諸星大二郎のレビュー一覧
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表題作「夢見村にて」は、『インセプション』や『パプリカ』と共通するネタを持ちながら、民俗学の世界観を取り入れて、全く新しい展開を見せた意欲作。短編ながら、どこまでが夢で、どこからが現実かわからない、かなり複雑な物語構造。やはり諸星は短編のほうが才能が生きる作家なのではないかと思う。もう一つの「悪魚の海」は、「あまちゃん」ブームに微妙に乗っかった題材なのかな…。これまでも、海や深海魚の出てくる話は多いから、海は、元々お気に入りの題材の一つなのだろう。こちらも、諸星氏にしか思いつけない独創性があって面白い。稗田先生の登場シーンは少ないけれど、物語の面白さでグイ・グイ読ませる。
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『闇の鶯』での「浴衣に丹前」ショックに続いて今度は秘湯!
もう、やり過ぎです、勘弁してください、
梨汁ならぬ鼻血ブシャーですよ!!
……という戯言はさておいて。
表紙を見て、こりゃ懐かしの「トコイー、トコイー」か!?
と、戦々恐々。
でも、そんな呪術系の話ではありませんでした。
だからって怖くないわけじゃなくて、
ページを捲るごとに独特の気色悪さが襲い掛かってきます。
妖怪ハンターシリーズに登場した子供たちが少し成長した姿で、
稗田先生の弟子らしい頑張りを見せる2話、
かつて航空機墜落事故から生還した天木兄妹編「夢見村にて」と
海辺の町・粟木に住む潮くんと渚ちゃん編「悪魚の海」。
前者は夢 -
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発売を承知でこれといった理由もなく
何となくスルーしていた一冊を、
今般『夢見村にて』のついでに同時購入。
……さっさと買っておけばよかった……
浴衣に丹前!
鼻血が出るかと思ったよ、浴衣に丹前!!
ラストの「涸れ川」だけ趣向が異なりますが、
他4編は妖怪ハンターシリーズ番外編的な話。
鄙びた海辺の町・粟木に住む
潮くんと渚ちゃんが登場する「それは時には少女となりて」――
霊媒体質ではないかと稗田先生に言わしめる渚ちゃんだけど、
このエピソードでは立場が逆で、彼女が潮くんの危機を救う。
行方不明の姉の痕跡を追う青年の話「人魚の記憶」,
旧家に伝わる巻物の謎「描き損じのある妖怪絵巻」,
この -
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和(日本)・華(中国)・蘭(西洋)の民話をモチーフに、諸星氏の自由なイマジネーションを掛け合わせた独創的な短編集。「和華蘭」(わからん)て言葉を初めて知った。
・瓜子姫とアマンジャク
諸星氏の思い入れの強い瓜子姫ネタ。
アマンジャクとの掛け合いが楽しい。
瓜子姫のモーレツに一途な片思い…。
「深海人魚姫」もそうだけれど、諸星氏は社会派で意地悪な展開の話を描くかと思えば、びっくりするほどロマンチックな時がある。
・シンデレラの沓
ほのぼのとしていて、シュールで楽しい話。
・見るなの座敷
「パプリカ」か「インセプション」のような、夢から醒めた夢。どこに現実がある?
・悪魔の煤 -
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既刊『トゥルーデおばさん』『スノウホワイト』補遺のような
童話・民話系短編集だが、不条理さや残酷さは薄れていて、
意外にほんわかした優しい感触が、何だか妙に嬉しい(笑)
ブラックさが前面に押し出されていない点を、
好意的に受け止めるか物足りなく感じるか、
読者によって評価は分かれるだろうけど、
個人的には結構満足……なのは何故かと考えるに、
「見るなの座敷」以外の4編は、
女の子が束縛から解放される過程が描かれていて、
カタルシスが得られるからなのかも、と思った。
ネタが被っても構わないので、諸星先生にはこれからも
独自の「メルヘン」を追究していただきたいです。 -
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以前仕事で学生向けのコンテストを実施したことがあった。写真やイラストを利用した広告を募集したのだが、多くの学生さんが参加しやすいように、と募集要項を決めるときに、なるべく緩やかに広い内容にした。媒体もなるべく自由にと、広告のテーマは与えるけどそれは雑誌やポスターでも構わない、自由な発想で媒体も決めてほしいと。
どうしようかな学生さんから、「ビル全体をラッピングした広告です、納品はどうしましょうか?」なんて言われたら、そんなでっかいものオフィスにおけるかな~とか、「体全体にボディペインティングをして広告にしたんですけど写真でいいですか?自分が出向けばいいのでしょうか?」なんて問い合わせとかあっ -
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このネット情報の氾濫した、うすべったい時代によくもまぁ、
こういったテイストをキープできるもんだねぇ。
そんな思いでいつもあたしはこの人の作品を眺める。
最初に読んだ時にはもう、故人かと思っていたもん。
昭和のニオイたっぷりだもんね〜
この作品集はそれぞれ、あたしのテイストにマッチしていて楽しめた。
しかも1作1作がすごく、わかりやすい。
たまにこの人の作品は不条理な終わり方をするんだけど、
今回はオチがぐっと、クリアなのだ。
海から来た異形のもの、山の神、書き損じのある妖怪図、人魚伝説と姉‥
最後のページですべてが氷解。あー気分いい。
さくさく軽く読めてあとに不条理が残らない。
この本 -
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何度目かの読み直しにつき記事編集。
妖怪ハンターこと、考古学者・稗田礼二郎シリーズを纏めた文庫
――といっても、まだ完結したわけではなさそうだし、
この本は民俗学ネタのみで考古学は絡まない。
単行本『海竜祭の夜』と『天孫降臨』を、
引っ越しの際、誤って処分してしまい、後から購入した全3巻のパート3。
ちなみに、読むべき順序は《地の巻》→《天の巻》→《水の巻》。
で、《水の巻》ですが、全エピソード、当文庫版で初めて読みました。
単行本『黄泉からの声』収録「うつぼ舟の女」と
『六福神』全話を合わせた1冊で、池や海など、水に纏わる怪異譚。
後半は大島くん&渚ちゃん(なんちゅーネーミングだ!)
という