうなると紙での表現が難しくなるのだろうけど。 -
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ロシアのウクライナ侵攻
中国による武力による台湾統一
世界が大きく変わっていく中で、日本の立ち位置も変わっていく。防衛面をアメリカに大きく依存してきたことでアメリカの顔色を伺わざる得ない政治家たち。
日本の地理的な立ち位置が、朝鮮戦争などを通じて優位に働いてきたこが、大きな経済発展へと繋がったのも事実かもしれません。一方で、中国の台頭によるアメリカの国力の限界などを考えると、自分の国のことは自分たちで考える必要性に迫られている気もしました。
安倍さん、生前は色々と言われていましたが、世界、特にインドでは偉大な人だったのですね。それでも次の指導者には、日本のことを一番に考えてくれる政治家になってもらいたいと思います。 -
Posted by ブクログ
様々な時代、様々な国の政治思想をのせめぎあいを、X軸を経済的自由、Y軸を政治的自由として、政治思想を二次元座標で表現したデイヴィッド・ローランが考案した政治思想マトリックスを用いて示している。自民党には主に3つのグループの流れがあるという説明はわかりやすい。
フランクリン・ルーズベルト大統領は、ニューディール政策によって失業率を25%から15%まで下げる成果を出したが、財界から社会主義的であると批判されたため、「我々こそがリベラル」と主張したのがリベラルの始まり。
1924年にレーニンが死去すると、国内建設を重視するスターリンと、世界革命を進めようとするトロツキーをはじめとするユダヤ人との間で権力闘争が起きた。スターリンに敗れたトロツキー支持者たちは、迫害をおそれて世界各国に散らばった。アメリカに移ったトロッキー支持者は民主党に加わり、トルーマン民主党政権を動かして、米ソ冷戦を仕掛けたのではないかとも考えられる。1978年、カーター大統領がエジプトとの和平合意をまとめると、アメリカ国内のユダヤ系住民は、次のレーガン政権を全面的に支えて外交や軍事の分野で強い影響力を持つようになり、ネオコンと呼ばれるようになった。
吉田茂が始めた自由党は、アメリカの占領を受け入れ、アメリカが作った憲法を守り、安全保障はアメリカに任せ、日本は軽武装で経済発展に専念しようという路線だった(吉田ドクトリン)。鳩山一郎の日本民主党は、アメリカに媚びへつらうのではなく、民族主義的な独自路線を掲げた。
池田勇人の所得倍増計画は、大きな政府で所得を分配しようという政策だった。労働者にも支持を拡大し、労働運動や社会主義運動を抑え込むことに成功した。池田勇人を支えたグループは宏池会を名乗り、自民党の保守本流として大平正芳、宮澤喜一らの首相を出した。
高度経済成長時代に建設業界は景気がよかったため、土建屋出身の田中角栄は金の力で佐藤グループを乗っ取り、首相に就任した。税金を地方に投資して日本中を高速道路と新幹線でつなぎ、箱物と呼ばれる公共施設を日本各地に作った。公共事業を地元に誘致することで政治献金を受け取り、これを選挙資金として地元民から票を集める仕組みを作り、後の竹下派が自民党内で権力を維持することに機能した。竹下登は、中国へのODAで円借款を行ない、公共事業を日本企業に発注してもらうことで、中国共産党と蜜月関係になった。
小泉純一郎は、国家の借金を減らし、財政を黒字化したい財務省と組むことによって、経世会の支配を打倒した。小泉は、田中角栄が作った道路公団を皮切りに、石油公団、住宅金融公庫、交通営団など特殊法人の民営化を断行し、小さな政府を目指す改革を進めた。明治時代に地方の有力者や地主、豪商などの屋敷の一部を使わせてもらって開設された特定郵便局は、選挙では自民党経世会を応援し、議員に対しては高速道路や鉄道をつくることを陳情する関係が成り立っていた。この仕組みを壊すことが郵政民営化の狙いだった。 -
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かつてタブーとされた血なまぐさい暴力的な外交姿勢を前提とした地政学的見地を元に世界を俯瞰した本書。
地政学という徹底したリアリズムの世界では人道主義の入る隙はなく、あるのは地理的制約条件と如何にパイを取るかという苛烈な弱肉強食の論理だけ。
そんな前提でこんなグローバル社会が動いているわけないじゃないか。社会は進歩したんだ。と言いたいところだが、
残念ながらこれだけグローバル企業が世界を股に掛けるようになっても、ある国家の指導者が戦争意志を固めて実行してしまえば、世界はその吹き荒れる暴力の嵐に右往左往するしかないというのは2022年現在、肌で感じることだ。
そんな出来れば考えたくない残酷な世界観だが、そういう思考で動く国がある限り、現実的に平和を保つために、こういう学問を学ぶことは重要だと思う。
とは言え、本書は地政学云々以外にも世界史の読み物としてもとても面白く書かれている。
また世界中の地域の紛争の歴史とその背景的意味が描かれていて理解が深まりやすい。
主要な地域は以下。
・アメリカ大陸
・中国
・朝鮮半島
・東南アジア
・インド、南アジア
・ロシア
・ヨーロッパ
・中東湾岸地域
・トルコ、西アジア
・アフリカ
なぜ、この国ではこんな状態になっているのだろう?とか、なぜこの国はこんな風に振舞うのか?なんでこんなわけのわからん事を言うのか?という疑問に対して概ね答えが出せるという良書。
本書を読んで一番面白かったのは、日本が世界史を語るうえで果たした役割について。
学校教育では国内の歴史に言及するばかりで、世界への影響に語られることはほとんど無かったが。
実は日本は世界史上でわけのわからん事をして、既定路線の秩序をぐちゃぐちゃにする存在としてよく存在する。
遥か昔の倭寇に始まり、秀吉の朝鮮出兵は当時の中国王朝滅亡の引き金になった。
日清戦争でも清王朝に止めを刺して、日露戦争では根本的に世界のパワーバランスを覆し、ロシア帝国滅亡の遠因を作った。
その後の日中戦争では、国共内戦を図らずも止めてしまい共産党が生き残る一因を作った。
その後の南下政策では、次々と東南アジアの列強支配を覆し、これも戦後の各国家独立の礎となっている。
面白い本でした。 -
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コテンラジオからの興味の拡がりで、
最近本屋さんでよく見かけた「地政学」が網にひっかかったので、漫画を交えてあり、比較的易しそうな感じのこちらを購読。
結論から言うと、
めちゃくちゃわかりやすくて面白かった。
各国ごとにまず軽い漫画を挟んだ後、
その国についてテキストで地形や歴史から見える立場や考えを解説していて、キーワードになる語句については欄外で詳細が示されている。
今世界で起こっているモノゴトについて、
自分の目から見える解像度が段違いに上がった。
特にわたしが1番印象に残った国の行動原理が、「自国を守るために戦う」というところ。
世界史でも日本史でも、争いの種になるのいつも自国を脅かす外敵であり、つまり各々の国同士、
お互いがお互いを怖がるというところなんだと、
かなり腹落ちした。
(これはコテンラジオの第一次世界大戦を聞いた後だったから余計に)
最後の章で、
日本の政治家としては珍しいのだけれど、地政学的検知に立ったレポートを提出した人物という話の中で、安倍元総理大臣のお名前が出てきた。
アジア太平洋上の安全保障についてインドとの関係を作り上げ、クアッドの創設に力を尽くした、
素晴らしく稀有な政治家だったと思う。
政治的な意見を声高に記すつもりはないけれど、
今回のことは本当に本当に残念だ。
ご冥福をお祈りしたい。 -
Posted by ブクログ
世界史の難しさって、その複雑さによるものではないかと思う。
世界史が対象としているのは今のところ主にユーラシア大陸の歴史だと思う。そこでは多くの民族が地続きで存在していて、版図が頻繁にに変わっているから把握が難しい。
茂木先生は、知識をスッキリ腑分けして教えてくれるので分かりやすい。
昔読みやすさが売りの対談本を結構読んでいた。
ある本ではリベラル寄りの著者が「アメリカは常に仮想敵国を作らずにはいられない」みたいな発言をしていて、別の本では保守派の論客が「いやアメリカはモンロー主義を掲げている。そんなはずはない」と云っている。
この本を読み終えて、どちらも50点だなと思った。
実際は複数ある支持母体の動向で政策が揺れ動いているので、どちらも正解で不正解。
世界は昔よりも緊密に繋がっているので、この本で得た知見が投資判断の精度向上に役立つと思った。 -
Posted by ブクログ
平和だった日本人は意識が低すぎた。今はいつ敵国が攻めてくる分からない。自衛の意識を持つ必要がある。
私は特に中東の事情について、全く知識がなかった。
テレビで伝えてないから興味無しのままでよいかと言えば、絶対にそれでは駄目だと思う。
私が学生だった30年以上前は「地政学」という概念はなかった。
あくまで「地理」という科目があっただけで「この国の産業は、特長は」という「点」としての説明でしかなかったと記憶している。
当時は「暗記科目」と割り切っていたが、その考え方が根本的に間違っていると30年以上経った今になって気が付くというのも情けないものだ。
「地理」と別で「世界史」という科目もあったが、これも歴史エピソード集であったりした。
地理と歴史は切り離せないものであり、「なぜ今の状況がこうなっているのか」という部分から掘り下げていくだけも、十分に勉強する意味がある学問である。
(私が偉そうに言える立場では当然ないのだが)
今は特に混沌としているように感じるが、よくよく考えればいつの時代も混沌としていたはずなのだ。
日本は第二次大戦で完膚なきまでに敗戦したことが影響して、戦後すぐは「軍備を持つこと」が出来なかった。
それ故に逆にアメリカの傘の下で、防衛や軍備に予算を割かずに、経済発展に資本を振り切れたという事情がある。
戦後ここ数十年が日本は平和だったにすぎない。
米ソ冷戦の時代だって、結局大国同士のにらみ合いの中で、日本が独自に何かの行動を出来るはずもなかった。
時代は変わって、米中が対立するようになった。
今は軍同士の直接的な睨み合いはないが、経済戦争はかなり激しくなっていると言えるだろう。
そんな米中の背景がある中で、ロシアはウクライナに軍事侵攻した。
まさか前近代的な戦争がこの21世紀に起こるとは誰も予想もしていなかった。
日本から見ればヨーロッパで起きている戦争とは言え、対岸の火事で済ましては絶対にいけない。
世界秩序が大きく揺らいでいるのは間違いないのだ。
経済の発展に伴って中国が力を付けてきたこともあるが、世界の国家ごとの人口構成だって今後は大きく変化していく。
アジア・アフリカ地域の人口が急激に伸びていき、先進国と言われるヨーロッパ・日本は人口が急激に減っていく。
そういう状況で、国際社会の中での日本の立ち位置は、確実に下がっていくはずなのだ。
逆にアジア・アフリカの発言力は今後より強まっていくだろう。
そういうバランスの中で、国際社会はどうなっていくのか。
どう考えても、中国共産党特に習近平は、アジア諸国を取り込み、自らが世界の中心に返り咲く野望を捨てないだろう。
そうなると絶対に台湾は取りに来る。それには日本という国がどうしても邪魔なのだ。
日本が無ければ、太平洋も中国が押さえられる。
日本は排他的経済水域のお陰で、眠っている海洋資源も保持している状況だ。
これは中国からしても他国からしても、のどから手が出るような利権であることは間違いない。
日本が戦争する気がないとしても、他国が欲を出し、日本に攻め込んで来ることは十分にあり得るのだ。
そして本書で書かれていた、イラン・イラク・アフガン・イスラエルなど中東の国々は宗教も石油利権も含め、ものすごく不安定な状況にある。
ここが一発触発となった場合、後ろ盾となっている米ロ中がどう動くかで世界大戦にもなり得るのだ。
かつて明治時代の日本の国防戦略は「対ロシア」であった。
ロシアはそれこそ喉から手が出るほど、日本が欲しい。
ロシアが日本を手に入れれば「不凍港」とさらに「海洋への出口」が手に入る。
戦後はソ連の脅威がそこまでなかったが、これからはどうなるのだろうか。
日本は確かに島国であるが、ロシア・中国・北朝鮮という独裁者の巣食う国家に囲まれている。
国防を考える意味でも、国際情勢を学ぶことは絶対に必要だと思うのだ。
私自身ももっと興味を持って学んでいきたいと思う。
(2022/4/24)