加賀乙彦のレビュー一覧

  • 死刑囚の記録

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    ・人はこうやって苦痛から逃れようとする、
     という克明な記録
    ・死刑囚が犯す犯罪は社会に大きなインパクトを与えるものだが
     死刑囚がどう罪に対するのかは意外と表に出てこないもの
     死刑という刑罰の良さも悪さも見える
     残酷だよ。半数以上が半ば狂っていくのだから。

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    2009年10月04日
  • 帰らざる夏

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    何となく入学した陸軍幼年学校生の軍人としての確立と、終焉。生徒間の人間関係や時代のうねりが圧迫感として迫ってきます。凛とした雰囲気。あれで良かったのだと思う。

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    2009年10月04日
  • 宗教を知る 人間を知る

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    河合:異教徒も殺してはいけないといった宗教はないでしょう。
    加賀:ないんですよ。異教徒も殺してはいけないと言ったのは、世界中探しても、日本の平和憲法しかない。(中略)日本国憲法の「戦争の放棄」条項は、いろいろな国の人から「なんだ、これは」といわれる。
    という対話が意外だった。異宗教は排除すべきという考え方が外国ではノーマルなんだ。日本人は差別はいけないともっともらしく言っているが、宗教だけは例外なんだということがわかった。

    興味深かった話は、加賀乙彦さんの東京拘置所の医官の時の話で、メッカ殺人事件の死刑犯が、3年間で600通もの手紙をある人物に出していた内容と、母親が持っていた拘置所での日記

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    2025年09月20日
  • 新装版 高山右近

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    『高山右近』
    1.高山 右近(1552年 - 1615年)
    戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、熱心なキリシタン大名でした。洗礼名はジュスト。
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    2.生涯と信仰の試練
    1564年に12歳で父と共にキリスト教に改宗。織田信長、豊臣秀吉に仕え、高槻城主を務めました。

    しかし、1587年に秀吉がバテレン追放令を発布すると、信仰を守るために領地と財産を捨てて浪人となります。
    これは当時の武士としては異例の決断でした。
    その後、前田利家の庇護を受けましたが、1614年に江戸幕府がキリシタン禁教令を出したため、国外追放を命じられます。
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    3.流浪と死

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    2025年09月18日
  • 殉教者

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    キリシタン弾圧の時代、ローマで司祭となったペトロ岐部カスイの生涯。

    1615年、キリシタン禁教により日本からマニラに渡ってからの、足跡がもうフィクションのように過酷で、驚きの連続でした。
    この時代にラテン語を学び、異国の地で交渉して水夫になって船に乗せてもらったり、駱駝の隊商に雇ってもらって砂漠を超えたり、手に入れた地図を片手に1人でひたすら歩き続け、日本人で初めて聖地エルサレムを訪れることになります。
    その後も信仰を深めるべく学び、祈り、ローマに辿り着いて司祭となり、再びリスボンからゴアまで嵐や疫病などの苦難の14ヶ月、ゴアからマニラ行きの船を待つのにさらに1年、オランダ船に襲撃され海に飛

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    2025年04月20日
  • 殉教者

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    これを読むと世界や歴史に思いを馳せる、面的な広がりと深さのある小説。
    マニラ、マラッカ、ゴア、エルサレム、ローマなど、諸国漫遊記的な興味深さ、冒険談的な要素もあり、楽しく読める。
    宗教の話は、自分には難しい問題。現代でも信仰はさまざまな問題を孕んでいる。
    信仰は本当に人を救うのか。信仰に生きる(死ぬ)というのは正しいのか?自己満足とどう違うのか?いろいろわからない。

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    2024年01月03日
  • 悪魔のささやき

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    ・加賀乙彦も留学中(仏)に、ひどく心を閉ざしていた時期があった
    「自分がたった一人の黄色人種であることを突きつけられたような気がしてしまう。パリの医者のように外国人を小馬鹿にしたりしない朴訥で人のいい人物ばかりだと思っていた同僚たちとのあいだに、心底からは打ち解けられぬ冷ややかな者があるように感じられる。とにかく気持ちが沈んで、毎日が憂うつで、身体もだるくてしょうがないのです。・・・こうして留学までしたけれど、おまえは本当に犯罪学をやりたいのか?やがて、死を願う気持ちは次第に薄れて行きました。日本語の本を読み、日本語で考えるのを自分に許してからのことです。・・・ネイティブな言語という者がいかに

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    2023年07月17日
  • 不幸な国の幸福論

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    幸せとは幸せだと認識できること
    自己の認識を変える以外に幸せになる方法はないと思う

    今の自分が不幸だと思うとき、周りの環境や人がそう思わせているのであって、それが事実ではないということを認識しなければいけない

    ✏自分の苦悩にばかりアンテナを向けていると、どんどん視野が狭くなり、客観性も失われていく。自分が誰よりも不幸に思えてきて、周囲の人が抱えている痛みに鈍感になり、人間関係にも悪影響を及ぼしかねない。

    ✏真に悩む、悩み抜くとは、自分の苦悩を材料に考え抜くということ。普段から何か問題が起きたときに、その遠因と近因を多角的、客観的に分析し、今の自分にできる対策は何かと考える習慣のある人は、

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    2022年06月15日
  • 死刑囚の記録

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    新書に苦手意識はあったけど読みやすかった。というか興味のモチベーションを維持しやすかった?のかな。

    死刑囚は犯罪にフォーカスを当てられがちだが、獄中生活を細かく文字に起こされているのは私にとっては新しい視点を得たような気持ちになった。
    時代の背景はあれど非常に興味深かった。

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    2022年05月23日
  • 科学と宗教と死

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    小説家・精神科医・キリスト教徒である著者が生と死について説いている

    人の行動原理を心理学だけで説明することはできないという点は同意
    著者はその根底には魂があると述べていたけど、私は実存主義寄り(?)なのでそれだけでは弱いと感じた
    どんな現象も分子生物学的に説明できるはずだとどこかで思っている節がある
    だが実際にそんなことは不可能であることも理解はしていて、それを補う(という言い方は違うかもしれないけど)うえで宗教という存在は必要なのかもしれないと本書を通して感じた

    著者はキリスト教徒の立場から宗教の必要性を説いていたが、フラットな感情で書こうと努めている様子が伝わってきたのが良かった
    個人

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    2022年04月27日
  • 日本の古典に学びしなやかに生きる

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    1929年生まれ、加賀乙彦さん「日本の古典に学び しなやかに生きる」、2015.10発行。方丈記、徒然草、努力論、養生訓の4つの古典が紹介され、それぞれから「この世の住まい方」「ただ今の大切さ」「運の上げ方」「長生き術」を学ぼうとのことです。恥ずかしながら、「努力論」は知りませんでした。幸田露伴が1912年に書いた本なんですね。①自分の利益を人に分け与える人は愛され、さらなる利益を呼ぶ ②どんな業績も天才も、努力の積み重ねの結果である ③他人を認めて尊敬する「やわらかみ」と「あたたかみ」を持て。

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    2020年08月21日
  • 死刑囚の記録

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    死刑囚・無期囚たちと面会を続けてきた精神科医による記録である。

    拘禁反応であったり、死刑囚と無期囚の傾向の違い、内面的な変化であったりが詳細に生々しく記録されている。
    著者の加賀先生は1950年代に医師になっている。記述されている死刑囚の時期も1950年代~1960年代であり、まだ「戦後」と呼ばれていた時期のもので、時代背景も知れて興味深い。

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    2020年07月13日
  • 死刑囚の記録

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    精神科医による死刑囚との面談記録
    1980年の著作
    拘禁環境のストレス下で精神的な異常は見せている様だが、個人の素養としての異常性は然程一般人と変わらない様に思われる

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    2020年05月20日
  • 聖書の大地

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    著者は精神科医のカトリック作家。NHKの番組収録で訪れた新旧約聖書とヨーロッパ(おもにカトリック圏の南欧)の紀行文でありつつ、著者の魂の旅路の記録にもなっている。これらの地域に旅する際には再読・同伴したい。

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    2017年06月06日
  • 悪魔のささやき

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    知性と主体性と人間性を失うな、悪魔にささやかれたくなければ。
    そのためにも、好きなことをして、本を読み、体験しなければならない。

    まさに、という内容でした。


    ただ、宗教への態度が、筆者の"リベラルなクリスチャン"というフィルターを通されており、読みながら多少の違和感を覚えた。

    だが、これもまた読書体験。と割り切っていいほど、よくできた本でした。

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    2017年03月01日
  • 死刑囚の記録

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    ネタバレ

    ■死刑囚が犯罪に至った経緯を、生い立ちを含めて生々しく聞き取ったドキュメント…ではなく、死刑囚の精神状態をちょっと突き放すくらいの距離感で淡々と観察するレポートです。ですが、初期は若さ?ゆえなのか、まだ突き放しきれてない感じ。嘘で固めて世界を構築しちゃってる死刑囚にまんまと呑み込まれて、それに気づいて憮然としてる記述は、ちょっと面白い。
    ■著者は最後に死刑に反対だと、さらっと結論づけています。私は死刑反対論者ではないのですが、読み終えて、ちょっと心が動きました。死刑囚は、みんな自分が犯した罪や傷つけた人と対峙はしてない。心穏やかに死んでいく死刑囚すら。ある者は突然圧縮された生に怯え、ある者はそ

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    2015年10月28日
  • 雲の都―第三部 城砦―

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    時は、安保闘争から学園紛争へ移り、アングラや全共闘、家族の断絶など戦後復興から高度成長へ入っていく。高度成長は経済のみならず、戦後の焼け跡に我先に石を積み上げるように敗戦による価値観の喪失からさまざまな価値観の鬩ぎ合いの奔流の時代を向かえ、文化的対立や創世、成熟となっていく。

    透と夏江の娘の火之子の出生の秘密が明らかとなり、透と火之子の仲に溝が深まっていく。火之子はアングラ劇団の一員となり行方知れず。
    悠太は学園紛争の中、当時の言葉で言えばノンポリでモラトリアム世代的な雰囲気を持っている。小説的にはおもしろくないキャラなのだが、一応主人公のよう。しかし、それが関わる人間のキャラクターを強烈な

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    2015年04月27日
  • 悪魔のささやき

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    実際に犯罪を犯したり、自殺未遂した人の話をじかに聞いて書かれているので、なかなか興味深く、面白かったです。

    作者の人物像なども垣間見られ、加賀乙彦さんの本を、もっと読んでみたくなった。

    オウム真理教事件において、松本被告に接見し、訴訟能力はなく治療すべきであるとの診断を下したのが、当たり前のことだけど、すごいなと思いました。

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    2014年05月05日
  • 悪魔のささやき

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     ちょっとしたきっかけで邪悪な考え方が頭に浮かぶ。ちょっとしたはずみでその考え方を行動にうつしてしまう。そして不運が重なってその行動がとんでもない結果を生み出してしまう。こうしたプロセスは程度の差はあれ、誰でも関わったことがあるのではないだろうか。考えだけで終わることもあり、行動してしまったがなんとか深刻な結果だけは免れたこともあったり。犯罪者や自傷行為者はこうしたプロセスの延長線上にあり、知性を持ってしまった人間であれば常にそうした危険にさらされているのである。著者の加賀さんは拘置所で医務技官を努めた後、文学的な執筆活動を続けている。本書は人間を狂気に走らせるきっかけになる、いわゆる「魔が差

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    2014年03月29日
  • 悪魔のささやき

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    ■日本人

    A.日本人は、その時々の風潮に流されやすい。その背景の1 つに、和を重んじる国民性がある。この気質は、良く言えば「協調性がある」、悪く言えば「自分がない」。人とうまくやることを第一に考える社会では、個人の主張を控える。それゆえに私たちは、自分の頭で考えるのが苦手な国民になった。

    B.派手に人が殺されるアクション映画を楽しむなど、人間の心の中には、悪魔的なものが確固として存在する。犯罪というのは、そういった普通の人間が持つ欲望の実現といえる。

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    2013年12月28日