公手成幸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今になってJFK? ダラスの熱い一日の事件を今になって、さらに新たに新解釈で小説化できるものだろうか?
そんな疑問で本書を首を捻りながら手に取る読者は多いだろう。そうした懐疑的な多くの視線を切り裂いて、スナイパー小説の第一人者である巨匠スティーブン・ハンターが、アメリカ最大の事件に対し真っ向ストレート勝負を試みた。
その志もあっぱれだが、その切り口もこんなにも鮮やかだとは、誰に予想できたろうか。ここのところ、失礼ながら鳴かず飛ばずのボブ・リー・スワガー・シリーズで、スナイパー小説の王道から逸れたような作品を書いていたこの作家が、こんなにも原点に立ち戻って、しかもあの傑作『極大射程』の続編という形でメインストリートもど真ん中に戻ってきた快挙の一作を作り出してくれたのである。かつてのハンター・ファンが泣いて喜ぶ傑作、胸のすく快作に仕上がっている。これはことによるとハンターの代表作と呼べる新機軸となるかもしれない。
ボブ・リー・スワガーも初老となったが、かつてのベトナムの特殊部隊兵士、銃撃のプロフェッショナルとしての勘は衰えることを知らない。今回は、まるでハンターの分身のような銃器アクション作家が、まるで『黄昏の狙撃手』そのままに車で轢き殺されるところから始まる。彼が調べていたのは、実はJFK事件の真相だった。彼の死を調査すべく依頼されたボブ・リーは、依頼以上に銃器のプロフェッショナルとしての観点から、ダラスのJFK暗殺事件の真相に多くの疑問を感じる。
リー・ハーベイ・オズワルドの犯行説を最も疑問視させた魔法の銃弾の解析が、銃弾のブロの視点から見ると意外なものであり、オリバー・ストーンの映画とは全然別視点からハンターの作品は発射された弾丸の謎に迫る。第三の銃弾とは本作品のオリジナリティを高らかに掲げたロマンであり、タイトルである。
その向こうに見え隠れする車椅子のスナイパー、極大射程の残党たち。そしてあのダラスではなく、現代の対決と復讐劇へと誘うプロットの見事さ。事実とフィクションによって糾われる縄のごとく、ボブ・リーの運命は、世界最大レベルの暗殺劇の中心軸へと下降してゆく。これは宿命の舞台劇でありながら、もはや歴史に対峙するプロフェッショナルたちの叙事詩そのものである。
ここのところ隠れがちだった。そもそものハンター小説の文学性、高密度性が戻ってきた感がある。ハンターは『極大射程』の緊迫した空気を蘇らせてくれた。読後も興奮冷めやらぬ何やらほてりすら感じさせるハンター世界の新たなる地平が見えるかのようだ。しばしスワガーのサーガから足が遠のいていたかつてのファンたちに、改めて再集結を促したくなる傑作小説が、厳然とここに存在する。 -
Posted by ブクログ
ボブ・ザ・ネイラーシリーズ最新作。
シリーズ最高傑作!「極大射程」を超えた!は明らかに言い過ぎ。「極大射程」の20年後の世界、且つ「極大射程」におけるボブの立ち位置を上手に、本当に上手いことJFK暗殺事件にはめ込んで、ザプルーダーフィルムやウォーレン委員会でよく知られた事実を元に作者の想像(創造?)を重ねて1級のサスペンスに仕上げています。
上巻の終わり近く、ボブの決め台詞「狩りの時間だ。」が出てくるとゾクゾクします。
徐々に謎を解き明かし核心に近づいていくボブ、ラスボスはボブを「最期の地」に誘い込もうとする。
そして罠にはまったと思いきや。
またもや丘の頂からボブ・ザ・ネイラーの大反撃が始まる!この辺は1種のお約束事です。
怪獣が街を破壊する、キャリーがステージを火の海にする、と同様のカタルシスがあります。
大銃撃戦は終わるが本当に悪い奴はまだ生きている、と思いきや、最後の一撃。これもお約束。
安心して読めるサスペンスアクション巨編って言ったら変な誉めかたでしょうか。
大変面白かったですが、私の中でこのシリーズ不動の1位は「極大射程」に変わりありません。2位は「ブラックライト」3位が「狩りの時」かな。本作は次点。
ベトナムが遠くになるにつれボブの動機付けが弱くなるのは致し方のないところ。そこにJFK暗殺事件を持ってきたのは作者の慧眼。久々に楽しめましたよ。 -
Posted by ブクログ
この五つ星は「極大射程」に始まるスワガーシリーズに進呈。
日本での紹介1作目は「ダーティホワイトボーイズ」だった。ミステリーランキングで評判がいいので買ってはいたけどさほど好みとは思わずほったらかしていた。何となく読んでこりゃ面白いと調べてみた書評サイト、よくぞまあ茶木さん「順番通りに読むべき」とすすめてくれた事よ!シリーズ1作目「極大射程」にひっくり返った。海兵隊のスナイパーが主人公?私には関係ないわと思いこんでいたお馬鹿さん。でもその時読まなかったおかげで本来の発表順で読めたことがこの上なくありがたい。
主人公をはじめとする人物造型がすばらしい。時間が行き来する凝ったプロットなのに読みやすく、先へ先へと誘われる。読書の至福ってこういう事だよね。
この最終作の解説者が書いていた、これは銃礼賛の書ではなく銃への挽歌だというくだりに深く頷いてしまった。「戦争」「軍隊」「銃」を書いてこれほどにフラットな(思想性を排した)まなざしをもてることに驚嘆した。
登場人物が皆ストーリーのために存在しているのではない輝きを放っている。とりわけ本書のダニー・フェン、まぶしいほどの若さそのもの、第1作ですでに死んでいると知っているのに、息を詰めて運命への道を追ってしまう。シリーズを最初からもう1回読むのも楽しみ。まぎれもなく傑作。