諸星大二郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
以前仕事で学生向けのコンテストを実施したことがあった。写真やイラストを利用した広告を募集したのだが、多くの学生さんが参加しやすいように、と募集要項を決めるときに、なるべく緩やかに広い内容にした。媒体もなるべく自由にと、広告のテーマは与えるけどそれは雑誌やポスターでも構わない、自由な発想で媒体も決めてほしいと。
どうしようかな学生さんから、「ビル全体をラッピングした広告です、納品はどうしましょうか?」なんて言われたら、そんなでっかいものオフィスにおけるかな~とか、「体全体にボディペインティングをして広告にしたんですけど写真でいいですか?自分が出向けばいいのでしょうか?」なんて問い合わせとかあったら、それって質問っていうよりもやや緩やかな攻撃じゃん?!
なんて。ふふふふん、楽しみだなぁどんなムチャがくるんだろう。
ところが。
実際にあたしが受けた質問と来たら、「できれば媒体を決めてもらって、雑誌なら雑誌にして欲しい。デザイン系の雑誌なのかビジネスなのか、実際の雑誌だともっとイメージしやすいんですけど」「何月号で訴求先は具体的にどこでしょうか」「サイズをできれば1つにしてきめてほしい」
あたしは自由にしたほうが想像力を発揮できるのかと思ったんだけどその逆だった。みんなが寄ってたかってあたしから引き出そうとしたものは制限と決め事。ちょっとビックリ。そんなもんなのかな?自分でこうこう、と仮定をたてて、それに対してはこれが効果的、そういったアプローチって逆に、難しいんだろうか?
なんでそんなことを考えていたのかと言うと、今日のマンガがすべて、鳥縛りだったから。ただしその定義は広くて、怪鳥から天使まで、およそ羽があるものは全部含む~~みたいな感じだったんだけど。鳥にまつわる、というテーマで一番あたしが気に入ったのは最後の「鳥を見た」。ここでは少年たちのちょっとすれ違い気味の友情?のようなノスタルジックなエピソードが語られるんだけれど、病院でほとんど外出できない少年が、鳥を見に行きたいけれど怖い、憧れと恐怖が自由に対するそれなのかと思ったら軽く反転したちょっとしたサスペンスに、という転換が美しかった。
縛りがあるというのは時に、集中と精査を生むのかもしれない。作者もそうだろうけれど、実は読者側も。こういったテーマなのですよ、この制約の中でこう知恵を絞ったのです、といわれれば比較もしやすいんだろう。
ま、件のコンテストもそうだ。もしボディペインティングとビルラッピング、ゲリラライブとか一気に提出されちゃったら、さすがに収拾がつかなかったかもしれない。結局は架空の雑誌を決めて、何月号で特集はナニ、ターゲットはこうこうで発行部数はいくらいくら、書店でも売られていて、その表4の広告に。と、決めざるを得なかったあのコンテストをあたしはぼんやりと思い出していた。
うーんいやでもさ、本当にそれでいいのかな?
昔コマーシャルで、日本の算数は1+1の答えを聞くけどイギリスの算数は□+□=12とかしてあって、何個も答えを考えるんだ、ってきいて、あーそのほうがずっといいんじゃないかって思ったことがある。想像力って、大事じゃないのかな。かまぼこが海を泳ぐんだって思う子供ばっかりが世の中にあふれて、君と僕だけでセカイが閉じちゃって、いつか「あ、ごめん、こんな簡単に人が死んじゃうなんて思わなかった、でも大丈夫でしょ、ライフをいれたら」なんて真顔で血まみれのナイフを持った誰かに言われたら、あたし、泣くぞ。 -
Posted by ブクログ
このネット情報の氾濫した、うすべったい時代によくもまぁ、
こういったテイストをキープできるもんだねぇ。
そんな思いでいつもあたしはこの人の作品を眺める。
最初に読んだ時にはもう、故人かと思っていたもん。
昭和のニオイたっぷりだもんね〜
この作品集はそれぞれ、あたしのテイストにマッチしていて楽しめた。
しかも1作1作がすごく、わかりやすい。
たまにこの人の作品は不条理な終わり方をするんだけど、
今回はオチがぐっと、クリアなのだ。
海から来た異形のもの、山の神、書き損じのある妖怪図、人魚伝説と姉‥
最後のページですべてが氷解。あー気分いい。
さくさく軽く読めてあとに不条理が残らない。
この本もとっても、御褒美読書でした。 -
Posted by ブクログ
何度目かの読み直しにつき記事編集。
妖怪ハンターこと、考古学者・稗田礼二郎シリーズを纏めた文庫
――といっても、まだ完結したわけではなさそうだし、
この本は民俗学ネタのみで考古学は絡まない。
単行本『海竜祭の夜』と『天孫降臨』を、
引っ越しの際、誤って処分してしまい、後から購入した全3巻のパート3。
ちなみに、読むべき順序は《地の巻》→《天の巻》→《水の巻》。
で、《水の巻》ですが、全エピソード、当文庫版で初めて読みました。
単行本『黄泉からの声』収録「うつぼ舟の女」と
『六福神』全話を合わせた1冊で、池や海など、水に纏わる怪異譚。
後半は大島くん&渚ちゃん(なんちゅーネーミングだ!)
という中学生コンビが活躍。 -
Posted by ブクログ
いや、もう、たまりませんな。手塚治虫亡きあと、本当に諸星大二郎の新作を読むことができる次代に居合わせた幸せよ。何度も書くけど、本当にそう思う。
Gの日記、グリムの悪夢のような世界をそのまんまえがいた素晴らしさ。全編にわたって漂う灰色。悪夢であるから、名前もはっきりしない。「夢十夜」を諸星が描くとどうなるんだろう。
トゥルーデおばさん、主人公の女の子の性格がいちばん怖い。これもグリム「らしく」、パンを踏んづけて泥沼に落ちていく女の子を思わせる。
夏の庭と冬の庭、現代に戻ってほしくなかった。いっきに怖くなくなって、ちょっと鼻白む。どうせならコミックスの最後に、エピローグみたいな形で掲載してほしかった。赤ずきん、展開は読めるけれども、ピーターがかっこいいからときめいた。
鉄のハインリヒ、これはそのまま。あえてのナウシカだが、これはあの世代の人には永遠のテーマなんだろうか?
いばら姫、ネムキにはいちばん合っている気がしたが私はさらっと読んでしまった。
ブレーメンの楽隊、好き。普段はファンタジーより現実モノが好みなんだが、諸星に関しては真逆になる感じ。
ラプンツェル、これが本当の御大の真骨頂。悪夢であり旅人であり、淡々とシュールであり、薄い恐怖が折り重なって灰色の読後感が残る。
8編の短編、中編集。ぜいたくで恍惚とした時間でございました。 -
Posted by ブクログ
職場の先輩に借り受けて長い間触手の伸びぬ一品だったのですが。
この作品はタイトルで損している。大損している。
「妖怪ハンター」とか、そんなチンケで胡散臭いタイトルに到底似合わぬ作品としてのおもしろさと考察の深さがあります。
作者はこの世には人間の見知ったる動植物の他に、混沌からそれらの生命が生まれた時同じくして全く別の生き物が生まれ、それが「妖怪」と言われる我々にとっての「怪異を起こすモノ」であると考えておられる様子。日本神話ではイザナミが最初に失敗作として産み落とし水に流してしまうヒルコがそうだったのではないかとしています。そういう仮説を披露する場がこの作品だったのでは?民俗学好きにはたまらん一冊です。
しかし画もストーリーも論旨も衝撃的。理屈が確りとし過ぎていて、本当にあったとしても不思議でないと思えてくるのがまた恐いところ(実際どこまでが資料でどこまでが創作か判断できんのですが…)。
個人的には隠れキリシタンの話がとてもおもしろかったです。いっしょにぱらいそさいくだ!