公手成幸のレビュー一覧
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盆と正月が来たみたいだという言い方があるけれど、冒険小説ファンにとっては今秋がそれにあたるのではないだろうか。8月にグレイマンシリーズ『暗殺者の追跡』、9月に本作、ボブ・リー・スワガーシリーズ『狙撃手のゲーム』発刊だ。秋の入り口で十分に楽しませてもらった。
動のグレイマン、静のスワガーといった対比ができるだろうか。理詰めで敵対するスナイパーを追い詰めていく様はスリリングで、気持ちよく読み手を先に進ませる。少しづつ距離を詰めていき、最後に両者が邂逅し決着がつく・・・大団円・・・拍手・・・幕・・・。
『狙撃手のゲーム』では精密射撃の世界が丁寧に書かれており、僕くらいの年代の人たちは、40年ほど前に月刊『Gun』誌でレポーターをしておられたT.高野さんを思い出した方も大勢いらっしゃったのではないだろうか。当時は地味なレポートだなと思っていたけれど、今となっては、その奥深さが理解できる。本作を読んでいると、当時のリローディングの記事が脳裏に蘇るから驚いてしまう。40年前の雑誌の記事が記憶の引き出しに仕舞われていることに、だ。 -
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ネタバレ久々に「スワガー・サーガ」を読んだ。いつものハンター節で描かれるのは、なんとボブのおじいちゃん、チャールズ・スワガーである。
舞台は1934年、世界恐慌の余波が残り、禁酒法が終わり、イタリアン・マフィアの全盛期にも陰りが見えてきた頃で、その影響で裏社会の秩序も乱れている。
銀行強盗が盛んに行われたこの時代の、実話を下敷きにして、チャールズ・スワガーの活躍劇が描かれる。
スワガー一家のマッチョぶりは、このチャールズも変わらず(というか、遺伝的には先)なんだが、彼には第一次世界大戦を退役して以降、大きな秘密を一つ抱えていて…とこれは主筋から離れていることなのだが…圧倒的強さを誇るチャールズが、後半どうなっていくのか?「悪徳の都」で出てきたアールの冴えない父親像に、どういう風につながっていくのか。
銀行強盗団(パブリックエネミーズ)達との息詰まるガンファイトが圧倒的魅力にあふれている裏で、こういう登場人物の葛藤を描く技法もいいなぁ。そしてさらに、その秘密を追う現代のボブの描写も複層的な効果があって面白い。
基本的には荒っぽいガンファイト系アクション小説なのだが、重層的な構成を読み解いていく楽しみも含まれていて、一筋縄ではいかない小説。ただその重層さが単純にガンアクションを楽しむには少々クドく感じられてしまう部分もあったのは若干残念だった。 -
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ネタバレ大学新入生のサリーは、よく知りもしない上級生Dを車で送った結果、麻薬取引を幇助した疑いで逮捕されてしまう。Dの背後にいる組織が本命であるウィルディ捜査官は、Dを庇おうとするサリーに、ドラッグディーラーを密告するCI、カナリアになるように指示するが。
なんでサリーがDを庇おうとするのかが心情的に理解できず、うーん、て感じはあるのですが。
前半、Dの代わりのドラッグディーラーを見つけてきてはウィルディを振りまわす辺りは楽しかっです。終盤は一気にサリーの度胸のすわりっぷりが上がって行くけど、そこにお母さんのエピソードが加わったり、お父さんやマーティとの家族の結束が強まったり、よい盛り上がりでラストまで引っ張られました。
にしても、アメリカの大学怖い。。サリー、女子大生とはいえまだ17歳とはとても思えない。。 -
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中々激しい内容の小説です。
アメリカ国内で、核が爆発すると言う設定の物語は少なくはありません。そういう意味では、真新しい設定ではありません。
興味深いのは、その核爆弾を捜索するのが、“ブラック”の部隊と言う事。しかも、核捜索と並行して、そのブラック部隊隊員の家族が、テロリストから襲われるという、ある意味二正面作戦。そういう観点では、中々目が離せない物語となっています。
少し首をかしげてしまうのが、テロリストがあっさりと秘密をばらしたり、ブラック部隊の責任者が、裏切り者なのか、あるいは政府から頼りにされているのかが、イマイチ?その辺りは、ご都合主義と思えないこともありません。
でも、中々面白い話だと思います。 -
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コルトガバメントM1911という拳銃。モデルナンバーが示す通り、1911年から軍隊や警察等の政府組織の男たち、government-man(Gマン)が愛用してきた銃だ。使用する弾丸は45ACP(45口径Auto Colt Pistol)で、半インチの大口径は携行する弾丸の量は制限されるが被弾時のストッピングパワーが大きく、一発で敵を無力化させることができる。
トンプソンサブマシンガン(トミーガン)も45ACP弾を使用しており、アルカポネが葉巻を咥えてドラム型弾倉のトミーガンを抱えているイメージも印象的だ。現代では9mm口径に主流を譲ったが、今も根強いファンを獲得している。
そのM1911やトミーガン、45ACPに対するオマージュも含め、大恐慌後にポスト・アルカポネとして、銀行強盗たちが跳梁した1938年のアメリカで、ボブ・リー・スワガーの祖父であるチャールズ・スワガーの生きざまを描いた作品だ。高倉健を彷彿させるキャラクターは洋の東西を問わず、理想の男性像の典型として確立されたものだ。
現在と1938年のチャールズ・スワガーの時代が交互に語られていき、現在の語りが終わり1938年の章が始まると、現在の物語が気がかりで、1938年の語りが終わり、現在の章が始まると1938年の物語がどうなっていくのかと気になって仕方ない。ミステリーとして十分の展開で、前半は少し展開がゆっくりしているが、下巻に入ればスピード感は十分で、ぐいぐいとラストシーンまで引っ張っていく。
ミステリーファンにも、スワガー・サーガのファンの期待にも十分応えてくれている。シリーズの大半を読んでいるが、記憶があやふやな私にも配慮された訳注がついており、ありがたく大いに楽しめた。 -
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スティーヴン・ハンター『Gマン 宿命の銃弾(下)』扶桑社ミステリー。
上巻のスローな少しまどろっこしい展開から一転、ギャングが跳梁跋扈した1930年代を舞台にチャールズ・F・スワガーの秘めたる謎を明らかにしていく。
ボブがチャールズの過去で追い求めることは一点のみ。何故チャールズがFBIの記録から抹消され、酒に溺れる転落の人生を送ることになったのか。
本作はスワガー・サーガというよりも、ギャングどもが跳梁跋扈した1930年代を描いた歴史小説という色彩が強い。また、これまでは各時代のヒーローとして描かれてきたスワガー一族の男たちだが、本作ではチャールズのスキャンダラスな、人間的に脆い一面が描かれており、少し不満の残る作品だった。
『ダーティホワイトボーイズ』に衝撃を受けて以来、スティーヴン・ハンターの作品を読み続けている。『極大射程』から始まったスワガー一族の物語は、ボブの父親・アールを描き、さらには息子のレイ・クルーズを描き、そして、本作では祖父のチャールズを描くという予想も出来ない広がりを見せてきた。この先、果たして続編があるのか非常に気になるところである。
タイトルの『Gマン』はガンマンのことかと思ったが、連邦捜査官(ガバメント・マン)という意味。 -
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スティーヴン・ハンター『Gマン 宿命の銃弾(上)』扶桑社ミステリー。
スワガー・サーガの第15作。本サーガの中核を成すボブ・リー・スワガーも71歳となり、後継者のレイ・クルーズとの世代交代も今一つ不調ということで、今回は一体どのような設定になるのか非常に気になっていた。蓋を開ければ、何と今回はボブの祖父チャールズ・F・スワガーを主人公にした物語であった。
アーカンソー州にあるボブ・リー・スワガーの地所から祖父チャールズの遺品とおぼしきコルト45と紙幣、謎の地図、FBIの前身である司法省捜査局のバッジなどが発見される。ボブは自らのルーツである祖父の謎に満ちた過去に迫る。
チャールズの時代である1934年とボブの時代である現代とが交互に描かれ、スワガー一族の男たちの『銃の男』の宿命が少しずつ浮き彫りになる。また、既にお馴染みとなった著者の銃火器に関する異常なまでの知識とこだわりは、『銃の男』にリアリティを持たせているようだ。 -
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サウジアラビヤという国家は、中東にある世界最大産油国であることは知っていても、その国がどんな風土や庶民の暮らしがどのように営まれているかなどほとんど知らない。同じ中東でもドバイはエミレーツ航空が直行便を飛ばし、かなりの情報が流通していることと比べてみてもかなり閉鎖的と言えるであろう。そもそも、日本から旅行で訪れることが出来ない国なのでその文化を知ること自体が文字に多くを委ねることになるので、サウジアラビヤという国の印象を平易に知るにはいいかも知れない。物語の背景はサウジアラビヤとイスラエルが和平のための調印をイギリスの古城で行うところを何者かに襲撃されるところから話が始まり、同時にサウジアラビヤ本国では、宗教家に率いられた民衆蜂起が国内随所で起き国王が殺害されてしまう事態となり、国家存亡の危機に瀕する。世界のエネルギーを産出する王家(サウド家)とワッハーブ派(スンニ派の亜派)の国の石油という資源をこの機に強奪しようと蠢く大国なかなかスリリングな展開で読者を飽きさせない。
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あまりにも有名な殺人鬼<切り裂きジャック>について書かれた本をぼくはこれまで読んだことがない。特に読まなかったことの理由はない。ほとんどの作品を読んでいるはずのパトリシア・コーンウェルが『切り裂きジャック』を書いた時にもなぜか食指が動かなかった。
ほとんどの作品を読んでいるこの作家スティーヴン・ハンターの本書にしても買ってすぐに手に取ったわけではない。半年以上経った頃になってようやく、それもどちらかと言えば気が向かぬままに手に取った。
古いロンドンの街を脅かした切り裂きジャックが有名な連続殺人鬼の代表格のような存在として知られながら、ついに逮捕されることなく未解決に終わっているという中途半端な伝説的事実。
それに近代という古臭い時代、ロンドンの石畳とガス灯の街路を馬車が歩くそんな時代にまで遡って結局は解決もしなかった事件を、作家の想像力で仕立てたり、調査した事実関係を並べられたりしても読むに値する物語ができるとはとても考えられなかったのだ。
しかしハンターには実績がある。ケネディ暗殺を独自の視点から描いた『第三の銃弾』、ロシアに実在した女スナイパーを題材にした『スナイパーの誇り』と、歴史を物語らせる最近のハンターの文学的手腕に対する信頼がある。なので、他の作家であれば手に取ることがなかっただろうこの切り裂きジャックテーマに挑んだ作家の手腕を改めて見てみようじゃないか、という気持ちになれたのだ。
そしてその手腕は裏切られることがなかった。切り裂きジャックの事件はなぜ未解決だったのか? 半年に満たない短期間に五人もの連続殺人を犯した切り裂きジャックはなぜ犯行を唐突にやめたのか? その二つの疑問に挑むハンターの想像力は『第三の銃弾』でケネディを暗殺しなければならなかった男の内面をモノローグで描いたと同様に、本書でも切り裂きジャックの日記を鬼気迫る武器として用いている。
さらに売春婦の手紙、雑誌記者の手記と三つの形式で物語を紡いでゆく。事実に基づくことから、シャーロック・ホームズと同時代であることも含めて、ロンドンの闇の回廊に蠢く殺人鬼と、推理する側の好奇心と、スプラッター映画のような過酷な殺害シーンとを。
数ある伏線とひねり抜いたストーリーにあっと驚く主要登場人物の正体など、遊び感覚を備えながら語る、語らせる、そんな技巧とツイストに満ちた上物ミステリーに仕上がっているのである。円熟のハンターはあの名作『真夜中のデッドリミット』からこっちずっと読者の心をとらえて離さないままなのである。 -
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あまりにも有名な殺人鬼<切り裂きジャック>について書かれた本をぼくはこれまで読んだことがない。特に読まなかったことの理由はない。ほとんどの作品を読んでいるはずのパトリシア・コーンウェルが『切り裂きジャック』を書いた時にもなぜか食指が動かなかった。
ほとんどの作品を読んでいるこの作家スティーヴン・ハンターの本書にしても買ってすぐに手に取ったわけではない。半年以上経った頃になってようやく、それもどちらかと言えば気が向かぬままに手に取った。
古いロンドンの街を脅かした切り裂きジャックが有名な連続殺人鬼の代表格のような存在として知られながら、ついに逮捕されることなく未解決に終わっているという中途半端な伝説的事実。
それに近代という古臭い時代、ロンドンの石畳とガス灯の街路を馬車が歩くそんな時代にまで遡って結局は解決もしなかった事件を、作家の想像力で仕立てたり、調査した事実関係を並べられたりしても読むに値する物語ができるとはとても考えられなかったのだ。
しかしハンターには実績がある。ケネディ暗殺を独自の視点から描いた『第三の銃弾』、ロシアに実在した女スナイパーを題材にした『スナイパーの誇り』と、歴史を物語らせる最近のハンターの文学的手腕に対する信頼がある。なので、他の作家であれば手に取ることがなかっただろうこの切り裂きジャックテーマに挑んだ作家の手腕を改めて見てみようじゃないか、という気持ちになれたのだ。
そしてその手腕は裏切られることがなかった。切り裂きジャックの事件はなぜ未解決だったのか? 半年に満たない短期間に五人もの連続殺人を犯した切り裂きジャックはなぜ犯行を唐突にやめたのか? その二つの疑問に挑むハンターの想像力は『第三の銃弾』でケネディを暗殺しなければならなかった男の内面をモノローグで描いたと同様に、本書でも切り裂きジャックの日記を鬼気迫る武器として用いている。
さらに売春婦の手紙、雑誌記者の手記と三つの形式で物語を紡いでゆく。事実に基づくことから、シャーロック・ホームズと同時代であることも含めて、ロンドンの闇の回廊に蠢く殺人鬼と、推理する側の好奇心と、スプラッター映画のような過酷な殺害シーンとを。
数ある伏線とひねり抜いたストーリーにあっと驚く主要登場人物の正体など、遊び感覚を備えながら語る、語らせる、そんな技巧とツイストに満ちた上物ミステリーに仕上がっているのである。円熟のハンターはあの名作『真夜中のデッドリミット』からこっちずっと読者の心をとらえて離さないままなのである。 -
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何故にスティーブンハンターが切り裂きジャック?つい先日、シェリーディクスンカーの切り裂きジャックを題材にしたタイムトラベルものを読んだばかりなので
事件にはちょっと詳しくなったところ。凄惨な事件ですが現在まで未解決であることでイギリスでは有名みたいですね。
小説での描写や実際の犯人の遣り口から現代ならDNA鑑定であっという間に捕まってしまいそう。
また1880年代ってシャーロックホームズと同時代なんですね。小説の中にも「緋色の研究」が発表されたばかりとの記述があります。
混沌としたヴィクトリア朝時代、ロンドンの下町の世相が良く判る、風俗小説として読んでも面白いです。
スカートを捲っただけで路上で出来ちゃう、西欧の娼婦って凄いですね。
小説の主人公には高名な実在の小説家(戯曲家?)を配し、一応犯人を追いつめて自滅させていますが、実在の人物なのかモデルがいるのか、その辺は詳しくないので
面白みには欠けます。欧米の作家なら、一度は扱ってみたい題材なのでしょうか、昔の事件を描くよりも、ボブザネイラーを活躍させてくれよ!と思う今日この頃です。 -
Posted by ブクログ
これまで、切り裂きジャックの犯人像に迫る作品を何冊か読んでいるが、これだけ明解に犯人像を示した作品は無かったのではないだろうか。やはり、信頼すべき作家スティーヴン・ハンターだけのことはある。もっとも犯人像はスティーヴン・ハンターの創作なのだが。意外な犯人像と、ただでは済まないストーリー展開。なかなか面白い。
連続娼婦殺人事件の犯人、切り裂きジャックの正体に新聞記者のジェブが音声学者のデア教授と共に迫る。
これまでの切り裂きジャック事件を扱った作品はさんざん証拠や事実を並べ、事件をこねくり回した挙げ句に犯人像は不明確で、フラストレーションが溜まる作品が多かったが、見事にスティーヴン・ハンターがこのフラストレーションを晴らしてくれた。