世界で多くの事件が起きていますが、それらには原因があると思います。米ソ冷戦構造が終わって、早いもので20年が過ぎました。当時抑制された人達が、本来の姿を取り戻そうとして活動しているのかもしれません。それを理解するためには、この本の「帯」に書かれているように、地政学・宗教・世界史、を組み合わせて理解しておくことが大切だと思います。
この本では、ヨーロッパ・イスラム・米国と中国について、合計99の質問に答える形で、構成されています。長年、フジテレビの報道ステーションを担当していた、久米宏が、絶賛しているだけあって、面白い内容が満載でした。
以下は気になったポイントです。
・フランク王国が9世紀に西欧を統合した、日本では平安京に遷都したころ。この王国が採用したのが、西方キリスト教のローマ・カトリック教会と、ラテン文字(ローマ字)であった、そののち、仏・独・伊に分裂した(p17)
・ローマ帝国は5分の1程度まで領土の縮小を余儀なくされますが、現在のギリシアを中心に生き残る。これを東ローマ帝国、あるいはビザンツ帝国という。この帝国が採用したのが、キリスト教の東方正教会とギリシア文字、これが東欧の原型となった。(p18)
・ユダヤ教は厳しすぎる律法なので異民族には広がらず、何度も迫害を受けた。ナチスヒトラーによる迫害は有名だが、それ以前にも、エジプト、バビロニア、ギリシア、ローマといった諸民族によって何度も国を滅ぼされた(p22)
・ユダヤ教とキリスト教の根本的な相違は、大工の息子であるイエスを神と認めるか否か、ユダヤ教から見れば、人間であるイエスを「神」と呼ぶなど言語道断である(p25)
・天皇家が実際に軍事力を持っていたのは、7世紀まで、そのあとは側近(藤原氏等)が力を持った。平安時代末期になると、武家が台頭した(p36)
・東ローマ帝国、ロシアと同じように、政教一致の大国として、中国がある(p40)
・スターリンは反革命罪で自国民を何百万人も殺害した人物だが、ヒトラーの侵略からロシアを守ったことにロシア人は価値を置いている(p59)
・スコットランドの独立運動が盛り上がった背景には、クリミアが独自に住民投票を行って、ウクライナから独立してロシアに編入されたことが影響している(p73)
・経済統合や通貨統合の絶対条件は、同じ価値観を持っていること、そして、経済格差があまりないこと、これを無視すれば大混乱が起きるのは証明すみ(p87)
・サダムフセインは、イラン革命の影響を食い止めるために、イランに攻め込んだ、これがイラン・イラク戦争の始まり。アメリカはこのとき、イランのホメイニ政権を倒すため、サダムフセインのイラクに兵器を供与している(p121)
・イラクの革命政権が倒れ、シーア派の親米政権が生まれて、国有だった油田はアメリカ資本の手にわたった。2003年のイラク戦争の意味は、親ソ政権に国有化されていたイラクの石油利権を、アメリカが取り返したことになる(p127)
・ISは、イスラム原理主義のアルカイダ系過激派組織と、旧フセイン政権の軍人がくっついて拡大した組織といえる(p130)
・イスラエルとトルコという、中東における2つの新米国家が、IS問題でアメリカから距離を置き始めた、これは物凄い地殻変動である(p148)
・敵の敵は味方と考えると、現在は、アメリカ・クルド・イランvsロシア・シリア・イスラエル・サウジ・トルコ、である(p155)
・テキサス共和国がアメリカ合衆国に編入申請をすると、アメリカ政府はテキサスをアメリカの州にした。クリミアと同じ。アメリカは、ロシアによるクリミア編入はけしからん、と非難するが、メキシコ人から見れば、アメリカこそテキサスを返せと反論したいだろう(p185)
・アメリカから東部でカリフォルニアを目指すとすると、当時はパナマ運河がないので、安全なルートは東海岸から大西洋を渡り、アフリカ南端の喜望峰を回ってインド洋を抜け、日本をかすめて太平洋を越える世界一周のルートであった。南米大陸を回るのは南極に近く海も荒れるので危険であった(p188)
・アジアを通って、カルフォルニアに行くルートを押さえる、将来の中国貿易の拠点、捕鯨船の補給基地を得るのが、日本であった(p189)
・共和党を支持しているのは、1)軍需産業、2)草の根保守、3)福音派、民主党の支持者は、1)金融資本、2)移民労働者、3)アフリカ系(p202)
・オバマケアは、妥協して、全国民を民間の保険に強制加入させて、政府が保険料の一部を負担するという形で法案を通した(p207)
2017年1月2日作成