あらすじ
本能寺の変と明智討伐。禁教令を布く秀吉への高槻城開城。前田家に身を寄せた後、家康からの国外追放。戦国の世に<清廉にして智の人>として刻まれるキリシタン大名・高山右近。すべてを捨て、信仰を貫いたその生涯を渾身の筆致で描く。カトリック教会「福者」に列福した殉教者の揺るがざる魂とは。*「福者」 死後、徳と聖性を認められた信者に、カトリック教会より与えられる称号。
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Posted by ブクログ
『高山右近』
1.高山 右近(1552年 - 1615年)
戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、熱心なキリシタン大名でした。洗礼名はジュスト。
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2.生涯と信仰の試練
1564年に12歳で父と共にキリスト教に改宗。織田信長、豊臣秀吉に仕え、高槻城主を務めました。
しかし、1587年に秀吉がバテレン追放令を発布すると、信仰を守るために領地と財産を捨てて浪人となります。
これは当時の武士としては異例の決断でした。
その後、前田利家の庇護を受けましたが、1614年に江戸幕府がキリシタン禁教令を出したため、国外追放を命じられます。
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3.流浪と死
1614年11月、家族や同志と共に長崎からマニラへ渡航。しかし、過酷な航海と高齢が重なり、翌1615年2月3日にマニラで病没しました。彼の死は、現地の人々によって深く悼まれました。
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4.信仰が熱かった理由
高山右近の信仰が篤かったのは、単なる信仰心ではなく、信念を貫く強さと清貧の思想にありました。
彼は武士の「潔さ」をキリスト教の「愛」と融合させ、地位や財産よりも信仰を選びました。この揺るぎない生き方は、後世の人々に大きな影響を与えています。
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5.書籍を読んでの感想
高山右近の生涯を描いた書籍を読むと、権力や財産を捨ててまで信念を貫いた彼の人間像に心を打たれます。
彼の生き方は、**「信仰の力」と「信念を貫く生き方」**の模範として、現代にも通じる普遍的なメッセージを持っています。
彼の人生は、歴史上の出来事としてだけでなく、人間としての生き方を問い直す深い物語として胸に響きます。
Posted by ブクログ
加賀乙彦さんは精神科医でありながら小説家、ということは知っていたが、初読みである。
「キリシタン大名 高山右近」も知っているようで「天草四郎」ほどは知らなかった気がする。
右近のカトリック信者としての伝記的小説ではあるけれど、いわゆる年代を追った人物像を描いているものでもない。その精神的な部分での生き方に迫っていることに感銘を受けた。
と言っても、宗教的にではなく人間の生き方に精神についてであるところが、この小説の神髄であるような、文学の愉悦とでも言いたい。
それは激しいものではなく、静かにわからせてくれるというか、悟らせてくれるものであった。
作者のよほどの手腕と習熟と努力かと思う。