倉知淳のレビュー一覧
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ネタバレ売れないミステリー作家の冷泉彰成は作品の執筆をしつつ、弟子の久高享に課題を課す日々を送っていた。そんなある日、殺人を仄めかす怪文書のようなファンレターを受け取る。その後、冷泉にファンレターを出した女性が遺体となって発見され…。
『恋する殺人者』が面白かったので同じ作者さんの本。タイトルおよび表紙から内容はまったく推測できない。4分の3ぐらい読むと雰囲気が一変。え、え、とついていけないうちに解決篇が始まった…と思いきや…!個人的には斬新だった。ただ最後のシーンの絵面を想像するとなんとも…。
結局このタイトルはなんだったのかわからず…と思ったら最後に「この作品のタイトルは都筑道夫『猫の舌に釘をうて』にインスパイアされたものです。」と注釈があった。検索したあらすじを見る限り、この作品に結構影響を受けて今回の本は書かれたのかな?そちらもちょっと読んでみたいと思った。 -
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〔Ⅰ〕「警察庁特殊例外事案専従捜査課」(通称「特専課」とか「探偵課」)は警察流の地道な捜査では対応できない奇矯な事件(古典的なトリックを使った密室殺人とか怪盗とか見立て殺人など)を、嘱託である民間の探偵たちに解決させる。視点役はそこに配属された新人官僚の木島壮介くん。
〔Ⅱ〕探偵たちはそれぞれまともじゃなくて凡人の木島くんの手には負えず苦労させられる。
〔Ⅲ〕中途半端であることは中途半端であるだけの理由がありそれゆえにわかりにくくなっているところが面白さのミソ。
■特殊例外事案専従捜査課についての簡単な単語集
【井賀】千葉県の新浜署の警部補。仏像めいた顔ののどかな雰囲気の人物。相棒は頼りになりそうな三戸部巡査部長。
【石川五右衛門之助】自称「怪盗」。ローカルな金満家大浜富士太の持つブルーサファイアを盗むという予告状を送りつけてきたが予備日があったり予告時間の幅が五時間もあったりとどこかやる気を感じられない。
【木島壮介】視点役。警察庁特殊例外事案専従捜査課に配属された新人官僚。なぜ彼が選ばれたかは不明。
【熊谷】警部。山梨県警? 紅林という若手刑事を特専課に押しつけた。狼っぽいのと黒豹っぽいのと二人の部下もいる。
【紅林:くればやし】刑事。熊谷にあてがわれた志我と木島の案内役。
【警察庁特殊例外事案専従捜査課】略称「特専課」。警察が対応しにくい、地道な捜査では対応しにくい突飛な事件を担当する部署。民間の人材、いわゆる「名探偵」を利用する。彼らと警察の間を取り持つ随伴官として木島が選ばれた。当然現場の刑事たちからは嫌われており蔑称として「探偵課」と呼ばれている。
【作馬/さくま】探偵。役場の事務員の平均像みたいな人物。兼業探偵。本業は不明。淡々として感情の起伏を見せない。定時になると帰ってしまう。
【志我悟:しが・さとる】探偵。見た目中学生くらいのリスのようにかわいい少年だが、高校生名探偵。二年生。完璧主義者。
【名和:なわ】警視庁の警部。
【勒恩寺公親:ろくおんじ・きみちか】名刺には「名探偵」とだけ書かれている。わりと若く、どこかすさんだ雰囲気がある。傍若無人で得手勝手な人物。探偵業だけで糊口をしのいでいる。決まり文句は「俺の論理がそう告げている」。他の探偵の事件であっても謎を解説する役目を最後に持っていく。 -
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倉知淳のデビュー30周年記念作品。「死体」をテーマにした捻りの効いた奇抜な謎解きが展開される4編からなる短編集。小気味いい不謹慎さと、本格ミステリのロジックがうまく融合していて、面白い。
「本格・オブ・ザ・リビングデッド」では、夏の山荘でのゾンビパニックと密室殺人が組み合わされる。某ベストセラー作品の設定を借用しながらも、死体を巧みに利用した独自のトリックが展開される。このシチュエーションはやはり面白い。
「三人の戸惑う犯人候補者たち」は、都庁の片隅に設置された「違法行為等諸問題に関する相談所」を舞台に、それぞれ「人を殺したかもしれない」と訴える三人の男たちが登場する。それぞれの奇妙な体験をなんとかひとまとめに解決する強引さは一周回って見事。
「それを情死と呼ぶべきか」では、40年前の未解決心中事件の謎を解く物語。このトリックは実現可能なのか、と疑問に思わないでもないが、解決自体は奇抜でなかなか楽しい。
ベストは表題作「死体で遊ぶな大人たち」。男性の死体の両腕が女性の腕にすげ替えられていたという猟奇的な事件の謎を、バーで偶然居合わせた客たちの会話から、バックパッカーの久我山が安楽椅子探偵として解き明かす。
これしかない、と思わせる意外な真相が見事。詰将棋のように真相に近づいていくのが気持ちいい。
本作全体を貫くテーマは「死体の利用」だ。事件の犯人たちは死体を何らかの目的のために積極的に「利用」する。この不謹慎さとユーモアは、「本格ミステリ」というジャンル自体を推進し続けてきた大きな魅力とも言えるだろう。実現不能な無茶苦茶なトリックにも、本格ミステリとしての論理性が宿る。その両立しうる面白さが本作には体現されている。 -
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ネタバレ明らかにミスリードとおぼしき犯人の独白から早い段階で「恋する殺人者」が誰であるかはわかってしまうと、序盤から個人情報保護の文脈でストーカーに対する言及が度々あり、非常に丁寧に伏線が貼られているのがわかる。
そして、犯人の状況把握手段が盗聴であるとわかり、そこに声が出せない証言者との筆談による情報収集シーンがとなればここに犯人特定の決め手が仕込まれているのだろうと想像はついたけれど、それが性別誤認という叙述トリックだったとは読みきれなかった。
しかしラストはフェイクとみせかけた恋がちゃっかり成就してなんかいい話風にまとまったようにもみえるれけど、結局犯人がいくら異常者だとはいえ、自らの二重尾行説が2つの殺人を呼び寄せてしまった従姉の友人であったり、そもそも自身の捜査活動がその元凶であるのだから主人公のことも考えるととても心穏やかには過ごせないと思うのだけれども…
とはいえ200ページ足らずの読み味の軽さながら仕掛けはホンモノで面白かった