朝松健のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレホラーアンソロジー、『異形コレクション 蠱惑の本』に収録されていた『外法経』が前日譚*と言うことで、そっち方面のホラー・オカルトチックな応仁の乱、特に物語冒頭で主人公である骨皮道賢の事を細川勝元が不死身の鬼と評していたため、彼がペルシア渡来の外法の術を使うのかと思っていたが、全然違った。あるいは、応仁の乱東西の首魁である細川勝元と山名宗全が共に外法に憑かれて京を狂気の渦に巻き込むのかと思っていたが、それも違った。この両名は何者にも憑かれず正気で狂気なのだ。ある意味似た物同士。
というわけで、この作品は何を描いているかというと、一つは細川勝元と山名宗全という二人の狂気で様変わりした戦、主人公の道賢言うところの「これは俺の知っている戦ではない」兵器による殺戮、使い捨ての兵、塹壕戦、市街戦。なんだか現代の戦争みたいな事を応仁の乱の時代でやっているんだけど、史書にも記録が残っていて本当にこんなことやっていたみたい。この後に続く戦国時代で足軽が主戦兵力となるのは確かにそうなんだけど、ここまで陰惨な戦いやってないような……とふと考えてみたところ、この異常な印象の原因はおそらく戦闘地域と範囲。京都という特殊な市街の異常に狭いところに凝縮されてるから一層異形の戦いに感じるのだな。まさに血と炎の京。
そしてもう一つ描かれているのは骨皮道賢という実在記録はあるものの、詳細不明の男について。実は応仁の乱のわけのわからなさを群像劇的に描いていると思って読み始めたので、400ページ余のこの作品の冒頭100ページを割いて骨皮道賢とその仲間について語られた際「なんで???」となってしまったが、先にも書いたようにこの男が主人公のヒロイックストーリーだったのだ。敵の大量殺戮兵器を破壊し、一族を皆殺しにした山名宗全に復讐するため、西軍本陣に潜入する工作員、骨皮道賢!ハリウッド映画や。ただ、その最期は捻りが効いていて、改めての道賢のプロフィール開示に「!?そうきたか……」となってしまった。実は十歩の出身地はちょっと気になってたんよな……
3つ目は禁忌を犯し救いを求める日野富子について。上記の道賢のストーリーと掠りながらもほぼ交わらず並行しており、こちらもなかなか面白い話なのでもうちょっと絡んでくれてもよかったかな……いや、このくらいが丁度良いのか……などと思ったり。
しかし、この蓮如のキャラデザwww想像(日野富子の、そして読者も日野富子と似たような想像をしていたはず)と全然違ったwww違うことに意味があるのだが。
*とは言うものの、前日譚とほぼ同時に購入した本作品、前日譚の方だけ読んだ後3年も積読で寝かしていたため、前日譚の内容をほぼほぼ忘れてしまっていて……バアルだけは記憶に残っているのだが…… -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編7篇収録。室町時代を舞台にした伝奇小説集。
歴史的には今一つマイナーな(?)イメージを持たれがちな室町時代だが、ここを舞台に著者が小説を書くに至った経緯はあとがきに記されている。
仏教における異端とも言うべき「立川流」が全作を通じて登場し、この作者ならではの衒学的作風と相俟って作品における妖異的要素を担っている。各作品において、主人公や他の人物がそれぞれに放つエネルギーは、一種の凄味すらも見せる。
巻頭の書き下ろしを除く6篇は、これまで異形コレクションに収録されていたもの(つまり殆どが既読)。購入してから気付いたのだが、まとめて読んでみてもやっぱり面白い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ室町時代の臨済宗の僧侶、一休宗純が活躍する時代伝奇もの。作者は「異形コレクション」の短編においても、この有名な実在の僧侶を活躍させているが、今回は文庫書下ろしの長編をその舞台としている。
絶大な権勢を振るった室町幕府の三代将軍、足利義満。彼が臨終の際に漏らした、天下を逆しまにする“ほしみる”。その在り処を探らせるべく、四代将軍義持が遣わせたのが一休だった。そこに、同じく“ほしみる”を狙う邪教立川流の行者や、幕府隠密、くの一らが絡んでくる……。
私の世代ではTVアニメで活躍する賢い小坊主のイメージが強いが、朝松作品に登場する青年僧一休は、頭が切れて腕も立ち、クールでいてどこかに陰を背負うヒーロー色が強い。その姿は新鮮で、とにかく単純に格好いい。しかしそれにもまして、アニメでは間抜けで世間知らずだが憎めないオッサンとしか描かれていなかった三代将軍義満の、本作での怪物ぶりは非常に新鮮で、驚きすら感じた。
「袈裟衣 有難そうに見ゆれども これも在家の他力本願」(風狂)
ホラー色はそう濃くもないが、伝奇アクションとして十二分に愉しめる。 -
Posted by ブクログ
歴史小説界に風穴をあけんとする作家集団「操觚(そうこ)の会」による
伝奇時代小説アンソロジー登場!
■朝松健「夢斬り浅右衛門 ――小伝馬町牢屋敷死罪場」
■秋山香乃「草薙剣秘匿伝 ――葛城皇子の章」
■芦辺拓「浅茅が学問吟味を受けた顚末 ――江戸少女奇譚の内――」
■彩戸ゆめ「神楽狐堂のうせもの探し」
■神野オキナ「ころりの木壺」
■蒲原二郎「江都肉球伝」
■坂井希久子「万屋馬込怪奇帖 月下美人」
■鈴木英治「熱田の大楠」
■新美健「妖しの歳三」
■早見俊「ダビデの刃傷」
■日野草「遠夜」
■誉田龍一「血抜き地蔵」
■谷津矢車「生き過ぎたりや」