公手成幸のレビュー一覧
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コルトガバメントM1911という拳銃。モデルナンバーが示す通り、1911年から軍隊や警察等の政府組織の男たち、government-man(Gマン)が愛用してきた銃だ。使用する弾丸は45ACP(45口径Auto Colt Pistol)で、半インチの大口径は携行する弾丸の量は制限されるが被弾時のストッピングパワーが大きく、一発で敵を無力化させることができる。
トンプソンサブマシンガン(トミーガン)も45ACP弾を使用しており、アルカポネが葉巻を咥えてドラム型弾倉のトミーガンを抱えているイメージも印象的だ。現代では9mm口径に主流を譲ったが、今も根強いファンを獲得している。
そのM1911やトミーガン、45ACPに対するオマージュも含め、大恐慌後にポスト・アルカポネとして、銀行強盗たちが跳梁した1938年のアメリカで、ボブ・リー・スワガーの祖父であるチャールズ・スワガーの生きざまを描いた作品だ。高倉健を彷彿させるキャラクターは洋の東西を問わず、理想の男性像の典型として確立されたものだ。
現在と1938年のチャールズ・スワガーの時代が交互に語られていき、現在の語りが終わり1938年の章が始まると、現在の物語が気がかりで、1938年の語りが終わり、現在の章が始まると1938年の物語がどうなっていくのかと気になって仕方ない。ミステリーとして十分の展開で、前半は少し展開がゆっくりしているが、下巻に入ればスピード感は十分で、ぐいぐいとラストシーンまで引っ張っていく。
ミステリーファンにも、スワガー・サーガのファンの期待にも十分応えてくれている。シリーズの大半を読んでいるが、記憶があやふやな私にも配慮された訳注がついており、ありがたく大いに楽しめた。 -
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サウジアラビヤという国家は、中東にある世界最大産油国であることは知っていても、その国がどんな風土や庶民の暮らしがどのように営まれているかなどほとんど知らない。同じ中東でもドバイはエミレーツ航空が直行便を飛ばし、かなりの情報が流通していることと比べてみてもかなり閉鎖的と言えるであろう。そもそも、日本から旅行で訪れることが出来ない国なのでその文化を知ること自体が文字に多くを委ねることになるので、サウジアラビヤという国の印象を平易に知るにはいいかも知れない。物語の背景はサウジアラビヤとイスラエルが和平のための調印をイギリスの古城で行うところを何者かに襲撃されるところから話が始まり、同時にサウジアラビヤ本国では、宗教家に率いられた民衆蜂起が国内随所で起き国王が殺害されてしまう事態となり、国家存亡の危機に瀕する。世界のエネルギーを産出する王家(サウド家)とワッハーブ派(スンニ派の亜派)の国の石油という資源をこの機に強奪しようと蠢く大国なかなかスリリングな展開で読者を飽きさせない。
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あまりにも有名な殺人鬼<切り裂きジャック>について書かれた本をぼくはこれまで読んだことがない。特に読まなかったことの理由はない。ほとんどの作品を読んでいるはずのパトリシア・コーンウェルが『切り裂きジャック』を書いた時にもなぜか食指が動かなかった。
ほとんどの作品を読んでいるこの作家スティーヴン・ハンターの本書にしても買ってすぐに手に取ったわけではない。半年以上経った頃になってようやく、それもどちらかと言えば気が向かぬままに手に取った。
古いロンドンの街を脅かした切り裂きジャックが有名な連続殺人鬼の代表格のような存在として知られながら、ついに逮捕されることなく未解決に終わっているという中途半端な伝説的事実。
それに近代という古臭い時代、ロンドンの石畳とガス灯の街路を馬車が歩くそんな時代にまで遡って結局は解決もしなかった事件を、作家の想像力で仕立てたり、調査した事実関係を並べられたりしても読むに値する物語ができるとはとても考えられなかったのだ。
しかしハンターには実績がある。ケネディ暗殺を独自の視点から描いた『第三の銃弾』、ロシアに実在した女スナイパーを題材にした『スナイパーの誇り』と、歴史を物語らせる最近のハンターの文学的手腕に対する信頼がある。なので、他の作家であれば手に取ることがなかっただろうこの切り裂きジャックテーマに挑んだ作家の手腕を改めて見てみようじゃないか、という気持ちになれたのだ。
そしてその手腕は裏切られることがなかった。切り裂きジャックの事件はなぜ未解決だったのか? 半年に満たない短期間に五人もの連続殺人を犯した切り裂きジャックはなぜ犯行を唐突にやめたのか? その二つの疑問に挑むハンターの想像力は『第三の銃弾』でケネディを暗殺しなければならなかった男の内面をモノローグで描いたと同様に、本書でも切り裂きジャックの日記を鬼気迫る武器として用いている。
さらに売春婦の手紙、雑誌記者の手記と三つの形式で物語を紡いでゆく。事実に基づくことから、シャーロック・ホームズと同時代であることも含めて、ロンドンの闇の回廊に蠢く殺人鬼と、推理する側の好奇心と、スプラッター映画のような過酷な殺害シーンとを。
数ある伏線とひねり抜いたストーリーにあっと驚く主要登場人物の正体など、遊び感覚を備えながら語る、語らせる、そんな技巧とツイストに満ちた上物ミステリーに仕上がっているのである。円熟のハンターはあの名作『真夜中のデッドリミット』からこっちずっと読者の心をとらえて離さないままなのである。 -
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あまりにも有名な殺人鬼<切り裂きジャック>について書かれた本をぼくはこれまで読んだことがない。特に読まなかったことの理由はない。ほとんどの作品を読んでいるはずのパトリシア・コーンウェルが『切り裂きジャック』を書いた時にもなぜか食指が動かなかった。
ほとんどの作品を読んでいるこの作家スティーヴン・ハンターの本書にしても買ってすぐに手に取ったわけではない。半年以上経った頃になってようやく、それもどちらかと言えば気が向かぬままに手に取った。
古いロンドンの街を脅かした切り裂きジャックが有名な連続殺人鬼の代表格のような存在として知られながら、ついに逮捕されることなく未解決に終わっているという中途半端な伝説的事実。
それに近代という古臭い時代、ロンドンの石畳とガス灯の街路を馬車が歩くそんな時代にまで遡って結局は解決もしなかった事件を、作家の想像力で仕立てたり、調査した事実関係を並べられたりしても読むに値する物語ができるとはとても考えられなかったのだ。
しかしハンターには実績がある。ケネディ暗殺を独自の視点から描いた『第三の銃弾』、ロシアに実在した女スナイパーを題材にした『スナイパーの誇り』と、歴史を物語らせる最近のハンターの文学的手腕に対する信頼がある。なので、他の作家であれば手に取ることがなかっただろうこの切り裂きジャックテーマに挑んだ作家の手腕を改めて見てみようじゃないか、という気持ちになれたのだ。
そしてその手腕は裏切られることがなかった。切り裂きジャックの事件はなぜ未解決だったのか? 半年に満たない短期間に五人もの連続殺人を犯した切り裂きジャックはなぜ犯行を唐突にやめたのか? その二つの疑問に挑むハンターの想像力は『第三の銃弾』でケネディを暗殺しなければならなかった男の内面をモノローグで描いたと同様に、本書でも切り裂きジャックの日記を鬼気迫る武器として用いている。
さらに売春婦の手紙、雑誌記者の手記と三つの形式で物語を紡いでゆく。事実に基づくことから、シャーロック・ホームズと同時代であることも含めて、ロンドンの闇の回廊に蠢く殺人鬼と、推理する側の好奇心と、スプラッター映画のような過酷な殺害シーンとを。
数ある伏線とひねり抜いたストーリーにあっと驚く主要登場人物の正体など、遊び感覚を備えながら語る、語らせる、そんな技巧とツイストに満ちた上物ミステリーに仕上がっているのである。円熟のハンターはあの名作『真夜中のデッドリミット』からこっちずっと読者の心をとらえて離さないままなのである。 -
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何故にスティーブンハンターが切り裂きジャック?つい先日、シェリーディクスンカーの切り裂きジャックを題材にしたタイムトラベルものを読んだばかりなので
事件にはちょっと詳しくなったところ。凄惨な事件ですが現在まで未解決であることでイギリスでは有名みたいですね。
小説での描写や実際の犯人の遣り口から現代ならDNA鑑定であっという間に捕まってしまいそう。
また1880年代ってシャーロックホームズと同時代なんですね。小説の中にも「緋色の研究」が発表されたばかりとの記述があります。
混沌としたヴィクトリア朝時代、ロンドンの下町の世相が良く判る、風俗小説として読んでも面白いです。
スカートを捲っただけで路上で出来ちゃう、西欧の娼婦って凄いですね。
小説の主人公には高名な実在の小説家(戯曲家?)を配し、一応犯人を追いつめて自滅させていますが、実在の人物なのかモデルがいるのか、その辺は詳しくないので
面白みには欠けます。欧米の作家なら、一度は扱ってみたい題材なのでしょうか、昔の事件を描くよりも、ボブザネイラーを活躍させてくれよ!と思う今日この頃です。 -
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ネタバレ洋書版で読みました。
主人公のジルがやることイケメンかつひたすら強すぎる。
話の概要はある女性兵士がアフガニスタンでHIK武装集団に襲撃され、誘拐されてしまう。
身代金の受け渡しも失敗し、打ち手を考えあぐねているアメリカ政府。
そこにシールズの精鋭狙撃手が勝手に作戦を立案し、ガンシップの支援を受けながら敵地に単独潜入した。
相手に存在を気づかれず倒せるスナイパーの恐ろしさが良くわかりました!
最後は少数対多数の絶対絶命の状況だけど猛烈空爆でなんとかなるというチートでした。
でもアクションは緻密に書かれているし、感動したところもあったので良い作品でした。 -
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ネタバレスティーヴン・ハンターによるボブ・リー・スワガーシリーズ第三弾下巻。
アールが殺害された当時、最先端の技術であった暗視装置が本作のタイトルになっていることが明かされ、アールも暗視装置を使ったハンターに殺害されたことが判明する。そこからボブとラスは少しずつ真実に迫っていく。
本作では極大射程の時のような最後の最後でひっくり返すような仕掛けは用意されていないが(それでもまさかの結末は用意されている)、綿密に張り巡らされた伏線を最終的に見事に回収する特徴がある。ボブがそこに至る過程は半ば強引に感じたり、ピンチに陥った時のある意味ご都合主義的展開が気になるところもあり、息切れしたかなと思わせる。
また、前作以上に誤植が散見され、物語に没入しにくくさせられた点もマイナスだった。 -
Posted by ブクログ
前作『第三の銃弾』でダラスを舞台にJFK暗殺の可能性としての新説を試みたハンターという作家。狩猟を趣味とし銃器に造詣が深い作家ということでオリジナルな道を歩んでいる昨今であるが、そもそもが傑作『真夜中のデッド・リミット』に代表されるような本質的には冒険小説作家である。強い権力に反発し、弱く、庶民の側であり、無名のヒーローに、命がけの活躍物語を与えることを得意とするのがハンターの神髄であると、ぼくは見ている。
ボブ・リー・スワガーが名うての射撃手としてベトナム戦争を闘ったが、今では作者の分身のように60歳後半の老境でありながら、老いに逆らい今でも好んで冒険を求めて、歴史の謎に迫ってゆく。今回は第二次大戦中、独ソ戦において活躍した女性スナイパーの存在について個人的に惹きつけられるものを覚え、彼女の痕跡が消えた土地ウクライナへとスワガーは向かう。
女性スナイパーは別名<白い魔女>と呼ばれる金髪碧眼の美女。彼女の存在については、モスクワ在住のジャーナリスト、キャシー・ライリーがスワガーに持ち込んできた。二人はウクライナで謎の妨害に合いながらも真相を求めて危険な追跡行を展開してゆく。彼らの捜査行と並行して交互に語られるのが過去の白い魔女の時代1944年の夏の物語だ。現在と1944年を交互に行き来しながら語られる物語は、ドイツ側のユダヤ人虐殺に深く関わる上位指導者の暗殺や、大物スパイの存在へと近づいてゆき、スリリングである。
独ソ戦でのスナイパーを描いた映画『スターリングラード』を観ていたので、<白い魔女>の登場シーンであるスターリングラードでの市街戦の様子は鮮やかに眼に浮かぶようだった。そしてヨーロッパがナチに蹂躙され、ソ連がスターリンの粛清に怯えながらも、東部戦線は累々と屍の山を築いている頃の話だ。あまりに情報の少ない国、ウクライナを舞台にした本編は、伝説のスナイパーの人生を辿りつつ、鏡のように時代を超越してシンクロナイズしてゆくスワガーという名スナイパーの現在の冒険とクロスして、一発の銃弾という一点にすべてのエネルギーを集約させてゆく。見事なクライマックスである。
そしてこの架空ではあるが、そんな存在があったとしてもおかしくない1944年の英雄、<白い魔女>は周囲の巨大な陰謀やスパイを巻き込んで、驚くべき結末を見せる。さらに現代にも、イスラエルの情報機関モサドの分析官のもとに、この物語と関連するであろう遠い事件が襲来して、それらが挿話として各所に挟まれているが、これまたハンターの仕掛けである。
やはりこの作家は銃器を専門とした物語を紡ぎながら、基本的には名もない一人一人の人間の知られざる活躍を描くのが何とも巧い。ホロコーストの恐怖と時代への怒りを登場人物たちに投影しながら、作者は平和への勇気と名もなき兵士たちの命がけの行動への祈りを捧げているのだろう。
作者あとがきで明らかになるが、実際にハンターはウクライナに赴き、キャシー・ライリーという実在で同名のガイドに連れられ、あの時代のことを丹念に足で調べたという。68歳という巨匠の熱い心は今なお健在である。 -
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前作『第三の銃弾』でダラスを舞台にJFK暗殺の可能性としての新説を試みたハンターという作家。狩猟を趣味とし銃器に造詣が深い作家ということでオリジナルな道を歩んでいる昨今であるが、そもそもが傑作『真夜中のデッド・リミット』に代表されるような本質的には冒険小説作家である。強い権力に反発し、弱く、庶民の側であり、無名のヒーローに、命がけの活躍物語を与えることを得意とするのがハンターの神髄であると、ぼくは見ている。
ボブ・リー・スワガーが名うての射撃手としてベトナム戦争を闘ったが、今では作者の分身のように60歳後半の老境でありながら、老いに逆らい今でも好んで冒険を求めて、歴史の謎に迫ってゆく。今回は第二次大戦中、独ソ戦において活躍した女性スナイパーの存在について個人的に惹きつけられるものを覚え、彼女の痕跡が消えた土地ウクライナへとスワガーは向かう。
女性スナイパーは別名<白い魔女>と呼ばれる金髪碧眼の美女。彼女の存在については、モスクワ在住のジャーナリスト、キャシー・ライリーがスワガーに持ち込んできた。二人はウクライナで謎の妨害に合いながらも真相を求めて危険な追跡行を展開してゆく。彼らの捜査行と並行して交互に語られるのが過去の白い魔女の時代1944年の夏の物語だ。現在と1944年を交互に行き来しながら語られる物語は、ドイツ側のユダヤ人虐殺に深く関わる上位指導者の暗殺や、大物スパイの存在へと近づいてゆき、スリリングである。
独ソ戦でのスナイパーを描いた映画『スターリングラード』を観ていたので、<白い魔女>の登場シーンであるスターリングラードでの市街戦の様子は鮮やかに眼に浮かぶようだった。そしてヨーロッパがナチに蹂躙され、ソ連がスターリンの粛清に怯えながらも、東部戦線は累々と屍の山を築いている頃の話だ。あまりに情報の少ない国、ウクライナを舞台にした本編は、伝説のスナイパーの人生を辿りつつ、鏡のように時代を超越してシンクロナイズしてゆくスワガーという名スナイパーの現在の冒険とクロスして、一発の銃弾という一点にすべてのエネルギーを集約させてゆく。見事なクライマックスである。
そしてこの架空ではあるが、そんな存在があったとしてもおかしくない1944年の英雄、<白い魔女>は周囲の巨大な陰謀やスパイを巻き込んで、驚くべき結末を見せる。さらに現代にも、イスラエルの情報機関モサドの分析官のもとに、この物語と関連するであろう遠い事件が襲来して、それらが挿話として各所に挟まれているが、これまたハンターの仕掛けである。
やはりこの作家は銃器を専門とした物語を紡ぎながら、基本的には名もない一人一人の人間の知られざる活躍を描くのが何とも巧い。ホロコーストの恐怖と時代への怒りを登場人物たちに投影しながら、作者は平和への勇気と名もなき兵士たちの命がけの行動への祈りを捧げているのだろう。
作者あとがきで明らかになるが、実際にハンターはウクライナに赴き、キャシー・ライリーという実在で同名のガイドに連れられ、あの時代のことを丹念に足で調べたという。68歳という巨匠の熱い心は今なお健在である。