プラトンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「西洋の全ての哲学はプラトン哲学への脚注に過ぎない」という有名な言葉がある。この『国家』を読んだだけでも、なるほど確かにそうなのかも、と思わされてしまう、それほど広範かつ重要なテーマを扱った本である。
ただ、完全無欠の神のような人間の存在(ないしは創造可能性)を前提とした国家設計は許容しがたい。個人より国家を優先して思考を突き詰めれば当然の帰結なのかもしれない。
プラトン曰く、理想的な哲人政治もいつかは落ちぶれる運命にあるという。しかしそれがなぜかを説明する箇所は意味不明の数式で煙に巻く。そもそもプラトンが説くような、完全無欠な哲人が統治を続ける限り、その国家の衰退はありえないはずではないか。この部分のプラトンの論旨展開は、統治者として君臨すべき完全無欠な人間の存在を自ら否定するようなものだ。
下巻で展開された詩人追放論は、上巻で主張された音楽・文芸の効用と矛盾するものではないか?という陥りがちな疑念は、訳者による説得力のある註釈により晴らされた。
本書は、世人の間で哲学が文学よりも重要であるとは必ずしもみなされていなかった時代に書かれた。そしてプラトンは哲学の地位向上を図るためにあえて強い書き方を選んだのだった。
2400年も昔の人が書いた本を読むというのは刺激的な体験であった。ルソーやニーチェなど後世の哲学者を先取りしたかのような考え方が随所に見られた。ニーチェが否定した西洋哲学の伝統とは何かを知るための重要な手がかりとなることは間違いない。 -
Posted by ブクログ
ギリシャ神話と哲学を少しだけちゃんと読みたい今日この頃。
哲学やってた友達に、「ソフィーの世界よりはももう少し深く
知りたくて、初心者でも読みやすい本ってある??」
と聞いたところ、プラトンの対話篇をお薦められました。
ソクラテスとの対話の流れで書いてあるから読みやすいよー、と。
本屋さんで物色してみて、これともう一冊を購入。
確かに読みやすい!!
大学時代、ニーチェのツァラトストラを読んで10ページで挫折した私、
先にこれを手にとってたらもう少し哲学に触れることができてたかもなぁ。。
えにうぇい。
この本のテーマは、「徳」について。
徳とは何か、そして徳とは教えられうるものであるのか。
メノンという人とソクラテスの対話の中で
徳というテーマが掘り下げられます。
対話だからこそ、話題が前後したりというのはあるのだけど
堅苦しい言葉じゃないので読み進めやすいです。
ただ、言葉の使い方や、言葉の定義の幅が捉えづらい部分もあるので
そのへんは時々立ち止まったりはしますが。
こういうのって原文で読めたらもっと読み易いのかなぁ。
時折、「ゼウスに誓って」というフレーズが出てきたのが
ちょっと面白かった。「神に誓って」じゃないのね。
魂の話とかも、なんか時代を反映してる気がする。
この時代だからこそなのか、最後は
「えぇっ、そういう落とし所!?」と思ったりもしたけれど。
人間の中の、時代を超える普遍的なものってあると思うのだけど、
その一方で、その時代の科学と乖離した発言は、
多くの人を相手にした場合、説得力が薄くなるのかなぁ、
思想の話であっても科学とつながってるんだな、とも思いました。 -
Posted by ブクログ
正義とは何かという問で本書は始まる。
脚注によると、古代ギリシアでは「友を益し敵を害するのが正しいことだ」という考えが広く正義ととらえられていたようだが、プラトンはそうは思わなかったようだ(p42)。人を害することは不正なことだと言っている(害することによって、相手は正しくなるのではなく、不正になるから)。
個人にとっての正義を考える上で、より包括的な存在――国家――にとっての正義を考えていく。
そのために「理想的な国家」を創りだした。
この「理性的な」というのは、「国の全体ができるだけ幸福になるように」(p261)ということ。
理想的な国家には4つの性質があるらしい:「知恵」「勇気」「節制」そして「正義」
勇気は「恐ろしいものとそうでないものについての、正しい、法にかなった考えをあらゆる場面を通じて保持すること」(p289)のことを言う。
また、自身の中で「すぐれた本性をもつものが劣ったものを制御している場合」(p292)に、そこに節制があるという。
それで、正義とはそれぞれが自分の生まれ持った才能に合った役目を全うすることだという。自分の分を越えてはならない。
終盤は難しくて何を言っているのかよくわからなかった。
■ 余談
・序盤で書かれている、お金持ちになることの効用が興味深かった。「たとえ不本意ながらにせよ誰かを欺いたり嘘を言ったリしないとか、また、神に対してお供えすべきものをしないままで、あるいは人に対して金を借りたままで、びくびくしながらあの世へ去るといったことのないようにすること、このことのために、お金の所有は大いに役立つのである。」(p26;ケパロス)
・神に世俗的な振る舞いをさせるような詩は守護者の教育によくないから、そういうものはチェックして世に出ないように書いている(p172のあたり)。国が作るべき/作ってはならない物語のルールを規定すべきだとも書いている(p159)。国家検閲を推奨しているように見える。詩に厳しいのは、プラトンが詩を挫折した過去もあるから?
・病気になったからといって、仕事を奪ってでも延命させることは医者のやることではないといっている(p233のあたり)。怪我や病気で役に立たなくなった大工は、諦めてさっさと死ぬべきだという。
・男性の壮年期がp370において25歳〜55歳となっているが、当時で55歳はまだ元気な部類だったのだろうか
・戦争をしても、それは善意を持って正すわけだと主張して、ギリシア人同士で奴隷にしたり、されたりすることは否定しているように思う(p398) -
Posted by ブクログ
初めてプラトンの本を読んだ。非常に平易。ソクラテスが相手との対話を通じて真実を明らかにしようという姿勢だったことはよく分かった。ただ初心者としては,ソクラテスが詭弁を弄して相手を論破しているだけのようにも思えたのも事実。
本の感想ではないが,2千年以上前の人が考えたことを本を通じて知ることができる,というのは凄いことだと改めて思った (勿論孔子とかにもいえます)。と同時に現在でも答えは出ていないと思うし,当時は現在ほど忙しくなくまた物質的にも豊かではなかったと思うので,逆に今以上によく考えられていたのでは,と思う。とすると寧ろ (なかなか哲学する時間や機運のない) 現在こそ古代の哲学に触れることは有意義ではないかと思った。 -
Posted by ブクログ
『我々を支配しみちびく二つの種類の力があり、一つは、生まれながらに備わっている快楽への欲望、もう一つは、最善のものを目指す後天的な分別の心で、分別の心が我々を理性の声によって最善のもののほうへとみちびいて、勝利を得るときには、この勝利に「節制」という名があたえられ、これに対して、欲望が我々を盲目的に快楽のほうへとひきよせて、我々の中において支配権をにぎるときは、この支配に「放縦」という名が与えられる。』
上に記した説はその後ソクラテスによって覆されることになるのだが、その覆すために用いたミュートス(物語)が、神という世界を前提に置き、その存在の根拠が語られえないことから、ご都合的な説にしか思えない。そして、そういったソクラテス(の名を借りたプラトン)の創出したミュートスがいかに優れたものだとて、そこから、恋がもっとも崇高なものであるという結論を導き出すのは納得できない。確かに、狂乱が総て忌避すべきものだとは僕も考えないが。
しかしながら、全体的には大変良い読み物だった。
ソクラテスが、なぜ自分の書き物を何も残していないのかということが良くわかった。