為末大のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
レベルは違うが同じスポーツ選手。それも個人競技として共通点があるので、彼の本は読んでいてい同じ感覚を感じる。
コントロールできることと出来ないことの切り分け方など、一段深いところまで書かれていてそれだけでも読むべき内容だった。
最後は自分の人生の責任は自分で引き受けるしかないという感覚や、引退後の話、スポーツの世界の感覚で日常生活との折り合いをつける事など実体験を通して、非常に冷静な分析した結果を書いているので勉強になった。
気に入った言葉:
「コントロール出来ることに意識を向けよ」というが、大事な点は楽観的になる事でも悲観することでもなく「目の前にある自分に出来る課題解決に集中すること」
成功がもたらす害悪:
1.原因が分からなくなる
2.変われなくなる
3.世間に賞賛される味を覚える -
Posted by ブクログ
400mHのメダリストである著者による、自身の競技生活の振り返りの本。競技の選択のしかたから、引退との向き合い方まで、幅広く語られている。
全体を通して、競技にまつわるアドバイスをするような内容になっている。本書が対象として想定しているのは著者と同じようなアスリートたちだと思うけれど、それだけではもったいないと感じた。自分を成長させたいと思う人や、なにか突き抜けた成果を上げたいと思う人にとって、共通して参考になるものが書かれているのではないか。例えばなにかに継続して取り組むことの功罪。例えばロールモデルの上手な選び方。あくまでアスリートとしての視点から語られてはいるものの、もっと普遍的なことに通じるものがあるような気がした。トップクラスにいた人が自身の体験に基づいて書いているし、失敗談も明かしてくれているので、説得力がある。
個人的に印象的だったのは、トップの選手にとって、科学には限界があるということ。多くの人で検証して共通する傾向を見出すのが科学だから、統計的には例外の存在であるトップアスリートは、科学的な理論の先を行かなければならない領域がある。とはいえなんでも闇雲にやるのではなく、自分の体を観察して、試行錯誤しながらやっていく。いろいろな技術が発達して、スポーツにも科学的な視点がたくさん入り込んでいると思うけど、トップアスリートは時にその埒外に踏み出さないといけない。勇気が必要だし、自分の体を理解していないと正しい方向には進めないのだろうなと思った。
終始、淡々とした語り口で、文章も分かりやすく読みやすい。体の使い方を説明するところなどでは比喩も多く、イメージがわきやすかった。
自分も高校時代は陸上部で400mHをやっていた。本書を読んでから当時を思い返すと、勝つためというより、練習することそのものが目的になってしまっていたと気づいた。そもそも全然勝てる選手じゃなかったけれど、それでも、当時この本に出会えていたら、部活への取り組み方が変わっていたと思うし、それ以外の生活全般で過ごしかたが変わっていた気がする。
今回、本書を読んで初めて知ったけれど、著者の著作はほかにもけっこうあるようだ。文章がうまく分かりやすいのも何だか納得。他にも読んでみたい。
「はじめに」に東京オリンピックをきっかけに本書を執筆したとある。そして「おわりに」で新型コロナウイルスによるオリンピックの延期について触れ、「この夏」に向けて準備してきたアスリートの辛さに寄り添うとともに1年後に向けたエールが送られている。トップアスリートだけでなく部活などの成果を発揮しようとしていた学生など、全てのアスリートが、練習の成果を発揮して勝負ができる場が、一日も早く復活することを祈っています。
(NetGalleyで閲覧、その後購入) -
Posted by ブクログ
人生100年時代、っていうフレーズをよく聞くようになったけど、じゃあ、その中でどう自分のキャリアをデザインしていくのか、どこで自分の「引き際」「賞味期限」を見極めて、次のステップに進むのか、そのつなぎ目のつくり方ってまだまだ分からないことが多いように思う。
本書は、一般のビジネスパーソンよりもセカンドキャリアを考えるタイミングが早いアスリートである為末大さんのこれまでの人生を振り返りながら、その節目節目はどういう転機だったのか、どうやって次に進むための「リセットボタン」を押したのか、中原先生との対談の中で明らかにしていくもの。
アスリートだから選手生命は短いというのはあるけど、あんまりそういうのは関係ないと思った。人生のリフレクション(これまでを振り返り、意味づけをした上で未来をつくること)をしっかりやっていくことは誰にとっても大事だし、ピークの上り坂の途中で次を考えて準備する、ということなんかは、確かにそうかも、と思った。
キャリアデザインの本として、またコーチとアスリートの関係や大学のシステムの日米欧の違い、成果の捉え方、働き方に関する考え方なんかも合間合間に含まれていて、それらもとても面白かった。
社会人20代~30代位の人にはぜひ読んでほしい。おススメです。 -
Posted by ブクログ
著者は2001年エドモントン世界選手権で、男子400mハードル日本人初となる銅メダルを獲得。さらに、2005年ヘルシンキ世界選手権でも銅メダルと、トラック種目で初めて日本人が世界大会で二度メダルを獲得するという快挙を達成。侍ハードラーの異名を持つトップアスリート。
著書に「走る哲学」「決断という技術」等多数。
もがき苦しむ中で、見えてきたものもある。
競技人生には「限界」がある。限界があるからこそ、今日という瞬間を駆け抜けることができた。夢は叶わないこともある。
だからこそ、夢を追い続けることの尊さや喜びを知り得た。
何かが終わるということは、何かが始まるということでもある。
本書は著者が走ることを通じて、人生と向き合い、弱さも含め自分詩人と向き合い、試行錯誤を繰り返してきた。その中で感じたこと、つかんだ感覚、考えたことを競技人生に区切りをつけた今、あらためて以下の6章に収められている。
①心のハードルを乗り越えろ
②限界が人を強くする
③それでもなお、一番を目指す
④心と体の声を聞け
⑤誰もが死に向かって走っている
⑥自分にイノベーションを起こそう
深い。深~い。
勉強家であり読書家であり、スポーツという舞台で自分の力で一定の成功をつかみとった著者。
本書に記されていることはスポーツのみならず人生において有用な教えが著者の実体験を基に彼自身の言葉で紹介されている。机上の論理に終わらない。事実から実証されたその知恵は非常に深くそして重い。
読み終わればドッグイヤーの跡でぷっくりとその本の厚みは1.2倍ほどにもなっていた。
何度も読み返したくなる素晴らしい一冊。 -
Posted by ブクログ
トラック種目の世界大会で日本人としては初めて
2度のメダリストとなった著者の思想書。
どこまで行っても競技スポーツは、急こう配のピラミッドの頂を
目指すことを強いられる。
地区大会で勝てば市大会、県大会、エリア大会、全国大会、
アジア大会、ユーラシア大陸、世界大会・・・。
甲子園が分かりやすいだろうか。
そして、プレイヤーはどこかのタイミングで、圧倒的に負ける。
その敗北に、「惜しい」とか「もう少しで」とかいうものは介在しない。
もはや住む領域の違う完敗だけが待つ。
理解や形象化が不可能な完敗や圧倒的挫折を経た時にだけ得られる
「精神」と「身体」の行き来の原体験を
日常生活や仕事、更には死生観、哲学に発展させたものが本書と思う。
特に印象的だったのは、「欠点には存在理由がある」の章。
100メートルで圧倒的記録をもつウサイン・ボルトは
生まれつき脊柱側弯症という、背骨がS字に湾曲する障害を持つ。
これが原因で何度も腰や腿を痛めているのだそうで、
手術すればこれらの痛みが減ったり、
スタートがあと0コンマ何秒か早くなるいう理屈がある。
が、ボルトは現役中は決して手術しないことを公言しており、
為末も手術すると、遅くなると考えている。
欠点や短所、失敗の克服に力を注ぐのは悪いことではないが、
その結果、長所や特徴が削れてしまうこともある。
でこぼこがあっての人間なのだから、欠点も悪い癖も飲み込んで、
その中で伸びる箇所を見つけ、そこに時間や労力を投下する方法が
効果が高いと解く。
とかいうのが、身体と精神の行き来。
陸上をしていなくても、スポーツで高みを目指したことのある人なら
あの茫漠とした何かを言語化してくれる、良書に仕上がっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ名前は知っていたが、とりわけ注目したこともないし、おそらく競技をしているところも見たことがない。
普通に書店で見たら間違いなく買わなかった本の一つ。
何かのレビューに乗っていたのだと思うが、予想をいい意味で裏切ってくれた。
成功しているスポーツ選手には、単に圧倒的な運動能力でやってきた人と、プラス頭を使っている人、運動能力はそこそこでアタマを使っている人の3種類がいると思うが、その3番目にあたる。
そういう人の話は素人にもわかる具体性があり、言語化しながらやってきていたと窺え、読んでいて面白い。
変に熱く、「あきらめなければ何でもできる」とか「夢を持って老い続けるのだ」とか言うのではなく、一見、無理なものは無理、人間には限界がある、と悲観論を述べているように見えるが、決してそこで立ち止まれと言っているのではない。
きっとすごく現実的なのだと思う。だから受け入れやすい。机上の空論でも超人の理想物語でもないから。
コーチを付けずにセルフプロデュースしてきたところも興味深い。 -
Posted by ブクログ
「日本人の足を速くする」
世界を席巻するアフリカ選手、ルメートルを先頭とする欧州出身選手、小国や諸島から誕生するメダリストやファイナリスト、彼らに勝つ為近づく為に、日本人はどうするべきか。
400mH選手と言えば、日本人として初めて世界選手権400mHのファイナリスト(1995年イエテボリ大会7位)となった山崎一彦選手、同大会の準決勝進出者でもあった苅部俊二選手、そして斎藤嘉彦選手が挙げられます。彼らが日本のハードルレベルを一気に上げてくれました。そんな彼らに続いたハードル選手が為末大、その人。
彼は、 2001年エドモントン、2005年ヘルシンキ世界陸上で銅メダルを獲得し、日本人でもトラック競技、しかも短距離種目に並ぶ難関種目で勝つことが出来る!ということを私に教えてくれました。あの走りを見たとき、2003年パリ世界陸上で銅メダルを獲った末續選手の走りと同じくらいの衝撃、興奮、感動が湧いてきました。一陸上部員には、喜び以外のなにものでもない!
しかし、為末選手は、常に成功だけを掴んできたわけではありません。五輪での転倒と不振、400mで圧倒的強さを見せたジュニア時代からのハードル転向など数々のハードルを飛んできました、ただ速くなりたいという一心で。
中学高校時代、陸上部に属していた私は、一時ハードルをやっていました(中学時代)。種目は110Hで、県大会には行けずに、その後ハードルから離れました。ハードルはとにかく難しい、それが感想。しかし、110Hよりも難しいのが400Hです。さらに、言っちゃうと、400mを走りながら、ハードルを飛び越えるので、とにかく死ぬほど疲れるw、だから誰もしたくない、それが400Hw
中学時代でこんなんだから、世界になるとそれはそれは私の想像を越えた、体力と技術共に高いレベルが問われるんだろうと思います。実際、世界陸上や五輪のメダリストは、ハードル向きの肩幅が広く必要な筋肉のみあるすらっとした体型で、手足も長い。それでいて、タイムが良い。
そんな強豪相手に勝つ為に徹底的に強化したのが、技術です。ハードルを飛び越える一連の動きの綺麗さは、世界でも評価が高く、それを可能にする技術は、アフリカ系の選手のように恵まれていない選手でも勝てる!という可能性を示しました。中でも、ハードル間を13歩で走るというのは、相当凄まじいです。もう笑っちゃうくらいw
アフリカ系選手などは、あれだけの足の長さでハードルを14歩で飛び越え、調子やタイミング次第で13歩で行くとされています。大抵、14、14、13、14みたいなバラバラな歩数でハードルを飛び越えようとすると、どこかでフォームを崩したり、タイミングがズレたりしてハードルを倒したり転倒したりするのですが、そこは足が長く、センスがある彼ら。なんとかしちゃうことがあるのです。しかし、歩数がバラバラである分、ハードルを飛び越える時間に差が出る。そこを突こうとしたのが、為末選手なんです!
全ハードルを13歩で飛び越えると、タイムを縮めることができ、彼らに勝つ可能性が上がる。その為には、ハードルを最短距離で飛び越える技術とフォームを身に付ける必要がある、勿論、体力や体幹の強さなども必須。かなり高いハードルです。
しかし、為末選手は、それをやり切った。それも苦悩しながらも、そこに楽しみを添えて。さて、そんな為末選手が考える足の速さとは。