伊兼源太郎のレビュー一覧
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戦後80年の今だからこそ、一人でも多くの方に読まれてほしい素晴らしい作品。
第二次世界大戦末期の戦地·銃後の悲惨さや酷さを容赦なく描き、そして戦後に空襲被害者の国家補償に向けて立ち上がった官僚や戦災者の生き様が鮮明に描かれています。
作中の戦争経験者たちがとてもリアルであり、到底フィクションとは思えず、最初から最後まで物語に没入していました。読後の余韻もすごい…。
著者が相当な取材や下調べをして、並々ならぬ想いでこの物語を綴ったのだろうことが、読み進めるほどにひしひしと伝わってくるようでした。ノンフィクション作品ではないけれど、でも出来事や人物、セリフなど、事実に基づいて書かれた部分が随所にあ -
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第二次世界大戦後の国家補償として、元軍人•軍属に対しては恩給が支払われる一方で、大空襲で財産や肉親を失い地獄の苦しみを味わった民間人には何の補償もない。
この理不尽さに立ち上がった主人公が奮闘する姿を大河ドラマのように描き、戦後80年の節目に戦争の記憶の継承に目を向けた小説。
序盤で、阿鼻叫喚の地獄としての南方戦線と東京大空襲の様子が生々しく描かれるが、それはあくまでも導入部。
南方戦線から奇跡的に生還した尾崎洋平と東京大空襲で家族を失った小曽根さくらが出会うところから物語の本筋が始まる。
尾崎は戦場で軍医だったさくらの兄・太郎から薫陶を受け恩義を感じていた。尾崎は厚生省職員となり、民間戦争被 -
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読んだ。明確な反戦、そして戦争を始め、終わらせたふりをし続けているかつての政府と現政府への批判が込められた小説だった。
太平洋戦争末期から現在まで、民間戦争被害者への国家補償の実現を目指す官僚とその周囲の人々の姿を描いたミステリー。ミステリーの要素はありつつも、かつての政府と今の政府、そして個人であることを手放した大衆への批判が通底している。
戦争中の描写、とりわけ空襲の描写が前半にかなり多く登場する。著者が相当調べて書いたのだろうと思ったら、最後の見開き1ページにぎっしりと参考文献が記載されていた。
前半の戦地に赴いた兵士の視点では、人間が人間であることを手放さなければ人を殺すことも、戦争 -
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ネタバレ「市民にとって警察は最後の砦だ。その警官を取り締まる監察は、砦の最後尾を守っている。後ろに誰もいない私たちに失敗は許されない。」
警察内部の不正を暴く「警察の中の警察」と称される警視庁警務部人事一課監察係を舞台とした警察小説。横山秀夫の『影の季節』シリーズを思い出す。全く筋が読めない緻密なストーリー展開の中に、魅力的な登場人物、複雑な人間模様、警察内部の駆け引き・軋轢が盛り込まれ、終始前のめり状態。伊兼源太郎、すごい!出会えて嬉しい!
監察に公安出身者が多いと知り驚いたが、行確の過酷さと緊迫感、求められる高度な判断力に、なるほど、となる。特に、胸に秘めた熱いものをおくびにも出さず、”プロの -
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胸が熱くなるような作品に久々にあいました。
全然知らなかった作家さんですが読み始めたら止まらなかった。
これはドラマ化必須だと思う。
永尾記者が推しですが、報日新聞の人たちみんな個性的でキャラクターがたってるので絶対ドラマ化に向いてる。
あと正義感について考えさせられる。
個人の正義感と社会での正義感。
怖い時代になったと最後で出てくる。本当にそう思う。この作品が多くの人に読まれたらいい。
社会派の熱い作品。
個人的には津田沼にかつて住んでいたのでそういう親近感もありよけいに楽しめたのかも。
絶対犯人だと思ってたひとが違ったりしたのもよかった。
津崎刑事と永尾記者の続き物も読みたい気がします。