伊兼源太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
南方戦線から生還し、厚生省職員になった尾崎が、民間戦争被害者への国家補償の実現を目指す物語。
前作「リンダを殺した犯人は」でも同様のことを思ったが、社会問題へ高い関心を持ち、正義感の強い著者さんなのだと思う。今作は骨太の大河小説だからこそ、その面がいっそう前に出てきており、エンタメとして楽しむには「うっ」となってしまうところがあった。ラストもあまり明るいものではなく、いまだ実現していない国家補償を扱っている以上は仕方ない(むしろ、変に安っぽくない処は評価できる)のだが、やはりこれだけ長大な1冊を読んできた以上はそれなりのカタルシスを期待したかった、というのが読者としての本音だった。