伊兼源太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「事件持ち」記者・永尾と千葉県警本部刑事・津崎のケミストリーがたまらないシリーズの第2弾。
千葉で起きた少女連れ去り事案。家出なのか事件なのか。緊張感をはらみながら、警察と、その端緒をいち早く掴んだ永尾たち報日新聞それぞれの動き。
十年前の海難事故と過去に囚われ続ける者たちのとった行動。二つの事案が絡み合い、そこに刑事と記者の信念が共鳴しあう。
永尾にも津崎にも今どきの若者が後輩として配置される。無駄を嫌い、己に過剰なまでの自信を持ち、過激な意見をさも正論のように投げつける二人の男。
科学捜査やAIで事件が解決する世界を理想とする刑事も、自らの歪んだ正義で他者をとことん追い詰める記者は愚かで醜い。
永尾や津崎のやり方は古いのか?それでも、青臭いまでに一生懸命に任務や使命に取り組む二人の姿に救われる。
そんな彼らの背中を見て我が身を振り返り、鼻持ちならない若者が少しは改心してくれたのが救い。
前作でクソ野郎だった山浦デスクの変節ぶりは、「人はいつからでも変われる」ということの象徴のように思える。
事件そのものは早々に決着を見ていたが、主役二人の生き様はこれからもずっと見ていたいと思わせる作品です。 -
Posted by ブクログ
人間の幸せの総量は、あらかじめ決まっている。神様の命を受けた野良猫たちが、誰に幸せを届けるかをこっそり調査しているというのが、この物語の設定。その調査員を務めるのが、野良猫のノラである。
棒アイスが当たった日も、信号にひっかからなかった日も、どこかでノラとすれ違っていたのかもしれない。
読んでいて気づいたのは、ノラはただ幸せを与えるのではなく、本人の成長や頑張りをきちんと見守ってから届けるということ。見守るのは体力がいる。そのまま与えてしまった方が、ずっと楽なのに。それでも見守ることを選ぶ。そのやさしさに気づいたとき、毎日のちいさな幸せがぜんぶ違って見えてきた。
疲れた日に読みたい作品です。 -
Posted by ブクログ
警察の互助会が、独自の目線で悪事の私刑はじめたの、警務部が、内定、行確して、犯人探し、対局する政治家との癒着、法案の廃止。
警視庁人事1課
佐良、友人で弁護士の虎島、皆口菜子、毛利、榎本は互助会と繫がる元警官の男、町工場社長殺人事件で、殺された捜査一課の後輩、斎藤、皆口と斎藤は婚約中、能面の女性監察官能馬。監察係の班を束ねる須賀、班長の中西、警務部長の六角、新穂は捜査一課時代の先輩、富樫の妹百合、元刑事部長である福留の息子だ。真崎課長、捜査一課の北澤
「観念しろ、人事一課だ」四人に聞こえるように声を張った。「お前らが互助会だってことは調べがついてる。逃げても無駄だ。四人とも顔を憶えたぞ」
互助会には、大規模な振り込め詐欺グループ『YK団』の構成員連続殺害事件に関与する疑いもあった。
「捜査二課の長富課長。人事一課の真崎課長。警務部の六角部長。そして能馬さんです」
須賀は佐良たちの班を直接率いている。班長の中西が事故で大けがを負ったための措置だ。互助会をめぐる監察は能馬を頂点にし、実行部隊を須賀が動かしている。
「今晩から長富課長を行確する。ひとまず須賀、佐良、皆口、毛利でやってくれ。須賀、指揮を執れ」
以前、警視庁公安部で極秘プロジェクトを進める気運が生まれた、メンバー富樫、中西、須賀
「長富課長に加え、富樫は互助会中心部に繫がるもう一本の線になるかもしれない。富樫は前線の兵士だろうが、指揮官がいる。富樫の腕を活かす指揮ができる以上、特殊公安捜査員プロジェクトの存在を知る者、すなわち公安上層部だ。富樫を確保する意義は大きい」
「六角部長が何者かに殺害された」
「容疑者は上る坂に元勲の勲で、上坂勲。元自衛官だ。『面識はなかったが、昼間からのうのうとサウナを利用している姿が許せなかった』と供述している」
「木下昭。木下藤吉郎の木下に、昭和の昭です。火事後、ビルの売却などをして退会しました」
「田中氏と木下氏がどなたか、教えて下さい」 北山と庄司が写真を覗き込んだ。 「これが田中で」と北山が須賀の記憶にもある富樫に右手の人さし指を置き、左手の人さし指で別の男を示す。「これが木下です」 須賀はアルバムを手元に引き取り、写真を見据えた。体型も髪型も顔つきも違うが、間違いない。 木下は中上巧だ──。
「一課が佐良に話を聞きたいと言っている。連中は六角部長殺害犯を逮捕した精鋭部隊を、長富君襲撃の捜査に投入した」
「六角部長の事件で元自衛官が逮捕されただろ。そいつの通信通話履歴を流してくれ」
「ウチの人間が武蔵境の廃病院で大怪我を負った。あの仕掛けは富樫だろ」 「ご明察です。中西さんが丸々と太ってて驚きました
「中西が大怪我を負ったのは互助会絡みの案件だ。六角部長も長富課長も互助会の案件に携わっていた」
皆口、佐良、北澤。斎藤の近くにいた人間は誰も互助会ではない。なにゆえ斎藤だけが加入していたのか。誰に誘われたのか。
「ご存じないのなら結構です。次の質問に移ります。七福神の置物を持つ者が互助会メンバーだと見ていいんですね」
斎藤の死後、勇退して関連団体に天下った元刑事部長の福留
布施純一。須賀がその正体を暴いた。 「富樫の別名だな」
----------------||--------------------|--
“互助会”の黒幕は誰だ――ジンイチ、最大の戦い!
警視庁監察係・佐良は、庁内に存在するという「互助会」の全容を掴むため、同僚の皆口菜子、毛利とともに、本格的な監察を始めた。
しかしその矢先、監察トップの警務部長が狙われた。警察内部の犯行か、犯罪組織による警察への報復なのか。
そして、佐良と皆口の心に傷を与えた、同僚刑事・斎藤殺害事件に関連する大きな手がかりが見つかり…。 -
Posted by ブクログ
南方戦線から生還し、厚生省職員になった尾崎が、民間戦争被害者への国家補償の実現を目指す物語。
前作「リンダを殺した犯人は」でも同様のことを思ったが、社会問題へ高い関心を持ち、正義感の強い著者さんなのだと思う。今作は骨太の大河小説だからこそ、その面がいっそう前に出てきており、エンタメとして楽しむには「うっ」となってしまうところがあった。ラストもあまり明るいものではなく、いまだ実現していない国家補償を扱っている以上は仕方ない(むしろ、変に安っぽくない処は評価できる)のだが、やはりこれだけ長大な1冊を読んできた以上はそれなりのカタルシスを期待したかった、というのが読者としての本音だった。