倉知淳のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
“焦れる詩織をよそに、丈史はしたり顔で、
「これも俺は現物を見てるんです、間違いなくおっさんはサンダル履いてました。で、ここからは蓋然性の問題なんですけどーー」
「無理して難しい単語使わないでよ」
「別に無理してませんってーーでね、今日は土曜日でしょう、仕事が休みの人も多いはずです。休日にサンダル履きで洗剤だけを買うーーこういう行動をする人は、近所の住人である可能性高いと思いませんか」
「そんなの判んないじゃない、休みじゃない人もいるし。普段からデフォルトでサンダル履きの人だっているだろうしさ」
「この季節にですか?今の時期、サンダル一本槍で通す人はめったにいませんよ、爪先寒すぎです」
「けど、電車で買いに来たのかもしれないよ、特売で洗剤が激安だったか何かで。可能性の話なら、車で来たってことも考えられるでしょ。サンダル履いて運転して来て、近くの駐車場に停めた、とか」
「車でわざわざ洗剤一箱だけ買いに来るなんて、それこそ蓋然性低すぎですよ。そんな無駄なことする奴はめったにいないでしょう、普通」
「それはそうだけどーー」
詩織は言葉に詰まってしまう。確かに、そう云われれば反論でいない。ヘタレのくせにこの男、口だけは達者だ”[P.195_猫と死の街]
「運命の銀輪」
「見られていたもの」
「眠り猫、眠れ」
「ナイフの三」
「猫と死の街」
「闇ニ笑フ」
「幻の銃弾」
「眠り猫、眠れ」と「闇ニ笑フ」が特に良かった。
“「確かに彼女、美形だ。お前がこだわるだけのことはあるーーけどな、正体不明の謎の女ってのは、お前の思いすごしだよ。俺にはすぐ判ったぜ、彼女が何者かーーそれから、どうして何度も同じ映画を観に来て笑ってるのかも」
「そんなバカなーー」
思いがけない椎名の発言に、僕はきょとんとしてしまう。
「本当だよ、一目見てすべて判った」
「一目見てってーー嘘つくなよ、判るわけないじゃないかよ、そんなの」
「本当だよ、お前もよく考えてみれば判るはずだーーまあ、云ってみりゃ彼女、お前と同じことをしていただけなんだな」
「僕と同じことーー?」
意味がまるで判らず、ぽかんとして聞き返す僕に、椎名は笑って答えて、
「いいシナリオ書くには人間観察も必要なんだろ。しっかりしろよ、最終候補」”[P.269_闇ニ笑フ] -
Posted by ブクログ
「殺人が起こるたびに撒かれる電波系怪文書!?」
理由の分からない殺人が起こり始め、のどかな町が一転、出歩くのも恐ろしいゴーストタウンのようになってしまう…と想像するのだけど、この上巻では殺人は起こるものの、主人公達にとってはまだ他人事。それほど緊迫感はありません。
のどかな町、それに伴う日常といった描写が多いので、あまりミステリを読んでいるという感じがせず、主人公が盆栽好きのシングルマザーということもあって、「人が殺されたんですって。怖いわねえ」という雰囲気の中、話は展開していきます。
人が殺されるたびに、大変読みにくい怪文書が撒かれます。どうやら犯人はある種の妄想に取り憑かれているようだけど、真意のほどは如何に。殺される人に共通するものは何なのか?いわゆる「ミッシング・リンク」ミステリですが、どんな風に解決するのか楽しみです。
ちょっと下巻への引きが弱いかな、と感じますが、平凡な日常をのんびりと読むのもいいものですね。 -
Posted by ブクログ
この作品、嫌いじゃない。作品全体から倉知先生の持ち味が出ててそういった所は大好き。が、主人公母子の日常生活のシーンが描かれすぎて、ミステリの話がどう展開するの?とドキドキしながら読んでる読者としてはじれったく冗長な印象が残ってしまったのが残念。(先生が書きたかったのは、この『日常』だったんじゃないか?と思っちゃうほど、そちらのウェイトがでかい)
電波系の表現や、母子の日常を描ききった筆力は素晴らしい。正太郎のキャラも良かった。
間に入ってくるフィギア制作のマニア(オタク)な描写が、解決編でこう効いてくるのか、とか、他にもちりばめられた伏線など、種明かしの段階では感心できるところがあったのに、そこに至るまでが…遠かった。
ある程度他の倉知作品に触れて先生の持ち味を判った人に読むのをオススメする作品でしたね。