カレル・チャペックのレビュー一覧
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1924年の5月23日~7月27日(ちょうど100年前!)、チャペックはイギリスを訪れた。本書は、その時にチェコの新聞に連載した紀行エッセイ。ロンドンからウェールズ、スコットランドまで、ほぼ全土をめぐっている。その風土や文化についてはもちろんのこと、ユーモアにあふれた人間描写がたまらなくいい。イギリス贔屓だったこともあって、懐かしいよきイギリスが活写されている。
アイルランドへも行きたかったのに、あんなとこには行くもんじゃないとみなから止められ、行かずじまい。そのことも縷々綴っている。
風景や人物を描いたマンガチックな絵が70以上。描いているのはチャペック本人。印象的なのはバーナード・ショーの -
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『R.U.R.(ロボット)』『絶対製造工場』『山椒魚戦争』など、人類のディストピアを描いたカレル・チャペック、その彼が園芸家として草花を愛でる日常を送っていた。それを知っただけでも心休まる。
訳者は小松太郎。ケストナーやハインリッヒ・ベルなどの小説の訳者として知られる。本書はドイツ語訳からの重訳だが、園芸に詳しいこともあって、本書も名訳だと思う。植物についての訳注も詳しい。原題『園芸家の1年』を、『園芸家12カ月』としたところもまたいい。
挿絵はカレルの兄のヨゼフ・チャペック。58のほのぼのとした線画。本文を読みながら、色鉛筆で彩色して(ぬり絵だね)、楽しんでしまった。 -
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カレル・チャペックの戯曲「白い病」を一気に読みました。
作家のチャペックはナチス・ドイツを痛烈に批判したチェコの国民的作家です。
また、ロボット という言葉を初めて使ったことでも知られています。
まず、この戯曲を読んで、すぐ頭に浮かんだのがナチス・ドイツまもとより、
スターリン時代のソ連、軍事政権下の日本でした。
戦争・侵略を目指したこれらの国々では、軍事拡大を強力に推し進め、
自国民の優秀さを強調し、敵国を倒すためには一致団結しなければならない
という全体主義的な考え方を洗脳化してきました。
この戯曲はそうした状況の下にあるある国で
「白い病」という疫病が蔓延すというパンデミックが襲ってき -
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新型コロナ、そしてロシアの侵攻で世界が揺れ続ける中、こんな作品があったのか、と少し恐ろしくもなる作品でした。
突然白い斑点が体中に現れ、死に至る疫病の流行する世界。そして舞台となる国家は戦争を推し進める総統によって支配されている。
この二点が現実と合致してしまうことに恐ろしさとやりきれなさを思います。
戯曲ということで最低限の登場人物の動作以外は、会話のみで話は進んで行きます。その分、想像力が必要とされるかもしれないけれど、セリフだけのため非常に早く読めました。
それでいて内容は濃い。示唆的な部分、寓意的な部分と色々あって、考えさせられる部分もあり、登場人物の葛藤もセリフだけのためか、表 -
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チャペック1937年作の戯曲。中国発の未知の病が世界中でパンデミックを引き起こすというあまりにも予言的な物語。
疫病は世界中に深刻なパニックを引き起こし、50歳前後以上の人のみが感染し死に至る疫病は世代間の軋轢をも生む。特効薬を発見したガレーン博士は永久平和を国家に要求し貧乏人以外への薬の提供を拒む。
国家元帥もクリューク男爵も間違いなく偉大な人物である。国家と自身の信念にとっては。元帥の台詞「...この若者は有能だ、だが分別がありすぎる。偉大なことはなし得んだろう...」は本当に大事なことは「偉大さ」でなく「分別」だと語っている。
物語はハッピーエンドには終わらない。今現在の世界も永久平和は -
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ネタバレチャペックらしい皮肉がきいた小説。彼の人間理解の深さを改めて痛感した。
この本には白い病の罹患で線引きされたことを契機に日頃の恨みまでもが顕在化してきた世代間対立、弱者救済への温度差など様々な比較軸がある。そしてプレイヤーをみても独裁者(=元帥、とその恩恵を受ける軍産複合体)と絶対平和主義者(=ガレーン博士)、そしてその中間で冷静に時にファナティックに行動する一般市民がいる。
いずれも絵が思い浮かぶようで、最後のシーンなんて切なくなった。でもあれが人間なのだ。
以下印象に残った箇所。
白い病に怯える親の前で娘が発した言葉
「だって、今の若者にはチャンスがないの、この世の中に十分な場所が -
ネタバレ 購入済み
ロボットの生みの親
ロボットの生みの親、単語としてですが、はこの人
カレル、チャペックさんです。
英語で言えばlabor、パトレイバーのレイバーが彼の国ではrで始まる
ロボタなる言葉で、ここから生まれたそうです。
山椒魚戦争ばりの人類滅亡ネタの話ですが、個人的には
進行役を務めるアルクビストは大好きなキャラです。
底本は英語の様子なので、微妙に差異があるかもです。
お好みで。
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何かの本を読んだときに、その著者が、自分の『愛読書』として紹介していたので、読んでみたのですが、ユーモアが随所にちりばめられていて、かなり面白かったです。
園芸好きの方なら、自分にも思い当たるフシがあることに気付き、大笑い間違いなしでしょう。
園芸に興味がなくても、天候や植物に1年中振り回される園芸家にクスッとなるでしょう。
植物の名前もたくさん出てきますが、そこは全然知らない植物名が出てきても何の問題もありません。かなり楽しめる1冊でした。
雪の降ることもあり、寒い12月~2月くらいまでは、何かすることがあるの?と思いますが、園芸家にはやることが沢山あるんですね。園芸家には休みはないの -
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猫丸さんのお薦め本です。ありがとうございます。
カレル・チャペックは1890年生まれのチェコの作家。
プラハのカレル大学で学んだ後、ベルリンとパリに留学。
帰国後の1916年(26歳)から創作開始。
1921年に新聞社入社。
生涯ジャーナリストとして活動。
この作品はエッセイ集で
Ⅰ男と女と日常生活
Ⅱ文化と社会
Ⅲ政治的動物
ⅠとⅡは大変面白く読みましたが、Ⅲは私には少々難しかったです。
Ⅰの男と女と日常生活は軽妙洒脱な男女の違いの妙などユーモアの溢れるエッセイが多く、例えば「毛皮なしのシラミ」では
「それは豊かな人たちが貧しくなるようにということではなく、豊かな人たちが他人の貧しさの -
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ロボットが出現→人間が産まれなくなる?!
何で?!
と思って調べてみた。
「陣痛」は英語で「labor pain」。「labor」は「労働」と訳すことが多い。同じく、チェコ語で「陣痛」は「prace」。これは「仕事」を意味する語らしい。
ロボットによって人間が滅ぶ、という展開は、もはや古典的と言ってよい程。だけれど、作者はこれを「悲劇」ではなくて「喜劇」として書いたつもりだという。
とすると、冒頭に書いたあれはディストピアあるあるではなくて、言葉遊びと言えそうだ。
「laborからの解放」=「苦役からの解放」=「出産からの解放」
そして、ヘレナの扱い。
たぶん、背景にあるのは「楽園追放」だろう