倉知淳のレビュー一覧
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関連性のない4つの「不用品」が紛失する謎に迫ったジョブナイルミステリ。どことなく児童文学めいた味わいがありながら骨子はガチガチの本格ミステリであり、特にニワトリ消失事件は小学校ならではの密室と言っても過言ではない。子どもの視点というのを存分に活かしており、子どもならではの突拍子もない動機や浅知恵が謎に上手くミックスされて、ほどよく解きにくい謎になっているのは魅力的である。また結末が陰惨ではなく、あくまで子どものちょっとした遊びの範囲内で収まるあたり、作者の人柄が窺い知れる。この日常を逸脱しない程度の非日常の謎という塩梅は絶妙である。あくまで空想的な物事に憧れる少年たちの日常として描いたのがこの作品のリアリティラインなのだろう。
全体的に子供が読んでも分かりやすい内容になっており、文章も平易ではあるものの、大人が読むにはやや物足りなさを感じたのも事実である。特に本格特有のムダのない写実的な文章と小学生の語彙力が相まって馬鹿丁寧な作文を読んでいる印象だった。探偵活動に乗り出す小学生集団も無個性で、書き割りとまではいかなくともキャラクター性はかなり薄い。喋り方もそうだが、大人が小学生が読むことを想定して書いた小学生という感じが強くて、どうにも味気なく感じてしまった。その代わり、特異なキャラクターではないため鼻につくこともなく、作中の謎に集中できる。終盤、解いたと思った謎がレッドヘリングに過ぎなくて、背筋をゾッとさせつつも、二転三転しながら最終的にすべての謎が解かれて綺麗に風呂敷が畳まれる様はやはり本格ミステリの醍醐味であろう。できれば低学年〜高学年の小学生のうちに読みたい作品であり、子どもに安心して勧められる本格ミステリ、入門書としてはこれ以上の作品はそうはないだろう。 -
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ネタバレこのミス2016年版7位。三船敏郎っぽい大物俳優が安楽椅子探偵となって事件を解決する連作短編集。ミステリーとしての構想とトリックは秀逸。短編毎にトリックの小技が効いてるし、最後に大技もかかる。でも、文章がへたなのか、設定が大げさで不自然だし、三船と黒澤のエピソードっぽい話が長いし匿名なのでいまいち興味がわかない。なんかテンポ悪いのです。あと、短編毎の核となるトリックに突っ込みどころがあって、すんなりナルホドーってならない。最初のは、通勤途中で上着は脱がないでしょと思うし、刺されたのが満員ではないってだけで別に上着きてても成立するのでわざわざ服に穴をあけに戻ってきたのが犯人っていうの説得力なし。2番目のYの悲劇っぽいやつはずっと車いすで生活してた人がウクレレ発見したらいきなり創作意欲湧き出て歩き出しちゃったってのが不自然。3番目のは死んだ人の携帯使わなかったのがそっちが殺人の主要因だとばれるのを避けるためって、普通パスワードロックかかってるし。そいで最初から気になるのがノートパソコンを片手で話す速度で入力するってのがありえないでしょ。んで、ずーっとなんでこんなありえない設定してるのって思って読んでたら最後に大技かかってそれはそれでスゴーて思うんだけどそこまでの不自然さがやっぱり。なんか惜しい感じの小説でした。
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上下巻読んでの感想
本格ミステリ大賞受賞作ということで読んでみた。
ん~っ・・・悪い作品ではもちろんないし、それなりに力作だとは思うのだけれど本格か?という疑問が残る。
日常的な描写が続く中に飛び込んできた事件。
電波系怪文書のインパクトは大きかった。怪文書の文に込められた謎に迫っていく過程にも伏線はしっかりと張られていた。
どことは指摘できないけれど、もう少し短くできたのでは?とも感じた。
本格ミステリと気負わずに読めば面白い。
ゆる~い感じで進んでいく雰囲気も嫌いではなかったし、ある種のこだわりを持つ人たちへの考え方も興味深かった。
「壺中の天国」というタイトル。
読み始めたときはよくわからなかったけれど、その意味は物語の中で明かされる。
なるほど・・・と。タイトルに込められた意図にようやくそこで気づかされる。
軽い描写の中に「!!!!?」という箇所もあり、読み終わってみれば面白かった。
それにしても「電波系」って言葉、最近聞かないなぁ。 -
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ネタバレノンシリーズの作品を集めたミステリ短編集。
猫好きはより楽しめる「眠り猫、眠れ」と「猫と死の街」、倒叙ものの「運命の銀輪」、日常の謎を追う「ナイフの三」など、七つのお話。
取り立てて派手さのない普遍的な雰囲気に安堵しながらページを繰っていくと、不穏な空気を膨らませて物語を盛り上げていく手腕が素晴らしく、一気に読みました。
ただ、お話の雰囲気作りはうまいのですが、真実を隠すために偽装を重ねる犯人の話が多く、その偽装があり得なさすぎて本格ミステリとしては腑に落ちない読後感でした。
どの短編もひねった作りなのは、悪への警鐘とか社会への糾弾といった作者の強いメッセージ性が込められているからなのかと思いましたが、そういうわけでもなさそうです。
後書きも蛇足って感じで・・・倉知さんのノリは自分には合わないみたいです。 -
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ネタバレ日常の謎系と呼ばれる,殺人事件が起こらないミステリは,世の中に多数存在する。日常の謎系のミステリは,日常で起こった少し不思議な出来事について,登場人物がいろいろと推理をしたあと,名探偵役の登場人物が真相を語るという構成がセオリーである。しかし,猫丸先輩のシリーズは少し違っている。
日常に少し不思議な出来事が起き,謎に巻き込まれた主人公が,名探偵役である猫丸先輩に出会い名探偵の推理を聞くところまでは同じである。しかし,猫丸先輩が語っている推理が真相かどうかは分からない。猫丸先輩は真相を語るのではなく,こういう考え方もあるという説を伝えるだけなのだ。
猫丸先輩シリーズの魅力は,真相を語るのではなく,このように考えることもできるという説を語る猫丸先輩のキャラクターにある。このキャラクターが好きな人にとっては大好きな作品になるだろう。個人的には,猫丸先輩のキャラクターは,単に猫丸先輩が憎たらしいと思ってしまうので,そこまで好きではない。よって,猫丸先輩シリーズの評価はそこそこということになる。
猫丸先輩の空論は,猫丸先輩シリーズの中では好きな方。6つの短編は駄作がなく,平均点以上の作品揃い。猫丸先輩シリーズそのものについて,そこまで高い評価をしていないので,★3~★4の間くらいなんだけど…★3で。猫丸先輩シリーズが好きな人には傑作なのでは? -
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「たくらみに満ちたミステリ・ワールド」ということで、短編集「なぎなた」。全七編を収録。お話の一つ一つは確かに短編なんだけど、通して読んでみると結構な文章量がありますね。本短編集の姉妹本「こめぐら」も同時にリリースされています。
本格ミステリの入門編を書き続ける、という作者の思いもあって、内容としてもそれほど複雑ではなく、アンフェアというものでもないのだけど、ミステリをそこそこ読んでいる人間からすると、少々物足りない。また、ちょっと話が強引かなと思わないでもない。
個人的には収録されている一編「運命の銀輪」が面白かったですね。倒叙ミステリというもので、「コロンボ」とか「古畑任三郎」というと分かりやすいですかね。まず犯人の犯行が描かれ、それを探偵がどうやって追いつめていくのかといった部分がお話の焦点になる作品です。
作者さんはこの倒叙ミステリものをシリーズ化しようと考えているようなので、こちらは気になります。ただ、その他の短編については…うーん、やっぱり物足りないかな。ネコがやたらに登場するので、ネコ好きの方なら共感できる部分があるかもしれませんね。私は特にネコ好きでもないので、登場する度に「またネコか」と思う程度でしたけど、逆にネコに良い思い出がない方からすれば、うんざりするかもしれないな。
個人的には、ネコ好きに向けてリリースしているわけでもないのだし、もう少し控えた方が…と感じますけど、「あとがき」にもありますが、作家がネコ好きなので、仕方ないかな。
お勧めは…ちょっと難しいですね。
入門編というには、ミステリがあまり強くないというか、登場する謎に対して「なぜ?」という気持ちが強く働かないので、あくまで、ネコが多く登場する短編小説、という体で読んだ方がいいかもしれない。そういう意味ではお勧めです。