長い中国の歴史を紐解き、現在の政権のもつイデオロギーを整理し、歴史の浅いアメリカがなぜスーパーパワーを持ち得たのか。そして、この両者がどうして激突することになるのか。次の冷戦の必然を説く。
まず、疫病の対応や、米国ならではのアキレス腱、要すれば奴隷解放宣言をしておいて、その大統領は奴隷を使っていた。こうした矛盾を抱えながら、大統領演説がなされた、そんなアメリカに、人民平等、チベット問題など内政に口出しされる覚えはないという中国。儒教、仏教、宗家思想など、時の政権と宗教、そして軍師や宦官の存在によって大きく変化してきている。非常に興味深い考察と歴史認識で、今の中国は毛沢東が考える絶対王政や性悪説に基づく、選ばれし優秀な人が愚民を導く体制を思考していると。実は中国にいるとそれは非常に感じるところで、民は何も考えていない、ということを求められる。政府の言を忠実に感じ取る共産党員がしっかりと民の中にいて、言葉と意思を的確に伝えていく役割を持っている。一方で、汚職は当然ながら出てくるシステムであることから、時折粛清する。これは、中国の歴史。でも、それをアメリカのサイドから見ると、大きな、絶対的に戦う理由がある。本書では、全く異なる思考回路からくる衝突は免れないとして、ランドパワーをもつ陸軍主導、農業を主軸とする中国は陸を増やそうとし、シーパワーをもつ国は、海と貿易を支配しようとする。という論である。地政学は、その思想や宗教などは全く関係なく、その国のプロファイルがランドかシーかなどによって分析していく学問。でも、日本はランドパワーなので、と言われても、ピンと来ない。海に囲まれている国だからだ。貿易は世界最大級、シーパワーの国とも言える。アメリカはシーパワー、中国はランドパワーというよりも、一般的な資本主義と主義の大きな違い、交わらない接点にあると思うのだけど。。。と感じてしてまった。それは、真っ向から対立するイデオロギーにあらず、実は経済的な優位のみが存在意義となった成り立ちのアメリカにとって、中国が軍事、経済の面でパックスアメリカーナを脅かし、世界一を目指しているからだ。中国の戦略は、きっちり相手国の中に入って、中から崩壊させていく。なんでも使うし、それで悪いとは思っていない。これは歴史を見れば明らかだ。
一方で、中国も大きな歴史期的転換点をいくつか経てここに辿り着いていることをもっと考えてみると、必ずしも安泰ではない。統治しきれないほどの広さがあり、どこかでほつれがあって、国民が、反乱を起こすかもしれない、そんな恐怖感がある。統制システムが崩れないか、しっかり見ていく必要があるという点はその通りかなと思った。