2022年5月読了。
真田をテーマにした小説は巷間かなり多い中、そこへ敢えてチャレンジした作者の気概に先ず感心した。
そして何より、偶像化した「幸村像」等に頼ること無く、当時の一次資料からかなり綿密に調べ上げ、自分なりの史実解釈にまで至っている。
これは生中な努力で出来ることでは無い。
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「真田好き」を自認する私でも、成るほどと思わせる点が多かった。
そして何より「歴史小説として面白いのか」と云う、作家であれば誰も逃げられない大きな命題も、新しい「佐助」像を中心に据えることで、ドラマチックな展開を読者に味会わせてくれた。
中盤でやや中弛み感が有ったので、もう一つ盛り上げるアイデア(人物でも事件でも)が有れば完璧だったと思う。又、名の有る武将の登場が少ないのも、話のピントをブレさせたくない気持ちは分かるが、若干物寂しさを感じた。
しかし、出版社の推しが足りないのか、書評家が見逃しているのか知らないが、あまり世間で広く受け入れられているとは到底思えない。もっと多くの人に読まれるべき本である。
本書は立派な歴史小説であり、大坂の陣に関する新たな考証を加えた点も踏まえた、素晴らしい作品だと思う。
先日読んだ今村翔吾氏の「幸村を討て」でもそうだが、従来の固定的な歴史観ではなく、新しく見つかった史料や、新しい歴史解釈を取り入れつつ、決して「お伽噺」的に成らない野心的な作品が出てくるのはとても素晴らしいことだ。
今回は、この本に出逢えたことに感謝したい。