動きを描写する方法でいちばんいいのはことばなのです。
気になるのは、以下です。
■ことば
・同じことばでも、学習者のレベルによって有効である場合と、ない場合があります。
・コーチングのうまい人は、学習者のレベルによってどのようなことばが的確かを直観的に判断し、巧みにことばを使う人が多い。
・映像
...続きを読むでは情報量が多く正確すぎ、人間の処理できる能力を超えてしまっている。ことばは、いちばん大事なところをスポットライトを当てることができるので、表現方法としては、いちばん適しているのではないか。
・人間の認識や認知にはくせがあり、同じものを見たり、同じアドバイスを受けても、受け取り方が人によって異なると感じるようになりました。
・受け取る人の認識を想像しながらことばを選ばないと、同じ動きを引き出せない。
・ブレイクスルーは、体験によって、このことか!と分かった瞬間に起きます。
■ことばと身体
・リズムは身体の動きに不可欠です。なぜなら、動きは、身体の部位が連動していくことだからです。
・スポーツの世界では、身体の連動のイメージには音声のほうが向いていて、方向性や軌道のような視覚的イメージはことばのほうがふさわしい
・システムを自分で考えて構築していくという過程があるからこそ、仮に実体がない概念的なことばを聞いても、実体のあることばとの関係の中で理解することができるのです。
・そのように理解したことばこそ、自分の知識の一部となり、身体の一部になります。
・ことばには余白があるから、伝えやすい。余白がたんさんある。つまり聞き手が自分で考え、解釈する余地がたくさんあるということです。自分で考え、解釈した情報は知識となり、身体の一部となりやすいのです。
■言語能力
・言語化するというのは、見たものそのままを言語で表現することではなさそうです。
・相手に、自分が見たものとまったく同じものを思いうかべてもらうことを目的としているとしても、実際には見たものそのままをことばで表現しているとは限りません。
・そもそもことばというのは2つの種類がある
1つは、認知的な意味合いで情報を伝える役割をもったもの
もう1つは、感情を伝えることば
・ことばというのは、おもしろくて、抽象度の階層があるわけです。
・あることを細かい粒度でいうこともできるし、それよりももっと粒度を粗くして、抽象的にいうこともできる。
・言語能力とは、「どのように伝えれば相手がこちらの意図を理解できるか」を推論する力だと思います。
・おなじことばを話していても、コモングラウンドが違うと伝わらない
・コモングラウンドとは、ある単語を行ったり、聞いたりしたときに、同じ対象、同じ意味を思いうかべることができたり、同じ文を行ったり聞いたりした時に同じシチュエーションをイメージできるかという認識の共通の枠組です。
・文章を読んでわかる、理解するということは、結局、このメンタルモデルをつくるということでそれができない子どもが非常に多い。メンタルモデルとは、状況を心の中で組み立てたイメージのこと
■熟達
・客観的に動きを眺めるということは、連続する動きの中で、ある点を捕らえて言語化するというプロセスが必要となるのですが、それができるには別の能力が必要となります。
・身体はすべて関係しあっているので、起こしたい動きを間接的に狙ったほうがうまくいくこともある
・毎回異なる状況に対して、同じ結果を出せる。つまり状況への対応能力、調整力が高いということが、熟達したということではないでしょうか。
・ことばはきっかけづくりとして使用されますが、技術習得の過程への影響はあまり大きくはありません。
・コーチの役割は4つ
教える
そのまま伝える
揺さぶる
気づかせる
・できるようになるとは、同じ事が繰り返してできるようになるということではなく、違う条件に対応できるということです
■学びの過程
・学びの過程
①最初は反復しかありません
②無意識にできるようになる
③無意識にしまい込んでいた身体の動きを改めて引き出し、意識的に改善する
⇒細かい動きを意識しすぎると、過剰に動きを意識してしまいへたになってしまいます
⇒意識するとギクシャクし、意識しなければ、動きが改善されない
④意識的に練習するときと、無意識に練習するときに、分けていた
⇒局部だけに集中すると全体が見えない
⑤局所で技術を改善すると、それによって変化した全体のバランスを取り直す
・新しいことを学ぶと、これまでできていたことができなくなる、あるいは混乱する
・達人になれる人というのは、自分が、何をわかって、何をわかっていないかを明確に判断できるということが非常におおきい
・ICAPモデル:情報を深くする
① Passive 受動的 聞いているだけ
② Active 能動的 メモや付箋をつける
③ Constructive 構成的 新しい情報と既存の知識が関係づけられる
④ Interractive 双方向的 対話によって複数の人と新しい知識を構築する
学びで大事なことは、学び方の学び
もくじ
はじめに 為末大
1章 ことばは世界をカテゴライズする
2章 ことばと身体
3章 言語能力が高いとは何か
4章 熟達とは
5章 学びの過程は直線ではない
おわりに 今井むつみ
ISBN:9784594095796
出版社:扶桑社
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:950円(本体)
発行年月日:2023年09月
発売日:2023年09月01日